第8話 かがみの国  ~春香さんがいっぱい!?~


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「うぬぬ、ウサギの奴め…」
暗い暗い、闇の中。
水晶玉を眺めながら、恐ろしい形相で何やら呟いている人影。厚いコートを身にまとったまま、いらいらと
歩き回っていました。
…これこそが、鏡の国を支配しようとしている女王でした。
その視線の先には、水晶玉に映ったウサギ、そしてやよいの姿が。
「ただでさえこのような体になって窮屈しておるのに、人間を連れてこの私に立ち向かうとは…」
女王のいらいらは、周りにいたトランプの兵隊達にもはっきりと伝わってきます。
「お前達、何としてもあの二人を捕らえて、首を刎ねてしまうのだ、よいな!」
「へ、へへー」


「…これが、鏡の国?」
「…そうです、もっとも今ではここも女王の支配下になってしまって、すっかり変わり果てた姿になってしまって
ますが…」
やよいとウサギの二人は、そんな話をしながら目の前の光景を呆然と眺めていました。
そこは鏡の国というにはあまりにも暗くて、うにょんうにょんしていて、ついでに楽しそうな雰囲気の
欠片もないようなところでした。
鏡の国なんて生まれてこの方見たことも無かったやよいでしたが、これが鏡の国だといわれても絶対に納得
できない、そんな自信さえあります。
見てるだけで憂鬱になってきそう、でもここを進まなくては鏡の国に平和を取り戻せません。


 ウサギの言葉どおり、ここでは少し歩くとすぐにいろんな魔物に出くわします。
特にこのトランプに足が生えたような魔物は頻繁に出てきては、やよいを追い掛け回してきます。
「トランプ兵ですね… 女王が一番よく使う奴らです」
やよいはその突撃をジャンプで避け、背中を向けている兵隊たちにシャボン玉をぶつけていきます。

 床を飛び移っていくと、二人は大きな広間にたどり着きました。
不思議なことに、そこには大きな鏡のようなものがいくつも並べられています。
やよいがその中の一つにそっと近づいていきます。しかし、その鏡にはやよいはおろか、何も映ってません。
「…?」
と、その時。
鏡の中の景色が動いたような気がしました。
それはゆらゆらと動きながら、やがて一つの形を作っていきます。
「春香さん…?」
それはやよいの良く見知った女の子でした。でも、いつもと違う点が一つ、それは服でした。
青と白のドレスに水色のエプロン、色だけ変えればやよいの着ているドレスにそっくりのものです。
「こんばんは、やよ… あ、わぁぁぁぁ!?」
見ているうちに、春香さんは鏡から出て来て挨拶を… しようとして転んでしまいます。
うつぶせに倒れてる春香さんを助け起こそうと、やよいが駆け寄りました。
「あいたた…」
「はわっ、大丈夫ですか… ?」
そこで、やよいは妙なことに気が付きました。

「あの… 痛くないんですか?」

その春香さんは転んで『痛い』とか言ってるはずなのに、顔の表情が笑顔のまま、全く変わることがありません。
まるでお面でもかぶっているかのような…。

 その様に、やよいは思わずビクンッと肩を震わせます。本能的、とでも言うのでしょうか。
そうしている間にも、他の鏡からも次々と春香さんが出てきては、やよいの周りにわらわらと集まって…。

「やよいちゃんだいじょうぶ」
「おかしつくってきたんだよ」
「いっしょにれっすんいかない?」
いろいろなことを言っています、どれもこれも同じ顔の表情をしたまま。

「うう~…」
恐怖のあまり、じりじりとやよいは後ずさりを。しかしすぐに床の切れ目まで追い詰められてしまいます。
それでもやよいの方に寄ってくるたくさんの春香さん。
「こ、こんなの春香さんじゃありません!」
叫びながら、やよいは向こうの動く床に素早く飛び移り、そしてシャボン玉を構えます。
めいっぱいシャボン玉を膨らませて、春香さんたちを吹き飛ばそうとした、その時。

「え…!?」
なんと春香さんたちもストローを取り出し、そこからシャボン玉を出してくるではありませんか!
そこかしこから飛んでくるグレーの小さなシャボン玉。
それぞれが逃げ場の無いやよいにぶつかって、嫌な痛みと共に体中で弾け、頭がくらくらと…。

「やよい、逃げるのです!」
そんな声がします、しかし、全てが遅すぎました。
やよいの体は、床が動いた拍子に崩れ落ち、そしてそのまま奈落のかなたへと消えていきました…。
「や…」

「やよいーーーーーーーー!!」
ウサギの声だけが、いつまでもその場に空しく響いていました。


「…」
床から落ちて、くるくると回りながらやよいは空中をどんどん落ちていきます。
やよいにも、高いところから落ちて地面にぶつかったらどうなるかぐらい、分かっていました。

 遠くからはウサギが自分を呼ぶ声。
ぼんやりとした頭で、ウサギさんもあんなに大きな声で叫んだりするのか、とか考えてみます。
「ごめんね… 私、もう帰れそうに無い…」
妙にゆっくり流れている景色を眺めながら、やよいはそう言いました。家にいる家族たちはどう思うかな、
せっかく助けた雪歩さんや真美ちゃん、そしてまだ会えてない伊織ちゃんは…。


 やよいはまだ空中を落ち続けていました。

 派手で綺麗な色の洋服…
 おいしそうなお菓子…
 『100%オレンジジュース』と書かれた大きな瓶…
 テレビでしか見たことのない外国の風景…

流れていくそれらがはっきりと見えている、不思議な空間。
けれど下を見ても真っ暗で、これからどんなところに行くのかさえ分かりません。
「…」

 どれぐらい経ったでしょうか、やがて下のほうにかすかな光が見えてきました。
それが何なのか分かる前に、

 ぼふっ…

やよいは自分の体に衝撃が走るのを感じました。
しかし、不思議とそれはすぐに治まり、そしてもうそれ以上体が落ちることもありませんでした。
とりあえず無事に着地できたことは間違いありません、でもここはいったい…。

 体の下には小枝と枯葉の山。
クッションになってくれたその上から飛び降りて見ます。しかし辺りを見ても何もありません。
空も見えず、辺りも真っ暗に近い空間…。
「ここも… 鏡の国?」
もう真っ暗とかそういうのには慣れたつもりなのに、こうも何も無いところだとさすがに寂しくなります。
それを振り払うかのように、やよいは元気良く歩き始めました。もちろん当てがあるわけではありませんが、
ここでじっとしているよりはよっぽど良いと思ったのでしょう。
「♪な~やんでも、しっかたない、まそうさ、きっと明日は違うさ…」

 そうしてしばらく歩いていると、
「その声… やよい?」
突然、暗闇から声がしました。
さっき沢山聞いた声、それは春香さんの声でした。
「……!」
いつもならすぐに駆け寄って挨拶とかするのでしょうが、さっきひどい目にあったせいか、やよいは体を
震わせながら、
「こ、来ないで!」
と大きな声で叫びました。
「ど、どうしたのやよい?」
「春香さんがいっぱいいます~!」
「ちょ、ちょっと何がどうなってるの?」
「春香さんは黒くありません、黒いのは中の人だけです!」
もはや何を言ってるのかさえ分かりません。それでも、
「やよい、私だよ」
「落ち着いて、ね?」
と、春香さんは呼びかけます。そこから春香さんが近付いてこないのは、やよいが余計パニックになると
見たからでしょうか。

「…ほんとに、春香さんですか?」
ようやく落ち着いたのか、やよいも春香さんの声に答えます。
「うん… やよいも何かひどい目にあったみたいね…」
ようやく姿を現した春香さんは、青と白のドレスではなくピンクと白の上着、水色のスカート、そして髪には
可愛らしいピンクのリボン…
「…はうぅぅぅ…」
それを見て、やっとやよいも安心できたようです。

 しかし…
そこにいたのは春香さんだけではありませんでした。
ふと前を見ると、春香さんの向かいには、おばあさん… でしょうか…。
妙に大きな鼻に紫色の服、そして杖を持ったおばあさんがいつの間にか立っていました。
思わず身構えてしまうやよいたち。そんな二人におばあさんは優しく、しかし力のある声で言いました。
「お前たちは何者じゃ」
「わ、私たちは…」
そう言いかけたところに、さらに言葉が被さりました。

「こんなところに人間が来るとは、珍しいこともあるものだ」

おばあさんの言葉に、
「め… 珍しいんですか?」
と、やよいが尋ねます。
「ああ、珍しいともさ。最近は夢を持った子供なんてものはとんと見かけなくなったからの…
この鏡の国… いや、夢の国に来られるのは、夢を持った純粋な人間だけなんだよ」
「あ、じゃぁ私も…?」
「そうかも知れんの」
春香さんの言葉にも、おばあさんはあっさりと答えました。
「まぁゆっくりしていけ、どうせここは夢の国、時間などたっぷりとある。訊きたいこともあるし、うちで
休んでいかんか?」
どうやら悪い人ではなさそうです。
やよいたちはおばあさんの厚意に応えることにしました。

 たどり着いたのは、ゆうに数百年は経っているかのような古めかしい家でした。
しかし中は綺麗に整った家具や調度品、部屋の隅には黒い子猫がのんびりと寝転がっています。
まるで、ここだけ時間の流れが止まっているかのようでした。
「すごく古いお家なんですね…」
やよいは正直な感想をおばあさんに言いました。
「さっきも言ったろう、ここは時間なぞたっぷりあるのだ、と。その辺の椅子に座って待っておれ」
言われたとおりに、二人は椅子に腰掛けます。不思議と、そこに座っていると自分たちまで時間の流れが
遅く感じられるようでした。

「そうだ」
お茶を飲んでしばらく休んだ後、おもむろにやよいはおばあさんに言いました。
「あの… 私鏡の国の女王を倒しに行かないと…」

「女王だと…?」
「はい、鏡の国の女王を倒すために、ウサギさんと一緒にやってきたんです、私」
「そうか… それでこんなところに人間が…」
おばあさんはそう言って、しばらく黙り込みます。
「ふむ… ウサギというのは知らんが、そのドレスにストロー… もしかして…」
「知ってるんですか、これのこと?」
「ああ、そいつは女王、そして守護者と一緒に封じ込められていたものだ。もっとも、誰でも使いこなせる
ものでは無いから、実質意味の無いものとなっておったのだがな」
「私、これを使っていろんなところを廻ってきたんです、シャボン玉で敵を倒したりして…」
やよいはそう言って、ストローからシャボン玉を出して見せました。
「ほう… 見事だな」
おばあさんの顔が少し緩んだように見えました。
「お前さん… やよいとか言ったか… やよいが今まで通ってきたのは通路だな」
「通路… ですか?」
「昔守護者が女王を封印しに行くときに使った通路、そして敵をおびき寄せるための罠だよ」
おばあさんが説明してくれます。
「鏡の国にいる魔物をまとめて一網打尽にするためにわざわざああいう通路を作ったのだろう、女王への
最短距離、しかも守護者がそこを通るとあらば、そこを魔物で塞いでしまおうとするのは当然のこと」
「その通路が今でも残ってる…」
「左様」
「でも、封じ込められてたって、どういうことですか?」
そこに春香さんが口を挟みました。
「そいつはさっき言ってたウサギとやらに訊いてみるがいいじゃろ。わしの考えが合ってるなら、きっと
答えてくれる… っと、ウサギのところに帰れんことには訊くことも出来んか」
そんなことを言いながら、おばあさんはどこからともなく何やら持って来ます。
「…これを使ってみるがいい」
「これは… 風船?」
やよいたち二人に一つずつ手渡されたそれは、小さな赤い風船でした。
「それを膨らませて、捕まれば上の世界に戻れるはずだ、お前さんたちが本当に夢を持った人間ならな…」
それを聞いて、知らないうちに二人はうなずきあいました。
「「…やってみよう!」」


 二人は早速外に出てみます。
もらった風船を膨らませると、何もしないのにふわふわと空中に浮かんで、ちょうど目の高さで止まり
ました。その下にはちょうど両手でつかめるぐらいの紐がぶらさがっています。
「これが…?」
不思議そうに、二人はその風船を眺めていました。
「紐を掴んで地面を蹴ってみぃ」
おばあさんの言うようにすると、風船がふわふわと昇って行きます、そしてやよいと春香さんも…。
「飛べた!」
「すごいですー!」
二人の体がどんどん空中を駆け上がっていきます。
「そのまま上まで戻ったら風船を離せばいい。もうこのような所に落ちて来るでないぞ」
おばあさんが声をかけてくれました。
既に小さく見えているおばあさんに、
「ありがとうございましたー!」
頭だけでお辞儀をするやよい、そして春香さん。
そして… やよいたちはまた、不思議な風景の中を戻っていきました。

 泡だらけで、良い匂いのする空間。
 たくさんの人に囲まれて、楽しそうに歌う女の子の姿。
 そして、やよいが可愛らしい服を着て楽しそうに歩いている姿…。

「くっ…」
まだウサギは下を眺めています。
たくさんの春香さんからは逃げてきたものの、この姿のままで出来ることは知れています。
「もはや鏡の国は…」
そう言いつつ、ウサギが着ているタキシードの中に手を入れかけた、その時…!

「…!?」
目の錯覚でしょうか。
何も無いはずの奈落のかなたに赤い点が二つ。
それはウサギの見ている前で見る見る大きくなり、やがてウサギの頭上高くまで昇っていきました。
何事かと思って、ウサギは空を見上げます。そこにいた姿、それは…。
「やよい… それに、春香!」
二人の女の子たちは、ここに戻ってきました。
「もう同じ失敗はしません!」
やよいは声高らかに、ウサギにそう言うのでした。


 三人はようやく落ち着いて、前を見据えます。
「さぁ、それでは」
「この世界のボスのところに…」
と、そこまでやよいが言いかけた、その時。

「その必要はないでおじゃる~」
突然どこからか、奇妙な声が聞こえました。
「…!?」
周りを見回しても、誰もいません。と思ってると、突然やよいたちの周りが暗く…
「上です!」
ウサギの声に上を見上げると…、何やら丸くて大きなものが空から降って来るではありませんか!
みんな別々の方向に走って、なんとか潰されないようにします。
しかし、
「きゃぁっ!?」
春香さんが足をもつれさせて転んでしまいました。
「春香さん!?」
やよいが春香さんを助けに行こうとしたその時、

 ズゥゥゥゥゥゥゥゥン…

 土煙とともに、その丸いものは地面にぶつかって、そして着地しました。
春香さんの転んだ、そのすぐ横に。
「た、助かりました…」
春香さんが、倒れたまま大きく息をつきます。
しかしこれは、なんでしょう… 丸いものと思っていたそれには、頭と短い足も付いているようです。

「ワシはビッグトータスでおじゃる、あんまり遅いからこちらからやっつけにきたでおじゃる」
頭の部分から声が聞こえます。
土煙が晴れると、みんなの目の前にはくるっと丸まったひげを生やした、大きな顔がありました。
「ず、ずいぶんせっかちな奴ですね…」
「時計を持って慌てて走ってるような奴に言われたくないでおじゃる… ところで、そこの娘!」
そう言うと、ビッグトータスのひげがびしっと春香さんのほうを指しました。
「え、わ、私ですか?」
きょとんとしてる春香さん。
「そう、お前はどうして走ってるだけで転ぶでおじゃるか」
「…」

…え?
「普通、こんな何も無いところを走って転ぶ奴なんていないでおじゃる」
「そ、そんなこと知りませんよ~」
ビッグトータスの言う通り、ここには平らな床があるだけです。
「そういえば、鏡から出てきた春香のそっくりさんも…」
「転んでました…」
ウサギとやよいのふたりが、妙に納得したような表情を浮かべます。
「せっかく走ってきたところに着地して踏み潰してやろうと思ったのに… 頭に来たでおじゃる!」
そう言うと、ビッグトータスは短い足で高々と飛び上がりました。
「喰らえ~」
走って逃げる春香さん、しかし…
「…あ!」
何も無いのに、春香さんは床に蹴躓いて、思いっきり空中に。
その横にビッグトータスが落下すると、床がズシンと揺れます。そのせいで、やよいたちは転んでしまいました。
「わ、わぁっ!?」
しかし、既に転んでいた春香さんは、くるっと空中で回って足から着地しました。見事です。
「お、おのれぇぇぇ、またしてもぉぉぉ!」
「わわわわ、私は何も悪くありませんよぉ」
春香さんに腹を立てたビッグトータスは、今度はその短い足で走って春香さんを追い掛け回し始めました。
「春香さん!」
やよいが春香さんを呼びますが、
「いや、これはチャンスですよ? 奴は春香以外目に入っていないようですし」
ウサギはそう言って、やよいを止めました。
「…そうか、じゃぁこのシャボン玉で!」
「ですね、甲羅は固いですから、顔にバチーン、と」
ウサギから離れると、やよいはビッグトータスたちの方に近付いていきます。

「はぁっ、はぁっ、しつこい奴でおじゃる」
「いい加減諦めてくださいよぉ…」
ビッグトータスと春香さんの追いかけっこはまだ続いています。
二人の方に近付いていって、やよいはシャボン玉を用意しました。
走ってくる春香さんの正面に立って、
「春香さん!」
いきなり呼びかけます。
「え、やよい、わ、わぁぁぁっ!?」
春香さんが横に転んでしまうと、その真正面にビッグトータスの顔が!
「そこです!」
そこにやよいは大きなシャボン玉をぶつけます。
春香さんの影に隠れていたやよいの攻撃を避けられず、ビッグトータスの顔面にシャボン玉が炸裂します。
その拍子に、ビッグトータスは足をもつれさせ、そして…

「ぬぉぉぉぉぉっ…!?」

前のめりになったかと思うと、そのまま転んで、そしてひっくり返ってしまいました。
「…」
「…」
足の短いビッグトータスのこと、自分ひとりでは起き上がるのも大変でしょう。
「助けるでおじゃる~」
「…どうしましょう?」
やよいが問い掛けると、
「転ぶのを馬鹿にする人は、しばらくそのままの格好で反省してるといいと思いますっ」
すかさず春香さんが言いました。
「…そうですね。少なくともやっつける手間は省けましたし」
「行きましょうか」
ウサギとやよい、そして春香さんの多数決で、このまま先に進むことに決定したようです。
「た~す~け~て~~~~…」
ビッグトータスの声だけが、その場にいつまでも響いていました。

 先に進むと程なく行き止まりに。
そこで、やよいたちは鏡を見つけました。今までのよりも大きくて、そしてキラキラと虹色に光っています。
「これを、こうするといいはず…」
ウサギが呪文を唱えて鏡を持ち上げると、そこからまばゆい光が放たれ、周りの暗闇を消し去って行きます。
そして、そこからは青空の爽やかな光が…
やよいがウサギを持ち上げ、そこらじゅうに虹色の光をふりまいていきます。
そうして、やよいたちは鏡の国の魔物をほとんど消し去ってしまうことに成功したのでした。
「やったぁ!」
「これで… 終わりなの?」
「いいえ、まだ… 女王はこの先に…」
ウサギが言いました。
そうです、まだ終わりではありませんでした。
この先に待ち受ける女王、それを倒さない限り、本当に鏡の国に平和を取り戻したことにはならないのです。


「じゃぁ春香、気を付けて帰るのですよ」
ウサギたちに見送られて、春香は鏡の中に入っていきます。
「うん、ありがとう。 …あ、やよい、一つ訊いていいかな?」
「え、何ですか」
「やよいの夢って… 何?」
「夢…」
やよいは困った顔になってしまいます。
「…春香さんは、何かあるんですか」
今度は逆にやよいが春香さんに問い掛けました。
「私は… そう、やっぱり好きな人と…」
と、そこまで言いかけて、春香さんは顔を真っ赤にしてしまいます。
「…?」
その意味が、果たしてやよいには分かっていたでしょうか。


 春香さんを見送って、やよいたちも鏡の中に。
ここから先に進めば、さっきのおばあさんの言ってたことの意味が分かるのかな…?

でも、今のやよいには、それを訊く気は不思議と起こりませんでした。

「さぁ行きましょう。いよいよラストですよ」