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何もない日だった。
PM19:00
海江田と矢部は学校から少し離れた居酒屋で呑んでいた。
……と言っても、元より海江田から半強制的に連れてこられた矢部は、目下、海江田の愚痴の聞き手に回っていた。
「大体、私はまだ29よ!マンゴーなら完熟で、今が一番美味しいはずよ!なのに、矢部先生のクラスの子たちときたら、いつもいつも私の事を三十路だの、お肌の曲がり角だの……ちょっと!聞いてるの!?」
「はいはい、聞いてますよ……」
(お肌の曲がり角は自分で言ったんじゃ……)
そんな事を考えながら、矢部はビールの入ったグラスに口を付ける。
そして、喉越しを静かに楽しんだ後、お皿に盛られた焼きナスに箸を伸ばした。
「はぁ、昔は同僚の女友達と呑みに来てたのに……今じゃこんな男と一緒なんて……あの頃にはもう戻れないのね」
そう言って、海江田はグラスに入った日本酒を一気に呑み干す。
……大体、今日の海江田先生は飲み過ぎだ。
横目で空いたグラスを見ながら、矢部は思った。
軽く目算しただけでも、ビール→梅酒→日本酒で20杯はいっている。
「すいませーん、梅酒ロック3つー!」
海江田は空になったグラスを振って、店員に告げる。
店員は急いで来て、はいただいま、と受け答えを済ました後、厨房の方へ消えていった。
「まだ呑むんですか……」
矢部は少し目眩がした。
「この手羽先、味がないわよ」


数時間後。
「あーもー呑みすぎですよ、海江田先生」
フラフラと歩く海江田に肩を貸しながら矢部はぼやいていた。
「うぅ……済まないわね、矢部先生。昔はこのくらいじゃなんともなかったのに……」
顔を真っ赤にして海江田は矢部にそう言った。
「別にいいですけど……呑みすぎは身体に悪いですよ?」
「そうね、気をつけるわ……」
珍しくしおらしい海江田に矢部は不覚にもドキッとした。
横顔を見る。
長い睫毛に、ぱっちりとした瞳……薄く伸ばした化粧……。
フワリとシャンプーの香りが漂う。
(……別に美人じゃないわけじゃないのに)
そう思った矢部だが、口には出さなかった。
「……矢部先生」
「はっ……はい、なんですか?」
横顔を見ていた矢部は不意に話しかけられて慌てて返事をした。
海江田は顔を矢部の方に向け、近づける。
……二人の唇が、軽く触れ合った。
「お・れ・い(ハート)」
「……なっ、」
一瞬呆気に取られた矢部は、我に返り、思い切り口を拭いた。
「な、何してるんですかっ」
なるべく平静を装い聞き返す。
「別に……してみたかっただけよ」
二人はフラフラと相変わらず歩いていく。
「呑みすぎですよ、先生」
「あ~ぁ、早く良い人見つからないかしら」


そんなある日の風景。