愚者の祭典 涼の来訪に亜樹子の涙(後編) ◆LuuKRM2PEg






「はぁっ……はぁっ……また、逃げてしまった」

 紅渡は息を切らしながら、重い身体を引きずりながら歩いている。その姿は既にウェザードーパントではなく、元の人間の姿だった。
 また、逃げてしまった。先程殺そうとした、牙王の時と同じように。
 いくら自分が死んだら世界を救えないとはいえ、こんなザマでは何も成し遂げられない。
 ギガキャノンをまともに受けては、ウェザードーパントの身体でも危ない可能性があった。しかも連戦によって、身体には疲労が蓄積されている。
 だからこの選択を取るしか、思いつかなかった。そんな自分の迂闊さと不甲斐なさを、呪う事しか渡には出来ない。
 とにかく今は、身体を休める事しかできなかった。ディスカリバーとゾルダのデッキ、更にはガイアメモリまで奪われた今となっては、体勢を立て直す必要がある。

「名護さん、父さん……どうか、無事でいて下さい」

 同じ世界から連れてこられた、大切な人達の無事を祈った。足元が安定しない中、渡はただ歩く。
 彼の道は、たった一つしか残っていない。決して先が見えない、孤独な修羅の道だけ。
 世界を守りたいという、ただ一つの信念を持って。



【1日目 夕方】
【D-5 平原】


【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、返り血、ウェザードーパントに2時間変身不可、キバ及びサガに30分、ゼロノスに40分、ゾルダに1時間55分変身不可
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、ウェザーメモリ@仮面ライダーW、
    エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤二枚)@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、
    バッシャーマグナム@仮面ライダーキバ、ドッガハンマー@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0~1)
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
0:まずは何処かで体を休める。
1:爆発の危険のある東京タワーへ向かい皆殺し? それとも退避? あるいは……
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:加賀美の死への強いトラウマ。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※何処に向かうのかは、後続の書き手さんにお任せします。




 何処まで走ったのかなんて、分からない。何処を目指しているかなんて、考えていない。
 亜樹子を守りたい。ただその思いを胸に、ギルスは走っていた。
 やがてあの爆音が聞こえなくなったのを感じると、走る勢いは弱まる。亜樹子を危険から遠ざける事が出来たと、確信して。
 すると、ギルスは限界を迎える。先程の戦いで受けたダメージが、予想以上に深かった。
 身体のあらゆるところが悲鳴をあげる中、変身が解除されて元の葦原涼へと戻る。その手から亜樹子が離れた直後、彼は地面に倒れた。
 雷雲の元から離れてるからか、この辺りは濡れていない。しかし彼にとってはそんな事、どうでもよかった。

「亜樹子……無事か?」

 徐々に薄れていく意識の中で、たった気がかりとなっている女。
 自分が助けた鳴海亜樹子が無事なのかどうかが、涼にとって一番重要だった。
 亜樹子が口を開いて、何か言っているのが見える。しかしそれも、ロクに聞こえない。
 ただ、無事である可能性はあった。そう思った瞬間、涼の心が一気に解れていく。
 そのまま彼は安堵すると、その意識は闇の中に沈んでいった。



「涼君、涼君、涼君ッ!?」

 瞳から大量の涙を流しながら、亜樹子は倒れた葦原涼の身体を揺らす。
 自分は彼を騙してしまったのに。自分は良太郎君や翔太郎君達の思いを裏切ったのに。自分はたくさんの人を騙したのに。
 なのに何故、彼は自分の事を助けてくれたのか。何故、彼は自分の事を案じてくれたのか。
 わからない。わからない。わからない。
 いくら考えても、答えが出なかった。変わりに出てくるのは、凄まじい自己嫌悪と罪悪感のみ。
 その答えを聞きたいからなのか。涼が無事である事を確信したいからなのか。
 亜樹子はただ、彼の身体を揺らし続けていた。

「え……?」

 そんな中、彼女はある建物を見つける。それは、巨大な病院。
 亜樹子も涼も知らなかったが、ここはE-5エリアだった。故に、病院が見えたところで何の不思議もない。
 ギルスが走る内にここまで来たのかもしれないが、そんな事は今の亜樹子にはどうでもよかった。
 ただ、今の自分が何をするべきなのか。それだけが、彼女の思考を支配している。
 病院とは基本的に、人の傷を治すためにある素晴らしい施設。しかしそんな場所にも、人の命を奪いかねない物が存在する。
 それは手術で使われる、メスといった刃物だ。それを使えば、人を殺す事も出来る。
 無論、今この場で倒れている涼も、病院からメスを持ってくれば簡単に殺せるはずだ。

(あたし……今、なんて?)

 無意識の内に芽生えたその考えに、亜樹子は愕然とする。
 この殺し合いの場では、他者を踏みつけにするのは当たり前。自分の世界を救うために、他者を殺さなければならないのは当たり前。
 そんな事はとっくに分かっていたはずなのに、亜樹子の全身は震えてしまう。
 でも、涼君は自分の事を助けてくれた。そんな彼を自分は殺そうと考えた。覚悟はとっくに決めたはずなのに、身体が動かない。
 鳴海亜樹子はただ、葦原涼の傍らで涙を流す事しかできなかった。



 時間は迫っている。
 大ショッカーより告げられる、残酷な真実を知る時間が。
 それは、未来で結ばれるはずだった男、照井竜が既にこの世にいない事を意味する。それを耳にした亜樹子は一体、何を思うのか。



【1日目 夕方】
【E-5 病院付近】



【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、背中に火傷、胸元にダメージ、気絶中、ギルスに2時間変身不可
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品×2(確認済)
【思考・状況】
0:……(気絶中)
1:殺し合いに乗ってる奴らはぶっつぶす
2:人を護る
3:あきらや良太郎の下に戻ったら、一緒に行動する
4:鉛色と深緑の怪人、白い鎧の戦士を警戒
5:亜樹子……
【備考】
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。



【鳴海亜樹子@仮面ライダーW】
【時間軸】番組後半(少なくても第38話終了後以降)
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、恐怖(中)、精神的ショック(大)、複雑な感情、ファムに変身不可1時間25分変身不可
【装備】無し
【道具】無し
【思考・状況】
0:どうすれば……?
1:風都を護るため、殺し合いに乗る。
2:翔太郎や竜に東京タワーに来て欲しくないが……
3:涼を殺すか? それとも……?
【備考】
※ 良太郎について、職業:芸人、憑依は芸と誤認しています。


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最終更新:2011年11月03日 00:24