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―――――

所持品のPDAから指定した回線にアクセスする。
一分も待たずして、手のひらサイズの小さなモニターには知人の姿が映し出された。

『どうしたんだ、こんな時間に?』
「あ、ごめん。そっちの時間では夜だったね、起こしちゃった?」
『いや。俺も明日のクリスマスパーティーの準備で忙しくてな。……それで、いったいどうしたんだ?』
「実は僕もそのクリスマスパーティーに混ぜてもらえないかな……って相談なんだ」
『えっ?』
「アルターエゴのアップデートを頼まれてね。今からジャバウォック島に向かうところ」
『そういうことか。別に構わないぞ』
「ありがとう。これから船が出航するから明日の朝には着くよ」
『そうか。ところでだ、苗木……』
「? どうしたの日向君?」
『いやな、いつもならメールで済ませるような話をわざわざ直接連絡してきたんだ。そっちで何かあったのか?』
「へ? そんなことないよ?」
『どことなくお前の顔が浮かないと思ったが気のせいだったようだな、すまない』
「いいよ。それじゃ、またあとで」
『あぁ、またな』


さすが超高校級のパンツハンター、――じゃなくて相談窓口の日向君。
僕が無意識に出していた行動や表情から何かあったと察していたとは。
まだまだ自分がバカ正直で隠し事ができないようだ。
これも霧切さんが言っていた子供らしい部分なのだろう。


汽笛の合図と共に船が出航する。
クリスマスを返上して空路、陸路を乗り継いで明日の朝には目的地のジャバウォック島に着く。
そこからアルターエゴのアップデートを含めたメンテナンスもあるから帰るのは年末になりそうだ。

「まぁ、あんなに殺伐とした職場にいるよりは気持ちは楽かもね……」

手摺りに体を預けながら夜の海を眺める。
もちろん、暗い海を覗いたところで魚が見えるわけもなかった。

仕方がないのでスーツの上着に入れていたものをゴソゴソと取り出す。
何気なく売店で見かけて試しに買ったタバコ――。
フィルムを開封し一本取り出して口に咥えてみる。

一説によると男性がタバコを吸う背景には女性の乳房が恋しいからという雑学を聞いたことがある。
これを吸ったら僕も葉隠君と同じ穴のムジナなんだな――なんて自嘲しながらライターを探る。
ん、胸ポケットにないぞ? 左のポケットか? はたまたズボンのポケットに入れたっけ?


「あなたの探し物ってこれかしら?」
「そうそう、これこれ…………えっ?」

後ろから声をかけられ振り返ると目の前にライターが差し出されていた。
そしてそれを受け取った視界には僕の知っている人がいて絶句してしまった。

「ついでにこれは没収よ」

口に咥えていたタバコを取り上げられてしまう。

「……思ったより元気がなさそうね」

今朝、エレベーターですれ違った同僚が何故目の前にいるのか僕にはチンプンカンプンだった。


「えっ、どうして? なんでここにいるの? ……っていうか何でライター持っているのさ?」
「一度に何度も質問されても答えにくいじゃない。それとあなたも落ち着いて」
「ごめん……」

気分を落ち着かせようともう一本タバコを取り出し、口に咥えたところでやっぱり霧切さんにタバコを没収される。

「……何するのさ」
「そんな大人びた真似事しても苗木君には似合わないわ」
「大人びたって……。僕はお子様だって言いたいがためにわざわざここまで来たの?」

気分は落ち着くどころか沸々と怒りが湧き上がってくる。
キッと睨み付けたところで霧切さんは意に介さず、僕を残念なものを見るような目で見つめている。
それが尚更癪に障ってしまう。

「その目、僕が反抗的な態度で生意気だって言いたそうだね? そっちだって気に食わないことがあると子供みたいに拗ねちゃうクセにさ」

こうやって面と向かって話ができるチャンスだというのに、マシンガンを撃ちだすように憎まれ口を叩いてばかりだった。

「わざわざ僕みたいなチビッ子を相手するんじゃなくて、あのホストとよろしくやってれば」

いいのに、という二の句を告げようとしたところで頬を張られた。
力で屈服させるようなことなんて一度もなかっただけに痛みを忘れて呆然とする。

「あなたの口からそんな悲しい言葉は聞きたくなかったわ」
「…………ごめん」

彼女の悲しい表情に耐え切れなくなり先に目を逸らす。
今更になって張られた頬が痛みを訴えてきてヒリヒリする。

「まず私がここまで来た理由を教えるわ。これ、忘れ物よ」
「えっ、これは……!」

手渡された物を受け取ってみてビックリする。

「これってアルターエゴのデータチップ? なんで霧切さんが!?」
「今朝あなたとすれ違った時に落としたんでしょう。エレベーターの床に落ちていたわ」
「そうだったのか……」

手荷物検査で封筒を確認したけど、中味までは確認しなかったから危なかった――。
そんな肝が冷える気分になったことで幾分か落ち着いた。
それと同時に沸きあがる一つの疑問。

「だったらさ、どうして呼び止めなかったの? 電話なり何なりで僕を途中で足止めさせればここまで来る必要もなかったのに」
「私も個人的な理由でジャバウォック島に訪れる理由があったからここまで来たの。十神君に仕事を押し付けてまで」
「……そうなんだ。仕事熱心なんだね、霧切さんは」
「苗木君……。あなた、ここまで言ってもまだわからないの?」
「それは……」

わからないよ、霧切さんのようにそこまで頭は良くないから――。
そんな言葉を言おうと彼女の顔を見ると今朝方見た寂しそうな瞳と目が合った。
まさかとは思うけど、霧切さんは――。

「僕と話がしたかった……なんて思っていいの?」
「正確にはあなたと今後のことを含めた話をするためよ」

"今後"というキーワード。
何だか別れ話を切り出すような口ぶりで緊張が走る。
普通に恋愛をして、普通にケンカして、普通に別れる――。
僕を"超高校級の絶望"を打ち破った希望の象徴とか言う人もいるけれど何のことはない、根本的には何の変哲もない普通の人なのだ。


「……そっか。そうだよね、しっかり線引きしておかないと仕事に悪影響及ぼしちゃうし」
「苗木君、あなた何を言っているの……?」
「いっそのこと僕の方から転属願いを出した方がいいかな? 僕ってやっぱ引きずりやすいタイプだし顔に出やすいから「苗木君」……霧切さんから要望あれば先に言ってね?」 
「ちょっと、勝手に結論付けないでちょうだい」
「えっ?」
「私の意見を碌に聞かず自分一人で結論付けてばかりだと的外れな見解になりやすいわ」
「……うん、まぁ、そうだよね」
「そもそも、お互いが距離を置くようになったきっかけは何だったのか? 苗木君は本当にわかっているの?」
「そりゃあ僕がチビでかわいいっていわれるくらい子供っぽいところが「そこよ」……はい?」
「その着眼点から間違っていたせいで私達に溝が生じたのね……。距離を置いて冷静に考えることが逆効果だったようね」
「えっ、えっ?」

霧切さんは一人納得しているようで、僕は置いてけぼりを食らっている感じだ。
僕と目が合うと人差し指をピンと立ててくる。

「第一問。私は花村君の弟に言い寄られた時にどんな対応をしたかしら?」
「それは……」

あの当時のことを思い出す――。

「……そっけない感じ?」
「正解、相手をするつもりはなかった。続けて二問目よ、あの時に苗木君が暴れたところで結果的にどうなるかしら?」
「……処分は免れない」
「その通りよ。言ったところで留まってくれる可能性は低いから少々手荒な方法で阻止したの。この場を借りて謝るわ、ごめんなさい……」

確かに正面玄関であれだけ騒ぎ暴行なんてすれば目撃証言は多数、処分は免れない話だ。
今になってようやく霧切さんが僕を止めた真意に気づく辺り、僕も相当視野が狭くなっていたわけだ。
霧切さんに謝罪されるのが返って申し訳なく感じる。

「いいよ。何だか僕が独り相撲を取っていたみたいで恥ずかしいし。僕も彼氏面したかっただけなんだと今になってわかったくらいだし」
「……そう。それじゃあ最後の問題よ。それを踏まえて私が苗木君に望んでいるものは一体何でしょう?」
「霧切さんが、僕に望んでいるもの……?」

彼氏ではないのは確かだ。
もっとこう、深い絆で繋がっていたいような関係――。


「……あ」
「やっと気づいたようね」

思い当たる単語が脳裏をよぎると霧切さんがフワリと微笑む。
僕が言おうとする回答を表情から読み取ったのだろう。
それが正解だと肯定するような久しぶりに見る彼女の笑顔。

「一応確認するけど、あなたの答えは何かしら?」
「…………家族」
「フフッ、よくできました」

そういって嬉しそうに僕の頭を撫でてくる。
母が子に、姉が弟の成長を喜ぶような慈愛を込めた愛撫。
ちょっと前までの僕だったらその手を振り払っていただろうが、甘んじて受ける。
そのまま彼女の右肩に額を預けるように抱き寄せる。
腰に腕を回してしまったけど振り払われることはなかった。

「どうしたの? 何時になく甘えん坊ね」
「……こうして霧切さんを再び抱きしめることが出来て感無量なんだ」
「大袈裟ね」
「この数日、一人で眠るのが寂しくて仕方なかった。ケンカする前に一人で眠ることはあっても、そんなことは全然思わなかったのに……」

不思議な話だよね――。なんて呟いていたら彼女も僕の首に腕を回して抱きついてくる。

「それはきっと……気づいていたのよ。たとえ離れていても心はきちんと繋がっているって」
「そっか……。うん、そうだよね」
「それと、あなただけが寂しい思いをしたわけじゃないんだから……」
「霧切さんもなの?」
「あなたのためを思って決断したけれど……後一歩判断を間違えれば手遅れになっていたかもしれないわ」
「……ごめん。彼氏とかパートナーにこだわり過ぎて大切なことを見失っていたんだね、僕は」

安心した途端ぐぅ~、と鳴り響く僕のお腹。
二人して苦笑してしまう。

「船室で休みましょう、食事も兼ねて」
「僕としてはもう少しこのままでいたいんだけどな……」
「空腹だと船酔いしやすいわ。今は我慢して」
「ん、わかった」

名残惜しいけど霧切さんの体から離れる。
でも"今は"という言質を取った以上、食事が終わればまた抱きしめていいという淡い期待が湧く。


―――――


「それって……」
「これ? 手ぶらでいくのも心許ないからお土産を用意したのよ」

ビジネスバッグの隣に手提げタイプの保冷バッグが置かれていた。
一緒に中を覗いてみるとホールケーキの箱、その上に1パック2切れのショートケーキが入っていた。
蓋を開けケーキの側面に包まれたフィルムを剥がし、その蓋を逆さにして即席のゴミ箱にする。
さぁ、食べよう――。と思いきや、霧切さんはケーキに一本の蝋燭を挿して照明を消してくる。

「苗木君、さっきのライターあるでしょう?」
「うん」
「火をつけてもらえるかしら?」

左ポケットに入れていたライターを取り出し点火する。
そのまま蝋燭に火を移すと、その明かりを頼りに霧切さんが近くに寄ってきた。

「それじゃあ"せーの"の合図で消しましょう」
「オッケー」
「せーの……」

その合図と共に蝋燭に息を吹きかけて火を消す。


「メリークリスマス、霧切さん」
「えぇ、メリークリスマス」


真っ暗な室内で二人してクスクスと笑う。
霧切さんが立ち上がろうとしたのでやんわりと静止させる。
手持ちのPDAにある画面の照明をライト代わりに僕が室内の照明を点灯する。
蛍光灯の光で少々目が眩む中、霧切さんは鼻歌交じりに蝋燭を外してフォークを取り出した。
ケーキの先端部分に切れ目を入れ、軽く突き刺したら僕の方に向けてくる。

「ほら、口を開けて……」
「あ、いや、いいよ。自分で食べれるし」
「生憎だけどフォークはこれ一つだけなの。無駄な抵抗はやめなさい」
「ん、わかったよ……」

観念して口を開けたまま待ち構える。
ほどなくして一口サイズのケーキが僕の口の中に収まった。

しっとりしたスポンジ生地と生クリーム。
口の中で広がる甘みにどこか癒される。

「苺も食べるでしょう?」
「うん。けれど最後に食べたいな」
「最後に?」
「なんだか苺って贅沢なモノってイメージがあってさ……」
「そう……」
「そういえば妹は先に苺を食べる派だったなぁ」

最後の苺を巡ってよくケンカしていたっけ――。
そんな思い出に浸りながら食べ続け、苺も口に運ばれる。
口に広がる酸味が甘味で占拠された舌には新鮮に感じるものだ。

「……ふぅ、ごちそうさま」
「待って。クリームが付いているわ」

そういうと霧切さんは取り出したハンカチで僕の口元を軽く拭う。

「ん、ありがとう。それじゃ、今度は僕の番だね」

霧切さんの手からフォークを奪い、僕が食べさせることにする。



使い捨てのプラスチックフォークでケーキの先端部分を一口サイズに切り、そのまま刺す。

「はい、あーんして」
「あーん……」

念のためケーキが零れ落ちないよう左手を添えて、フォークを彼女の口へ伸ばす。
んくっ、という口に含みモグモグとケーキを味わう姿を見ると自然と顔が綻んでいく。

「苺も欲しいわ」
「オッケー」
「生クリームと絡めてくれる?」
「はいはい」
「"はい"は一回にしなさい」
「……はい、どうぞ」

そんな軽口を叩きながら半分にスライスされた苺をクリームの多い部分に絡める。
甘味と酸味のハーモニーが奏でるそれを口に運ばせると、右手を頬に添えてご満悦の表情を浮かべる。
最後はクリームの多い後ろの部分を三等分にして食べさせた。


「クリーム付いてるよ」
「あら、ごめんなさい……」

食べ終わった後に霧切さんの口元を見ると、クリームが残っていた。
普段見ることのない子供っぽい顔だと思いながら人差し指で残ったクリームを掬う。
拭うのも面倒なので自分の口に含ませる。
含ませてから彼女がじっとこちらを見ていることに気づく。

「……美味しい?」
「えぇ、まぁ、美味しいです……」

つい頬がカァッ――と赤くなるような気恥ずかしさ。


そんな中、割り込むように鳴り響く呼び出し音。
僕のPDAかと思い取り出してみると反応がない。
もしや、と霧切さんの方を見ると眉間に皺を寄せて自分のPDAを睨んでいる。
"出ないの?"と問いかけると渋々ながら受信してモニターを覗いてみると十神君の姿が映し出された。


「……取り込み中よ」
『まだ事には及んでいないだろ。"上"から見ているぞ』
「上……。衛星から覗き見とは悪趣味ね」
『探偵だった人間がどの口でほざく』

窓の外へと視線を移し、忌々しそうに舌打ちをする姿がちょっと怖い。

「それで、いったい何の用かしら? 手短にしてほしいわ」
『目的を済ませたら直帰してもいいと連絡を入れただけだ」
「えっ、それ本当なの十神君?」
『ただし……。お前ら、年明けは休めないと思え。二人分の仕事を俺に押し付けたんだ、相応の酬いを受けてもらうぞ』
「別に構わないわ」
「年明けは腐川さんとゆっくり過ごしなよ」
『フン、余計なお世話だ。今の内にせいぜい余暇を謳歌することだな』

言いたいことだけを言って早々と通信を切る十神君だった。

「その、今日はもう……休もうか?」
「そうしましょう。明日が忙しくなりそうだし」

上着をハンガーに掛け、ネクタイを緩める。
靴を脱ぎ簡易ベッドの上で横になる。
間髪置かず霧切さんが僕の隣に入り込み場所が狭くなる。

二段ベッドなんだから上のベッドを使いなよ、なんて野暮なことは言わない。
左腕を差し出すと僕の腕を枕代わりにして頭を預けてくる。
彼女が肩口までブランケットを引き寄せれば就寝準備完了となった。



「おやすみ、響子さん」
「おやすみなさい、誠君」


久しぶりに苗字ではなく名前で呼ぶと彼女も嬉しそうに挨拶してくれた。
軽く唇を啄ばむと安らぐように目を閉じて眠りに付く。

船の揺れ。
波の音。
それに混じって感じる彼女の温もり。
最初は冷たいと思う体温も、気づけば芯の中からポカポカと温めてくれるような温もり。
これを失わずにすむなんて僕はなんて幸せ者なんだろう――。


―――――


ジャバウォック島での仕事、日向君達とのクリスマスパーティー、そして移動。
クタクタになりながらも僕の住むマンションまで無事に帰ってくることが出来たのであった。

「あ、ちょっと待ってて」
「……どうしたの?」
「いいからいいから」

鍵を開け先に中に入る。
ドアを閉めたら三和土(たたき)の所で振り返る。
こちらからドアを開け――

「おかえりなさい」

改めて挨拶をする。
最初はキョトンとしていた響子さんもフワリと微笑み、すぐにその意図に気づく。

「ただいま」

両腕を広げた僕の胸に飛び込み、首に腕を回して抱きついてきた。


帰ってきたんだ、僕らは――。
失ったと思った日常から。
彼女の温もりから。

喜びから零れる涙も厭わず僕も抱きしめ返し、頬擦りした。

「後はふかふかのベッドで君を抱きたいな」
「……バカ」

か細い声で彼女は言った。
恥ずかしさが半分、もう半分は嬉しさを滲ませながら。





―――――

ぐっすり眠っていた矢先のこと、突如鳴り響く呼び出し音。

「……ん?」

寝ぼけ眼で音の出所を探っていると僕の携帯電話からだった。
腕を伸ばして着信して耳にあてる。

「……もしもしぃ?」
『なんだこれ? 画面が真っ暗じゃねぇか』
『おっかしいなぁ。時差を考えたら向こうは昼間の筈なんだが……』

よく見ると僕の手にしていたのは仕事用のPDAで、モニター通信だった。
耳から離して天井を見上げるようにPDAを持ち上げて画面越しに会話をする。

「ごめんごめん。九頭龍君に左右田君……どうしたの、こんな時間に?」
『年忘れ大忘年会の盛り上がりを少しだけでも味わって……って、おいっ!』
『なっ……! 苗木、テメェ……!?』
「ん? どうしたの二人とも?」

モニター越しの二人は石のように固まっている。
一体どうしたんだろうと寝惚けた頭で推理していると九頭龍君がプルプルと震えだした。


『こ、このド腐れ不健全ヤローがぁ!!』


耳にキーンと響く叫びだった。

「……ちょっと何よ。五月蝿いわね」

モゾリと動く隣の影。
僕の腕枕で眠っていた響子さんも起床したことでようやく事態が把握できた。

きっと彼らのモニターには僕と響子さんが同衾している姿を映し出しているんだろうなぁ。
せっかくパーティーの賑わいをライブ中継してくれた計らいが僕の失態でとんでもないことになってしまった。

『テメェら……今度俺の目の前でイチャついてみろ、半殺しじゃ済まねぇぞオラァァァ!!』
『あぶあぶあぶあぶあぶ……!』

激怒する九頭龍君と白目を剥いて泡を吹く左右田君の画面がブツリと途切れる。
僕らは通信の途絶えたPDAを呆然と見ていた。 
向こうの通信設備、壊されてないといいけどなぁ――なんて考えていると響子さんが僕に抱きついてくる。

「ちょっと、響子さん? そんなにくっついたら起きられないんだけど……」
「暖房が効いてくるまでの辛抱じゃない。気にしたら負けよ」
「明日から仕事なんだし、大掃除する機会は今日ぐらいしかないんだけどな……」


そうやってゴロゴロと睦み合うのも僕らの日常だった――。
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