大人ナエギリ4月~9月

 卯月は花見


苗「四月と言えば、やっぱりお花見だよね」チビッ

霧「あら、良いもの飲んでるじゃない」
苗「霧切さん、お酒好きだっけ?」
霧「愚問ね。むしろ、酒に愛されていると言っても過言ではないわ」
苗「はは…」

霧「…ねえ、一杯いただけないかしら?」
苗「え? うーん…あげたいのは山々なんだけど、もう残り一杯しかないんだ」
霧「もちろん、タダとは言わないわ」
苗「…じゃ、じゃあ…一杯百円」
霧「ありがとう。…ところで苗木君。さっき露店で、焼き鳥を買ってきたのよ」
苗「あ、いいなぁ。きっとこのお酒に合うよ」
霧「私も鬼じゃないわ。一本百円で、どうかしら」
苗「奇遇だなぁ、今たまたま百円手元にあるんだ」
霧「丁度いいわね、これでお互いに手を打ちましょう」

苗「あはは…なんか、これと似たような落語あったよね」
霧「あの題名も『花見酒』と言ったわね…あら、これ美味しいわ」グビッ



 皐月は端午


霧「あれを見て、苗木君」
苗「どれ?…あ、鯉幟だ。そう言えば、今日は五月五日だったね」
霧「苗木君も子どもの頃は、ああやって祝ってもらったのかしら?」
苗「え? あ、まあ…うん」
霧「…そう」

霧「端午の節句というのは、男の子が立派な大人になることを願うものらしいわね」
苗「はは…両親の期待に添えたかどうかはわからないけど、一応はお酒の飲める年齢になったよ」

霧「あら、大丈夫よ。ちゃんと素敵な男の子に育ったじゃない」
苗「え?……あ、…ほ、褒めても何も出ないからね」

霧「あら、肴をサービスするくらいの心遣いは見せてほしいわ」
苗「…やっぱり、そっち目当てか」
霧「鯉幟を見ていたら、柏餅が食べたくなったわ。苗木君、買っておきなさい」
苗「お酒に柏餅…?」
霧「あら、甘いものもいいのよ。お勧めの日本酒、うちから持っていくわね」



 水無月は梅雨


苗「うへぇ…ベタベタする…」

霧「この不快感も、慣れれば良い酒の肴になるのよ」
苗「…霧切さんは、平気そうだね」
霧「そんなことないわ。服の下はグショグショだし」
苗「……」

霧「…何か邪な視線を感じるのだけど、あなた変な想像してない?」
苗「し、してない! あ、そうだ…さっきイワシの梅煮作ったんだけど、きっと湿気よりいい肴になるよ」
霧「…誤魔化されている感が否めないけれど、それで手打ちにしてあげるわ」

霧「…あ、美味しい。梅酒も入っているのね」
苗「霧切さん、お酒好きだからさ。気に入るかなと思って」
霧「……私のために作ってくれたというのなら、美味しさもひとしおね」

霧「ところで、あなたの分が無いようだけど」
苗「あ、僕は作ってる時に食べたから」

苗(霧切さんが美味しそうに食べてくれる姿で、十分お酒の肴になるしね)



 文月は七夕


霧「わざわざ外に呼び出して…来てみたはいいけど、何があるというの?」
苗「町内会で、大きな笹を用意して短冊を配ってるんだ。一緒に行かない?」
霧「…何かと思えば、子供だましな、」
苗「日本酒によく合うきゅうりのピリ辛漬けを、帰りに買ってこようと思うんですが」

霧「…はぁ。お酒で釣られるなんて、私も甘くなったものね」
苗「大人になったってことだよ。ホラ、行こう」

苗「ホラ、上見て霧切さん」
霧「……ええ、綺麗な天の川ね。晴れて良かった」
苗「曇ったら、織姫と彦星が会えないからね」
霧「あなたって、意外とロマンチストね」
苗「そういう霧切さんこそ、短冊に随分熱心に書いてたけど」
霧「……冷えてきたわ。早く帰りましょう」

苗「…それに曇ったら、こうして霧切さんを誘うことも出来なかったし」
霧「…あなたが来なければ、私が行っていたから大丈夫よ」
苗「それは肴を漁りに、でしょ」
霧「よくわかったわね。ご褒美に、今晩は私が酌をしてあげるわ」



 葉月は夏祭り


山「か、買ってきましたぞー! あー疲れた…」
大「オラ、たこ焼きと、コレ焼きそば、そっちが焼き鳥…ったく、なんで俺らがこんなこと…」
朝「買い出しは男子の仕事って決まってるでしょー」
セ「餃子はありませんの?」
葉「出店にねぇべ、そんなもん!」
舞「あ、もうすぐ花火始まりますよ」
桑「ちょ、ビール取ってくれ!」

 ヒュルルルル ドーン・・・

霧「花火より、周りの方が騒がしいわ」
苗「あははは…たまには、こういうのもいいじゃない。みんなで飲んだ方が楽しいよ」
霧「……まあ、そうね。この喧騒も、風流の一つと言えるのかしら」
苗「あの学校にいた頃は、こうしてみんなで飲めるなんて思わなかったなぁ」

苗「いつもみたいに二人で飲んでるのもいいけど、こうして大勢で飲むのも、ね」
霧「…私は、あなたと二人きりの方が」

ヒュルルルルル ドーン・・・

苗「え?何?」
霧「…たーまやー」



 長月は月見


苗「お邪魔しまーす…」

霧「いらっしゃい。うちで飲むのは、かなり久しぶりね」
苗「や、そんなに気軽に女の子の家には上がれないです…」
霧「ベランダから、良い月が見られるのよ」
苗「…まだ夕方なんだけど」
霧「大丈夫よ。七輪と秋刀魚、茄子、キノコを用意したわ。食べるうちに夜になるでしょ」
苗「わ、秋の味覚だ! 奮発したね、霧切さん」

霧「……」
苗「……」
霧「焼いてちょうだい」
苗「だよね…」

苗「もう、自分で作れないからって僕を呼ぶんだもんなぁ」
霧「あら、自分でも作れるわ。ただ、あなたが作った方が美味しいのよ」
苗「はいはい」
霧(あなたが作ってる姿も、良い肴になるし)
苗「え?何か言った…って、なんでもう飲んでるの!?」
霧「人が頑張っている姿を見ながら飲む酒も、なかなか乙なものね」


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