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日曜日。ここはいつかのスケート場。
多くの人たちが楽しそうに滑る中にあって。

「どうしてこうなった」
「どうしてこうなったのよ」

千葉雄大と丸井みつばはため息を漏らした。


話は金曜日に遡る。
佐藤信也は丸井ふたばがスケート靴に慣れず、いつものように爛漫と動けないことを気にしていた。
というよりも、滑れないことを気にしているふたばを気にしていた。
自分が教えてやればいい、それは分かる。しかし、休日に二人でスケートへ行くのがどうにも恥ずかしい。
佐藤はふたばに一定以上の好意を寄せているが、特殊な関係には至っていない。
相手が相手であれば、ハッキリさせるのも手ではあるが、今のふたばに望むべくもなく。
やはりデートという形ではなく、誰かと一緒にという形がいいと判断した。

「というわけで千葉、頼む」
「なんでイケメン様のデートに付き合わなきゃいけねーんだよ」
「そういうなよ、俺だってどうかとは思ったけど、ふたばをあのままにしておきたくないしな」
「まぁ正直運動が苦手なふたばなんて想像もつかなかったしな。そうだな、助けてやるか」

ひとまず助っ人を得ることができた佐藤。あとはふたばに切り出せばそれでいい。

「なぁ、ふたば。今度スケート行かないか?」
「しんちゃん、小生、スケートは…」
「うまくいかないんだろ。そういうのがあるほうが普通なんだよ。大丈夫、俺が教えるよ」
「で、でもでも、手で…」
「それじゃ滑りながら話したりとかして、一緒に楽しんでる感じがしないだろ。俺はふたばに一緒にスケートして欲しいんだよ」
「しんちゃん…ありがとうっス!」

ハッキリ言って告白だが、両人ともこれが普通なので何も感じていない。あくまで両人は。
当然周りには充分なぐらいなので、突っかかる者もいる。

「ちょっと変態!私の妹とデートってどうする気よ!」

丸井みつばだ。言い方こそ荒いものの、妹を想ってのことである。本人は絶対に認めないが。

「デートって…千葉も一緒だよ」
「安心できる要素が更に減ったじゃないの!私が監視に行くわよ!」

佐藤は正直邪魔だと思ったものの、口には出さない。ややこしくなるのは目に見えているからだ。
それに、千葉を誘っておいて、ふたばにかかりきりになってやや放置気味になってしまうのは気が引けるのだろう。
とにかく佐藤はそれ以上は言わなかった。が、焚きつける者もいる。

「まぁ前回は派手に転んだしな。長女もリベンジにいいんじゃないか」
「ななな…!いいわよ、私がしっかり滑れるところを見せてあげるんだから!目ぇ見開いてありがたく見なさいよ!」

どうやら千葉が焚きつけたおかげで、佐藤には都合よく話が進んだらしい。
千葉はみつばに任せておいて大丈夫だろう。


そしてその会話を聞きながら、担任教師の机では。

相変わらず一緒に居る矢部とひとは。

「なんだかスケートの話で盛り上がってるねぇ」
「先生はどうせ滑れないんでしょう?」
「失礼な!ちゃんとできるよ!」
「…。彼女が出来たときにエスコートしたりするため?」
「そうだよ、練習したんだよ!」

ふんぞり返る矢部。無論こんなことをすれば、ひとはに粉砕される。

「彼女もできたことがないのに、無駄な努力ですね」
「うぅ…酷いよ…」
「だいたい、本当に滑ることができるんですか?もう錆付いてて転ぶんじゃ?」
「そんなコトないよ!…多分」
「じゃあ見てあげます。私、滑れるんですよ」
「えぇー、ひとはちゃん、運動全般苦手なのに?」
「…せんせい?」
「ひぃぃぃぃ、分かった、分かったよ!ちゃんと確かめるから!」

ひとはが便乗してデートの約束をしていた。

そして日曜日に戻る。
矢部とひとははいつも通りで。
佐藤とふたばは苦戦しながらも、手を取り。
そして必然的にペアになる二人。

「なんでこーなるのよ…。大体、集合自体おかしいでしょ。何で私ら姉妹なのに、矢部っちとひとはで一緒に来るのよ…」

当然矢部の部屋から一緒に来たからである。既に行動が同棲中の男女染みているが、矢部は全く気づいていない。
ちなみに二人は現在一緒に滑っている。矢部のほうはどうやら錆付いていなかったらしく、安定していた。
ひとはにとってはある意味残念ではあったが、なんだかんだ言いながら一緒に滑ることを内心楽しんでいた。

「佐藤も佐藤だぜ…まさかずっと手を取って教えるとは…」

千葉は、ふたばならある程度何とかなるだろうと思っていたが、これが存外慣れない。
結果、佐藤はふたばに付きっ切りになる。まさかここまで靴が苦手とは思ってもいなかったのだ。
しかし、これは千葉の見通しが甘いと言わざるを得ない。
ふたばが滑れるようになったところで、佐藤はふたばと一緒にいたかった。
三人で行く予定だったが、みつばが現われたことでペア同士で問題なくなった。
矢部とひとはは最初から問題外である。どうせ直ぐに二人でいつものようになる。
そうであるならば、ふたばにスケートを教えるという大義名分がある佐藤が遠慮する必要はない。

だからといって、二組のペアに中てられる千葉とみつばは内心穏やかではいられない。
二人ともこの瞬間は同じ気持ちだった。

自分には相手がいない。

そして思わずため息をつく二人。余りにも息がぴったりだったため―――

「ちょっと!私の真似をしないでよ!」
「うるせぇ!こっちだってため息をつきたくなるんだよ!なんなんだよアレ!」
「私に言われたって知るわけないでしょ!どーしてこの私にいないのに、あの二人はあぁなのよ!」
「それこそ俺が知るかぁ!」

当然のやり取りを繰り広げることになった。それを見ている他人たち。もちろん佐藤やふたば、矢部にひとはも含まれる。

「あの二人、仲がいいねー」
「変態と痴女だから親和性が高いんですよ」
「それは多分違うと思うぞ…」
「仲がいいのはいい事っス!」

相手がいないと不貞腐れる二人。
だが実は一番、周りから生暖かい目で見られている二人であった。

おしまい