女性特有の柔らかさ、とでも言うのだろうか。
腕の中でたおやかな曲線を描く、その背中。
かさばったスーツを着ていないと、これほどまでに小さく、細くなってしまうのか。
僕よりも背が高くて、どんな時も冷静沈着で、振舞いも大人っぽくて、独りでも強くて。
そんないつもの霧切さんは、そこにはいなかった。
僕の腕によりかかっているのは、力を込めれば折れてしまいそうな、細身の女の子。
「あ、りがとう…」
「…いや、うん…」
戸惑った声。お互いに、だ。
「その、…酔っているみたいで・・」
「そうみたいだね。僕が来る前にも飲んでたんでしょ?」
「ええ、そう、ね…だから、その、苗木君…」
小さな肩が、きゅっ、と縮こまる。
「…腕を、離してくれないかしら。……胸に、当たっているから…」
言いにくそうにして、腕の中で、縮こまったまま身をよじる。
その捩りで、ふにゅ、と柔らかい何かが、確かに腕、というよりも手首の辺りで形を変えた。
「あ、うわ、ゴメ、んなさい…!」
「い、いえ…」
血の気が、それはもう引き潮のごとく引いていった。
仲直りを、しに来たのに。
セクハラを、しに来たわけじゃ、ないのに。
ああ、どうしよう、最悪だ。
ただでさえ二人しかいない、気まずい空間だっていうのに。
見られたくない傷痕をむりくり剥いて、独り暮らしの部屋に見惚れて、挙句、胸を。
そういう接触を嫌う人のはずじゃないか。
あの先輩に触られた時だって。
これは、僕も殴られても文句は言えない。むしろ、殴られるべきなんじゃないだろうか。
背中を向けている霧切さんの不機嫌そうな顔を思い浮かべつつ、彼女を支えていた腕をそっと離す。
それから猛獣飼育よろしく、彼女を刺激しないように、ゆっくりと後ずさって距離を取った。
地に足のついた霧切さんは、しばらくその体勢で、僕に背を向けたまま固まっていたが、
「……苗木君」
「っ……」
ゆっくりと、こちらを振り向いた。
殴られる―――!
そう思って、咄嗟に目を瞑る。
朝日奈さんの件と言い、本当に僕は女性関係の運が無い、と頭の中で嘆きながら。
「……」
「……、何をしているの」
…拳の代わりに飛んできたのは、呆れ半ばの声。
「いや、その……殴られる覚悟をですね」
「…誰に?」
「誰に、って…」
食いしばっていた歯の力を抜いて、恐る恐る目を開ける。
ほんのりと頬を染めつつも、困惑顔で僕を見返している霧切さんが、そこにはいた。
「……あのね、苗木君。アクシデントか故意かの区別くらい、私にも出来るわ」
「で、でも…」
「それに…今のはどちらかといえば、私の不注意でしょう」
憤怒か、あるいは嫌悪。
彼女の表情はきっと、そのどちらかに染められていると、きっとそうだと思った。
「…そう怯えられては、此方から謝ることもできないじゃない…馬鹿ね」
少しだけ眉を下げて、花恥じらいを浮かべる霧切さん。
頬がほんのり染まっているのは、お酒のせいだけ、ということはないだろう。
初めて見る、とは言わないけど、見慣れない私服姿と相まって、それはすごく新鮮で。
「けれど、心外。そんな簡単に手を上げる女だと思われていたなんて」
「ご、ゴメン」
「……まあ、今日暴力を振るったばかりの女に言われても、説得力は皆無でしょうけど」
冗談っぽく肩をすくめて、皿の乗ったトレーを慎重そうに持ちあげる。
はあ、と、強張っていたからだから力が抜けて、安堵の息が漏れる。
不問としてくれるのなら、それに越したことはない。
でも、ちょっと意外だった。
例えアクシデントでもラッキースケベでも、こういう女性の敵のような行動は許さない人だと。
もしお酒が入ったことによって、多少なりともおおらかになっているのだとしたら、本当に九死に一生だ。
わずかばかりの罪悪感と、まだ腕に残された至福の感触の名残に浸りつつ、僕も後に続く。
ついでに、彼女の持っていたトレーを奪う。
「……本当に、お人好しも大概にね、苗木君」
「…ゴメン」
「そうやって、悪くないのに自分から謝るから、お人好しだって言うのよ」
彼女は僕に非が無いと言うけれど、この状況じゃ、ぐうの音も出ません。
「いやぁ、はは…」
「……」
「……あの」
「…まあ、でも、しょうがないわね。朝日奈さん辺りなら、貴方に非が無くとも躊躇なく殴ってきそうだし」
「そ、そうなんだよ、この前もさ、彼女の、」
じとり。
絶対零度の冷たい視線が、べっとりと体中に張り付いた。
危な、い、
「……彼女の、何かしら?」
スナイパーの目だ。心臓が竦み上がる。
獲物が見せる一瞬の隙を逃すまいと、引き金に指をかけて狙いを定めている。
「…その、飲みの席でさ、…先輩! 先輩がね、倒れそうになった朝日奈さんを支えて、何故か殴られるっていう…」
「……」
「あ、朝日奈さんらしいよね! はは、は…」
何に怯えているのか、と問われても、明確な答えは出せない。
ただ、本能が察知しているのだ。
真実を教えてしまっては、きっと恐ろしいことが起きる、と。
「…苗木君。嘘は塗り固めれば塗り固めるほど、後で剥がれやすくなるのよ」
「そ、そうだね…」
カマを掛けているんだ、きっと彼女に確信はないはず。
本当は、朝日奈さんの部屋で、僕の身に起きた出来事だ。
フローリングの上を靴下で歩いていて滑った朝日奈さんを、咄嗟に支えようとして。
差し出した手が、ちょうどハマるようにして、彼女の胸を思いっきり揉みしだいてしまったという事件。
…個人的には、そのあと問答無用で殴り飛ばされて、右の奥歯をもっていかれたことの方が、記憶に濃く残っている。
けれど、危なかった。
ただでさえ僕は既に、『朝日奈さんの部屋に入ったことはない』と明言してしまっている。
口は災いのもと、君子危うきに近寄らず。
昔の人が残した言葉という者は、往々にして的を射ている。
「……仲が良いのね、本当に」
「え?」
かろうじて聞き取れるかどうかというほど、か細い声で呟かれた。
反射で顔を上げるけれど、また物憂げな表情の彼女が、膝を抱き寄せて縮こまっていた。
暖を取るように、両手を柔らかくアイリッシュ・ウィスキーに添えて。
それが、とても女の子らしい仕草と姿勢で。
部屋の雰囲気と相まって、また意識してしまいそうになる。
両手を添えたコップに、そっと口を寄せる霧切さん。
その姿をずっと見ているのがどこか後ろめたくて、僕は慌てて他の話題を探す。
「あ、えっと……で、でも、意外だったな」
「……」
「霧切さんって、お酒に強いイメージがあったから、はは…」
じっと、彼女は黙ったまま、僕を見つめてくる。
頬は赤く染まり、お酒のせいだろうか、少しだけ表情は蕩けているようにも見えて。
いつも纏っている、ピリッとした厳粛な空気は無くて。
押し倒せば、そのまま沈んでしまいそうなほど、柔らかい雰囲気。
「……強くなんて、ないわ」
ぽとり、零すように、言葉を呟いた。
その雰囲気は、それこそまるで、僕が嫌悪していたあの空想。
見知らぬ男に抱かれてしまうという、あの失礼極まりない妄想の中に出てくる霧切さんと、まるでそっくりだった。
夜の花のように、どこかしっとりとしていて、たおやかで、扇情的で、―――身震いをする。
何を考えて、いるんだ、僕は?
「私は…弱いのよ、苗木君」
「そっ、そんなこと、」
「…少なくとも、貴方が考えているよりは、ずっと」
きゅ、と、抱えている膝をいっそう抱き寄せて、ますます縮こまる。
見えない何かに怯えているような姿勢。
「……寂しいし、辛いし、怖い。嫉妬だってする。そう見えないように振る舞うのが、上手いだけ…」
普段の霧切さんなら、こんなことは絶対に言わない。
例え相手が、僕や、希望ヶ峰学園を卒業した仲間であろうとも。
自分の弱みを見せるようなことは、絶対にしないのだ。
それは、彼女の鎧だ。
自分が自分であり続けるための、プライドの鎧。
そして、揺るがない自分であり続けることで相手を安心させるという、優しさの表れでもある。
それを、彼女は今、脱ぎ捨てている。
ありのままの本音を、僕に晒している。
なんて、無防備な。
違う、これは、彼女は酔っているだけじゃない。
絶対に、何かある。
そういう人だ。
信頼には足るけれど、平気で僕を騙したことだって何度もあるし、からかわれたことだって。
けれど、
「……貴方は忘れているみたいだけれど、私だって一応…女なのよ」
抱えた膝の中で、くぐもった声がする。
思わずどきり、とするような、色っぽさを孕んでいて。
「わ、忘れたことは、ないよ…」
その優艶な姿に、わずかに残っていた理性や猜疑心なんて、簡単に溶かされてしまうのだ。
「……だから、守って欲しい時だってあるのに…苗木君は私を差し出した」
「あう、」
それは、
「…ゴメンなさい」
どういう意味で、言っているのか。
だって、霧切さんは僕のモノではけっしてない、のに。
「で、でも…僕以外にも、本当に」
「苗木君」
「……はい」
膝から覗く、ジト目が少しだけ潤んでいる。
『僕以外にも』という言葉を、彼女は嫌がった。
でも、本当に。
僕以外にも、何人もいるはずなんだ。
霧切さんとお近づきになりたい人、仲良くしたい人、『そういう関係』になりたい人。
「…まだ言わせるつもり? だとしたら、貴方は『超高校級の甲斐性無し』よ」
「で、でも、本当に…何の取り柄もないし」
「……貴方の良いところは、たくさんあるわ。そして、私はそれを知ってる」
「う、」
「…それじゃダメかしら?」
ああ、熱い。
頭が、頬が、体中が熱っぽい。
部屋のせいだろうか、それともお酒を飲んだからか。
ぽーっとして、まともに物事を考えられない。
「……けど、関係無い、って…言われて、…」
その先の言葉は、掠れていて、よく聞き取れなかった。
けれど、僕は彼女に酷いことを言ってしまったのだと、本当に痛感させられる。
「…言葉にしたことはないけれど、分かってくれていると、…思ってた」
何を、とは聞けない。
その先まで言わせてしまったら、彼女の言う通り、僕は『超高校級の甲斐性無し』だ。
ずきり、と、罪悪感が痛みを訴えてくる。
「…本当に、貴方の言う通り、私と近しい仲になりたい、なんて物好きが他にもいるかはわからない」
「本当だよ、それは、」
「ええ、だとしても……苗木君。それらは『他の誰か』であって、『苗木君』じゃないのよ」
私にとっては、ね。
ふわ、と、その言葉で、部屋中が熱気に包まれた心地がした。
「…例えその人が、貴方より優しくて、格好も素敵で、頭も良くて、背も高かったとしても。『苗木君』の代わりにはならないの」
「…あ、……」
「…ここまで言えば、分かるかしら。『超高校級の甲斐性無し』さん?」
最後は少しだけ拗ねた風に、唇を尖らせる。
照れ隠しか、もう中に残っていないはずのコップを、そのまま唇につけた。
言葉が、出ない。
伝えたいことは、山ほどあった。
逸る気持ち、鼓動は僕を急かして、彼女にそれを伝えるためにバクンバクンと、内側から力強く殴ってくる。
けれども、そうして探した言葉は、どれもしっくりこない。
口にした瞬間に偽物になってしまうものばかりだ。
何も言えない僕を見かねたのか、ちら、と一瞬だけ僕の方に、霧切さんが目を向ける。
「……まあ、分からないのなら、それでいいわ」
「ま、待って、分かるよ、」
「…貴方にとっては、私も同僚の一人だものね。他の、人たちと、同じ―――」
「ち、違う!」
思わず、声を張り上げて立ち上がる。
そうだ、普段はこんなことを言う人じゃない。
僕が、言わせてしまったんだ。
もしこれが、そのまま彼女の弱音で、本気で、今まで隠していた大切な言葉なのだとしたら。
僕も、相応に応えなければいけないはずだ。
「ぼ、僕にとっても…霧切さんは、その……」
「……」
「……同僚の一人、なんかじゃないよ。代役なんていない。唯一人の、大切な、―――」
続きの言葉は、失われた。
それまで膝を抱えていた霧切さんが、僕を押し倒したからだ。
「あ、」
体術だろうか、あまりにも素早い動きに、僕の体は反応出来なかった。
床に押し付けられる。
痛みは、不思議とない。そういう風に組伏せる技術があるのだと、いつか彼女が言っていた気がする。
「……遅いわ」
「え?」
「…その言葉を、私が…どれだけ待ったと思っているの」
言いながら霧切さんは、僕の胸板に頭を乗せる。
震えていた。
じわり、と、温かい何かで、シャツが濡れる。
「関係ない、とか…僕以外にも、とか…その言葉で、どれだけ、私が……」
胸が締め付けられる思いがした。
言葉一つで、どれだけ自分が彼女を傷つけてきたのか。
「……ゴメン」
「許さないわ」
くぐもった声が、胸板から響く。
「…簡単には、許さない。長い時間をかけて、ゆっくり償いなさい」
「うん。約束する」
「……けれど、来てくれたのは嬉しかった。ねえ、苗木君…?」
「…うん」
「私はお酒に頼らないと、こうして自分の内情を吐露することも、出来ないわ」
ふわ、と、投げ出していた僕自身の右腕が、柔らかい何かに包まれた。
霧切さん自信だ。
いつの間にか彼女は、僕の隣に来て、しなだれかかるようにして寄り添っている。
ぐわん、と、大きく一度、視界が揺れた。
「苗木君」
はい。
「私は、…あの人たちが嫌い。酒で酔わせて女を手篭めにしようだなんて…浅はかな卑怯者だと思うわ」
うん。
「…そして、私はお酒に弱い。あの人たちに、弱い私を見られたくなかった…けれど」
視界が、歪む。熱に浮かされているかのようだ。
熱い。
熱い。体も、頭も。
霞がかった天井の、ちゅうしんに、霧切さんが、うかんで。
「…貴方には、弱い私も知っていて欲しい…そう、思えるの…自分勝手かしら?」
気だるい頭のまま、ゆっくりと首を振る。
「そう…ありがとう」
揺れる視界の中で、少しだけ恥ずかしそうに霧切さんが笑んだ。
それだけで、ぽーっとする頭の中に、幸福感に満ちた熱が広がる。
ああ、なんだろう。
眠気は無いはずなのに、どこか夢うつつというか。
まどろみの中にいる、心地がする。
しゅるり、と、衣擦れの音に、エコーがかかる。
「なら…苗木君」
視界に、はだいろが、ふえる。
ああ、脱いで、いるのだろうか?
「私は今、相当酔っていて…碌に歩けもしないわ。腕にも力が入らないし…何かされても、抵抗もまともにできない」
それは、どっちの台詞だろう。
「……もしかしたら、明日には記憶が虚ろになっているかもしれないわね」
「きり、ぎりさ、」
「…貴方に胸を、その…触られた時」
右腕に、感触が、妙にリアルに蘇る。
恥ずかしそうに、けれど視線を逸らすこと無く、霧切さんは、僕を見つめていて、
その姿は、酷く扇情的で、
「……その、あまり嫌じゃ、なかった…」
だから、
「私のために…卑怯者に、なってくれる…?」
理性の切れる、音がした。
そこから先は、意識が明滅して、よく覚えていない。
断片的に記憶がフラッシュして、思い出そうとする度に、ひどい頭痛がする。
ただ、初めて見る彼女の表情と、初めて聞く彼女の声と。
幾度も幾度も、互いの名前を呼び合った、ような。
恥ずかしい言葉を、何度も口にした、ような。
肌と肌が触れあうのが、心地よかった、ような。
僅かばかりの罪悪感と、胸いっぱいの至福感に包まれて。
僕の意識は暗転し、汗だくになった体を拭うこともせず、滑らかなシーツの海に沈んでいった。
――――――――――
まあ、窮鼠猫を噛む、ではないけれども。
追い詰められた草食動物も侮れないというのは、どうやら本当らしい。
それとも私の方がデスクワークの連続で、体を鈍らせてしまっていたのだろうか。
まさか、彼に体力で負けるなんて、思ってもみなかった。
私が主導権を握る予定だったのに。
……あるいは、相手が彼だから、弱ってしまったのかもしれない。
そこ『だけ』が、唯一の誤算。
「…んっ」
力の入らない下半身を引きずるようにして、ベッド脇に寄せた彼の鞄に手を伸ばす。
中を探り、携帯電話をひっつかみ、暗証番号を解除。
あらかじめ連絡を入れておいた相手に、報告の電話を入れる。
ぷるるる、と、古風なコール音が二、三度続いて、
『……苗木か。何の用、』
「…こちら、霧切響子。ターゲットの籠絡に成功したわ」
電話口の向こうで、意味ありげな溜息。
苗木君の携帯で私が電話をかけている、という時点で、全てを理解してくれたようだ。
『…随分と手間をかけさせてくれたな』
「ええ、お陰さまで。けれど、手間だなんて。十神君は実質、何もしていないでしょう?」
『御挨拶だな……ならばせめて、おめでとう、と言っておくべきか?』
電話口の向こう側の声が、不意に柔らかくなった。
朝日奈さんだけでなく、彼も随分と丸くなったと思う。
「今日の忘年会、私と苗木君は欠席するわ。それだけ伝えておこうと思って」
『ああ、ならば此方からも、伝えておくことがある』
電話口の向こう側の声が、やや痛快そうな色を帯びた。
『お前が殴ったあの男だが…非常に残念だが、他の部署に転属してもらうこととなった』
「……あら、…そう。それは残念ね」
『全くだ』
正直、まだやり足りなかったのだけれど。
『身内を貶め、暴力沙汰にまで発展させるような輩を、同じ部署に置いておくことはできないからな』
「耳が痛いわ」
『ほどほどにしろ、という忠告だ。次は庇ってやれんぞ、全く……、…一つ、聞いていいか』
「何かしら?」
『どこからどこまでが、お前の用意した脚本だったのか、だ』
にやり、と、不思議と口元が笑みの形を作った。
おそらく、気付いたのは彼くらいだろう。
『朝日奈の説教は計算済みだったのか? 殴り倒したのは? それとも、苗木との口論すらも初めから――』
「…さあ、どこからでしょうね」
『……あの学園で、お前を敵に回さなくてよかったと、心底思う』
一つだけ言えることがあるとしたら。
「関係ない」は、さすがに堪忍袋の緒が切れた、というか。
どのみち、我慢比べは性に合わなかっただけだ。
これでもう二度と、『関係ない』だなんて言えないだろう。
通話を切ってから履歴を削除して、携帯を元の位置に戻す。
そしてベッドへと戻ると、何も知らない無垢な寝顔に、私は何度目か、唇を這わせた。
最終更新:2013年03月21日 20:39