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友達たくさんいるし!


「ふぁ~…。
ひとはちゃん、おはよう…」
「おはようございます」

…このやりとりにも慣れちゃったなぁ……。
ほんとは良くないんだよな…と思いつつ、注意できない弱いボク…。
早くあのカセットテープを返してもらわないと……!

……………………。

もうすでに、取り返しのつかないところまで来てるような気もするけど……。

「先生、今日はちょっとだけ部屋の散らかりがマシなってますね。
ほんのちょっとだけですけど。
あの汚さでは、ゴミで窒息死してしまうことにやっと危機感を覚えましたか?」
「…これでも頑張って掃除したんだけどね」
「空き箱を捨てただけで『掃除した』なんて、先生の常識を疑います。
まぁこれからガチレンを視聴するので、ほんのちょっとでもマシな方が私も助かりますけど」
「…今日も6時前には来て、チクビとは十分遊んだんだろうし、家に帰って見てくれないかな?」
「嫌です。
家ではみっちゃんとふたばがうるさいので。
ここは精神的苦痛を受けるほど汚いですが、
『ガチレンを落ち着いて見れる』という一点についてのみは評価していますよ」
「…それはどうも……。
………そこまで言うなら、たまには掃除を手伝って欲しいな~…とか思ってみたり……」
「部屋中の黒いアレがいなくなるくらい綺麗にした後なら、少しは手伝ってあげてもいいです」
「……ありがとう」





「やっぱり、15体合体ジェネシックガチガイガーは最強だった…!」むふー
「うん!合体シーンもかっこいいしね!
初合体のときなんてスロー再生で10回以上見直しちゃった!」
「あれはもはや芸術です。
そうそう、芸術といえばスーパーレッドの……」

なんだかんだあるけど、こうやってリアルタイムで感動を分かち合える仲間がいるのは嬉しいな。
今の職場は…この町はもちろん良い所だけど、まだまだ馴染んでない身としちゃ、
こういう時間が持てるのはありがたい……っと、いかんいかん。これじゃ公私混同だぞ。しっかりしろ。

……あぁ…でも、

「……で、やっぱり私としてはガチDDTが1番だと思うんです」むふう

こうやってるときは本当に楽しそうに、可愛く笑ってくれるから、ますます弱っちゃうんだよなぁ…。
まあここまで来たんだし、もう少しくらいはこのままで良いか。

「そうだね。
予告だとさらに新装備も出るみたいだったし、来週も楽しみだね~…」

……とは言え、せっかくの休日に早くから起こされ続けるのはちょっと……。
早起きが良い事なのはわかってるけど、たまにはゆっくり寝かせといて欲しいよ……。
ふあぁ~~…ひと段落したら…ねむ……。

「……さて、それじゃ…」
「ああ、うん。また明日学校でね」
やれやれ…今日はこれで帰ってくれるか……。
まだ時間あるし、二度寝しようかな。

「なぜ部屋をマシにしたのか、理由を聞いておきましょうか」

「…いや、なんで……?」
「普段と違う行動をとるということは、何かしらの犯罪計画の可能性が考えられるので。
場合によってはあのテープを持って、通報しに行かなくてはなりません」

ナチュラルに脅してくるな…。

「……今日、大学時代の友達とこっちで新年会をすることになっててね。
駅前で飲むんだけど、二次会にボクの部屋に来ることになるかも知れない…っていうか、
多分なると思うから、片付けたんだ」
「そんなに親しい友達がいたんですね。驚きです」
「当たり前だよ!
ていうか、キミに言われたくないよ!!」
「まあどうせ男の人ばっかりなんでしょうけど。
世の中は成人式の3連休で明るいというのに、本当に寂しい人生ですね。
しかもべろべろに酔わされた挙句、キャバクラの支払いを全部押し付けられ、
足りない分を身ぐるみ剥がされて泣いて帰ってくるなんて、まるで先生の今年の運勢を暗示しているかのようですね」
「そろそろ本気で怒るよ?」
「でも、男の人ばっかりなんでしょう?」
「……まあ」
「やっぱりそんなところでしょうね」むふぅ

[ガッチガチに決めるぜ~]

「あ、電話だ…っと、ちょうど友達からだ。
…やあ、やっさん。
…いや、起きてた起きてた。
…ああそうだよ、戦隊モノを見てたんだよ。いいだろ、ほっといて!」

「……………………」

「…うん。今日の店はこっちの駅前で予約してるから。ボク入れて3人でいいんだよね?
…へ?1人追加?いいけど…誰が来るの?
…ええ!扇さんが!?いや…彼女、実家のある広島の方に赴任したんじゃなかったっけ?」

「……………………」ピクリ

「…へー、そりゃいいね。扇さんもホテルは駅前で取るんでしょ?
…あー…確かに、彼女ならボクの部屋を見に来そうだなぁ……。
…了解。真面目に片付けとくよ。じゃ」

ピッ

「奇跡的に女性も来るようですね」
「ん?そうだね……女性なんだけど……」
「先生のテンションが低いということは、おっぱいの小さい人なんですね」
「いったいボクをどんな人間だと思ってるの!!?そんなことで言いよどんだんじゃ無いよ!!」
「じゃあ、どうしてなんですか?」
「……その…ちょっとエネルギーが有り過ぎる人というか…酒癖が悪いというか…。
昔、振り回された思い出が…」
「部屋に押しかけてきたり?」
「何度かね…。
戦隊モノ好きのこととか、結構言われたなぁ。
今日はガチレンフィギュアも片付けておくか」
「……部屋に泊まっていったり?」
「…1度だけ、ね。
あの時はベッドに吐かれてひどい目にあったよ……」
「……………ふーん、そうですか。
素敵なお友達が来てくれることになって、良かったですね。
……どうやら珍しく本当に忙しいみたいですから、帰ります」

スイ...

「……ちなみに、駅前には何時集合なんですか?」
「18時だよ。
まあ、それまでにもうちょっと部屋を掃除しておくよ。
確かに言われたとおり、まだまだ汚いわけだし」
「………頑張ってください」

スイー バタム

……?
ひとはちゃんが応援してくれるなんて……それになんだか……?
…学校で聞けばいいか。今は頑張って掃除だ!

まずはフィギュアを箱に仕舞って……。





「よし、そこそこ綺麗になったな。
そろそろ行くか!」

バタム ガチャガチャ タンタンタン




スイー ガチャガチャ バタム





「うぃ~…もうダメぇ~~」
「ったく、さとやんは相変らず酒弱ぇなぁ。
オラっ、部屋に着いたぞ!鍵出せ鍵!」
「…うい。
え~~っと、どこだっけ…?
…あ、汚い部屋だけどびっくりしないでね」ゴソゴソ
「別に期待してねぇって」
「おうおう、遂に新・矢部君邸のベールが解かれますなぁ!
やっぱり昔みたいに、特撮のビデオとか人形が飾ってあるのかな~?」
「ははっ!そうそう!」
「いやいや、大穴で彼女が部屋を掃除して待っててくれてたりして!
『智さんお帰りなさい!』みたいな!」
「ないない!」 「それは絶対ないな~!」

「「「わははははは」」」

うう…みんなひどいや……。

……でもほんと懐かしいな、この感じ…。
おっと、鍵、あったあった。

ガチャガチャ

「開いたよ~」
「お、サンキュ」 「お邪魔しまっす」 「お邪魔するね~」

電気電気…。

パチッ

………!!?

「うわっ、すっげー綺麗にしてんじゃん!
ちっとは片付けてると思ってたけど、予想のはるか上を行く綺麗さ!!」
「ふえ~……こりゃすごいねぇ~。
なんか、磨き上げられてまぶしいくらいだよ」
「なんだなんだ~。
扇が来るから気合入れたのか~?」
「えっ!?いや、その…あはは……。
いや~、普段からこんなもんだって~」
ええええ??何でこんなに綺麗になってるの????

「嘘つけって!お前が普段からこんなに掃除してるわけねぇだろ!!
…なにお前、本当に彼女が…?」
「いやいやいやいや!何言ってるの!ボクにそんな甲斐甲斐しい彼女がつくれるわけ無いじゃない!!」
…自分で言ってて悲しいや……。

「お?
でもさとやんらしく、なんとかレンジャーの人形も飾ってるじゃん」
「ええ!?」
確かに片付けたのに!?

「あら?このお皿、フタ…わっ!美味しそう!!
ひょっとして…これも!こっちもだ!!
すっごい豪華!!」
「はあ!?」
ちょっ、何それ!!?

「マジで!?うおっ、すげぇ!
どれどれ……おお、すっげーうめぇ!
こりゃほんと、ツマミにするには豪華過ぎだな~」
「おいおいさとやん~、白状しろよ~。
これ、明らかに手作りだよな~~?」
「へえ!?
そっ…それは……あれだよ、料理が…料理に…っ!
そう!こっちに来てから、料理にも目覚めちゃって!!
あははは……」
「ん…床に……?
髪の毛…長さからして矢部君のじゃないよね」

ぶぅ!!

「むむ…この細さ、この艶!明らかに女の子のだね~!
……うらやましいくらい綺麗な髪だな…」
「おっ、ベッドにもおんなじような髪が落ちてたぜ?
……ベッド…ってことは!」
「さぁ証拠は全てあがってるんだ!白状せい!」
「ええええっとだね、それはどういうことかと言いますとだね…!」

………マズイ。
犯人はわかりすぎるくらいわかってるけど、バレたら全部終わっちゃう!!
あぁでも、適当な言い訳が思いつかないよ~!!

「あ~そのぅ…彼女、的な人がボクにもやっとできて…っていう感じもあったりとか…」
「おお!?あのさとやんに彼女が!!
……いや、そりゃマジでめでたいよ。ほんと、おめでとう。
今度ちゃんと紹介してくれよ」
「むしろオレに譲って。これマジで美味いわ。
こんな家事万能の彼女なんて、うらやましすぎ!」
「しかもこの髪。
あたしのプロファイリングからすると、かなりの美人と見たね!
手入れに気を使ってるんだろうけど、この艶はやっぱ本人の髪質が良いんだよ。
経験的に、髪の綺麗な娘って美人が多いんだよね~」
「そ…そうだね。真っ黒な髪が…それに笑顔が綺麗な子、だよ…。
アハハハ」
「なんで声が上ずってんだ?
…まぁいいや。
とにかくさぁ、ほんとにちゃんと紹介してくれって。
友達としてさとやんのこと、お願いしときたいしよ!」
「う…うん、そのうち…ね。
もちろんボクも紹介したいんだけど、ちょっと人見知りする子でさ。
だからもう少し待っててもらえると嬉しいんだよな~…。
他のみんなにも、まだ内緒にしといて欲しいというか……。
時期が来るまで、頼む!!」
「……いいけどさ。
さとやんがそう言うなら、事情あんだろし。
…しっかし美人で、家事万能で、趣味に理解がある上、『ボクにだけ心を開いてる』ってか~?
どんだけだよ!
いったいどこでそんなスペック高い娘と出会ったわけ?
言い方からすると年下みたいだけど」

どっきぃ!

「い…いやぁ~、なんていうか…職場での出会いがあったような無かったような…。
あは…あはは…」
「職場って…鴨橋小学校だろ?
でも年下……ははぁ~ん、さてはお前、ついに独りに耐え切れなくなって、教え子を連れ込んだな~?」

どっっっっきぃぃぃぃ!!

「アハハハハハ、ナニイッテルンダヨ。ソンナコトアルワケナイダロ」
「……………」
「アハ…ハハハ……」


ごくり………。


「ぷっ…はははっ!悪ぃ悪ぃ!ネタだネタ!
用務とか教材業者の娘だろ?わぁ~ってるって!!」
「お前そりゃさすがにキツいぜ~!
だって小学生だぜ?即通報レベルじゃん!
いくら何でもさとやんに失礼っしょ!」
「あはは、そうだよ!
真面目で、それ以上に巨乳フェチな矢部君に、そんなスキャンダルはありえないから!」

「「「あははははっ!!」」」

「アハハハハハ~~」


……なんとかごまかせたか……。


ワイワイ


「でも、矢部君に彼女か~…。
ちょっと寂しいな………」
「え…?」
ひょ…ひょっとして扇さん、実はボクのことを……!?

「もうあんまり矢部君で遊べないや」
がくっ。

「いや…遊ぶって……」
「ん?ああ、すねるなすねるな!悪い意味じゃないんだから!
でもほんと、彼女さんが恐いから今後は付き合い方に気を付けよっと!」
「恐い、か……」
確かにあのオーラとかは……。

「うん。
矢部君も気をつけなよ~。こうやって自分の痕跡をはっきり残して行くタイプは、かなり嫉妬深いからね。
冗談じゃなくて、対応間違えるとサクッと刺されて終わるよ?」
「刺っ……!
もっ…もぉ~、変な脅し方しないでよ~。
痕跡って…髪の毛はたまたま落ちちゃってたんだってば」

……でも。

確かにひとはちゃんには、嫉妬深いところがあるよなぁ…。
前にチクビのことでふたばちゃんとケンカにしそうになってたし…。
矛先がボクに向くことは絶対ないけど、あの子の将来のためにちょっと注意しといてあげたほうがいいかな。

「さあ、今日はさとやんに彼女ができた記念だ!
朝まで飲もうぜー!!」
「「お~~!」」
「うへぇ、お手柔らかに…」


――――――――――


「いたた…何とか回復したけど、おとといはかなり飲まされたなぁ……」
おかげで昨日は一日中寝込んで、何もできなかったよ…。
今朝も起きるのが辛かったし……。
ひとはちゃんがタンスの中まで整頓してくれてたから、朝の準備に時間をかけずに済んで助かったよ。

「二日酔いのまま学校に来るなんて、大した生活態度ですね」
「面目ない……。
教室に行くまでにはしゃんとするからさ。
…というかひとはちゃん。せめて休み明けの朝くらい、職員室の机の下は遠慮してもらえないかな……」
「先生に指図される筋合いはありません」
「あるよ!
……それと、こないだボクの部屋の掃除とかしたでしょ?」
「しましたよ」
「…何で?」
「せっかく部屋を綺麗にしてもらったんですから、まず言うべきことがあるんじゃ無いですか?」
「あっと、そうだった。ありがとうございます。
…だけど何で急に?」
「たまには手伝って欲しいって言ったのは、先生じゃないですか。
あの日の夕方はたまたま時間が空いたので、ちょっと気分転換も兼ねてしてあげたんですよ」
「…確かに言ったし、ありがたかったけど……。
来客がある事も言ってたんだから、電話とかで教えておいてくれたらもっと嬉しかったなぁ」
「そんなの私の知ったことじゃありません」
「……料理は?」
「最近いろいろ手の込んだものに挑戦してまして。
さすがにちょっと自信が無かったので、試験台になってもらおうかと」
「試験台って!ひどい!!
あっ…ううん。でもとっても美味しかったよ。来たみんなもすごく喜んでくれたし。
ありがとう」
「そこまで感謝されるということは、力を入れ過ぎましたね。
無駄な労力を使いました」

………やっぱり、いたずらとか気まぐれか。
とは言え掃除して、美味しい料理を用意してくれたのはほんとのことなんだし、もっとちゃんとお礼を言わなきゃな。

「本当にありがとう、ひとはちゃん」
「…………別に。
まあ、あの部屋は私も使ってますから。
……せっかくあれだけ綺麗にしてあげたんです。せめて今月くらいは掃除に気を使ってください」
「うん!
ひとはちゃんが今度来たときに、気持ちよくガチレンを見てもらえるよう頑張るよ!」

…うん。
ひとはちゃんの親切を、いたずらだなんて思ってしまって悪かったな。
そうだよ!この子は姉妹想いで友達想いの、優しい良い子なんだから!

「あぁ、それと」
「なにかな?」
「コレ、食材のレシートです。調理費は2割増しでいいですよ。
あと…いえ。趣味の悪いエロ本とDVDを全て処分してあげた分は、サービスにしておいてあげましょう。
泣いて感謝してくださいね」
「やっぱり恐ろしい子だよ!!」



<おわり>