kk12_960

ある日の放課後

『ギイイィィィヤアアアアアァァァ!!!!!』
叫び声とともにTV画面がのほとんどが赤色の何かで埋め尽くされる。
眼を背けたくなる光景だが我慢する。正直一人で見てたらDVDの再生を停止してたかもしれない。
だけど隣にいる人物の存在がリモコンに手を伸ばそうとする感情をギリギリで踏みとどまらせる。
超高校級の探偵、霧切響子。
いつの頃からか彼女が暇な時、こうして放課後一緒に映画のを見る事が多くなっていた。
きっかけは他愛ない会話のその時やってた映画の内容について盛り上がったからかもしれない。
本日のジャンルはスプラッタホラー、正直画面が赤いのは苦手だ。血の色が違う色だったら平気なのに……。
などと考えながらなるべく画面を注視しないようにしながら(それでも過激なシーンでは反応してしまった)鑑賞が終わった。
「リアルな表現が売りらしいけどイマイチだったかしら?
私としてはもう少しストーリーの方に力も入れて欲しかった……なんていうのはこのジャンルにはお門違いかしらね?」
普段物静かな彼女だが映画の話になると多少饒舌になるようで心なしか声が弾んでいる。
普段ならそれが嬉しくもあるのだけれど今の僕にはそれに反応する余裕はなかった。
「……そうだね、まあ僕としてはスプラッタ描写が過激すぎてストーリーを追えなかったからトリックにはすっかり騙されたけど。」
「なるほど、そういう目の逸らせ方もあるのね」などと一人で頷いている。こういうのも職業病なんだろうか?
「それにしても、出ている俳優さんが結構豪華なのに聞いたことがないタイトルだったね。日本じゃまだやってないやつだったの?」
彼女がわざわざ持ち込んだデッキと映像に字幕もなかったので多分海外で発売された奴なんだろう。
トリックに騙されたのは会話がよく聞き取れなかったからもあるけどそれは黙っておこう。
「そもそも日本じゃ上映許可が降りないんじゃないかしら?スプラッタ描写が過激すぎて多分ソフト化もこちらじゃ無理ね。
向こうでの宣伝文句としてのNR(NotRated)ではなく正真正銘の無審査のやつだから」
「あー、やっぱりそうなんだ・・・。過激すぎて少し気持ち悪くなっちゃったよ、暫く肉料理は無理かもハハハッ」
それを聞いて安心して白状する。まあ彼女の観察眼なら隠しててもばれてるだろうし。
「・・・・・・!」
あれ、不味いこと言ったかな?
「……そう、じゃあ私はまとめなくちゃいけない書類もあるからこれで失礼するわ。」
「えっ、夕食は食べていかないの?」
普段はそうするのに……
「書類をまとめながら軽くすませるから、それじゃあね。」
そう言うとさっさと荷物をまとめてしまい止める暇もなく部屋を出ていってしまった。
「・・・はあっ、明らかに不機嫌になってたな。この程度のスプラッタで気持ち悪くなったとか言ったから情けない男とでも思われちゃったかな?」
彼女は探偵だ。それも警察から協力を求められるほど優秀な超高校級の探偵、あまり話してはもらえないけどきっと殺人現場とかにも
何度も出くわしているのだろう。本物の死体を見慣れていればあんなまがい物のスプラッタなどどうとでもないのかもしれない。
「彼女に見合う男になるなら強くならなきゃな。」
急に寂しくなった部屋で一人ごちた。
ー希望ヶ峰寮廊下ー

彼の部屋を足早に退室したが少し後悔していたがしかし、その場に留まっている訳にもいかなかった。
彼が、ああいう過激描写が苦手なのは前から知っていたし、その反応を見るのが少し楽しかったのも事実。
今回とっておきのスプラッタ映画をチョイスしたのもそれが見たかったからだ。
思惑通り素直な彼らしい反応が見れたのはよかったが、彼はこの袋に気づいていただろうか。
持っているスーパーの袋を恨めしそうに見る。どうして私は見終わった後振る舞おうと思っていた夕食の献立を肉料理にしてしまったのだろう。
わかっている、久しぶりに彼と過ごせるので私は浮かれていたのだろう。
それにしてもちぐはぐ過ぎた。自分だってスプラッタはそんなに得意ではないしその後お肉を食べたいとは思わないのに
彼の好きなものとしか考えてなかった……。
「・・・はあっ」
大きくため息をつきながら未練たらしく彼の部屋のドアを見るがもう戻れるわけがない。置いてきてしまったデッキとソフトは今度取りに行こう。
誰もいない寂しい廊下を重い足取りで自分の部屋へ戻っていった。


ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。