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究極の幕開け ◆LuuKRM2PEg




エリア、B-8。
燦々とした太陽に照らされた、緑豊かな森林だった。
空より降り注ぐ光が、枝の間から次々と差し込んでいく。
本来ならば、小鳥の囀りや穏やかな風の音が、広がっているかもしれない。
だが今は、そのような癒しとも呼べるリズムは、一片たりともなかった。
辺りに響くのは、盛大な爆音。
闘争によって鳴り響く、戦場の音だった。

「フンッ!」

そんな中で、一つの異形が腕を前に向ける。
蝙蝠を連想させる醜悪な顔面、背中から生えた一対の翼、両腕に付属された手甲、そこに刻まれた髭を生やした男性の顔。
『キバの世界』には、人間のライフエナジーを狙おうとする、ファンガイアと呼ばれる闇の一族が猛威を振るっている。
その中でも頂点の座に君臨する四人は、チェックメイト・フォーの称号が与えられた。
ルーク、ビショップ、クイーン、キング。
その異形は、全てのファンガイアを統率する王だった。
キングと呼ばれる今の彼は、バットファンガイアの姿を取っている。
相対するのは別世界に存在する、二人の仮面ライダー。
仮面ライダーナイトと、仮面ライダーゾルダ。
自身が生まれた『龍騎の世界』を守るために、戦いを決意した戦士達。
バットファンガイアが翳した掌から、漆黒の波動が放たれる。
禍々しい闇は、ナイトとゾルダの身体を容赦なく飲み込んだ。

「「ぐああぁあああっ!?」」

仮面の下から絶叫が漏れる。
衝撃波は鎧など関係ないかのように、中にいる人間にダメージを与えた。
二人の全身からは、鮮血のように火花が飛び散る。
鎧が爆発していたのだ。
衝撃に耐えるも、痛みは容赦なく伝わってくる。
やがて、彼らの身体は大きく吹き飛ばされていった。
ナイトとゾルダは、勢いよく地面に叩き付けられていく。
激痛によって、二人は蹲った。
そんな彼らの元へと、バットファンガイアは足を進める。

「フン、まるで脆い…………『仮面ライダー』とやらはこの程度か?」

鼻を鳴らしながら、侮蔑の言葉を口にした。
それに構うことなく、ナイトとゾルダは立ち上がる。
彼らは武器を構えた。
ナイトは翼召剣ダークバイザーを掲げながら、地面を蹴る。
そして、勢いよく突きを放った。

「トウッ!」

掛け声と共に、刃は敵に突き進む。
しかしバットファンガイアは、右手で呆気なく防いだ。
それでも、続くようにダークバイザーを力強く振るい続ける。
だが、金属音と火花が拡散するだけで、それ以上の効果は期待できない。
これでは駄目だとナイトは判断して、一旦後ろに飛んだ。
その結果、距離が僅かに空く。
ナイトはカードデッキへと手を伸ばした。
そして、一枚のカードを取って、ダークバイザーに差し込む。

『SWORD VENT』

独特の音声が、武器より発せられた。
その直後、ナイトの頭上から黒い輝きを放つ、一本の槍が現れる。
ウイングランサーに手を伸ばして、掴んだ。
一見、ダークバイザーより威力がありそうな武器。
しかしバットファンガイアは、何の反応も示さない。
たかが静寂な人間が、武器を持ち替えたところで何を驚く必要がある。
そう思いながら、バットファンガイアは足を進めた。
しかし、それは止まってしまう。

『SHOOT VENT』

突如、電子音声が響いた。
バットファンガイアは反応して、そちらに振り向く。
見ると、その先にいるゾルダの両肩には、巨大な大砲が乗っかっていた。
機召銃マグナバイザーに、シュートベントのカードを差し込んだことで使える武装、ギガキャノン。
ナイトの動作はゾルダへ意識を向けさせない為の、囮だった。
バットファンガイアは気づくが、もう遅い。
二つの砲口から、弾丸が発射される。
バットファンガイアの身体に一瞬で着弾して、盛大な爆発を起こした。
轟音が響き、エネルギーが周囲に拡散する。
その衝撃によって辺りの木々が吹き飛び、煙が広がった。
爆風によって、大気が震える。
しかしゾルダは、一切の安堵を感じていなかった。

「おいおい、嘘でしょ……」

仮面の下から、呆れたような声が漏れる。
充満する煙の中から、バットファンガイアが姿を現したため。
しかも、まるでダメージを追っているように見えない。

「下らん!」

その言葉と共に、バットファンガイアは走る。
一瞬でゾルダとの距離が埋まると、強靱な腕を振るった。
バットファンガイアの拳は、重厚な鎧を紙のように削っていく。
無論、ゾルダ自身も無事でいられなかった。

「があっ!?」

悲鳴と共に、再び地面に倒れる。
背中から叩き付けられ、仰向けの体勢にされた。
無様な姿を晒すゾルダだが、バットファンガイアは目を向けない。
まるで、興味がなかった。
そのまま、次の獲物であるナイトに振り向こうとする。

『FINAL VENT』

直後、電子音によってバットファンガイアの鼓膜が刺激された。
目の前からは、ナイトが姿勢を低くしながら駆け抜けているのが見える。
そんな彼の頭上に、巨大な蝙蝠が空からやってきた。
ナイトと契約を果たしたミラーモンスター、闇の翼ダークウイング。
蝙蝠はその大きな翼を広げると、主の身体を包み込む。
すると、一瞬の内にマントへと姿を変えていった。

「フンッ!」

両足をばねにして、ナイトは跳躍する。
そのまま天高く飛びながら、身体を回転させた。
するとナイトは、背中に羽織る漆黒のマントに包まれていく。
そして、バットファンガイアをめがけて急降下を開始した。
必殺の一撃である飛翔斬を決めるために。
この勢いでは、回避は不可能。
そう判断したバットファンガイアは、両腕を交差させた。
刹那、彼らは激突を開始する。

「オオオオオォォォォォッ!」
「ヌウッ…………!」

ナイトの身体はまるでドリルのように、バットファンガイアの手を削った。
ガリガリと抉れるような音と、火花が周囲に拡散する。
飛翔斬の威力は、5000AP。
それだけの重さが、バットファンガイアに襲いかかっていた。
互いの力が、拮抗する。

「小賢しいッ!」

しかし、力比べはすぐに終わった。
バットファンガイアが腕に力を込めて、ナイトの攻撃を弾いたために。
重力による落下も利用した、飛翔斬。
だが、バットファンガイアにとっては子供騙しに過ぎない。
吹き飛ばすことなど、造作もなかった。
大した徒労もなく、バットファンガイアは両腕を横に広げる。
それだけでも、ナイトを吹き飛ばすには充分な力を誇っていた。

「ぐあぁぁっ!」

両足から衝撃を感じて、空中で体勢が崩れる。
激痛の感覚は神経を駆け巡り、一瞬で脳に到達。
反射的に、悲鳴を漏らした。
ほんの数秒ほど宙を漂った後で、ナイトの身体が地面に叩き付けられる。
受け身を取る暇ですらも、彼にはなかった。

「くっ…………やってくれたな」

一方で、バットファンガイアは両腕を見つめる。
たった今受けた飛翔斬によって、微かに痛みを感じていたのだ。
掠り傷にも満たないとはいえ、脆弱な人間からダメージを受ける。
ファンガイアの王としての誇りが、その事実を許さなかった。
そして自分に傷を負わせた愚か者は、目の前で無様な姿を晒している。
それを見逃すつもりは、毛頭ない。
ナイトとの距離は、十メートル以上離れている。
わざわざこちらから出向いて、捻り潰すのも面倒。
バットファンガイアはそう思いながら、トドメを刺すために腕を向けようとした。

『FINAL VENT』

何度目になるか分からない人工音声が、戦場に響く。
それはゾルダが現状に危機感を感じ、マグナバイザーにカードを差し込んだことで鳴った音。
すると、地面に突き刺さったディスカリバーの刀身から、一匹の巨大な魔物が飛び出してきた。
空想のみに存在する生物、ミノタウロスが二足歩行の機械で出来ているような、ゾルダと契約した緑色のミラーモンスター。
鋼の巨人、マグナギガ。

「なっ!」

現れたマグナギガを見て、ナイトはすぐに立ち上がる。
ゾルダの戦い方を、この目で何度も見てきた。
だから何をするつもりなのかを、ナイトはすぐに予測できた。
彼の撤退を目にすると、ゾルダはマグナギガの背中に拳銃を刺す。
それによって、魔獣の四肢に存在する門が、一斉に開かれた。
直後、マグナギガのゲートに大気が集中していく。
そして、ゾルダはマグナバイザーの引き金を引いた。

『OOOOOOOOOッ!』

マグナギガは、大きく咆吼する。
それと共に、自分の中に蓄積された全ての砲弾が、発射された。
ゲートから放たれる攻撃は、バットファンガイアを目がけて進んでいく。
瞬く間に、爆音が森の中に響いた。
空気は振動し、大地は砕け、植物は次々と吹き飛ばされていく。
その様子はまるで、世界そのものが破壊されていくかのようだった。
ゾルダの必殺技である、エンド・オブ・ワールド。
それによって放たれる数多の爆撃は、バットファンガイアを容赦なく飲み込んでいく。
やがて、雷鳴が轟いたような轟音が響いた。
そして爆風が、周囲に広がっていく。










辺りに、粉塵が舞い上がっていた。
先程までの爆発が嘘のように、静寂が広がっている。
ゾルダは、徒労を感じて息を吐いた。
初めての戦いが、よりにもよってあんな化け物だったなんて。
浅倉とかの方が、ただの人間だった分まだ可愛げがある。

(…………ま、あいつもあいつで怖いけどさ)

それはともかくとして、今後が心配だ。
あのような怪物が、他にいないとも限らない。
そんな連中ばかりを相手にしてたら、命がいくつあっても足りないだろう。
最も、不老不死になれたとしても戦う気は毛頭ないが。
そんなことを考えていると、ゾルダの耳が足音を察知する。
振り向くと、煙の中からナイトが姿を現していた。

「ああ、やっぱり無事だったのね」
「北岡…………俺を殺すつもりか」
「しょうがないでしょ、チャンスを逃すわけにもいかないし。それにあの距離なら、避けられたでしょ?」

あまり悪びれていないゾルダの態度に、ナイトは溜息を漏らす。
苛立ちを込めながら。
確かに奴が言うように、エンド・オブ・ワールドが来ることは予測できる。
そして、敵に吹き飛ばされた距離から見て、射程圏からも外れていた。
回避行動だって取ろうと思えば、充分に取れる。
規格外の強さを持つあの怪物と戦うには、一方が攻撃を仕掛けて、もう一方が準備をしなければならなかった。
よってゾルダの行動は、正しいかもしれない。
だが、それでも納得が出来なかった。
しかしこれ以上言及したところで、どうなるわけでもない。
ナイトはそう思う中、風が吹き続けている。
その瞬間、粉塵を掻き分けながら、二つの影が飛び出してきた。
それらは回転しながら、ナイトとゾルダに激突する。

「うっ!?」
「があっ!?」

あまりにも唐突すぎる出来事に、対応が出来なかった。
彼らの身体からは、同時に火花が吹き出していく。
凄まじい衝撃により、彼らは地面に叩き付けられた。
それによって、度重なるダメージがついに限界を迎える。
直後、ナイトとゾルダの変身が解除された。
鎧の下からは、秋山蓮と北岡秀一が姿を現す。
しかし、二人とも意識を失っていた。
そんな彼らの前に、バットファンガイアが煙を掻き分けながら姿を現す。
彼は両腕に装備している手甲から発したエネルギーを、二人に投げつけたのだ。
投げつけた武器は回転を重ねた後、手元に戻る。

「人間如きが、小癪な真似を…………!」

わなわなと体を震わせながら、怒りの言葉を口にした。
その直後、彼の瞳が怪しく輝きを放つ。
刹那、空中に四本の牙が生成された。
ファンガイア一族が人間のライフエナジーを吸い取るための、武器。
無慈悲にも、それは北岡の首筋に突き刺さった。
そしてバットファンガイアは、気絶した彼からライフエナジーを吸っていく。
瞬く間にその身体は色を無くして、ガラスのように呆気なく砕け散った。
後に残ったのは、銀色に輝く首輪だけ。

「どういうことだ……?」

北岡から全てを吸い尽くしたバットファンガイアは、疑問の声を漏らす。
ライフエナジーを吸う為の牙が、一人分しか出てこなかったため。
加減をするつもりなど、まるでなかった。
気絶している蓮を見ながら、バットファンガイアは再び牙を出そうとする。
しかし、現れない。
これは彼に巻かれた、首輪の効果だった。
ファンガイアの中でも最高の実力者である、バットファンガイア。
一度に、多くのライフエナジーを吸うことなど、造作もない。
だが、それはこの戦いのバランスを崩す要因となる。
よって、牙が現れることはなかった。
無論、それを知る術はない。

(まあいい、この手で潰せばいいだけのこと…………)

バットファンガイアは、冷酷な決断をする。
面倒だが、塵にするだけ。
そう思いながら、バットファンガイアは足を進める。
その時だった。

「うおおりゃああああぁぁぁぁぁっ!」

突如、何処からともなく大声が聞こえる。
それに反応して、バットファンガイアは歩みを止めた。
振り向くと、こちらに足を向ける戦士の姿が見える。
全身と両眼が、赤く輝いていた。
『クウガの世界』を代表する、超古代より蘇ったリントの勇者、仮面ライダークウガ。
彼は必殺の蹴り、マイティキックを放つ。
バットファンガイアの胸板に叩きつけると、紋章が刻まれた。
衝撃によって怪人が後ずさる一方で、クウガは地面に着地する。
そして、蓮を庇うように立った。

(俺は…………間に合わなかったのかっ!)

クウガに変身した五代雄介の中に、罪悪感が芽生える。
命を守れなかったことに対して。
森の中に響く轟音を聞きつけ、すぐさま駆けつける。
そこで、目の前の怪物に男の人達が襲われているのが見えた。
助けに行こうとするが、一人は殺されてしまう。
バットファンガイアを見て、クウガの中に闇が芽生えた。
憎悪と怒りによって生み出される、どす黒い感情。
だが、それを必死に抑えた。
憎しみに負けて、戦ってはいけない。
だって俺は、クウガだから。

「雄介!」

後ろから、声が聞こえる。
振り向くと、先程出会ったフィリップという少年が、蓮を担いでいた。
その隣には、草加雅人もいる。

「彼は僕達に任せてくれ!」
「ありがとう、フィリップ君!」

フィリップの言葉に、クウガは力強く頷いた。
そして、バットファンガイアに振り向く。
クウガの隣に、変身を果たした海東大樹が並んだ。
この殺し合いに乗った、バットファンガイアの邪魔をするために。
シアンと黒を基調とした鎧、マスクに付けられた仕切り、右手に握られているディエンドライバーと呼ばれる拳銃。
数多の世界を渡り、財宝を狙い続ける大泥棒、仮面ライダーディエンド。

「ファンガイア……『キバの世界』で人間のライフエナジーを狙っていた、闇の一族か」
「何だ貴様は、俺の世界を知っているのか…………?」
「まあね」

ディエンドは、軽々と答えた。
バットファンガイアはその態度を見て、疑問を抱く。
この仮面ライダーは、ファンガイアの事を知っている。
もしや、自分の世界の住民なのか。
だが、その姿はキバともイクサとも違う。
あの忌々しい『素晴らしき青空の会』とやらが、また新しい兵器を作り出したのか。

(…………いや、関係ないか)

どんな理由にせよ、自分の邪魔をしようとしている。
ならば塵にすればいいだけ。
そして、逃げ出した人間共のライフエナジーを奪えばいい。
行動を決めて、バットファンガイアは前に出た。
立ち向かう為に、クウガとディエンドも突撃を開始する。










「君、大丈夫かっ!?」

戦場から少し離れた位置で、フィリップは気絶した蓮に呼びかけた。
しかし、反応はない。
殺し合いに乗っているかは分からなかったが、助けなければならなかった。
そんなフィリップの姿を、草加は冷ややかな目で見ている。

(やれやれ、分かりやすい奴らだな。まあ、その方が助かるけど)

これは、五代雄介の提案だった。
何処の誰かも分からない奴を、迷わず助けた。
こんな場所では、付け入られる隙となる。
だが、逆を言えば自分にとっても利用しやすい。
このフィリップも、殺そうと思えば殺せる。
しかし今は、五代や海東を利用するために我慢だ。

(そして、カイザが使えないとは…………)

三人と行動してから、隙を見てカイザギアを使おうとする。
だが、何の反応も示さなかった。
恐らく大ショッカーが、何か細工を仕掛けたのだろう。
殺し合いのバランスを取るために。
これはデメリットになるが、チャンスにもなる。
この細工は、何も自分だけに架せられた物ではないかもしれない。
異世界の仮面ライダーにも、同様の罠が仕掛けられているはず。
ならば、変身できない隙を突いて、殺すことも出来るかもしれない。
それは五代と海東にも、架せられているはず。
殺すことは出来るだろうが、今は我慢だ。

(フィリップといったか、良かったじゃないか。死ぬまでの時間を伸ばすことが出来て)

草加は心の中で呟きながら、フィリップを冷たく見つめる。
五代と海東という、邪魔者を潰すための戦力。
フィリップとは、草加にとってそれを確保するための手段に過ぎない。
もしも役に立たなくなったら、自分で始末する。
あるいは、いざという時の盾にすればいい。
不意に、草加は戦いが繰り広げられている場所に目を向ける。
そこではクウガとディエンドが、バットファンガイアと戦っているのが見えた。
見たところ、二人は不利な状況に追い込まれているように見える。
だが、どんな結果に終わろうと関係なかった。
勝てるのなら、それで良し。
奴らが負けるなら、見捨てれば良いだけ。
どんな結果になるにせよ、関係がなかった。

(待ってくれ、真理…………君は必ず、俺が生き返らせてみせるから)

既にこの世にいない愛しき少女、園田真理。
彼女への歪んだ思いを込めながら、草加は誰にも気づかれないように握り締める。
仮面ライダーナイトに変身するための、カードデッキを。
そして、北岡秀一の首輪も。
それは蓮を連れて行く際に、拾った物だった。
付属していた説明書によると、異世界の仮面ライダーに変身するための道具らしい。
だが、草加はこれを使うつもりはなかった。
今はクウガとディエンドが戦っている。
それなら別に、自分が無理に戦う必要はない。
こんな状況では、無闇に突っ込んだところで消耗するだけ。
それは馬鹿のすることだ。

(その為にも、君達にはうんと働いて貰わないとね…………)

草加の目には、同行する者達はただの捨て駒にしか映らない。
全ては真理を蘇らせるため。
その為に、草加は戦わなければならなかった。










「ダアッ!」

バットファンガイアの剛拳が、クウガを目掛けて放たれる。
神速の勢いで、真っ直ぐに突き進んでいった。
巨大な拳を、クウガは身体を捻って回避しようと試みる。
それによって、肩を掠めるだけで終わった。
チャンスが出来たと確信して、クウガはカウンターのパンチを放つ。

「はあっ!」

赤い拳は、バットファンガイアの巨体に叩き込まれた。
しかし、微塵にも揺れない。
クウガの拳は、蚊を刺す程度の痛みすらも感じなかった。
それでも諦めるつもりは、微塵も無い。
一発で駄目なら、もっと叩き込めばいいだけ。
こんな奴に、これ以上誰かの奪わせたくないから。
クウガは力を込めて、パンチとキックを放ち続ける。
しかしバットファンガイアは、それら全てを体勢をずらして、いとも簡単に避けた。

「うわあぁっ!」

直後、何かが砕けるような鈍い音が、悲鳴と共に響く。
バットファンガイアが、クウガの胸を殴りつけた音だった。
その威力はとても凄まじく、赤い鎧に凹みが生じる。
クウガの身体は、後ろへ大きく吹き飛んでいった。
地面を転がる一方で、ディエンドは銃口を敵に向ける。
そして引き金を引いて、弾丸を放った。

「ぬっ!」

銃声と同時に、バットファンガイアに命中する。
だが乾いた音を鳴らしながら、弾かれるだけだった。
ディエンドライバーから弾丸が放たれる一方で、バットファンガイアは地面を蹴る。
痛みなど感じていないので、避ける必要はなかった。
ディエンドとの距離を一瞬で詰めると、バットファンガイアは拳を振るう。

「うっ!」

剛拳によって、鎧に亀裂が生じた。
悲鳴を漏らしながら、ディエンドは地面に叩き付けられる。
倒れた彼に追い打ちを掛けるように、バットファンガイアは接近。
そして右足を振り上げて、勢いよく叩き付けた。

「フンッ!」
「――――っ!」

その悲鳴は、声になっていない。
バットファンガイアは続けざまに、ディエンドの胸を潰そうと何度も踏みつける。
一度受けるたびに、悲痛な声が漏れた。
ディエンドは抵抗しようとするが、激痛によって身体が動かない。
圧倒的な暴力は、一切の反抗を許さなかった。
バットファンガイアはディエンドを踏みにじる事に、意識を集中している。
その為、失念していた。
自分に拳を向けようとする、もう一人の存在を。

「ああああぁぁぁぁぁっ!」

咆吼と共に、視界の外から何かが近づいてくる。
それはバットファンガイアに激突して、衝撃が走った。
直後、異形の巨体は揺らいで、ディエンドから離れていく。
蹌踉めいた体勢を、バットファンガイアはすぐに立て直した。
そして、睨み付ける。
ディエンドと共に戦っている戦士、クウガを。
その姿は、先程とは少々異なっていた。
赤い鎧は黒く染まって、四肢の装飾品はボリュームを増し、ベルトの宝石が金色に輝いている。
それは放電を伴って会得した形態、ライジングフォームの最上位だった。
雷を司る、黒の金のクウガ。
アメイジングマイティフォームへと、クウガは姿を変えていた。

「うあぁっ!」

黒い戦士は、走る。
これ以上、この怪物に誰かの笑顔を奪わせないために。
これ以上、みんなを傷つけさせないために。
本当は、戦いなんて嫌だった。
殴るとは、相手の尊厳を傷つけることになる。
笑顔を壊すことになる。
それでも今は、戦わなければならない。
この怪物は、未確認生命体と同じだ。
人を何とも思わない、暴力の権化。
心が痛むのを感じるが、クウガは堪えた。
そして拳を握り締め、力強く振るう。
しかし、それをバットファンガイアは呆気なく止めた。
いくら上位形態とはいえ、相手はチェックメイトフォーのキング。
アメイジングマイティとなっても、差が開いたままだった。
反撃の一撃を、バットファンガイアは放つ。
それはクウガの頬に衝突して、体勢を崩した。
だが、すぐに立て直す。

(強い…………けど、ここで倒れちゃ駄目だ!)

クウガは、自分にそう言い聞かせた。
後ろには海東さん、草加さん、フィリップ君、そして名前も知らない男の人がいる。
そして、この世界には一条さんも何処かにいる。
ここで倒れたら、誰がみんなを守るのか。
絶対に諦めてはいけない。
絶対に倒れてはいけない。
痛みに堪えながら、クウガは拳を振るい続けた。
バットファンガイアも、殴り返してくる。
身体と胸が痛い。
でも、止まっては駄目だ。
こいつだけはここで倒さなければならない。
絶対に、許してはいけない。
殺された人は、もう戻ってこないのだから。
次第にクウガは、感情が高ぶっていく。
その最中、彼の脳裏にある光景が浮かび上がった。
四本の角が金色に輝き、全身が黒い輝きを放つ凄まじき戦士。
究極の闇の中から、稲妻を身体に纏って現れるクウガが。
興奮と共に、アークルから電流が流れ出す。
それは、全身へと流れていった。
両腕に、両足に、頭部に。

「――――だああぁぁぁぁぁぁっ!」
「――――おおぉぉぉぉぉっ!」

クウガとバットファンガイアは、吐息のかかる距離までに接近。
そこから同時に、拳を放った。
一発、十発、五十発、百発。
一度激突する度に、大気と地面が轟音と共に震える。
達人とも呼べる戦士達が揃ったからこそ、起こる現象だった。
やがて互いの拳は、互いの頬に叩き込まれる。
まるでクロスカウンターのように。
すると、クウガとバットファンガイアは大きく後ろに吹き飛ばされた。
当たったヶ所に、鋭い痛みを感じる。

「おのれっ…………!」

バットファンガイアは嗚咽を漏らしながら、ふらふらと立ち上がった。
一方でクウガは地面に倒れると、変身が解除されてしまう。
首輪の制限によって生じる、タイムリミットを迎えたため。
本来ならば、それは来るまでまだ時間があるはずだった。
しかし、上位の形態に変身すると、半分になるという制限も付けられている。
アメイジングマイティフォームに変身し、クウガの変身時間が短縮された。
結果、クウガの変身は解除されてしまう。
生身を晒した五代雄介は、起きあがる気配が見られない。
いくら強化形態になったとはいえ、相手はファンガイアの王。
その戦いで負った傷が、あまりにも深すぎた。
五代の命を奪おうと、バットファンガイアは歩く。

「ぐっ!?」

その最中、身体に僅かな衝撃が走った。
ディエンドが放った、銃弾が命中したことによって。
バットファンガイアの足が止まった瞬間、その身体が変化していく。
それを好機と見たディエンドは、五代を抱えて走り出す。
そのまま全速力で仲間達の元に向かい、この場から離れることに成功した。
バットファンガイアは追おうとする。
直後、その身体が人間の姿に戻ってしまった。

「な、何……!?」

あまりに唐突すぎる現象に、キングは驚愕する。
彼もまた、この戦いで架せられた十分の制限時間が、訪れてしまった。
無論、それを知ることはない。
木どころか、雑草すらも残っていない荒れ地で、キングは佇む。
先程ライフエナジーを吸った男、北岡秀一の遺品を彼は手に取った。
仮面ライダーゾルダに変身するためのカードデッキと、デイバッグを。
そして、『カブトの世界』に存在するディスカビル家に伝わる名剣、ディスカリバーも。

(…………どうやら、大ショッカーとやらが下らん細工を仕掛けたか)

キングは、自分の力に制限が掛けられていると推測する。
その証拠に、再びバットファンガイアに変身しようとするが、出来なかった。
どうやら、ファンガイアの力だけでは生き残れそうにないだろう。
これだけでなく、他の仮面ライダーの力を奪うことも、考えるべき。

「真夜…………」

不意に、最愛の女性の名を呟く。
彼女はファンガイアである自分よりも、人間であるあの男を取った。
この会場の何処かにいる、忌まわしい紅音也。
そして未来から来たと言われる、奴の息子である紅渡も何処かにいる。
この二人は、絶対に潰さなければならない。
奴らはキバに変身して、自分を殺した。
息子である太牙に全てを託したが、その必要はない。
自分がここで、奴らを殺せばいいのだから。

(そして、願いを叶えてみせる…………)

大ショッカーは、自分の世界の住民と協力し、戦いに残れと言った。
だがそんな真似など、出来るわけがない。
何処の世界に、敵対する種族と手を取り合う馬鹿がいる。
他の世界の住民は当然のこと、奴らも始末する。
そして、再び真夜を自分の物にする。
ファンガイアの王は利己的な愛を抱きながら、前に進んだ。
自らの願いのために。
本来の時間なら彼は、チェックメイト・フォーの一角、ビショップの手によって心なき殺戮マシーンとなっている。
しかし、大ショッカーは彼に再び自我を与えた。
己を取り戻した、キングの行く末は果たして。



【1日目 午後】
【B-8 森林】
※戦いの余波によって、ほぼ荒れ地となっています

【キング@仮面ライダーキバ】
【時間軸】現代編/復活後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、バッドファンガイアに二時間変身不可
【装備】ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×2、不明支給品(1~2)、北岡の不明支給品(0~2)
【思考・状況】
1:ゲームに勝ち残り、真夜を再び自分の物にする。
2:先程戦った仮面ライダー達(クウガ、ディエンド、ナイト、草加、フィリップ)を殺す。
3:紅渡と紅音也を殺す。
【備考】
※ 制限によって、ライフエナジーを吸う牙は、一度に一人分しか現れません。
※ 再び現れるのに、時間が必要です(どの程度かは、後続の書き手さんにお任せします)










森林から脱出して数分後、五人は皆生きていた。
しかし、五代と蓮は未だに目を覚まさない。
バットファンガイアとの戦いの傷が、深かったのだ。
そんな中、ディエンドの変身を解いた海東は考えている。
この会場で出会った初めての男、五代雄介。
本人は自分のことを、クウガと言っていた。
クウガと言えば、旅の仲間である小野寺ユウスケしか知らない。

(まさか、彼は本当にクウガだったとは)

その姿は、確かに仮面ライダークウガだった。
しかも、自分の見慣れているのと寸分の違いもない、赤い戦士に。
異なる点があるとすれば、フォームチェンジの後だ。
全身が黒く染まった、見た事のない形態。
あの時一瞬だけ、バットファンガイアに迫るほどの力を発揮していた。
これがユウスケのクウガとは、また違う証拠。
やはり、自分が知る以外にも『クウガの世界』はもう一つ存在するというのか。

(…………まぁ、これはあとでいいか。さて、問題はこっちかな)

海東は、フィリップの背負った男の方を見つめる。
何処の世界の誰かも知らない青年。
五代が草加とフィリップに頼んだから、ここまで連れてきた。
だが、この人物が何者なのかは不明。
もしかしたら、殺し合いに乗っている可能性もある。

(いや、その時はその時かな。いざとなったら、あの恐竜君もいるしね)

フィリップの支給品であるファングメモリを見つめながら、海東は結論を付ける。
あれは自らの意志を持つようで、戦うことも出来る優れ物だ。
出来るならば、手に入れてみたい気持ちがある。



三人の警戒を浴びていることを、秋山蓮は知らない。
そして自分の世界の住民が既に死んでいることを、秋山蓮は知らない。
目覚めた彼に、どんな運命が待ち受けているか。


【北岡秀一@仮面ライダー龍騎 死亡確認】
 残り51人
※ライフエナジーを吸い取られたことにより、北岡の遺体は消滅しました。



【1日目 午後】
【C-8 草原】



【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】気絶中、疲労(大)、ダメージ(大)、仮面ライダークウガに二時間変身不可
【装備】アマダム@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
0:…………(気絶中)
1:人々の笑顔を守る。
2:みんなと共に行動する。
3:一条さんと合流したい。
4:仮面ライダーとは何だろう?
【備考】
※支給品はまだ確認していません



【海東大樹@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】最終話終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、仮面ライダーディエンドに二時間変身不可。
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、不明支給品1~3(確認済み)
【思考・状況】
0:お宝を守る。
1:殺し合いに乗った奴の邪魔をする。
2:五代雄介、草加雅人、フィリップと共に行動
3:五代雄介の知り合いと合流
4:知らない世界はまだあるようだ
5:蓮(名前を知らない)を警戒
【備考】
※クウガの世界が別にあることを知りました。



【草加雅人@仮面ライダー555】
【時間軸】原作中盤以降
【状態】健康、仮面ライダーカイザに三十分変身不可
【装備】カイザドライバー@仮面ライダー555、カイザブレイガン@仮面ライダー555、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、首輪(北岡)、不明支給品1~2
【思考・状況】
1:真理の居る世界を守る為に、555の世界を優勝させる。
2:勝ち残る為にも今は演技を続けるが、隙があれば異世界の参加者は殺す。
3:真理を殺した奴を見付け出し、この手で殺す。
4:出来る限り、戦いは他の奴に任せる。
5:蓮(名前を知らない)を警戒。
【備考】
※カイザドライバーに何処までツールが付属しているかは後続の書き手さんに任せます。



【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作中盤以降
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、ファングメモリ@仮面ライダーW、バットショット@仮面ライダーW、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW
【思考・状況】
1:大ショッカーは信用しない。
2:出来ればここに居る皆と情報を交換したい。
3:草加雅人は完全に信用しない方が良い。
4:真理を殺したのは白い化け物。
【備考】
※支給品の最後の一つはダブルドライバーでした。
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。



【秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】第34話終了後
【状態】気絶中、疲労(大)、ダメージ(大)、仮面ライダーナイトに二時間変身不可
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品(0~1)
【思考・状況】
0:…………(気絶中)
1:自分の世界のために他世界の人間を倒す。
2:まずは目の前の敵・バットファンガイアを倒す。
3:北岡と協力する。協力できるなら、同じ世界の人間と協力したい。
4:同じ世界の人間を捜す(城戸優先)。浅倉とは会いたくない。
5:北岡や協力者と決着をつけるのは元の世界に帰ってから。
【備考】
※ サバイブのカードは没収されています(蓮は気づいていない)。


038: 投下順 040:Try-Action Delta form
038: 時系列順 040:Try-Action Delta form
006:共同戦線 北岡秀一 GAME OVER
006:共同戦線 キング 047:加速度円舞曲♯王と牙の運命
018:白の鬼札 草加雅人 063:草加雅人 の 仮面
018:白の鬼札 フィリップ 063:草加雅人 の 仮面
018:白の鬼札 海東大樹 063:草加雅人 の 仮面
018:白の鬼札 五代雄介 063:草加雅人 の 仮面
006:共同戦線 秋山蓮 063:草加雅人 の 仮面