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献上 ◆/kFsAq0Yi2




 夜の闇に紛れず、強い存在感を放つ白き影の名は、ン・ダグバ・ゼバ。究極の闇を齎す者、グロンギの王たる少年である。
 歪な頭部を持つ獣のようなバイク、バギブソンを背に座り込んだ彼の眼前には、自らの巻き起こした惨状が広がっていた。
 市街地を崩壊させるほどの戦いも、彼にとっては児戯にも等しい。そもそもこの世界存続を懸けたバトルロワイヤル自体が、彼にとっては面白そうなゲゲルであるという以上の価値がないのだが。

 そのゲゲルのルールとして、参加者には制限が加えられている。仮面ライダーや怪人態といった超常の力を発揮する異形を保てる時間はわずかに10分のみ。それを一度過ぎれば、およそ二時間無力なただの獲物と化してしまう。
 その制限は究極の力を持つダグバにも例外なく適用されていた。絶対者である自分を縛り付ける首輪を軽く叩いて、ダグバは笑みを深める。

 彼の属する世界において、ダグバに太刀打ちできる者など同じ凄まじき戦士である究極の形態となったクウガだけだったが、異世界のリントは本当に面白い。他者に施すばかりであった自らに恐怖を与え、このような戒めまで施している。
 純粋な力であればやはりクウガ――自らと同じ世界の熟練した戦士と、異世界より現れた未熟な、しかし究極の闇を齎す者へと到達したもう一人のクウガの二人以外、ダグバを害することの叶う者は存在しないだろう。だがこのゲゲルに招かれた者達は、その埋めがたき差をこのような道具で無きモノとして来る。ほんの30分前に持ち得る戦闘手段を浪費した今のダグバは、究極の闇を齎す絶対の暴君ではなく、首輪の効力によって脆弱なリントと等しき存在にまで堕ちていた。故に今、他の参加者が現れようものならダグバは恐怖のままに虐殺されるだろう。

 自身と同等の存在との命の削り合いで覚える恐怖こそ、ダグバにとっては至高の感情だが、虫のようなちっぽけな存在に逆に蹂躙されるというのも面白いかなと、彼が思った時だった。

 連続する鉄馬の嘶き――バイクのエンジン音がダグバの耳に届いたのは。

 立ち上がり、それのする方を向いた究極の闇を齎す者の周囲に広がっていた脆弱な闇が、強い光に切り裂かれた。

 ダグバの方に向かって来たのは深いワインレッドの、流麗なフォルムをしたバイク。それを駆る巨躯の軍人の顔は、ダグバに覚えのあるものだった。

「目的地が焼き払われたと思えば……やはりおまえか」

 現れた軍服の男――カブトエクステンダーを駆るゴ・ガドル・バの言葉を、特にダグバは聞いていなかった。
 リントの如き今の自分では、ゴ集団最強であるガドルに抗う術などない。ダグバは恐怖がむくりと起き上がるのを感じて……

「……今、使える力はあるのか?」

 そのガドルの問いに、急激に冷めた気分になりながら答えた。

「ないよ」
「そうか」

 ガドルの返事は短かった。そうだろうな、とダグバは失望したように溜息を吐く。
 ガドルはグロンギの中では、自分とはある意味最も近い存在だ。それは有する力のことではなく、その精神。二人はただの殺戮を喜ぶ他のグロンギと異なり、自身を脅かす強者との戦いを望む。ガドルは己を研磨し、最強へと近づくため。またダグバにとっては、それだけが手に入らないものであった故に。

 そんなガドルが、本来の姿になれない自分を殺すとは考え難い。究極の闇を齎す者である本来のダグバを超越した、真の最強になることが彼の目的だからだ。
 使える力があるかという問いを発する時点で、彼は自分が究極の力を先程使用したことと、制限の存在を把握しているというのは間違いないだろう。他の力があるとブラフを使ってもこちらから仕掛けなければガドルは今のダグバに手を出さないだろうし、リントの姿のままで襲い掛かっても相手にしないだろうことから、事実を伝えるしかなかった。

 せっかく、恐怖を味わえると思ったのに……

 そう嘆くダグバの前で、ガドルも考え込むようにどこかを見ていた。

 バイクのアイドリング音だけが木霊する静寂の中、二人のグロンギがただそこに立っていた。

「……仕方がない、か」

 やがて思案していたガドルはそう決断の溜息を漏らすと、ダグバの目の前で自身のデイパックを手にした。
 そうして一瞬だけ躊躇するような表情をした後、ダグバに箱のようなものを投げて来た。

「――これで戦って欲しいの?」

 スペードのマークの刻まれたその箱を笑顔と共に翳すダグバだが、ガドルは否と首を振る。

「持っておけ。究極の闇を以ってして及ばなかった相手ならともかく、下らぬ制限で弱き者に貴様が倒されることは許せん」

 そして、とガドルはさらに付け加える。

「それは仮面ライダーの力だ。そのブレイドという戦士は特にその誇りを貫いた強き戦士だった。本来リントを護る戦士である彼らの力を、貴様に与える時点で矛盾しているが――せめてその力に恥じぬよう、無様だけは晒すな」

「へえ……」

 少しだけ、ダグバの内に苛立ちがあった。
 誰に向かって、何様のつもりでこんな言葉を吐くのだろうと――愚か者を見る目でガドルを見たが、そこで認識を改めた。

「ガドルが僕の前で、そこまで言うなんてね……」

 王が見た破壊のカリスマを自称するグロンギの瞳は、驕りなき誇りを持つ強き戦士のもの。
 ガドルはその、『仮面ライダー』の敵であるということに、心からの名誉を抱いているのだ。
 これまでずっと、ダグバしか見て来なかったあのガドルが、そのダグバと同じくらいに、敵対者として『仮面ライダー』を認めている。

「……凄いんだね、仮面ライダーって」
「――ああ」

 僅かな間は、返答への躊躇いなどではなく、胸中に蘇った強敵への想いを噛み締めるためのものだろうということは、ダグバにも見て取れた。

「そんな相手だからこそ、殺す価値がある」

 そう満足げに呟くガドルは、どうやら相当仮面ライダーにお熱のようだ。だがそれは彼の隙になっているわけではなく、むしろ逆らしい。
 テラーメモリの力でダグバがこのゲゲルの認識を改めたように、ガドルも仮面ライダーとの戦いを通じ、視野が広くなったのだろう。ダグバに挑むためのゲゲルの標的としか見ていなかった敵対者を、己の全霊を懸けて挑むべき強者だと認めたのだ。

 ただノルマのようにこなす殺戮とは違う、互いの全てを懸けた真なる闘争。今のガドルはそれをいくつか乗り越えて来たのだろう。

 午後に顔を合わせた時、単純にガドルはグロンギの中で自分の次に強いから――といった程度の理由でしか期待していなかったが、今のガドルは違う。一度戦うごとに、心身ともにグンとその力を増すだろう。
 戦う理由は違えども、まるでクウガのように。
 いつか、本当に究極の闇を齎す者に相対できるほどに。

「……その傷も、仮面ライダーにやられたの?」

 それまでのガドルの動きから、左半身に酷い裂傷を負っていることはダグバには察知できていた。
 ダグバの問いに、ガドルはにんまりと頷く。

「ああ。――別の仮面ライダーには、敗北さえした」

 なら何故ガドルが生きているのか――それは問わない。
 先程自分が殺した白い仮面ライダーをダグバも思い出す。彼の力は弱かったが、それを補う技量や――それ以上に、ダグバにはよくわからない面白さがあった。そして、既に絶命しているはずの身でダグバに一撃を入れて来たのだ。
 おそらくは似たような状況で、その仮面ライダーは勝利まで後一歩、命が保たなかったのだろう。

(良いなぁ……)

 負けたことを嬉しそうに報告するガドルを本当に変わったと思いつつ、自分と違って何人も命のやり取りができる好敵手が存在する彼に、そう素直に羨望を抱く。

 そこでダグバは悪戯したくなって、少し試すことにした。ポケットに入れておいた自身のベルトの欠片を手に取り、ガドルへと投げ渡す。

「……何だ、これは?」
「ゴオマから返して貰った、僕のベルトの欠片だよ。……大丈夫、僕のバックルはちゃんと修復されているから」
「……どういうことだ?」
「大ショッカーは、別々の時間から僕やガドル、ゴオマを連れて来たみたいだよ」

 その言葉に軽く衝撃を受けたかのように双眸を見開くガドル。まじまじと大きな掌に収まった金の欠片を注視し、再びダグバを向く。

「それでこれは、どういう真似だ?」
「これのお返しだよ」

 ダグバはそう再びスペードの意匠をされたバックルを掲げる。

「それを使えば、僕の――究極の力の一部が手に入るよ」

 ダグバの言葉に、ガドルは再び驚き、欠片へと視線を向けた。
 だが特に迷うようなこともなく、ガドルはダグバにそれを投げ返して来た。

「――不要だ。俺は仮面ライダー達と戦い続けるが、ダグバ、貴様が俺のザギバスゲゲルの相手であることには代わりはない。その相手から施される力など要らん。力が欲しければ自分で奪い取る」

 そのガドルの返答に、ダグバは笑顔を返す。
 本人も知らない内に、少しだけ深くなった笑顔を。

「うん。僕も今のガドルなら、ザギバスゲゲルに来る頃には、僕を笑顔にできると思うよ」

 もし欠片をそのまま持って行こうとしたのなら、これ以上は期待できないからこの場で殺すつもりだったが――やはりこのグロンギは、ゴオマのような盗んだ力で図に乗る愚か者とは違った。
 あくまで己の力を鍛え上げ、自身が手にした力で究極を目指すガドルに、ダグバはそう本心からの期待を伝えた。

「ダグバ、待っていろ」

 ブレイドという仮面ライダーについて、彼の見聞きした限りの情報をダグバに伝えた後、再びバイクを走り始めさせたガドルがそう、いつもの挨拶を残して行く。
 ダグバが崩壊させた市街地の方へと鉄馬を従え向かうガドルは、直ぐに小さな点になってダグバの視界から消えつつあった。
 その背に向けて、ダグバは呟く。

「――待ってるよ」

 ――それはグロンギ同士が邂逅したにしては、あまりに穏やかな交流だった。
 ただガドルにはダグバ以外にも倒すべき強き戦士が現れ、ダグバにとってクウガ以外に、本当に自分を笑顔にしてくれるかもしれない者を見つけることができたこのバトルロワイヤルの会場で、それぞれの現状が互いにとって望ましいものであったからだろう。故に、今は戦わず互いのゲゲルを続けることを優先したのだ。

 ダグバはガドルから渡された仮面ライダー――ブレイドの力を見て、思う。
 なるほどリントを護る宿敵の力を、リントを滅ぼすダグバに渡すことは抵抗があったのだろう。ただ敵に感化され過ぎることのなかったガドルにはやはり甘さはない。例え明らかに重過ぎる傷を負っていようと、おそらくは他のゴでも今のガドルには敵わないだろう。あるいは、あの時ガドルを殺した黒の金のクウガと戦っても、怪我にも関わらず結果は変わるのではないかとさえ思える。
 そのガドルが自分の前に現れるか、あるいはそのガドルすら打倒し得るほどの強者が立ち塞がるか――
 どちらにせよ笑顔になれそうだと思ったダグバは、バックルをデイパックにしまおうとして――

「ブレイド……?」

 ある事実に気づき、別のデイパックに手を出す。
 夕方、別世界のクウガを怖くするために整理した男から奪った支給品。その内の仮面ライダーの力は先程の戦いで壊されてしまったが、他にも手に入れた物があった。
 武器ではなかったために意識の隅に追いやってしまっていたのだが、その説明書には面白いことが書かれていた。

「あった……」

 取り出したのは、一つの箱。
 そのアイテムの名は、ラウズアブゾーバー。
 仮面ライダーブレイドもしくはギャレンを強化フォームへと変身させるための装備。
 そのままでも、今のガドルに称賛されるほどの力を持つ仮面ライダーの力を、さらに強化できるというアイテムはダグバの興味を引くのに十分だった。

「ガドルやクウガを待ってる間、これで遊んでみるのも面白そうかな」

 ラウズアブゾーバーを使用するのに必要なカードは、今は手元に足りていないらしい。
 それならガドルが言ったように、それを持つ参加者を見つけ出して奪い取るのも一興だろう。

 ガドルの言う仮面ライダーの誇りというのは、ダグバには正直わからない。そもそもさほど興味がない。
 善も悪も、リントもグロンギも、どんな存在が抱くどんな情念だろうと、それ自体にダグバは何も価値を見出さない。
 ダグバが他者に求める本質は結局、それらを積み重ねた上での力が、どれほど自分を愉悦させてくれるのか、ただその一点のみ。

 だから、その力への純粋な興味だけが、究極の力を持つグロンギの王の中にあった。




【1日目 夜中】
【E-2 市街地跡地】
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、恐怖(小)、怪人態及びリュウガに1時間30分変身不可
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、モモタロスォード@仮面ライダー電王 、ブレイバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(スペードA~6.9)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×3、不明支給品×1(東條から見て武器ではない)、音也の不明支給品×2、バギブソン@仮面ライダークウガ、ダグバのベルトの欠片@仮面ライダークウガ、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【思考・状況】
1:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
2:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
3:ガドルやリントの戦士達が恐怖をもたらしてくれる事を期待。
4:新たなる力が楽しめるようになるまで待つ。
5:余裕があれば残りのスペードのカードを集めてみる。
【備考】
※ガイアドライバーを使って変身しているため、メモリの副作用がありません。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※音也の支給品を回収しました。
※東條の不明支給品の一つはラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣でした。


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第45話 クウガに勝利後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、左腕及び左上半身に酷い裂傷、カブトエクステンダーを運転中
【装備】ガイアメモリ(アームズ)@仮面ライダーW 、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:ゲゲルを続行し、最終的にはダグバを倒す。
1:強い「仮面ライダー」及びリントに興味。
2:タツロットの言っていた紅渡、紅音也、名護啓介に興味。
3:蛇の男は、真の仮面ライダー。彼のような男に勝たねばならない。
4:仮面ライダーの「正義」という戦士の心に敬意を払う。
5:ゲゲルが完了したらキング(@仮面ライダー剣)を制裁する。
【備考】
※変身制限がだいたい10分であると気付きました。
※『キバの世界』の情報を、大まかに把握しました。
※ガドルとタツロットは互いに情報交換しました。
※海堂直也のような男を真の仮面ライダーなのだと認識しました。
※参加者が別の時間軸から連れて来られている可能性に気づきました。




089:信じる心 投下順 091:Sを受け入れて/地獄の兄妹
088:太陽は闇に葬られん(後編) 時系列順 093:君はあの人に似ている (前篇)
087:防人(後篇) ゴ・ガドル・バ 096:Tを継いで♭再戦(前篇)
086:This Love Never Ends♪音也の決意(後編) ン・ダグバ・ゼバ 102:G線上のアリア/ファイト・フォー・ジャスティス