kk5_347

夕食前の売店にて、ボクはある行為に勤しんでいた。
「あ、また変なのが。なんでこんなのも入ってるんだろう」
そう言いながら、手にとったのは『無言電話』と書かれた玩具の電話。
「……いったい何に使えと?」
文句を言いつつも、捨てることも出来ないボク。
そう、勘の良い人なら分かるだろうが、現在ボクはモノモノマシーンを回しまくってる最中だ。
なんで回してるかというと、メダルがあるからだ、と言うしか無い。
学園に閉じ込められてから、なんとか脱出できないかと探索を始めて、数日が経っていた。
残念ながら探索範囲が制限されていることもあり、未だ脱出への糸口は見つかっていない。
正直に言えば、もう探索していないとこはないと思えるが、
じっとしているわけにもいかず、みんな探索活動を続けている。
そんな探索の時ちらほらと見つかるのが、モノクマの絵が掘られたモノクマメダルだ(命名はセレスさん)
実はこのメダルと、それを使用するであろうモノモノマシーン(同じく命名セレスさん)
見つかった当初は何が起こるかわからない、とみな使うのを控えていた。
が、ある一人の勇者がそれを破った。
その者の名は、山田一二三。
彼曰く

「そこにガシャポンがあり、吾輩の手の中にはメダルがある。ならば回さぬ道理はないですぞ!」

となんだが良くわからない主張をして、周囲が止めるのも聞かずに使い出したのである。
そうして、いざ使ってみると何も起きず、検証の結果妙な玩具や嗜好品を出すだけということがわかった。
なら、使わないのはもったいないという事で、一日の終わりに見つけたメダルを集めて
15人全員に公平に再分配、そして各自好きなようにモノモノマシーンを回すのが、
いつしか僕達の習慣になっていた。


「いやあ、どうだね苗木くん、今日の収穫は?」
先にマシーンを使っていた石丸クンが、戦果を聞いてくる。
「さっきから変な奴ばっかだね。石丸クンはどうだった?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた!実は前から欲しかったキーホルダーが出てきてね、今日は素晴らしい日だな!」
と、ドリルのような物が付いたモアイ像を心から嬉しそうに見せてくる。
うーん、相変わらず変わったものが好きな人だなあ。というかなんなのそれ?ドリル?モアイ?
「所で苗木くん、ここは友情を温めることを兼ねて一つ交換でもしないか?」
「うん、構わないよ、じゃあリストだすね」
ボクはポケットから、リストを取り出し石丸クンに見せると、
彼もおなじようにリストを取り出しボクに見せてきた。
この、出たアイテムを交換する、というのも習慣の一つだ。
誰がやり始めたのか、ごく自然にするのが当たり前になっていて、
その際お互いが持ってる品物の"リスト"を出すのも、マナーとなっていた。
そのリストも、だれがもってきたが分からないが書き込みシートとペンがセットになっており
小さく持ち運びに便利なので、皆同じのを使っていた。
ただ、使ってるシートがボールペンでないとうまく書き込めず、
間違えた時いちいち訂正線引かないといけないのは、めんどうなんだけど。

「ふむ、この中からなら、チンチラシートがほしいんだが、どうだい?」
「そうだね、それだと子猫のヘアピンとならいいかな」
そして、品物間のレートはこんな具合に当人同士で調整するので、意外なものが望まれたりする。
みんなこの取引を楽しんでるらしく、ストレス発散も兼ねてるのかもしれない。
石丸クンは、シートの他にも幾つか交換すると、意気揚々と売店を出ていった。

「しっかし、こんなの引いちゃうなんて。どこが超高校級の幸運なんだよ」
と僕は売店で一人になると、先ほどの戦果を恨めしげに見る。
そこには、奇物、変物の数々があった。
「月の石って、明らかに偽物だし。この卒アルなんて誰のだよ」
いくら奇人変人が揃ってるからといって、こんなモノたちを欲しがる人がそうそういるとは思えない。
かといって、壊れてもいないものを捨てるというのは気が引ける。
つまり、本日の僕の戦果は捨てることもできないガラクタの集まりというわけだ。
「はあ、せめてジュースだけでも持って帰ろう」
後で片付けようと、ガラクタたちは放置したまま、
設置されている自販機に近づき、さて、何を飲もうか?
と迷っていると誰かが売店に入ってきたようだ。
確認しようと振り向くと、そこには霧切さんが立っていた。



「あ、霧切さんも今日の探索は終わり?」
「ええ、残念だけど今日も進展はないみたいね」
「やっぱり、シャッターをどうにかしないといけないのかな……」
これまた習慣になった、お互いの探索結果についての情報を交換する。
夕食会でも報告はするのだが、やはり一刻も早く知りたくなるのはみな同じらしい。
「そういえば、今日もメダルは補充されてたみたいだよ」
そんな探索の日々の中でも、最近気になってるのがメダルのことだ。
15人もの人間が、毎日学園内を探索してるのだ。
ならあっという間にメダルもなくなるだろう、と僕たちは思っていた。
けど、なぜかメダルは毎日見つかるのだ。それも以前探したところから見つかるのも珍しくない。
となると、だれかが補充してるとしか思えない。
「……やはり黒幕は、メダルを私たちにあえて提供してるみたいね」
霧切さんもメダルの補充について予想通りだったのか、特に驚かない。
「けど、一体なんのために?」
「あら、分からないの?苗木君。答えはこの部屋にあるというのに」
とここ数日で何回か見たことがある、ドS顔で霧切さんが僕を見る。
正直、この顔の霧切さんは、舞園さんの勘と同じぐらい苦手だ。
僕が困るのを楽しんでるように感じる、というか絶対楽しんでるぞ、この顔は。
けど、この部屋にある?
メダルに関係するものといえば、そこにあるモノモノマシーンぐらいしかないけど。
メダルを僕達に提供するということは、
「……そのマシーンを使わせたいってことだよね」
「その通りよ。そして黒幕が私たちにしてほしいことは何?ここまで言えば分かるわね?」
黒幕がしてほしいこと?
体育館での話が真実なら、僕達15人の中で殺人が起こることが黒幕の狙いだ。

……つまり、誰かに殺してほしい?

考えるだけでも恐ろしい事で、実際そんなこと起きるはずがない!と僕は信じてる。
けど、それとマシーンを使うことが、どう関係あるんだ?
あのマシーンを使って出てくるのは、変な玩具や道具ばかり。
ん?道具?……なぜかその言葉が引っかかる。
そして、一度気づくと点と点が結ばれて、有る絵が思い浮かんでしまう。
「……凶器として、モノモノマシーンから出てきた道具が使われる?」
違っていて欲しいという思いを含めながら、出てきた答えを霧切さんに話す。
「そう、その通りよ苗木君」
しかし、霧切さんはバッサリとその答えを肯定してしまう。
「……もっとも凶器というより、なにかトリックに利用してほしいのでしょうね」
「トリック?」
「ええ、ただ殺してほしいだけならもっと直接的な物をだしてくるわ」
と霧切さんは、マシーンに近寄りその表面を撫でる。
「黒幕としては舞台を盛り上げる小道具のつもりなんでしょうね」
「そ、そんな、じゃあみんながこれを使ってるこの状況も黒幕の狙い通りってこと?」
「…そうね、みんながコレを使う事までは狙い通りでしょうね」
霧切りさんの答えを聞いた途端、目の前のモノモノマシーンが、僕らに殺人を促す悪魔のように見えてくる。
というか、そこまで分かっていて、なんで霧切さんはそれを止めないんだ?
「黒幕の狙い通りになってるって言うなら、早く皆に話さないと!」
とにかく、この事をみんなに話して、こいつを使うことを止めなければ!
「待って苗木君、それには及ばないわ。みんなには話さなくていい。むしろこのままのほうがいいわ」
だというのに、霧切さんは必要ない、といつもの落ち着いた表情で言う。
「な、なにを言ってるんだ霧切さん!このままでいいわけないじゃないか!!」
「そうかしら?このままの方がいろいろと便利よ」
「便利って、なにが?」
霧切さんは何を言いたいんだ?
「…………苗木君、事件が起きた時警察が一番困ることってなんだと思う?」
「え?今はそんな話を」
「いいから、考えてみて……」
有無を言わさない調子で霧切さんが言うので、思わず僕は考えてしまう。
えっと警察が一番困ることだよな、となるとやっぱり…………
「盗んだ犯人が捕まらない?」
「……そうね、大きく言うならそれで正解でしょうね。けどもう少し細かく踏み込んで考えてみて」
細かく?うーんなんだろ。
「犯人がだれか分からないとか?」
「……犯人が分からなければ捕まえることはできないわね、けどどうして分からないの?」
「ど、どうしてって。それは、も、目撃者とかが居ないから?」
「そうね、目撃者がいないのは、犯人を特定するにあたって大変痛手だわ。
けど、目撃者がいない事件が解決されることはよくあるわよね?」
むう、たしかにそうだ。
よくTVとかでみる刑事ドラマとかでは、目撃者がいないのが大多数だ。
けど最後には銃撃戦とかしたり、崖の上とかに行って犯人をつかまえている。
じゃあいったいなんなのだろう、……………………だめだ、思いつかない。
そんな、悩んでる僕の様子を見て霧切さんは
「……初めに"警察"といったのは悪かったかもね。
"捜査"で困る事として考えてみて…‥」
とヒントをくれた。
"警察"でなく"捜査"これがどう違うのか……
さっき思い出したTVドラマの光景を浮かべながら、連想していく。
ドラマとかでは捜査するのは、刑事だよな。
あとは指紋とか採取する人、えっと鑑識だっけそういう人も見るよな。
ん、指紋?そうだ、指紋とか凶器とか
「……証拠がないのが困る?」
「そう、証拠がないのは大変困るわ。じゃあ、その証拠はどうやって得るのかしら。
…………ここまで言えば、分かるわね?」
と本日2回目のドS顔を決めてくる霧切さん。
証拠を得るて、それこそ現場にある物を調べ……あ!

「物がないのが一番困るんだ!」

そうだ、どんな事件も、まずその場に残された物を調べることから始まるんだ。
そこから推理を展開させて、証拠を集めて、犯人を特定し捕まえる。
逆に言えば物がない事件、極端に言えば死体という物が見つからなければ
事件そのものは解決どころか、発覚すらしないんだ。
「……まあ、正解でいいかしらね。事件というものは損傷や紛失など、事件が起きる前に比べてなにかしら変化があるわ。
当たり前よね、だから"事件"なんだし。それを警察や探偵は比較し、更に専用の機器を使って指紋などを検知したり、
大量の人員を使ったローラー作戦で新たな物品を見つけたりする。
そして、それらから得た情報を統合し検討、検証することで捜査は進展していくのだけど……」
僕の答えを聞いて、霧切さんが解説してくれる。
してくれるのだが、……いつもクールなはずの霧切さんの言葉に、なぜか熱を帯びてるように感じる。
なんというか、非常に失礼な気がするが、同人誌を語る時の山田君を連想させる。
そんな僕の気持ちに気づいたんだろうか、霧切さんは
「……コ、コホン少し脱線したわね。
とにかく捜査において一番困ることは、現場において検証する物の情報がないことよ」
と軽く咳払いして、結論を述べてくれた。その顔はなんだか赤みかかってるようにも見えた。


「えっとそれはわかったけど、それがさっきの話と、どうつながるの?」
「……あら、わからないの苗木君?」
と本日3度目のドS(以下略
「……黒幕は、私たちにこのマシーンから出るアイテムを使って殺人という事件を起こしてほしい。
けど、それは私たちにとっては犯人を特定する手かがりにもなるわ」
「手かがりって?」
「ここから出るものは皆独特のもので使われる用途が、そう広い物ばかりじゃない。
となると、どれが使われたかの特定も容易。そしてそれを持ってる人間も私達はすぐに特定できる」
「特定できるって、霧切さんは自信満々に言うけど、いったいどうして?」
「……あら、忘れたの苗木君。私達はどうやって交換しているのかを」
どうやってて、それはリストを見せ合って
「あ!リストか!!」
そうだ、僕達は常日頃から"自分が持っているアイテムのリスト"を見せ合っている。
つまり、だれが何を持っているか知れるんだ。
「もちろん15人全員のリストを覚えてる人は少ないでしょうね。けどリストを見せて、と言えばそれだけで済む」
「けど消されたりしてたら」
「その点は大丈夫でしょう。アレはボールペンでないと書けない。どんなに綺麗に消してもあとは残るわ」
「そ、そもそもリストに書いてなかったら?」
「……そしたらモノクマメダルの数が合わなくなるわ。私達はリストのほかにメダルの数も把握できている」
そうか、僕らはメダルを公平に再分配している。
だから誰が何枚持ってるかも分かる。
そして残ったメダルの数から、いくつ交換したかも把握できる。
「もちろん、いろいろ細工は出来るわ。けどね、本人が持ってることを隠しても周りの人間が
リストとメダルから持ってないことを証明すればおのずと粗が浮かび上がる。
そもそもこれだけで犯人が見つからなくてもいいのよ、あくまで手かがり。
15人……いえ事件が起きたなら14人の中からある程度候補を絞る材料には十分」
「そ、それって、事件が起きてもいいって言うの?」
「……………………」
霧切さんは答えない。
しかし先刻の発言からすると、霧切さんは事件が起きるのは構わないと思ってる。
むしろ、起きたあと犯人を追い詰めるのに丁度いいからこのままマシーンを使わせよう、
と言ってるように感じた。
「だ、だめだよそんな考えは!殺人なんて起きちゃだめなんだ!!絶対に防がないと」
「けど、防げなかったら?さっきも言ったとおり捜査において検証するための情報はいくらでも欲しいわ。
もし起こってしまった時、このマシーンのアイテムから多くの情報を得ることができる。
みんなに教えることで、それを潰して捜査を難航させるの?」
興奮する僕とは対照的に霧切さんは冷静に言葉を返してくる。
起こってしまうかもしれないことへの備え、たしかに正しいのかも知れない。
けど、やっぱり納得できない!
「で、でも、もし事件が起きたとしても、そのことは犯人だって予想するかもしれない!
それで情報を残さないために初めから、アイテムを使わない方法を取るかも知れない!!
だとしたら、きちんと皆に説明して、モノモノマシーンを使わせないようにするのと同じじゃ…………アレ?」
可笑しいぞ? 説明してもしなくても結局、殺人にモノモノマシーンのアイテムは使われないんじゃ。
霧切さんが微笑んで……あ!そういうことか!!
「……やっと気づいたみたいね苗木君。そう"このまま"でいいのよ」


「黒幕の考えを教えようが、教えなくてもアイテムは使われないんだね」
「……その通りよ。殺人なんてものを行う人間はみな臆病よ。だからこそ多くの可能性を考える。
とすると、私が挙げたことなんてみな考えつくでしょうね。だから却って使えない」
そう言いながら、霧切さんは再びモノモノマシーンの頭をなでる。
「……今の状況は逆にいいのよ。みんな凶器になりかねないものと意識しないで、相互監視ができてる。
これが逆に意識しだすとバランスが崩れて、それこそいろいろ細工されて結果、殺人に使われる可能性が高くなる」
皮肉な話だ。武器になりかねないから気をつけて、と注意することこそが武器になると気付かせてしまうなんて。
「け、けどそれじゃ霧切さんのいうようにアイテムの情報がなくて、捜査が難しくなるんじゃ?」
「……あら、先刻まで起きる前提の話は嫌いだったんじゃないの、苗木君」
あ、そうだ何を言ってるんだ僕は。先刻まで殺人なんて起きないと信じてたのに。
「イジワルしたわね。……どうしてかしら苗木君を見るとつい、ね。
あなた、実は超高校級のいじめられっ子とかだったりしない?」
「な、そんなわけ……」
やばい、心当たりがありすぎる。
「……もう少し苛めたいけど、それはまた今度にするわ。
で、質問の答えだけど、実際問題使われると、いろいろ厄介なことにはなるのよ。
先刻は特定が楽だとは言ったけど、アイテムを使われると方法に幅が出てしまう。
現状の私たちは物資が制限されて、やれることも限りあるわ。
けど、その制限がなくなるとこの学園に居るのは超高校級の人間ばかり。
何が起こるか、予測がつかないわ。それこそ事件の捜……」
とそこまで言ってた霧切さんは、僕を見て
「事件を"防ぐ"のはとても難しくなる」
と言い直してくれた。
「だから極力使われるような状況は避けたいということ。苗木君もこの事は、意識しないでね」
「う、うんわかったよ」
なんとも重大なことを知ってしまったもんである。うう、意識するなと言われると却ってしてしまう方なんだよなあ。
「けど、先刻は『このままの方がいろいろと便利よ』なんて言い方しなくても良かったんじゃない?
おかげで、霧切さんの事を誤解しそうに」
「……あら、そのことは本当にそう思ってるだけよ。
使わせない抑止としても、万が一だれかがアイテムを使ったさいの保険としても、このままのほうが便利よ」
「けど、言葉はもう少し選ばないと誤解を招くよ」
「……別に構わないわ」
と、霧切さんは淡白に答える。けれど、それは少し強がってるようにも感じた。
「……もうこんな時間ね、そろそろ食堂に行きましょう」
これで話は終わり、という風に会話を打ち切り、霧切さんは売店の出口に向かう。
「あ、霧切さん……」
かけるべき言葉が見つからず、それを見送ってしまう。
いつも冷静で、黒幕の思惑を知っても、今の状況を的確に分析して対抗してくれている。
そんな彼女に対して、自分みたいな取り柄のない人間がどんな言葉をかけられるのか。
なにを言っても、彼女に届かない気がしてしまった。


沈んだ気持ちで近くの時計を見ると、たしかに食堂に集まる時間だった。
「……しょうがない、僕も外に出よう」
と、出しっぱなしだったガラクタたちを仕舞おうと
腰をかがめた時、自分の交換用リストが目に入る。
先刻石丸くんとの交換した時、出しっぱなしであったらしい。
「すっかり忘れてた……」
そう言いながらリストが書かれたシートを手に取った時、
一つの考えが浮かんだ。
そう、閃きと言っていい。

余りにも出来過ぎたアイテムの交換とリストを書く慣習。
そもそも、"誰"が交換なんてことを広め、しかもリストに書くなんてことまで提案したのか。
第一、リストを書くためのシート自体"誰"がもってきたものなのか……それが瞬く間に繋がった。

顔を上げると、今まさに売店の出口から出ていこうとする霧切さんの後ろ姿が目に入った。
そしたら、思わず大きな声で
「今度!霧切さんと交換したいんだけどいいかな!?」
と霧切さんに提案していた
声の大きさになのか、それとも提案になのか、はたまたその両方に驚いたのか、ふり向いたまま固まる霧切さん。
自分でも、びっくりしている。いままで霧切さんと交換したことなんてなかったし。
けど、どうしても霧切さんとしたかったのだ。
「……なんで私と?」
硬直から回復したのか、理由を聞いてくる霧切さん。
り、理由!?え、えーと
「い、意識せずに、て事なら交換もしないといけないし。
けどいきなりこの事を知らない人とやると意識しちゃうし。
その、ボクを助けると思って、お願い!霧切さん!!」
勢い良く、理由をでっち上げながらしゃべる。
どもってるし、我ながらもうちょい何とかならなかったのか、て思う。
現に霧切さんなら、嘘だと気づいてただろう。
でも、霧切さんは少し顔を赤らめると

「……………………それじゃ仕方ないわね」

と、答えてくれた。
その返事に嬉しくなり、ボクは頭の中で
霧切さんが喜びそうなものを持っていたかな?
と、考え始める。
約束したからにはなんとか喜ばせる物を見せてあげたい。
そう、これはボクと霧切さんが、初めて交わした約束なのだから。


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