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木の葉のざわめきが気持ちよく、木漏れ日はまばらで。
その心地様さに半ば身を預けながら。

「おーい、大丈夫かー?」
「…無理」

私は後悔していた。何で木になんて登ったのよ…。



晴れ。珍しく帽子の私。もちろん最新の柄で。問題なのは今日は風が強かったってこと。
スパッツだったのは良かったの。じゃあなんで帽子を選んだのって聞かれても、選んじゃったものは仕方ないの!
正直出かけてから失敗だったって思ったわよ!で、帰れば良かったのに強行しちゃったわけで。

そしたらまぁ、お約束に遭って木に引っかかっちゃったの。
そこで千葉に遭遇して、取って、ってお願いしたのよね。二つ返事で引き受けてくれたんだけど…。
その後千葉が登り際に、「まぁ、長女なら自分で取るレベルだな」とって言うわけ。
それなら当然私も取りに行くしかないわよね。みつばなんかに負けるもんですか!って。

で、登ってる最中に千葉がスパッツがどうとか言ってたけど正直耳に入ってないわ。
だって私は…木登りなんてしたことがないもの。

で、降りられない私。千葉が言うには私が居る場所はあまり高くないから大丈夫だそうだけど…。
それは慣れてるから言えるのよね。
木登りなんて経験のない私には、木はとても頼りなくて、高さは眩暈を覚える程だった。
下を見たら怖いわよ。寄りかかっている木も怖いわよ。

「それぐらいだったら大丈夫だから飛べって。何かあっても止めてやるから」
「うぅ…」

何となく嫌だ。千葉エロいし。第一…
「女を困らせるのが義務とか言ってるヤツの言葉なんてあんまり信用できないんだけど?」
「む?俺そんなこと言ったか?」
「言ったわよ!」
「ふむ。なんにせよそれで降りてこれないわけだな」
「そうよ…」
「なら、別の人でも呼んでくるしかねーな」
「えぇっ…」

こんな無様な姿を晒せと言うの!?

「や、やめっ!」
「しょーがねーだろ。こっちとしては心配だしよ」

くっ、心配までされてるのね…。

「だいたい千葉が余計なことを言わなければ…」
「そーだよ、だから責任感じてんじゃねーか」

…。そっか。そうよね。

「俺だって人呼びたくねーからさ。だからホラ、なんとか頑張ってみろって。俺が受け止めるから」

…ぐ。中々恥ずかしい台詞を吐くじゃない。いいわよ、信じてあげるわよ。

…えいっ!


ドシャッ

「っててて…」
「…映画やドラマのようにはいかないものね」
「下敷きにした相手にそれかよ…」
「…大丈夫?」
「あー、はいはい。勿論だとも。それよりいつまで俺に乗ってるつもりだ?」

!?の、退くわよ!

「いやしかし軽かったな」
「と、当然でしょ!」

なんてデリカシーのないやつなのかしら。

「ま、いいさ。杉崎が無事で済んで良かったよ」

そう言って立ち上がった千葉は一瞬顔を歪めた。

「…どうしたの?」
「んー。いや、登らせて悪かったなってな」
「…もういいわよ。そうやって、う、受け止めてくれたじゃない」
「そか。んじゃまた素晴らしいエロスパッツ見せてくれよな」
「はぁ!?」

こいつは何を言っているの。

「ん、木登りんときのスパッツはエロ素晴らしかったぜ!」
ゴスッ
「いってぇ!」
「もう知らないわ…」

一瞬でも見直した私がバカだったわ。もう放っておいて帰ろう。そう決めて私は千葉に背を向ける。

「それじゃね」
「お。じゃーな」

「ふむ…さーて、どうしたもんかな…」

…?何か言ったかしら?ま、もういいわ、帰る。

―――――――――――――――
<翌日>
…なんなのアイツ。ふざけてんのかしら…。男子連中もそりゃ問い詰めるわよね。

「おい千葉、それどうしたんだ」
「ん、何がだ?」
「足だよ、足!」
「あー、なんかコケた時に捻ったみたいでな。ったく、ついてねーぜ」

…嘘ね…。あのバカ…。どう考えてもあれは昨日のよね、問い詰めないと。

「ねぇ、千葉。それ…」
「ん。あー、まぁ…後でな」
「?ま、まぁ分かったわ」

なんで今話さないのかしらね。


<休み時間>
「ねぇ、千葉。それあの時のでしょ?」
「どの時だ?」

嫌なこと聞くわね…。

「私がお、降りれなくなったとき」
「くくっ、傑作だったな」
「んなっ!?」
「あー、怒るな。まぁ、そうだよ、あんときに捻った」
「何でその時に言わなかったのよ」
「言えるわけねーだろ、女の子助けて怪我しました、なんてよ」

意味が分からない。怪我したのなら何か言うべきだ。
ましてや人がいなかったあの場だと、誰も助けてくれなかっただろう。
足を引きずりながら帰ったのかしら…。私は直ぐに去ってしまったわけだし…。

「そんなことないじゃない。私は実際に助けてもらってありがたかったのは…ちょっとはあったんだから」
「ん。まぁ、アレだ。…女の子の前でカッコつけるのも男の義務だから、な」

っ!…呆れる程のバカだわ。ほんとにバカ…。でも、そうね…。

「なにそれ、似合わないわよ」
「んなっ!うるせー!」
「今の千葉じゃまだまだよ」
「ん…?」
「それで、あの後どうやって帰ったのよ」
「まぁ、騙し騙し、な」

やっぱり引きずって帰ったのね。大変だったでしょうに。

「…ごめんね」
「ばか、謝るなよ。俺が黙って助けた意味がねーだろ。いいんだよ、こうやってやせ我慢するのも男ってな。
それに杉崎のレアな姿も拝めたってことで相子だ」
「くす、やっぱりまだまだだね」

ふふ…。バカやるのも大変なのね。
ん…。やっぱり今は似合ってないけど、それでもマシに見えるかもしれないわね。
だったら、もっと見てみたいわ、千葉のかっこいいところ。

「ね、ほんとにカッコつけたいなら、もっと私にたくさん見せてよね。きっと素敵な千葉もそのうち見つかるわ」

千葉が変な顔してるけどしーらない。ふふ、これからはちゃんと最後までカッコつけなさいよ?