Kamen Rider: Battride War(12)   ◆.ji0E9MT9g





F-6エリアにある住宅街、その中にある一見すると見逃してしまいそうな小さな廃工場の中で、彼らは休息を取っていた。
中にいるのは乃木、矢車、葦原の三人。
中でも葦原は、一人落ち着きなく建物内を歩き回っていた。

「……いい加減やめたらどうだ?どうせもう病院には禁止エリアの関係で戻れん」
「例えそうでも!俺はヒビキを助けに戻りたいんだ!あいつは俺たちのために――!」
「……はぁ、葦原涼、病院の方面に戻り彼らと合流するかを決めるのは放送を聞いて、俺たちの変身制限が解除されてからだってことで解決したと、何度も説明しただろう」
「それでも俺は――!」

先ほどからずっとこの調子だ。
何度合理的に説明しても、だだをこねる子供のようにフィリップを、ヒビキを助けに行くと聞きはしない。

「……全く以てうるさいやつだ」
「……貴様と意見が合うなんて、最悪だな」

葦原に聞こえぬように漏らした乃木の愚痴をどうやら聞いていたらしい矢車と顔を見合わせ、深くため息をつく。
どうせならこの場から逃げ出したいのだが、生憎右足が真反対にへし折れてしまっているためにそれも叶わない。

(いや、ここまでのダメージならば、いっそ――)

と思考をして、ふと葦原に気を取られ気付かぬ内に消えていた存在を思い出す。

「矢車想、そう言えば鳴海はどこだ?」
「あぁ、お花摘み、ってやつだ」
「小便にしちゃ長すぎないか?」
「……葦原、お前、デリカシーないってよく言われるだろ?」
「言われるが……それがどうかしたか?」

なんてことのないように返す葦原に対し、今度こそ二人は同時に深いため息をついた。




「あぁ、タブー……!」

廃工場の中で男三人が不思議なコントを繰り広げる一方で、亜樹子はもちろんトイレなどという理由でその場を離れたわけではなかった。
それは、あの病院で手に入れた自分の力、タブーを味わうため。
亜樹子の脳裏にリフレインするのは、幾多というガイアメモリによってその人生を壊されたものたちと、その家族の姿であった。

子供の使用により泣き崩れる母親、妻の使用により崩壊する家族、そして能力の犠牲となった人々の遺族――。
そうしたガイアメモリの悪意をこれでもかと目の当たりにしてきた亜樹子は、本来ならばこんな形でガイアメモリと呼び合うことなどなかったはずであった。
しかし重なる不運にその強い心は折れ、それをまた立て直したときは、誤った方向に向いてしまったのだ。

それを自分でも薄々感じつつ、しかしもう後戻りも出来ないと、彼女は唾を呑んだ。
美穂を見殺しにし、東京タワーに多くの人間を生き埋めにし――。
今更自分が何を許されようというのか。

――TABOO

覚悟と共に、惹かれ合うお互いを求めるように、彼女は“禁忌”を首輪へと挿入する。
一瞬の後、彼女の身体は異形のものへと変貌する。
その胸に、もはや迷いはない。

この強大な力を持ってすれば、倒せない相手など存在しない。
そう、自分は間違っていたのだ、最初から、こうして力で仮面ライダーどもをねじ伏せれば、迷うことなどなかったというのに。
全ての参加者を殺し、この力の前にひれ伏させる。

今の自分ならそれが出来ると、そう確信して。
そのままタブーは廃工場の中へと進軍していった。




「……葦原じゃないが、それにしても流石に遅すぎないか?」
「誰かに襲われたのかもしれない、俺が行って――」

と、駆け出そうとする葦原に対し、矢車はその足を引っかける。
受け身も出来ず倒れた葦原だが、流石にその顔には怒りの表情が見て取れた。

「一体何のつもりだ、矢車!」
「亜樹子の覗きをしようったって、そうは行かない。妹は、俺が守る」
「何を馬鹿なことを言って――!」
「――矢車、葦原!どけ!」

と、その瞬間絶叫をしたのは、意外なことに乃木であった。
片足が利かないままにもう片方の足で葦原たちを蹴り飛ばしたのだ。
一体何のために、と吹き飛ばされながらそちらを見やれば、乃木はその瞬間まさに火の玉に飲まれようという瞬間であった。

「――乃木!」

思わずといった様子で叫ぶ葦原に対し、乃木はその状況に不釣り合いな笑みを浮かべる。
――これで第二の命ともお別れだ、と。

(まぁ、温存できるならするべきだが、ここまでの傷を負っては一度死んで第三の命を使った方が得策だろうからな)

そう、彼は自分の最後の能力である三つの命を使って、この足の傷を強引に治そうとしていたのだった。

自分に対し事情も知らず絶叫する葦原を見ながら、乃木は思う。
首輪に制限を設けられているというなら、それごと焼き払ってしまえば復活に制限もあるまい。
これこそが、自分の考え出した最高のストーリーなのだ、と。

(仮面ライダー諸君にも十分媚は売れただろうしな、次の命の時は、是非とも利用させてもらうよ――)

その身を巨大な火の玉に焼かれながら、彼は笑う。
次の命の時にこそ、最後に勝者となるのは自分なのだ、と。
そうして、一瞬のうちに、ワームの王はその肉体を一片も残さず世界より消滅した。

「――乃木ィィィィ!!!」
「静かにしろ、お前も殺されたいのか」

何度も絶叫する葦原を戒めつつ、矢車はその手にゼクトマイザーを握りしめる。
だが一方で、なぜ自分たちの居場所がバレたのだ、と思わずにはいられなかった。

(周辺には簡易的だが罠も張っていた……、もちろん少しでもそういった知識を囓ったことがあれば容易に対策も出来るが……)

この襲撃者が自分の設置した『無造作に近づけば中の人物にその接近を知らせる仕掛け』をくぐり抜け、自分たちを攻撃した、だけならばまだいい。
もし、罠の場所も自分たちの居場所も全て知っている参加者があの怪物の正体だったなら?もしそうなら自分は――。

(いや、今はそんなことを考える場合じゃない、今考えるべきは――)

――どうやって“今”を生き残るか、それだけだ。


【一日目 真夜中】
【F-6 工場地帯】


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、困惑、仲間を得た喜び、ザンキの死に対する罪悪感、仮面ライダーギルスに1時間変身不可
【装備】なし 
【道具】支給品一式、不明支給品×2(確認済)
【思考・状況】 
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す! 
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。 
1:取りあえず、目の前の怪人に対処する。
2:亜樹子は無事なのか……?
2:人を護る。 
3:亜樹子を信じる。 
4:門矢も信じる。 
5:ガドルから絶対にブレイバックルを取り返す 
6:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。 
【備考】 
※変身制限について、大まかに知りました。
※現状では、亜樹子の事を信じています。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。




【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後 
【状態】全身に傷(手当て済)、闇の中に一人ではなくなったことへの喜び、仮面ライダーキックホッパーに1時間変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、ゼクトマイザー@仮面ライダーカブト 
【道具】支給品一式
基本行動方針:弟を殺した大ショッカーを潰す。 
1:取りあえず目の前の怪人に対処。もしやこの怪人は……。
2:五代雄介に興味。可能なら弟にしたい。 
3:士の中の闇を見極めたい。 
4:殺し合いも戦いの褒美もどうでもいいが、大ショッカーは許さない。 
5:亜樹子の思惑がどうであれ、妹として接する。またその闇を見極める。  
6:音也の言葉が、少しだけ気がかり。 
7:自分にだけ掴める光を探してみるか……? 
【備考】 
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。
※10分間の変身制限を把握しました。
※黒いカブト(ダークカブト)の正体は、天道に擬態したワームだと思っています。
※鳴海亜樹子を妹にしました。
※亜樹子のスタンスについては半信半疑ですが、殺し合いに乗っていても彼女が実行するまでは放置するつもりです。
※目前の怪人(タブー・ドーパント)が亜樹子の変身したものではと疑っています。




【鳴海亜樹子@仮面ライダーW】
【時間軸】番組後半(劇場版『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』直後) 
【状態】ダメージ(小)、極めて強い覚悟 、ガイアメモリ使用による気分高揚、タブードーパントに変身中
【装備】ガイアメモリ(タブー)@仮面ライダーダブル 
【道具】無し
【思考・状況】
基本行動方針:風都を護るため、殺し合いに乗る。 
0:例え仲間を犠牲にしてでも優勝し、照井や父を生き返らせて悲しみの無い風都を勝ち取る。 
1:最高の気分。この力で目の前の二人をぶっ殺す。
2:他の参加者を利用して潰し合わせ、タブーの力で漁夫の利を得る。
3:できるなら、地の石やエターナルのメモリが欲しい。 
4:当面は殺し合いにはもう乗ってないと嘘を吐く。 
5:東京タワーのことは全て霧島美穂に脅され、アポロガイストに利用されていたことにする。 
6:首輪の解除は大ショッカーの機嫌を損ねるからうまく行って欲しくない。  
【備考】 
※良太郎について、職業:芸人、憑依は芸と誤認しています。
※放送で照井竜の死を知ってしまいました。
※タブーメモリの過剰適合者でした。現在声は変声機能を使っているためくぐもっています。

【全体備考】
※パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブトがf-6工場内に散乱しています。素材の関係上木製メモリとルールブックは焼けました。




焦土と化したD-2の元市街地から、逃げるように飛行する不思議な物体が一つ。
その名をレンゲルバックルといい、この場では最早珍しくもない意志をもった支給品の一つであった。
こうして彼が逃走している理由はただ一つ、規格外の能力を持つダグバ、そしてクウガから少しでも遠くに離れるためだ。

あんな存在と戦っていては命が幾つあっても――レンゲルバックルを操るスパイダーアンデッドは不死身だったが――足りはしない。
故に誰か自分を拾った参加者にクウガとダグバの危険性を伝え、そのままここから離れるよう進言することこそが、自分が生き残るのに大事なことである、とそこまで考えて。
彼は、真横に白の円盤のような飛行物体がいつの間にか並んでいることを認識する。

あっ、と思ったときにはもう遅く。
レンゲルバックルの身体は、そのまま地表に向けて真っ逆さまに落下――しない。
その身を、赤い鞭のようなものに絡み取られたため。

「――ありがとう、サガーク」

鞭を操る男は、そのまま先ほどの円盤に向けて礼を述べる。
どうやらこいつが俺の新しい宿主らしい、態度は気に入らないがまぁいいだろう。
俺の見てきた悪夢を、お前にも見せてやる――。

男がレンゲルバックルをその手に直接掴んだ瞬間、一気に映像が流れ出す。
クウガとダグバ、その圧倒的な実力と絶望的な暴力の恐ろしさを。
さぁ恐れおののけ、そのままUターンして向こうの参加者を皆殺しに――。

「……ライジングアルティメット?」

と、小さく男が呟いた言葉にその暗示を遮られる。
そのまま怪訝そうに一瞥をくれたかと思えば、レンゲルバックルは彼のデイパックの奥深くに仕舞い込まれてしまった。
戻れ、戻れと脳内に念を送るが、先ほどの牙王という男と同じく精神干渉に耐性があるのか、それともよっぽどクウガたちに対する特攻策があるのか、その声に従う様子は一切見られなかった。

――仕方ない、プラン変更だ。

ここまでくれば、いっそどうとでもなれ、だ。
ダグバにでも何でもとりついて、最後の最後まで殺し合いを進めてやろうじゃないか。
半ばやけくその覚悟を決めながら、レンゲルバックルと、それに収められているスパイダーアンデッドは、またしても西側へUターンを開始したのだった。


【一日目 真夜中】
【D-3 橋の中央】

【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後 
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、地の石を得た充足感、相川始の裏切りへの静かな怒り、仮面ライダーゾルダに55分変身不可、ウェザードーパントに1時間変身不可、仮面ライダーサガに1時間5分変身不可、ハードボイルダーを運転中
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤二枚)@仮面ライダー電王 、ハードボイルダー@仮面ライダーW、レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA~10、ハート7~K)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0~1)、地の石(ひび割れ)@仮面ライダーディケイド、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。 
1:レンゲルバックルから得た情報を元に、もう一人のクウガのところへ行き、ライジングアルティメットにする。
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。 
3:ディケイドの破壊は最低必須条件。次こそは逃がさない。 
4:始の裏切りに関しては死を以て償わせる。 
4:加賀美の死への強いトラウマ。 
5:これからはキングと名乗る。 
【備考】 
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※放送で冴子の名前が呼ばれていない事を失念している為、冴子が死亡していると思っています。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。
※レンゲルバックルからブレイドキングフォームとクウガアルティメットフォームの激闘の様子を知りました。またそれによってもう一人のクウガ(小野寺ユウスケ)の存在に気づきました。
※地の石にひびが入っています。支配機能自体は死んでいないようですが、どのような影響があるのかは後続の書き手さんにお任せします。




こうして、長い長い病院での大乱戦は終わりを迎えた。
だが、地の石も、ディケイドも、この戦いの現況であったそれらはまだ存在している。
これが意味することはただ一つ。

――殺し合いはまだ、始まったばかりだと言うことだ。


【五代雄介@仮面ライダークウガ 死亡確認】
【秋山蓮@仮面ライダー龍騎 死亡確認】
【金居@仮面ライダー剣 封印】
【日高仁志@仮面ライダー響鬼 死亡確認】
【乃木怜治@仮面ライダーカブト 死亡確認】
【海東大樹@仮面ライダーディケイド 死亡確認】

【響鬼の世界 崩壊確定】

【残り24人】


【全体備考】
※E-4大病院が崩壊し廃墟となりました。
※Gトレーラー内にはG4の充電装置があります。 
※G4は説明書には連続でおよそ15分使えるとありますが、実際どのくらいの間使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4を再度使用するのにどれくらい充電すればいいのかは後続の書き手さんにお任せします。
※及びG4システムはデイパック内ではなくGトレーラー内に置かれています。
※F-4エリアにGトレーラー、E-4エリアにトライチェイサー2000Aが停車されています。

※ブラッディローズ@仮面ライダーキバ 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー超電王、カイザポインター@仮面ライダー555、変身音叉・音角+装甲声刃@仮面ライダー響鬼、ナイトのデッキ+サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+)@仮面ライダー555、デザートイーグル(2発消費)@現実、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、五代の不明支給品×1、草加の不明支給品×1、ガイアドライバー(五代)@仮面ライダーWがE-4病院跡地付近に散乱しています。

※五代雄介に植え付けられていたアマダム@仮面ライダークウガは破壊されました。
※乃木怜司@仮面ライダーカブトが死亡しました。第三の命に掛けられた制限がどのようなものなのか(原点通り二人になって復活するのか、どの程度の時間で復活するのか、そもそも復活できるのか等)は後続の書き手さんにお任せします。


110:Kamen Rider:Battride War(11) 投下順 111:悲しみの果てに待つものは何か
時系列順 111:悲しみの果てに待つものは何か
五代雄介 GAME OVER
葦原涼 111:悲しみの果てに待つものは何か
秋山蓮 GAME OVER
乾巧 117:time――trick
村上峡児
橘朔也 114:更ける夜
相川始 121:全て、抱えたまま走るだけ
金居 GAME OVER
志村純一 114:更ける夜
日高仁志 GAME OVER
矢車想 111:悲しみの果てに待つものは何か
乃木怜治 GAME OVER……?
野上良太郎 117:time――trick
紅渡 116:対峙(前編)
門矢士 117:time――trick
海東大樹 GAME OVER
フィリップ 114:更ける夜
鳴海亜樹子 111:悲しみの果てに待つものは何か

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最終更新:2018年05月28日 20:26