セレス 対 舞園 (文化祭)

石丸「それでは、これにて本日のホームルームを終了します!起立!礼!『みなさん、さようなら』ッ!!
   …ああ、苗木くんと舞園くんは、この後少し残ってくれたまえ。大切な話があるのだ!」

苗木「石丸クン、大切な話って何?」
舞園「どうして私達だけ残したんでしょう…」
石丸「先週、君たちは学校を休んだね。苗木くんは風邪で病欠、舞園くんはテレビの収録ということだった。
    実はあの日、来月行なわれる文化祭での我がクラスの出し物を決めたのだ」
苗木「へえ、そうなんだ。何に決まったの?」
石丸「演劇だ。そして喜びたまえッ!満場一致で君たちが主役に決定したぞッ!」
苗木「しゅ、主役!?」
舞園「どういうことですか、それ!?」
石丸「いやあ、皆とても慎み深くてね。通行人役でも死体役でも構わないから、主役だけは遠慮する、と言うのだよ。
   そこで、たまたま欠席していた君たちが主役に推薦されたというわけだ!」
苗木「そ、それって、皆が面倒臭がってやらない事を押し付けられただけだよね…」
舞園「あの…それで、どういう劇をやるんですか?」
石丸「よくぞ聞いてくれた!劇の内容については実行委員である僕に一任するということだったので、
   かつて我が学園の先輩たちが作られた劇をやらせてもらうことにした。
   ストーリーは王道というか、よくある中世ヨーロッパの騎士と姫の身分違いの恋をテーマにしたものだが、
   笑いあり、涙ありの素晴らしい作品だ。脚本を読んだら、絶対に君たちも感動するぞ!」
苗木「それじゃ…ボクが騎士の役で、舞園さんが姫の役ってこと…?」
舞園「…私…苗木君となら…」

セレス「お待ちなさい!…そのお話、聞き捨てなりませんわ」

苗木「セ、セレスさん…」
舞園「出ましたね…」

セレス「文化祭の演劇など、つまらないものだと思っていましたが…苗木君が騎士役と聞いては捨て置けません。
     彼はわたくしのナイトなのですから、姫の役はわたくしに決まりでしょう」
石丸「うむ、そういえばセレスくんは度胸があるし、演技力にも定評があったな。
   物腰も優雅で、まるで本物の姫君のような気品がある。
   よろしい。実行委員である僕の権限で、セレスくんの立候補を受理しようッ!」
舞園「ちょっと待ってください!演技なら私、このクラスの誰にも負けませんよ。
   台詞だってすぐに覚えてみせますし、マイクが無くても客席に声を届かせます。私にやらせて下さい!」
石丸「うむ、なんといっても舞園くんは一流の芸能人だ。実力も経験も申し分ないし、
   君が主役となれば、保護者父兄の方々も大いに注目して下さるに違いない。姫役は舞園くんに決定だッ!」
苗木「石丸クン…どっちの味方なの…」

セレス「舞園さん、あなたはお仕事でとても忙しいのでしょう。無理をなさらなくても結構ですわ。
    練習や本番の時に休まれては、他の皆さんも迷惑しますし…」
舞園「私、こう見えても体力ありますから、ちょっと頑張ればいくらでも時間は作れます。
   それより、セレスさんこそ無理をしないで下さい。舞台って想像するよりずっとハードなんですよ。
   そんな痩せた胸…いえ、体で…もしも本番の最中に倒れられたら、せっかくの劇が台無しになってしまいます」
セレス「…大きなお世話ですわ。体力であなたに及ばずとも、わたくしには抜群の集中力・精神力がありますの。
    例えどんな事があっても、気力で舞台に立ちますわ」
舞園「そうですね。確かに、セレスさんの図太さは、私も見習いたいぐらいですよ」
セレス「あら、奇遇ですわね。わたくしも、あなたの神経の図太さ『だけ』は買っていましたわ」
舞園「…そうですか。私達、気が合いますね。ふふふ…」
セレス「そうですわね。あなたと気が合っても、ちっとも嬉しくありませんけど。うふふふ…」
苗木「ふ、二人とも…目が笑ってないよ…」

セレス「いつも言っていますが、わたくしと苗木君はすでに主従の関係で結ばれておりますの。
    つまり、誰よりも自然な演技が可能という事です。今更、舞園さんがわたくし達の間に入り込む余地はありませんわ」
舞園「そんなの、セレスさんが勝手に言ってるだけじゃないですか!大体、私と苗木君は中学からのお付き合いなんです。
   苗木君との関係は、私の方が先ですよ」
セレス「お付き合い…?あなた、中学生の頃から苗木君と付き合っていらしたの?」
舞園「えっ?…それは、その…クラスが近くて…お友達っていうか…ちょっと気になる微妙な関係で…」
セレス「うふふ…語るに落ちましたわね。クラスが近いだけで、関係なんて無いも同然だったのでしょう?
    やはり、大切なのは今ですわ。今のわたくしと苗木君の主従の絆こそが最も強いのです」
舞園「そう、そうですよ!大切なのは今なんです。私と苗木君は今、とっても仲良しなんですから。
   セレスさんの言うような、いかがわしい関係より、私と苗木君の絆の方がずっと強いはずです!」
石丸「主従とか、お付き合いとか…苗木くん、僕には意味がよくわからないのだが、彼女たちは何を言っているんだ?」
苗木「ええーっと…石丸クンは聞き流してくれていいよ。むしろ、聞き流してよ。お願いだから」

セレス「“超高校級のアイドル”である舞園さんが主役とあっては、大変な騒ぎになってしまうのではありませんか?
    ファンの方達が会場に押し掛けたりしたら…それこそ劇が台無しになってしまいますわ」
舞園「それは…きっと大丈夫です。この学園、セキュリティはしっかりしていますから。
   私なんかより、セレスさんの方が心配ですよ。何だか色々な人から恨まれてそうじゃないですか。
   何と言っても“超高校級のギャンブラー”ですもんね」
セレス「品行方正なわたくしが、人から嫉妬を買うことはあっても、恨みを買うことなどあるわけがないでしょう。
    それでも万一の時は、ナイトである苗木君が命がけで守ってくれますわ。そうですわね、苗木君?」
苗木「ああ…うん…凡人のボクに出来る範囲でなら…」
舞園「な…苗木君、私は?私は守ってくれないんですか?」
セレス「うふふ、あなた、さっきご自分で学園のセキュリティはしっかりしていると言ったじゃありませんか。
    苗木君ではなく、警備員さんに守って頂きなさい」
舞園「そ、それは…。そう!それでも危ない時があるかもしれないじゃないですか!
   ほら、最近物騒な世の中ですし、どこかから包丁が飛んできたりするかも!」
セレス「そんな馬鹿な事、あるわけがないでしょう。突然、消防車が突っ込んで来ることぐらいはあるかもしれませんが。
    まあ、“超高校級の幸運”である苗木君に任せておけば大丈夫ですわね。包丁でも消防車でも」
苗木「いや…それはさすがに…無理かも…」

セレス「容姿で言えば、わたくしの方が姫役に相応しいですわね。ドレスも普段から着慣れていますし」
舞園「私だって、仕事でドレスを着たことぐらいありますよ。それにスタイルには…ちょっと自信がありますし、
   たいていの衣装なら着こなせます。セレスさんと違って」
セレス「わたくしと違って…というのは、どういう意味ですの?」
舞園「ほら、セレスさんはいつも同じような服ばかり着ているじゃないですか。
   それって、服のサイズが合わないからでしょう。胸とか、お尻とか」
セレス「…言ってくれますわね。わたくし、可愛らしくて上品なデザインのお洋服が好きですの。
    テレビに出ている時のあなたのように、無駄に肌を露出した下品な格好は、とても真似できませんわ」
舞園「げ、下品な格好って…怒った時のセレスさんの方が、よっぽど下品じゃないですか!」
セレス「ああ!?わたくしのどこが下品だあ!?焼くぞテメー!!」
舞園「それです」
セレス「…コホン。今のは冗談ですわ」
石丸「…じょ、冗談とは思えない迫力だったぞ…」
苗木「こ、恐い…。セレスさんも…舞園さんも…」

セレス「このままでは水掛け論ですわね。どうでしょう、ここはどちらに姫役をやって欲しいか…
    苗木君に選んで頂きませんか?」
舞園「…そうですね。そもそも、苗木君の相手役を決めるわけですから。苗木君、お願いします」
苗木「ええっ!?ボ…ボクが決めるの?」
セレス「苗木君、わかっていますわね?あなたは、わたくしの初めての人になれるかもしれないのですよ…」
舞園「苗木君、前に何があっても私の味方でいてくれるって言ってましたよね?私、信じてますから…」
苗木「う、うう…ボクは…」
セレス「苗木君!早くわたくしに決めなさい!」 舞園「苗木君!早く私に決めて下さい!」
苗木「そんな事言われても…ボクは…」

石丸「そこまでだッ!!全員、静聴せよッ!」

苗木「い、石丸クン…。…助かった…のか?」
石丸「セレスくんに舞園くん、二人の文化祭にかける情熱はよくわかった!僕は今、猛烈に感動しているッ!」
舞園「石丸君…目の幅の涙が…」
セレス「暑苦しい上に見苦しいですわ…」
石丸「だが、君たちが争うことはない。こうなったら脚本を書き換え、二人の役を平等に扱おうじゃないか!」
苗木「そんな事、出来るの?」
石丸「大丈夫だ、任せておきたまえ!実は今日中に配役を決定し、予算を申請しなければならないのだが、
   努力と友情に不可能は無い!僕が責任を持って全員が納得する形にしようじゃないかッ!」

<数日後…>
石丸「君たち、劇の台本が出来上がったぞ!一人ずつ配るから、こちらに来てくれたまえ!」
舞園「…私の役は……ええっ!?そんな…『侍女A』ですか…」
セレス「うふふふ、やりましたわ!という事は、わたくしが………『侍女B』…?」
石丸「うむ!どちらも姫の良き理解者として、恋を応援する人物だ。台詞も多い、準主役と言ってもいい役だぞ!」
苗木「ちょ…ちょっと待ってよ!何なのこれ…どうしてボクが姫の役なの!?」
セレス「な…苗木君が姫ですの…?それでは、騎士の役は…」
石丸「十神くんだ」
舞園「どうして十神君なんですか!?そこはせめて霧切さんでしょう!?」
セレス「ま、舞園さん、落ち着きなさい。言っていることが変ですわ…」
石丸「君たち二人を平等に扱えるように、脚本を書き換えてもらったのだよ。腐川くんに。そうしたらこうなった。
   妙にゲラゲラ笑っていて様子がおかしかったのだが、さすがは“超高校級の文学少女”だな。
   短期間で実によくまとめてくれたよ。途中、いくつかおかしなシーンが入っていたが、
   僕がしっかり添削しておいたので安心してくれたまえ」
苗木「それって腐川さんじゃなくて、ジェノサイダーなんじゃ…」

セレス「ちょっと!この部分…姫と騎士のキスシーンがありますわよ!?」
石丸「ああ、実際に触れるわけではないから問題ないだろう。何より男同士なのだから、何も問題はない!」
苗木「いや、そっちの方が問題だよ!」
石丸「十神くんも初めは渋っていたのだが、僕の必死の説得で『完璧な俺に不可能はない』と、引き受けてくれたし、
   これで全て丸く治まったな!ハッハッハッハ!」
セレス「認めませんわ…こんなの…認めませんわ!」
舞園「…でも…お姫様役の苗木君ですか…ちょっと興味ありますね…」
苗木「ま、舞園さん、何言ってるの!?」
セレス「…言われてみると…少し面白そうですわね…。うふふ、女装姿の苗木君…何とも苛めがいがありそうですわ」
苗木「セ、セレスさんまで!?」
石丸「ハッハッハッハ!良かったな、苗木くん!二人も期待してくれているようだぞ!
   それに、すでに計画は学園に申告してしまったので、もう変更は出来ない。張り切って稽古に臨んでくれたまえ!」
舞園「私…苗木君がドレスを着るの、手伝ってあげますね」
セレス「わたくしはとびきり可愛らしいアクセサリーを調達しますわ。ああ、山田君にカメラの用意もさせなくては…」

苗木(こ、この展開…どこが“超高校級の幸運”なんだ!?…どうしてボクがこんな目に!?
   夢なら、覚めてくれ!オチとしては最低だけど、それが一番いい!)


ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。