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しょーがない!今日は付き合ってやるかっ!!


「しっかし、4人そろっての買い物は久しぶりだな!」
チーム杉崎。3組の頃はそんな名前で呼ばれてた(あれ?誰が呼んでたっけ?)あたし達も、
高校が一緒なのはあたしと松岡だけだから、さすがに全員で集まれる機会は減ってしまった。

……いやまあ、高校生にもなって、相変わらず女だけでしか集まれない状況というのは多少悲しくはあるが…。

「そうね。吉岡のとこは1年の夏休みから全員参加の講習があるなんて、おどろいたわ」
「うーん…勉強も嫌いじゃないんだけど、さすがにあんなにあると嫌になっちゃうかなぁ…」
「まあまあ、ゆきちゃんも今日は嫌なことは忘れて、パーッといこうよ!」

…女3人寄ればかしましい、だっけ?近況 、恋愛と次々に話題を変えつつ、
途切れることなくおしゃべりが続いていく。
うん。いいよな、こういうの。
「?どうしたの?宮ちゃん。なんだかご機嫌だね」
「ああ…やっぱ友情っていいなぁ、ってさ!!」
「「「「…………」」」
あれ?あたし何か変なこと言ったか?


今日は電車で市街まで来てる。他県で話題になってるドーナツショップがこっちにもできたんだ。
ただ、話題になりすぎてて、普通に行ったんじゃ2時間待ちとかすごいことになってるらしい。
そこでブルジョア杉崎の出番。
杉崎パパの手配一つで、特別ルームでゆっくり味わえる、って訳だ。
普段はなかなかここまで来る時間を空けられない吉岡も、今日のために頑張って、久々に全員集合となったわけだ。


「うわあ、楽しみー。昨日は記事を読んでてなかなか眠れなかったよ。杉ちゃん、本当にありがとう!」
「吉岡、スイーツ好きだもんね。まあ、パパがあの店のオーナーと友達でね。みんな感謝しなさい」
「…昔から思ってたが、お前のパパは何の仕事をしてるんだ?」

と、まあそんな感じで市街途中の広場を通り抜けようとしたときだ。

「あれ?あれって三女さんじゃない?」
松岡が声を上げた。

「んー?どれだぁ?」
休日の広場は多くのカップルや待ち合わせの人たちでごった返してる。ぱっと見渡してじゃ分からない…
「もー!宮ちゃん!三女さんの強力な霊的オーラが感じられないなんて、どうかしてるよ!」
「お前に言われたくないよ!
…あ、わかった。確かにあの髪は三女だ。それに…何か、知らない男に手を取られて…って!」

変な男にナンパされて、嫌がってる…!

思うや否や、あたしはダッシュ。男と三女の間に身体を割り込ませる。

「あたしの連れに、何の用だよ!」格好良く啖呵を切るあたし!
「宮野さん!」
「宮下だよ!!」余裕だなオイ!

まあいい!今回はあたしメイン!!活躍シーンに見惚れろ三女!!!




「ありがとう。
助かったよ杉ちゃん、ゆきちゃん、さっちゃん、宮城さん」
「うおぉい!!あたしの活躍はカットかよ!しかも何であたしだけ呼び方が違うんだよ!さらに最後かよ!

だから宮下だよ!!!」

「なに言ってんの、宮下?
ナンパ男を追い払うのに活躍したのは松岡でしょ」
いや、確かに(いろいろな意味で)スゴかったのは松岡だよ!?一番活躍してたさ!!
男が明らかにドン引きしてどっか行った事を『追い払った』と言うべきかどうかは別にして…。
「でも、あたしも頑張ったじゃん!ちょっとは見せ場をくれよ!!」ウワァウワァ
「まあまあ、宮ちゃん」
「でも三女。あんたがこんな所でウロウロしてれば、ああなって当然よ?わかってないわけじゃないでしょ?
どうせさっきのだって、本日一号ってわけじゃないんだろうし」

杉崎の台詞につられて、あらためて三女を見てみる。
淡い青を基調としたワンピースから伸びる白い手足。三女の特徴でもある長い黒髪。
付き合い出してから、常時まとうようになったキラキラオーラ(昔は風邪の時しかまとってなかった)。
しかも、今日は薄化粧をしてるのか?濡れた唇が、三女のしっとりした雰囲気をさらに引き立ててる…。
ゴクリ…。

…はっ!いやいや、あたしにそんな趣味はないぞ!杉崎じゃあるまいし!

ゴホン。まぁ、ともかく、だ。今の三女は同性のあたしから見ても魅力的…どころか完璧な美少女だ。
こんな人通りが多い所でウロウロしてたら、さっきみたいな男がホイホイ寄って来るのは当たり前だろう。
「…うん…。でも、今日は先生とここで待ち合わせだから…」
「なるほど、珍しく化粧をしてるのはそういうことか。三女もやっぱ乙女だなぁ」アレ?みんなの視線が白いぞ?

「ま…まあ、あれだ。それならそれで、かくれんぼの時みたいに、必要な時以外は消えちまえばいいじゃないか」
「…うん。そうなんだけど、最近上手くいかないんだよ」
「……それって、付き合いだしてから?」
「………うん」モニョモニョ
「なるほどね」コソ
「?どういうことだ?」
「多分、三女の存在感を消す能力を、三女自身のキラキラが打ち消してしまっているのよ。
なんていうか、隠ぺい力の上限を超えてしまってるっていうか…」コソコソ
「納得」コソコソ
そりゃ、こんだけ粒子を振りまいてりゃ、隠れるどころじゃないよな。
「それじゃ、天才美少女霊媒師らしく、霊的オーラで撃退しちゃえばいいのよ!三女さん!!」
…呪いのオーラの事か?まぁ、あれなら大抵のヤツは逃げてくし、それもアリかな。
「それも上手くいかない…」
えぇ!?
「それじゃ、世界の平和は誰が守るって言うの!?」
松岡は放っといて、それはさすがに重傷だな。
確かに、まさに今、三女は困った顔をしている。オーラは感情に左右されるから、普通なら黒いものが滲み出してくるはずだ。
「うーん、なんでだろうなぁ」
感情に左右されるはずなのに、キラキラが消えない…いや、逆か?
今の感情の影響を受けてるのにキラキラしてるってことか?
…?
……!
つまり今、三女は『表面上は困ってるけど、付き合いだして幸せ!なのがはるかに上回ってる』状態ってこと!?

………それに比べて、女四人でスイーツ巡りなあたしらって……。

ふと杉崎を見ると、同じ結論に至ったのかげんなりした表情をしている。
「ま、まぁ、その対策は後々考えましょ。当面の問題は待ち合わせ相手の矢部っちよ」
上手く話題を変えたな。
「…で、その矢部っちは?」
「待ち合わせの時間から40分くらい遅れてて…」
「……携帯は?」
「…私、持ってないんだ」
………あんの、ヘタレ童貞!!いや、もう童貞じゃないのは杉崎から聞いてるけど…。ゴニョゴニョ。
「ったく!信じらんないわね!あのヘタレオタク!こんなに可愛い娘を待たせるなんて、本当にどうかしてるわ!!」
あたしら4人の心を代表して口にする杉崎。
「いいんだよ、杉ちゃん。きっと何か理由があるんだよ。駅で迷子の子供を見つけたとか」
「あのなぁ、三女、優しすぎ!んなベタな事あるわけ「おーい!ひとはちゃん!!ごめん!駅で迷子の子が居てさぁ!」
……もう、何も言いたくない。
まぁ、お邪魔しちゃ悪いし、そもそもあたしらも別の目的があったわけだし、ちょっと挨拶しておとなしく消えるか。
「あっ、せんせ「「「ふざけんなー!!!!!!」」」松岡、杉崎、あたしの声がハモる。

「矢部っち!こんなに可愛い三女さんとデートなのに、そのヨレヨレのシャツはなに!?コーディネートって知ってる!?」
「ていうか、携帯くらいあんたが買ってあげなさいよ!唯一、三女に勝っているところなんだから、ちょっとは甲斐性見せなさい!!」
「そもそもこんなとこで待ち合わせんなよ!自分の立場も考えれば、矢部っち持ちで喫茶店にするとかあっただろ!」
さすがの吉岡も、矢部っちのあんまりな姿にあんぐり口をあけて絶句してる。

「えぇええ!?みんな久しぶりに会ったのに、いきなりそんむぐぅ」


矢部っちの台詞は最後まで続かなかった。
なんでかって?口をふさがれたからだよ。
なにでかって?三女の唇でだよ。



あたしらだけじゃなく、まわりの人もギョッとして二人を見てる。
そりゃそうだ。こんな明らかに不釣合いの二人が、しかも可愛い娘の方から突然抱きついてキスしてるんだ。
しかも、三女は矢部っちをしっかり抱きしめてるのに、矢部っちはどこに手を置いていいのかわからないみたいで、
阿波踊りみたいな変な動きをしている。

「むぐぐ……」 ジタバタ
「んぅ……」 クチュ...ペチャ...

……あぁ…相変わらずのヘタレなんだなぁ。変わってないなぁ。なつかしいなぁ。

クチュ...チュ...

あたしには何も聞こえないぞ~。何も聞こえないったら聞こえない!

「…ん…ぷぁ……」

たっぷり2分経過してから、やっと三女が口を離した。二人に口に掛かる銀色の橋が、
なんていうか…色っぽい…というか……ってダメだ!
自分を騙し切れない!モロにエロイよこれ!

うっすら上気した頬、潤んだ瞳。寒気すら感じる程の色香。
周りのすべてが三女の次の行動に注目している。
…ごくっ……。


「…先生。今日は私とデ…デートなんです。
あんまり他の女の子ばっかりお話しないで下さい」















……はっ!
あたし、立ったまま気を失ってたのか!?

何があったんだっけ…?
何か見てはいけないものを見てしまった気が…。
うぅ…それにこの胸焼けはいったい…?
まるで黄昏屋のミラクルジャンボパフェにガムシロップと練乳をたっぷりかけたものを、無理矢理3人前食べさせられたみたいな…。
いや、もちろんそんなもの食べた事ないけどさ…。
「…宮ちゃんも気が付いた……?」
さすが吉岡(?)。あたしより先に覚醒していたらしい。しかし、顔色の悪さは隠しきれないようだ。
「もう、今日は、ドーナツは無理かも…」
「あたしも…」
「…うん。私もだよ…」松岡も覚醒したらしい。
「しかたない、杉崎が目を覚ましたら、適当に服でも見て帰るか…」

ドサ

ドサ?
「ああっ!?杉ちゃん!しっかりして!」
「うぅ……吉岡…?お
願い、お墓には引き出し2段目に仕舞ってるHDを一緒に入れて…。
あれには、人に見られちゃマズ…大切なものがたくさん詰まっているの…」
「杉ちゃーーーーん!!!」
「ゆきちゃん落ち着いて!宮ちゃん!早くコーヒーを!ブラックで!!
このままじゃ本当に危ない!!」
「くそっ!待ってろ杉崎!もう少しの辛抱だからな!!」

…とりあえず、三女の惚気を引き出すフリは絶対に出すまいと心に誓った。



<おわり>