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「……はい、チェックメイトです」
「……うーん…………ダメだ、参った。降参だよ」
「うふふっ。またわたくしの勝ちですわね」
「今度はいい勝負だと思ったんだけどなあ……。どこが悪かったんだろう……」
「わたくしと盤上のゲームで戦った事。悪手と言えばそれに尽きますわね」
「いや、それを言われたら……。そうじゃなくて、勝負の中でもっといい手があった気がするんだ」
「……では、一つ。わたくしが思うには、あなたは駒の一つ一つに執着しすぎではありませんか?
 “捨て駒”という言葉があるでしょう。大局を左右しない雑兵……そう、このポーンのように
 小さくありふれた駒ならば、時には囮にしたり、見捨ててしまった方が有利に働く事もありますわよ」
「そう……か。言われてみると、どの駒も大事に使おうとしすぎてたかも……。」
「ですが……そうですわね。あなたが大事に残していたポーンの一つ……。
 先程の勝負でなら、あるいは必勝の一手に化けていたかもしれません」
「……えっ?」
「苗木君。あなたはチェスの基礎中の基礎しか知らないド素人のようですから、
 知らなくても無理はありませんわね。前の試合までの盤面では、考慮に値しなかったので
 わたくしもわざわざ説明したりしませんでしたが……
 チェスのルールには“プロモーション”というものがあるのです」
「プロモーション……」
「敵陣に最も深く切り込んだポーンは、クイーンに匹敵する最強の駒への昇格(プロモーション)が許される……
 取るに足らない雑兵が、女王と肩を並べる事になるのです。
 こうなれば、あるいは……このわたくしを、あなたが組み伏せる事が出来たかもしれませんわね……」
(ただのゲームのはずなのに、セレスさんの顔……妙に真剣だ……ゴクリ……)
「……それを踏まえて、もう一勝負しましょうか。何度負けても立ち上がり……
 決して希望を失わず前進し続ける……それが、あなたの取り柄でしょう?」(ニッコリ)
「う……うん。よし、やろう! 今度は勝つよ!」
「その意気ですわ。この調子で、まだまだ搾り取って差し上げます」
「うん……って、アドバイスはそっちが目的!?」
「うふふっ。………………本当に。期待していますわよ(ボソリ」

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