「ちゅ……んちゅ……」
カーテン越しに、西日が差し込み始めている俺の部屋。
口づけの音だけが、静かに響いていた。
こうやってふたばと唇を重ねるのはいったい何度目だろう。
初めてのキス。二度目。三度目。最初はそうやって数えていた。
けれども、合うたびにキスするようになってからは、そうすることもなくなった。
現に、今だって……。
「ちゅむ……ぷは、はぁ、はぁ、ちゅぅ……」
お互いに息苦しくなって、唇をいったん離す。
だけど、苦しげなふたばの顔がいとしくなって、またすぐに唇をついばんでしまう。
こんな調子だから、回数なんてもう数える意味もない。
俺って少しサドなのかな、と思う。
「ぷはっ…しんちゃん、苦しいよぅ」
「嫌だったか?」
「嫌じゃ、ないけど…しんちゃんは、欲張りさんだなぁって」
「キスしてやらないと拗ねるくせに」
「優しさの問題っス」
そう言って、ふたばは俺のベッドに登ると、こちらに背を向けて寝ころんだ。
この仕草は、添い寝してほしい、のサインだ。まったく、欲張りはどっちだよ。
ベッドの上でふたばに寄り添うと、ふたばの耳元で「ごめん、悪かったよ」とささやく。
いつもなら、こうするとくるりとこちらを向いて、抱きついてくるんだけど…。
「…ほんとは欲張りさんのくせに、ガマンしてるっス」
「えっ?」
「小生の裸、見たいくせに…おっぱい、触りたいくせに…」
「い、いや、別にそんな」
「さっきしんちゃんがトイレに行った時、見ちゃった。隠してあった、えっちな本」
「!?」
「小生そっくりのお姉さんが、裸で、いろんなことしてる本…」
「あ、あれは……」
言い逃れできない。千葉からもらった本だった。
普通ならお宝本をやると言われても断るのだが…。
その本に載っているモデルは、ふたばによく似ていた。本人でも気付くほど。
それで、その本には、その…しばしばお世話になっていたわけだ。
「…ごめん…」
「謝らなくていいっスよ、しんちゃん」
こちらを振り向いたふたばの瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。
「しんちゃんは、小生にそういうことしたら嫌がるって思ったから…ガマンしてたんでしょ?」
「う、うん…」
「優しいね。しんちゃんは」
「いや、そんな…それに、俺たちには、まだ…」
「………」
「早いと、思うし、さ…」
「………」
だめだ。ふたばにじっと目を見つめられてしまった。
口で言っていることと、頭の中で渦巻いていることのズレを、見透かすような眼差し。
「しんちゃん…ガマンしなくて、いいよ…」
「ふたば……」
「だって、だいすきだもん…いっしょに、気持ちよくなりたい…」
「………ほんとに、いいのか?」
「うん…」
あとはもう、言葉はいらなかった。
俺はもう一度、ふたばに口づけした。
初めてのときのように、やさしく、丁寧に。
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「ひゃん、くすぐったい」
ふたばと俺の背は同じくらい。お互いの乳首をこすり合わせてみる。
別に二人とも素っ裸になる必要はないよな…と今になって気付くが、今さら服を着るわけにもいかない。
「あ、しんちゃんのおちんちん…かたくなってるね」
「…あたるの、嫌か?」
「ううん。小生のこと好きでかたくなってるんだもんね。うれしいよ」
「ふたば…」
「ひゃっ、しんちゃん、それは…うぁ…」
かわいい。かわいすぎる。たまらなくなって、俺はふたばの乳首にむしゃぶりつく。
「赤ちゃん、みたい…」
そう言われて頭を撫でられると、ほんとに赤ん坊になったような気分だ。
しばらく乳首をすったり、舐めたりし続ける。
ふたばが微かにもらす声が、甘く、けだるいものになっていく。
「ぁふ…んぅ…」
そのまま乳房から下のほうへ、舌をずらしていく。
お腹。かわいい臍。そして…。
「あ、しんちゃん、そこは…汚い、よ…?」
「だいじょうぶ。かわいいし、汚くなんか、ない」
うっすらと綺麗に生えた毛の下にある割れ目を、舌でなぞる。
独特の匂いと味に一瞬たじろぐが、ここでやめたらふたばが傷つくと思って、必死に舌を動かす。
「ぁ…変な感じ、してきた…」
これをこのまま続ければ、ふたばは「イく」のだろうか。
いやそれとも、胸を揉んであげたほうがよかったかな。
そうして、よく濡れたところに、俺のものを挿入して…。
ほんとにそんなことが、できるんだろうか?
なんだか、お宝本に書いてあったように上手くはいかないように思えた。
だんだん舌が疲れてきた。息も苦しい。
「だ、だめだ…」
「しんちゃん…無理しないでいいよ?」
「ごめん…」
「あやまりっこなしだよ。次は小生の番だもん」
そう言うと、ふたばは獲物に飛びつく前の猫みたいにお尻を突き出して、俺の股間を見つめた。
「まだ元気かな…あ、ツンって匂いがするね」
「ふたば、まさか…う、うあっ!?」
ふたばは俺のものを舐め始めていた。全身が快感で鳥肌立つ。
「れる…ちょっと、しょっぱいかな…?あ、噛んだりはしないからね」
「そうじゃ、なく、て、うあ……」
自分でする時とは比較にならない気持ちよさだった。やばい。どんどん硬くなってく。
「く、くわえる、ね……あむっ」
「う、うん、でも、あんまり、もたないかも…」
「ほむ?」
ふたばの口の中の熱さと、巻き付いてくる舌の感触。
それだけですでに限界に達しそうだ。
おまけに、ふたばは不思議そうに上目遣いで見てきて、その表情も俺に拍車をかける。
「で、出そう…」
とっさにふたばの口を引き離そうとするが、ふたばはイヤイヤと頭を振って、離さない。
「…本気かよ…」
ふたばはやさしく目を細めて、いいよ、という顔をした。
そして、口をきゅっとすぼめて、俺のものをきつく吸い上げる。
「う、ああっ、ああああっ!?」
限界突破。頭の中で、白い光がはじける。
今まで出したことのないような量の精液が、ふたばの口の中にどくどくと放たれていく。
「ふた、ば……」
快楽の引き潮とともに、俺はガクッと崩れ落ちた。
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窓の外はもう夕焼けで赤く色づいていた。
幸い、姉も親もまだ帰ってくる気配はない。
「…ふたば、ごめんな」
「?」
「俺ばっかり、気持ちよくなっちゃって…」
「気にしなくていいよ。たのしかったもん。それに、小生も反省点はあるっス」
「ふたばも?」
「さっきはびっくりして吐き出しちゃったけど、しんちゃんのせーえき、ほんとは飲んであげたかったの」
「そ、そこまでしなくてもいいんだよ」
「小生がしたいの。だから、しんちゃんも小生も、まだまだこれから練習してじょうずになるっス」
「うん…あのさ、一応、コンドームは、持ってたんだ…千葉から、もらったやつ」
「千葉氏はエログッズの収集にも余念がないんスね」
「そうじゃなくて、その…ほんとに、するときは、付けるから…あ、当たり前だけど…」
「……付けるって、どこに?」
「相変わらず性知識が中途半端だなお前は…」
「いいもん、この先しんちゃんにいろいろ教えてもらうからっ」
そう言って、まだ裸のままのふたばは俺に抱きついてくる。
こういう天然小悪魔なところも相変わらずだな、と思う。
何も焦ることなんかないんだ。ふたばの言うとおり、ゆっくり体と体で覚えていけばいい。
ただ、ふたばの親父さんには十分注意しないと…。三女もいろいろ目ざといし…。
そんなことを考えながら、このいとおしい女の子のちょんまげに、そっと口づけをした。
おわり
最終更新:2011年02月26日 00:52