流れ星


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「ね、プロデューサー。今日のステージはどうだった?」
「完璧だよ、伊織。サイン入りの風船もCDも在庫ゼロだし、ファンの伊織ちゃんコールも最高だった」
「コールってアンタ、あれ子供たちの絶叫だったじゃない。いおりちゃぁぁぁーん!!!って」
「遊園地のほかのアトラクションにも引けを取らなかったぞ」
「お化け屋敷と一緒にしないでよ。そもそも私は歌のお姉さんじゃないんだから」
「もっと若手じゃないファン層を拡大したいってことか」
「そうよ。お目が高いファンに、私をお高く評価してもらいたいの」
「むずかしい要求だな……」
「むずかしいってことないわよ。私にふさわしい舞台と観客を用意するのがアンタの仕事でしょ。
 子供相手のステージって喉が渇くの。私にふさわしいジュースをダッシュで買ってきてくれない?」


「おそいわよプロデューサー! 人が大変なときに、どこ行ってたの!」
「いや申し訳ない。そこで熱い伊織ファンを見かけてな。つい話しこんでしまったんだ」
「言い訳はいいわよ。ねえ、今度はもっと予備の風船を用意しといてくれない?」
「突然どうした? 風船なんてさっさと配って終わらせたがってたじゃないか」
「べ、別にいいじゃない! 運のわるいファンが、私があげた風船、空に逃がしちゃったのよ。
 わざわざ私のとこにきて、ずうっとメソメソされたら、パパやママじゃなくても心が痛むわ」
「わかった。次回からは手配しよう。その子はよっぽど風船好きな子だったんだな」
「ホントよね。あんなものどこでも売ってるのに、『いおりちゃんのふうせんが良い』って――」
「へー。そりゃまたずいぶんお目が高いファンじゃないか」
「なっ、なにバカなこと言ってんの! それより自分たちの手落ちを反省なさいよね!
 私のステージにケチがついちゃったじゃない。着替えたらさっさとマッハで帰るわよ!」



「どうした伊織。マッハで帰ると言ってたわりには、勢いがないぞ」
「……ステージにケチがついちゃったわ。風船ひとつ足りなかったおかげで」
「伊織の手落ちじゃないさ。ファンがひとり泣いてしまったのは、俺たちスタッフのせいだよ」
「手落ちじゃないわ。でも今日のステージをいちばんお高く見てくれたファンはあの子よ。
 私が与えた安っぽい風船を、宝石とか流れ星みたいに思ってくれたんだもの」
「チャンスの女神様としては、次の機会を与えたくなったわけだな」
「そうよ。なんでもない顔をして、ニコッと笑って次を与えてあげたかったの。
 あんまりうまくやれた自信がないわ。与えられる流れ星がひとつもなかったんだもの」
「なあ伊織。まだ時間はあることだし、遊園地の迷子センターに立ち寄ってみないか」
「なんで迷子センター?……そういえばアンタ、さっき熱いファンと喋ったとか言ってなかった?」
「あんまり真顔で熱く語るもんだから、流れ星の行き先は訂正しなかったんだ。
 でも、次のイベントのチラシは印刷済みだから、あの子にチャンスを与えに行かないか?」


「ああ、ものすごい歓迎だった。まるで伊織自体が流れ星みたいな扱いだったな」
「にひひっ♪ むさくるしいアンタの前じゃ、さぞかしこの流れ星ちゃんは可愛くうつったでしょうね」
「次回はもっとグッズを揃えておくよ。伊織にお高い評価をつけてもらえるなら安いもんだ」
「そうね。熱心なファンには熱心に応えなくちゃ。次回のCD出荷は、どーんと3倍でお願いね♪」
「えっ!? なんだそれは。どこから来た自信なんだ?」
「あの子のお父さまったら、私のCDを10枚も買ってくださってたのよ。
 そんなに熱心に願ってもらえると、流れ星としては輝きがいがあるじゃない」
「……3倍買ってもらうつもりか」
「流れ星を見つけられるファンって、やっぱりとってもお目が高いわよね。
 アンタの願いごとも、いつかちゃーんと聞き届けてあげるんだから。明日からもがりがり働くのよっ」


伊織はそう言うなり行ってしまいました。数秒悩んだのち、Pは自分の願いごとを思いだしました

発見者の焦りなんてちっとも気にせず、願われた流れ星は悠々と青年の傍を巡り続けるのでした