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太陽は闇に葬られん(後編) ◆/kFsAq0Yi2








(……行ってくれたか)

 そう天道は、走り去って行くファイズの背を心中で見送る。
 当然逃がすまいとライジングアルティメットが掌を翳すが、天道はその前に立って我が身を楯に波動の速度を少しだけ遅らせ、ファイズが逃げ切る時間を稼ぐ。
 カブトだった時は波動の中でも勢いの弱いところに何とか逃れていたが、今度は最も勢いの強い箇所に自ら飛び込んだのだ。全身から一気に力が消えて行く中、またも弾け飛びそうになるベルトを押さえながら、カイザは膝を着く。

(本来乾は、人の命の選択などできる奴ではないだろうな)

 きっとそれは、自分達が人類を守る仮面ライダーである上で正しいことだ。その道を選び、傷つき倒れたとしても、自分達は歩み続けなければならない。

 武器一つなく、スーツも装着者もとっくに限界のカイザはそれでも立ち上がり、天道が普段決して取ることのないガードの構えを取って、究極の暴力に対峙する。

 乾には酷なことをした、と天道は少しだけ申し訳なく思う。自分が彼の立場だったらどう思うか、想像するのは簡単だった。

 だが、変身時間の限られたこの場においては、生き残るべきは天の道を行き総てを司るこの自分ではなく、オルフェノクという固有の力を持つ乾巧だということは間違えようのない事実だろう。

 それでも乾は、そんな理屈よりも先により多くの変身手段を持つ自分がその分戦わねばと考える男だろう。多くの仲間を失ったことで、無茶をしでかす可能性も十分にあった。

 だから彼を退かせるために、時間を稼ぐためにも――例え彼の心を傷つけようと、決心をさせるためにも、天道は呪われたベルトに手を出した。
 乾はきっと傷つくだろう。何しろこの天道総司が死ぬのだから。だが天道は、それでも彼ならその痛みさえ乗り越えられる男だと信じていた。太陽の導きがなくとも、決して自分の道を見失いはしない奴だと。
 だからこそ、彼に世界を託せる。総ての世界の総ての命を守り、許し難い大ショッカーを打倒する仮面ライダーとして、戦ってくれると信じている。

 今自分がするべきなのは、乾巧が進むべき道に邪魔が入らぬよう、この敵を喰い止めること――気合いを発しながらライジングアルティメットに向かい駆けるカイザは、その拳にその強き想いを乗せた。

 その拳は究極を超えた闇に届くことはなく、逆に敵の拳を真正面から受けてしまう。

 縦に一回転して吹き飛び、天の道を行くこの身をまたも地に着けてしまいながらも、解けてしまえば終わりの変身を必死に保ちつつカイザはまた立ち上がる。

 そして、彼は見た。

 ライジングアルティメットの禍々しい姿が、元の男性の物へと戻っているのを。

「何……っ!?」

 戸惑っている内に、正面に立つ男の背後から飛来する斬撃。それは男の脇を通り過ぎ、カイザの装甲を切り刻む。意識の外からの攻撃に息を詰まらせてカイザは倒れ込む。

「ライジングアルティメットよ、奴を始末しろ!」

 飛ぶ斬撃を放った怪人からの、やや焦った声色の指示により男は歩みを再開し、動けないカイザを無視して脇に逸れた後、そこにしゃがみ込む。

 何をしているのか、という天道の疑問は次の瞬間晴れた。

 ――NASCA!――

 男は乾がこの場に残して行ったナスカメモリを手にしていた。
 だが、ガイアドライバーはその手にないはず……そう疑問に思うカイザの眼前で、男はそれを首輪に突き刺した。

 ――NASCA!――

 首輪にメモリが呑み込まれ、男の全身がナスカ・ドーパントへと変わる。
 だがそれは乾巧の変身していたそれとは違う、全身を真紅に染めたドーパントだった。

「赤いナスカ……R(レッド)ナスカといったところか」

 立ち上がりながら天道はそう一人呟き、考える。

(先程の声からすると、奴も焦ったようだった……やはりあの石であの男を操っていて、突然変身が解けたものだからその支配から逃れたとでも考えたわけか……)

 だが、と天道は腰の剣を抜くRナスカに身構えた。

(どうやら奴の支配から、この仮面ライダーは脱していないらしい。それなら何故変身が解けた?)

 敵の力はあまりにも圧倒的過ぎて、天道は瀕死ながら戦闘自体は未だ二分と数十秒を回った程度しか時を経ていないはずだ。変身に制限があることは把握しているが、こんな短い時間ではない。

 ならば何故か。天道は一つの可能性に行き着く。

 夕方、あのカブトムシの怪人と戦った際。奴はその姿を金色に変えてから、さらにその力を増し、自分達は逃げるしかなかった。

 その際、ウルフオルフェノクに連れられて逃げる中、天道は追い掛けようとしていた奴が人間の姿に戻るのを目撃していた。
 直前まで追いうちを仕掛けようとしていた奴が、何故変身を解いたのか。あの時はわからなかったが……あれは解いたのではなく、解けたのではないだろうか?

 おそらくあれは、カブトで言うハイパーフォームに値する、上位形態。ハイパーカブトの力は他のマスクドライダーとは一線を画しており、ライジングアルティメットが相手でも使用できていれば違う結果を招いたかもしれないものだ。
 それほどの力、殺し合いのバランスを保つために制限を課せられても何もおかしくはない。そもそも戦闘力の無い一般人まで巻き込んでおいてバランス調整も何もないのだろうが、他に可能性がないのならそれは真実足り得る。

 ライジングアルティメット。昇り行く究極。それはこのライダーの強化フォームだったのではないかと天道は考えた。それも、本来の極限(アルティメット)をも超越した。
 それ故に厳しい制限が課せられたため、こんなに早く相手の変身が解けたのではないか。

(なるほど……どうやら俺達は、敵の迫力に呑まれて選択を誤っていたらしい)

 ライジングアルティメットの力を感じ取り、圧倒的な速度で敵の頭を叩くことで一気に決着させようとしたが――実際には持久戦に持ち込めばこの悪魔的な戦闘力は直ぐに消え去っていたのだ。まったく以って判断を誤ってしまったとしか言えない。

 とはいえ、実際には乾が今この場に残っていてくれたところで、あの金色の怪人も相当な実力だ。ライジングアルティメットとの戦闘で大きく消耗した自分達では結局は返り討ちが関の山だろう。ライジングアルティメットの変身時間という重大な情報を他の参加者に伝えられないことは惜しむべきことだが、二人とも残っていればさらに苛烈な攻撃に晒され、共倒れになっていた可能性もある。乾が完全に逃げ切れた分、やはり今の状況の方がまだマシだろう。

 それでもライジングアルティメットに変身する男を仕留めることはできたかもしれないが、悪に操られただけの哀れな男の命を奪うなど、仮面ライダーである自分達には言語道断だ。

 必ず、俺の分も乾達がこの男も救ってくれる――そう思った天道の視界から、赤い影がまるでクロックアップのように消え去り、腰に強い衝撃を受けた。

「――っ!?」

 突然カイザの横に立っていた赤いナスカは、カイザギアから乱暴にカイザフォンを引き抜いていた。途端天道を包んでいたカイザの鎧が消失し、生身を晒す。

 それを確認したと同時に、天道の両掌から灰が零れ始める。カイザギアの呪い、オルフェノクやその強い記号を持つ者以外が変身すれば灰化し絶命すると言う話を乾から聞いていたが、自分にもそれが来たということだろう。

 だが、もう十分だろう。既に、時は稼いだ。アクセルフォームとなったファイズには、超加速のできる赤いナスカと言え、追い付くには距離が開き過ぎている。


「……何故笑っている?」

 近くにまで歩んで来ていた金色の怪人が、そう尋ねてくる。
 言われ天道は、自分が笑っていたことに気づいた。

 彼はいつものように人差し指を立て、天に向ける。そして、敬愛する祖母の言葉を紡ぐ。

「おばあちゃんが言っていた。散り際に微笑まぬ者は、生まれ変われないってな」

 身体が灰となって崩れて行くのがわかる。それでも天道はさらに、祖母からの借り物ではない、自分自身の、確信に満ちた言葉を紡いだ。

「――そしてこの地には、この俺に並ぶような奴らが、仮面ライダー達がいる。だから、何も心配せずに逝けるということだ」

 ――かつて、人間からアメンボまで、世界中の総ての命を救うと決めた自分が、取り零してしまった者が居た。
 それは、生前よりこの会場に連れて来られた、もう一人の自分。
 ネイティブの悪魔の如き所業により、世界の総てを憎んでしまったあの男。世界の総てに拒絶されたと思い込んでしまった彼を、救ってくれた者達がいる。
 それは、この天道総司にさえできなかったことだ。
 人類の味方、仮面ライダー。それは天道も目指した、正義の守護者達。
 乾のように、名護のように、どんな絶望や困難にも負けない者達が、この会場にはいる。

 そして、おばあちゃんが言っていた。この世に不味い飯と悪の栄えた試しはない、と。

 ならばこの怪人や大ショッカーのような奴らは必ず敗れる。それが世の理だ。

 ただ、元の世界に残して来た妹達のことと、もう一人の自分がどう生きるのか、その道を決めたところまで見届けることができなかったことだけは心残りだが……

 二人の妹は、強い娘達だ。彼女達を想い、助けてくれる人々も何人もいるだろう。自分が帰らないことで悲しませてしまうだろうが、きっとそれも乗り越えて、また眩しい笑顔を見せてくれる。

 そしてもう一人の自分もきっと、もうかつてのように世界を拒み、自分自身さえ傷つけるようなことはしないと、そう確信できた。

 何故なら、今の彼には支えてくれる仲間が、大勢いるのだから――

 それを最後に、天の道を行き、総てを司る男――天道総司の思考は、永遠の闇に葬られた。






「……死んだか」

 最期まで微笑んだまま、灰となって崩れ去った男を見て、金居はそう呟いた。

 既にギラファアンデッドへの変身は解き、灰の山からカイザギアを拾っている。五代もナスカへの変身を解除し、金居の指示でガイアドライバーを回収して来ていた。

 ――思っていた以上に、二人の仮面ライダーとの戦いから得た収穫は多い。

 それが金居の率直な感想だった。

 二人の口から情報を得ることはできなかったが、彼らとの戦いでライジングアルティメットの真の戦闘力の一端が垣間見えた。また、ライジングアルティメットへと五代が変身していられる時間がおよそ二分と数十秒であるということも把握した。
 おそらくはそのあまりにも強過ぎる力を大ショッカーによって制限されているのだろう。放送直前の戦闘で突然変身が解けたのも地の石の支配の問題もあったかもしれないが、単純に時間制限を迎えただけだったと考えられそうだ。

 先程の戦闘で見たように、複数の――それもかなりの実力の仮面ライダーを一切寄せ付けなかったライジングアルティメットの力はまさに無敵と呼ぶに相応しいが、二分程度しか変身を保てないのならやはりこの力でゴリ押すことを前提とした立ち回りは好ましくない。今回のように戦闘が避けられない時だけに使用は留めるべきだろう。

 次にこれまたライジングアルティメット……というより五代についてだが、表出て来る意識はなくとも記憶は残っているようだ。金居はガイアメモリのことを知らないが、五代はその使用方法を知っており、指示されずともそれがどのような代物か把握して金居の命を実行した。
 となると、下手を打って彼にとって親しい者などと接触させれば支配に影響が出るかもしれない。そのことは警戒するべきだろう。

 そもそも個人としての感情や意志を剥奪されている今の五代自体、積極的に他の参加者と潰し合うつもりのない金居にとっては扱いに悩むものだ。ある程度参加者が減ればその絶大な戦闘力で一気に勝利まで近づけてくれるだろうが、それまではどうしておくべきなのか。
 いや、そもそも地の石による支配を信じ過ぎることは危険かと、金居は首を振る。

 第三に、カイザギアを適正がない人間が使えば本当に死んでしまうと言うこと。現状では五代の変身手段が他にないためともかく、できるなら敵対者にはこれを渡して始末するのも悪くはない。仮面ライダーカイザはライジングアルティメットには無論、自分から見てもそこまで脅威ではなく、既に戦力を把握している以上、敵に未知の力を使用されるよりよほどやり易い。さらに言えば、どのようにして敵にプレゼントし、変身させるかという問題はあるものの、殺害した相手の死体が残らないことは金居の現在のスタンスにとって理想的だ。

 四つ目は、情報ではなく道具。ファイズアクセルを失ったが、充分にお釣りの来るナスカメモリとガイアドライバーを手に入れた。五代は首輪にあるコネクタで使用したが、敵だった男はわざわざベルトを使って変身していた。その差が体色の差なのかはともかく、よりこの変身ツールに詳しいと考えられる敵――乾と呼ばれていた男がそんな手間をわざわざ踏むのなら、何か理由があるのかもしれない。五代に使わせる場合はともかく、自分が変身する時はガイアドライバーを使うべきだなと金居は結論した。

 最後に、この灰となった男。変身先のあまりのスペック差にライジングアルティメットとは戦いにならなかったが、それでも暗黒掌波動の弱所を見切ってダメージを軽減し、仲間よりも早く体勢を立て直して本人も落下中に正確な援護射撃を行い、金居の反応を超えた超高速移動能力さえ見せた。それさえ易々と対処したライジングアルティメットも恐ろしいが、それから何発も貰った上でなお自分に変身を余儀なくさせ、あまつさえただではやられず支給品を回収して行く天道も相当だ。
 最終的には怪人であるが故に変身手段が自分よりも豊富である仲間を逃がすため、躊躇わず自らの命を捨てた。その戦闘技術・判断力ともに非常に高いレベルで、どのようなスタンスだろうと強敵として金居の前に立ち塞がるはずだっただろう男がここで消えてくれたのは幸運だった。
 天道の死は、おそらく奴を知る他の参加者にも大きな影響を与えるだろう。それも、多くの者にとって耐え難い喪失となって。

 そこで金居は薄く笑みを浮かべ、現状確認から今後の方針へと思考を切り替えた。

 さて、自分達が殺し合いに乗っているということを知った参加者が一人逃げてしまったが……先の戦闘で負ったダメージは尋常ではないもののはず。弱った今が間引き時だろうが、五代の扱いはともかく病院に行く都合もある。口封じのために追いかけて仕留めるべきか、否か……



 今後の方針について思考を巡らせる金居のすぐ傍で、地の石によって支配された五代雄介は物言わず仁王立ちしていた。
 彼は自らの手で、天道総司を殺め……その笑顔を、奪ってしまった。
 地の石によって封じ込められた彼の心に生じただろう深い悲しみと後悔と強い怒りに、今まさにガイアドライバーにより除去されなかったナスカメモリの毒素が流れ込み、結合しようとしているのかもしれない。


 未確認との激闘の中でも、人間らしい優しい心を決して最後まで失うことのなかった五代雄介。異世界の霊石によって封印された彼の心がもしも再び解き放たれた時、メモリの毒に侵された彼がなおもその心を保てたままなのか……
 もしかすれば、太陽を葬り去ったことによって――より深く、より恐ろしい闇が生まれ出でることになったのかもしれない。
 その答えを知る者は、今はまだ、どこにもいなかった。



【1日目 夜中】
【E-7 荒野】

【金居@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】健康 、ギラファアンデッドに1時間55分変身不可
【装備】デザートイーグル(2発消費)@現実、カイザドライバー@仮面ライダー555、カイザブレイガン@仮面ライダー555、カイザショット@仮面ライダー555、ロストドライバー@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×3、地の石@劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、
五代の不明支給品×1(確認済み)、草加の不明支給品×1(確認済み)
【思考・状況】
0:逃げた参加者(乾)を追うべきか否か……
1:自分の世界の勝利を目指す為、他の世界の参加者同士で潰し合わせる。能動的に戦うつもりはない。
2:他の世界、及び大ショッカーの情報を集める。
3:自分の世界の仮面ライダーは利用出来るなら利用する。アンデッドには遭遇したくない。
4:利用できる参加者と接触したら、乃木を潰す様に焚きつける。
5:地の石の力を使いクウガを支配・利用する(過度な信頼はしない)。
6:22時までにE-5の病院に向かう。
【備考】
※アンデッドが致命傷を受ければ封印(=カード化)されると考えています
※首輪が自身の力に制限をかけていることに気づきました
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※地の石の効果を知りました。
※五代の不明支給品の一つは変身一発@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロストです
※金居のデイパックはカブトゼクターに破壊されたため、草加から奪ったデイパックを使用しています。
※五代のライジングアルティメットへのおおよその変身時間を把握しました。


【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後
【状態】健康、地の石による支配 、仮面ライダークウガに1時間53分変身不可、ナスカ・ドーパントに1時間55分変身不可
【装備】アマダム@仮面ライダークウガ 、ガイアメモリ(ナスカ)+ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】無し
【思考・状況】
1:地の石を持つ者(金居)に従う。
【備考】
※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。
※地の石による支配力がどれぐらいかは次の書き手以降に任せます。
※地の石の支配によって、言葉を発する事が出来ません。
※ガイアドライバーを介さずにガイアメモリを使用したことで精神が汚染された可能性があります。現在は地の石による支配によって表に出ませんが、どのような影響するのかは後続の書き手さんにお任せします。






 乾巧は、哭いていた。
 また仲間を失ったこと。自分を助けるために、天道総司が犠牲となったこと。
 自分がオルフェノクでなく、あの銃声に気づかなければ、天道は今も生きていたこと。
 自分が彼にカイザについて教えていなければ、こんなことにはならなかったかもしれなかったこと。
 それらの事実が、巧の心を深く、大きく、傷つけていた。

「天道……っ!」

 偉そうで、無愛想で、人間からアメンボまで世界に生きる総ての命を守るという、臭い台詞を自信満々に吐くような、大きい器をした、強い仮面ライダーだった男。
 元の世界では彼を待つ、彼が護らなければならない妹達が居ると言う。
 なら自分だろうと……死ぬべきだったのは、既に命を失くしたオルフェノクである自分だろうと、巧は拳を地面に叩きつける。
 何度も、何度も。血が滲んでも構わずに。

 何も護れない。海堂が命を懸けて、もう一人の天道を救ったと言うのに、自分は死人の分際で天道を犠牲にして生き残ってしまった。霧彦の死に目に約束したような良い風など、自分なんかでは吹かせられなかったのだ。

 何度も、何度も。巧はひたすらに自分の拳を痛めつけた。

「天道ォ……っ!」

 再び拳を振り降ろそうとして、巧の脳裏に彼の最期の頼みが蘇る。

『――俺の夢は、人間からアメンボまで、世界中の総ての命を守り抜くことだ』

『それをこんなところで終わらせないでくれ、乾』

 天道のその声を思い出し、血が滲むほどに握り締めた拳を――巧は、振り降ろせなかった。
 彼が自分に望んだことは何だ? 彼を犠牲に生き延びた罪悪感から逃れるために、こうやって自らを痛めつけることか? そんな下らないことを望むような、小さな男だったか?

 答えは否。断じて違う。

 彼は太陽のように大きな男だった。彼が今の自分の立場だったら、こんな風に悲しみに屈したりはしない。無様な醜態を晒すことなど決してしない。
 なら自分はどうするべきなのか。彼に貰ったこの命を、どう使うべきなのか。

「……決まってるよな、天道」

 そう巧は、ぽつりと呟いた。

 自分達は――正義のために戦う人類の味方・仮面ライダーだ。
 こんなところで膝を着いている場合じゃない。仲間を失ったのなら、その仲間の分も、誰かを護るために戦いを続けなければならない。
 太陽を見失っても、暗闇に屈して立ち止まってはならない。

「――俺が、護るぜ。おまえの世界も、霧彦の世界も、俺の世界も、全部の世界を、だ。総ての世界の、人間からアメンボまで、総ての命を護り抜く。俺がおまえの代わりになる。
おまえの理想は、俺が継ぐ」

 霧彦の妹さんも、天道の妹さんも、自分が必ず護り抜く。

 総ての世界の総ての命を護り、そこに暮らす皆を洗濯物が真っ白になるように幸せにして、綺麗な風を吹かせる。そのために最期まで戦い抜いてみせる。

 何故なら自分は、乾巧は、仮面ライダーなのだから。

 そうだろ? 真理、木場、海堂、霧彦、天道……!

 決意を胸に、彼は再び歩き始めた。

 散って行った仲間達のために。仮面ライダーとして。
 闇に葬られた太陽の代わりに、闇を切り裂き、光をもたらすために。



 そうして再起した巧の様子を、上空から見守る影が一つ。
 主人の考えた通り、彼は仲間を失った痛みを乗り越えた。ならばきっともう大丈夫だろう。彼はあの天道総司が認めた、仮面ライダーなのだから。

 その再起を見届けた自分の次の使命は、天道総司の代わりとなって天の道を行く者を探すこと――それが使命だと、カブトゼクターは考えていた。

 最後まで自分を貫き通した総てを司る男の、わずかな未練を果たしてくれる者を探すために。

 天道がカイザになった際に手放したベルトを抱えて、カブトゼクターは夜の中を飛ぶ。

 この闇を照らす、新たな太陽を求めて。



【1日目 夜中】
【D-6 草原】



【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、深い悲しみと罪悪感、決意、ナスカ・ドーパントに1時間45変身不可、ウルフオルフェノクに1時間45分変身不可、仮面ライダーファイズに1時間55分変身不可、右手に軽い怪我と出血
【装備】ファイズギア+ファイズショット+ファイズアクセル@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、ルナメモリ@仮面ライダーW、首輪探知機、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー電王トリロジー、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:天道の遺志を継ぐ。
1:仲間を探して協力を呼びかける。
2:間宮麗奈、乃木怜治、村上峡児、キングを警戒。
3:霧彦のスカーフを洗濯する。
4:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
5:橘朔也、日高仁志、小野寺ユウスケに伝言を伝える。
6:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
7:首輪を解除するため、『ガイアメモリのある世界』の人間と接触する。
8:石を持った眼鏡の男(金居)とそれに操られている仮面ライダー(五代)の危険性を他の参加者に伝える。
【備考】
※変身制限について天道から聞いています。
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。



【天道総司@仮面ライダーカブト 死亡確認】
  残り34人
※天道の遺体は灰化しました。首輪は【E-7 荒野】に放置されています。

【全体備考】
※E-7エリア 草原が戦いの余波で荒野となりました。
※カブトゼクターが次の資格者を探して移動を始めました。行き先は後続の書き手さんにお任せします。




088:太陽は闇に葬られん(前編) 投下順 089:肩の荷は未だ降りず
088:太陽は闇に葬られん(前編) 時系列順 091:献上
088:太陽は闇に葬られん(前編) 五代雄介 094:Dを狩るモノたち/共闘(前篇)
088:太陽は闇に葬られん(前編) 乾巧 100:狼と死神
088:太陽は闇に葬られん(前編) 金居 094:Dを狩るモノたち/共闘(前篇)
088:太陽は闇に葬られん(前編) 天道総司 GAME OVER