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ゆれるH/守りたい世界 ◆LQDxlRz1mQ




「いやぁ……良かったですよ、最初に出会った人が木場さんみたいな人で」

「いえ、僕も左くんみたいな人が協力してくれて心強いです」


 左翔太郎が最初に出会った人──それは、木場勇治という青年だった。
 彼の風貌に乱れはなく、好青年のオーラをどことなく漂わせる。
 彼らが出会ったのは、ほんの数十分前だった。
 『ある感情』を前に軽率な行動に出ようとした翔太郎を止めたのが、木場という男だった。


「それでも、僕ら敵なんですよね……」


 木場にはどこか消極的な面があったが、殺し合いを進んでするような人間には見えない。
 無論、演技という可能性もあるが、こうした気弱な面はリアルで、どこか本心を言っているという感じが強かった。

 彼は「殺し合いをしない」と言い切りながらも自分の世界に未練があるような……そんな風に呟く。
 まあ、当然のことだろうと思っていた。
 翔太郎にとっても風都は大事な街で……それを守るためには、殺し合いに乗っていてもおかしくほどだった。
 むしろ、刃を取らないことは風都を裏切ることだという想いが一瞬でも彼を殺し合いに向けようとしていた。
 そんなところに彼が現れ、殺し合いの場所ではなく……まるで喫茶店で何か共通点でも見つけて話しかけてくれたかのように、自然に話しかけてくれたのが木場勇治だった。

 そんな彼の心を、マイナス面に向けさせてはならないと翔太郎は一言、呟く。


「いや、……世界の破壊なんて、俺がさせねえよ」


 翔太郎は根拠もなく、そう言ってみせた。
 本人に自信があるわけではないが、風都を守る『仮面ライダー』として他人を安心させるのは絶対条件だ。
 そんな翔太郎の態度に、木場が答える。


「……そうですよね。僕らひとりひとりが『世界のため』とかじゃなく、『周りのために』やっていけば、いいと思うんです」

「いいこと言うじゃねえか、木場さん!」


 木場は内向的な敬語で、翔太郎は外向的な口調だった。
 あたかも、根暗が明るい人に絡まれているかのような光景だが、木場としてもこれは悪い気分ではなかった。
 実際に木場が会ってきた「明るい人」には木場が言うことを、「漫画のようだ」と笑う人が多かった。……が、翔太郎の場合は違う。
 はっきりと、「いいこと」と言い切ってくれる人間は珍しかった。当然、悪い気分にはならない。
 木場は軽く笑う。

「僕も正直、世界の崩壊なんていわれても実感沸かないんです。まるで漫画の世界みたいで……」

「……でも、仮面ライダーはいたんだろ?」

「ええ。きっと、ファイズのことだと思います。僕たちの世界ではそういう呼び名はなかったので……」

「なら、仮面ライダーが世界の破壊を止めてくれるさ。何たって、仮面ライダーは世界を守る……」


 と、調子づいて翔太郎は仮面ライダーの話をはじめる。
 彼にとっては、自分自身のことだが、少し調子に乗って仮面ライダーの良い噂をしてしまうのが彼の悪い癖だった。


「──いえ、僕らの世界では『ファイズ』は敵です」


 木場は仮面ライダーが味方であることを、否定する。
 今の彼の知る「仮面ライダーファイズ」は敵でしかないのだから──


「ヤツは、人間と共存しようとしている者を殺す悪魔なんです」

「……木場さん、あんたの口からそんな言葉を聞くなんて……。それに、『人間を共存しようとしている者』って……」

「僕らの世界には、『オルフェノク』という……いわば怪人がいます。
 元は人間なんですが、一部のオルフェノクは力を利用して悪の道に走り、一部のオルフェノクは人間の心を持ったまま……。
 その悪のオルフェノクの力になるのが、『ファイズ』の力です」


 彼の言う、オルフェノクという存在はおそらくドーパントのことだろうと翔太郎は推測する。
 元は人間で、力を利用して悪の道に走るものがいる、といった共通点から導き出した推論だ。
 世界が違えば、ものの名称もまた違ってくる。『仮面ライダー』が『ファイズ』と呼ばれているのもその例のひとつだ。


「……わかりました。
 木場さんの世界では、『仮面ライダー』と『オルフェノク』はその役目を逆転している……か。気をつけないとな」

「ええ。左さんも両方の存在に気をつけてください。軽率な行動をして、取り返しのつかないことになりますから……」


 迂闊に、オルフェノクを倒してしまう可能性だってあるのだ。
 ただ、この時点で誤解をしているのは木場も同じである。ファイズについて誤解をした状態でここに呼ばれているため、『軽率な行動』をしてしまうのは木場も同じ。
 ファイズを倒してしまえば、相手がどうなってしまうのか。


 ──その刹那。
 さらにその誤解を誘発する出来事が、二人を襲った。


 前方の倉庫の影から、俊敏な動きで『仮面ライダー』が現れた。
 彼は『カリス』と呼ばれるライダーで、木場と翔太郎、いずれのいた世界とも違う『剣の世界』からのライダーである。


 その手に握られた醒弓カリスアローが生身の二人を、不意の襲った。
 相手が生身なら、APを消費するまでもなかった。


 完全に不意をつかれた翔太郎は、変身する間さえ無かった。
 不運にも、カリスアローは翔太郎へと伸びている。それを、とても避けられそうにはなかった。


「危ない!!」


 木場の声が、自分の目の前から聞こえる。
 ……が、そこにいるのは木場ではなく灰色の怪物だった。

 ホースオルフェノク。
 木場勇治のもうひとつの姿である。


「木場さん……」

「あなたはここから離れたほうがいい。敵は人間じゃない」


 カリスアローを左手の盾で防ぎながら、ホースオルフェノクは言う。
 が、そんなホースオルフェノクの声を他所に、翔太郎は『ロストドライバー』を腰に撒く。

「水臭いぜ、木場さん。あんた言ったよなぁ……仮面ライダーは敵だって」


 彼の手に握られたジョーカーメモリを、その挿入口に差し込んだ。

「変身!!」


 ──ジョォカァァァ


「忘れるなよ木場さん、仮面ライダーは人の味方であるべきなんだ
 悪のライダーなんて、俺がぶっつぶしてやる!」


 翔太郎が変身したのは、仮面ライダージョーカー。
 ファイズやカリスと同じく、黒いライダーだった。
 が、それらのライダーとは違い、『敵』ではない。


「左くん……とにかく、このライダーと戦おう。話は後だ!」


 ジョーカーとホースオルフェノクは、互いの拳をカリスにぶつける。
 それだけで充分強力な一撃だったため、カリスは衝撃で後ずさる。


「……別世界のライダーだったか」


 カリスも負けじと反撃する。


 ──TORNADO──

 カリスはハートの6をラウズさせ、カリスアローからホークトルネードを発射した。
 まずはそれをホースオルフェノクの胸に突き刺す。


「うっ……!!」

「木場さん……っ!! ちくしょう!!」


 迫り来るジョーカーを前に、カリスはハートの3をラウズさせた。


 ──CHOP──


 ジョーカーの肩に、強力なヘッドチョップを送り込む。
 カリスはそのまま、弱ったジョーカーをその場で蹴り飛ばした。

 仮面ライダージョーカーは、アンデッドのジョーカーを相手にするには弱すぎたのだ。

 相手の弱り具合を察したカリスは、そのままジョーカーをねらい目に、三枚のカードをラウズさせる。

 ──FLOAT──

 ──DRILL──

 ──TORNARD──


 常に敵にとどめを刺してきた必殺技・スピニングダンスである。
 ジョーカーの頭上へ高く飛んだカリスは、そのままベーゴマのように高速回転し、ジョーカーに突き刺すようなキックを送り込む。


 ──が、そこにいるのはジョーカーではなかった。
 ホースオルフェノクの胸板に突き刺さったカリスの脚は、そこに青い炎を作り出した。


「……木場さんっ!!」


 上級オルフェノクでありながら、打ち所が悪かった。
 二度の攻撃が同じ箇所に命中し、そのとどめの一撃はあまりに強力だった。


「……時間切れか」


 カリスはそのまま、翔太郎たちのほうを見ながら逃げていく。
 とりあえず、この戦いで翔太郎だけは助かった──。


△ ▽



「……木場さん」

「良かった……左くんが無事で……」

「喋るな、木場さん」


 上半身だけが不完全に木場勇治の姿になったホースオルフェノクは、翔太郎の顔を見て笑う。
 めらめらと、彼の周りを青い炎が燃えていた。
 人間と違って、それが助からない合図だというのはよくわかる。
 だが、翔太郎は何とかしてそれを助けようとしていた。


「そうだ……僕の支給品は持っていってくれ……どうせ……助からないから……」

「そんな事言うなよ、木場さん!!」

「世界を救うために……行けよ、人類の味方……仮面ライダー……」


 木場は静かに笑う。
 そのまま、木場の全てを青い炎が焼き尽くし、全ては灰になった。
 ホースオルフェノクも、木場勇治もそこから消え去っていく。

 翔太郎が、灰を手で掬ったが、それが木場勇治の姿になることはもう、無かった。


「木場さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」


 左翔太郎の叫びが、G-7エリアに響いた。


【木場勇治@仮面ライダー555 死亡】
残り59人



△ ▽


「逝ったか……」


 相川始は、翔太郎の雄たけびを聞いて、どこか物悲しそうな表情で呟いた。
 彼こそ、木場勇治を葬った仮面ライダーカリスその人である。


(剣崎……俺はこれでよかったんだろうか?)


 彼にとって、栗原親子は命よりも大切な存在であった。
 その命を散らせないため、彼女たちのいる世界を滅ぼさせないため、始は殺し合いに乗ったのだ。
 他人の命さえ、奪うという覚悟をもって。


(あの『ジョーカーの男』もいずれは……いや、あの時、一緒に殺しておいてやるべきだったか?)


 もしも栗原親子が目の前で死んだら……始はその心の痛みに耐えられなくなるだろう。
 それを、あの『ジョーカーの男』──左翔太郎は今、体感しているのだろうか。
 ならば、いっそ楽にしてやるべきだっただろうか。


(いや、ヤツも結局は仮面ライダー……そして、『ジョーカー』を背負う男か……この程度でへばっているようなら、俺ともう一度会うこともなく死んでいるだろう)


 始は、そのまま翔太郎の雄たけびに背を向けて行った。



【1日目 日中】
【G-7 沿海施設】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ライダージョーカーに2時間変身不能
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、翔太郎の不明支給品(0~2)、木場の不明支給品(1~3)
【思考・状況】
1:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
2:木場を失った強い悲しみ。
3:木場のような仲間を集める。
【備考】
※ 木場のいた世界の仮面ライダー(ファイズ)は悪だと認識しています。
※ 555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※ オルフェノクはドーパントに近いものだと思っています(人類が直接変貌したものだと思っていない)。


【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり
【状態】疲労(小)、カリスに2時間変身不能、罪悪感
【装備】ラウズカード(ハートのA~6)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、不明支給品(0~2)
【思考・状況】
1:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。
2:これでよかったのだろうか……?
3:「ジョーカー」のライダーに興味。
【備考】
※ ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※ 時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ 左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄たけびで木場の名前を知りました。


008:宇宙一迷惑な男 投下順 010:正義ノミカタ
008:宇宙一迷惑な男 時系列順 010:正義ノミカタ
GAME START 左翔太郎 030:Xの可能性/悲しみを背負い
GAME START 相川始 036:二人のジョーカー
GAME START 木場勇治 GAME OVER