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~ 登校(杉崎視点) ~

宮下「――でさぁ、三女が全然反応してくれなかったんだよ!」

今は登校中。ちょうど校門を入ったところで、とっても興味の沸かない話題を出してくる宮下。

宮下「どう考えても、嫌われるようなことしてないと思うんだけど――」

どこをどう考えているのか理解に苦しむ。教えて上げたほうがいいのだろうか?

……いや、教えてあげても、きっとうざい反応しかしなさそうなのでしないのがベストだろう。

特に三女の話をしているときは一番うざい反応するし。

吉岡「そ、そういえば今日の給食、揚げパンだったよね。みっちゃんにでもあげようかな?」

若干、無理のある話題の変え方だが、話の隙をうまく突いて言葉を挟んだ。宮下と一番長い付き合いなだけはある。

その台詞に私も乗っかかろうと思ったとき――

ひとは「……人の家の雌豚に餌付けしないで」

――突然後ろから声が掛かる。声をかけられたわけではない私も驚いたのだ。

もちろん吉岡は――

吉岡「ひゃ! さ、三女さんいつからいたの!」

――この驚きようである。

吉岡の質問に答えたのは三女ではなくその隣を歩く“雌豚”だった。

みつば「さっきからよ……っていうか餌付けってなによ!」

三女の頬を両方から引っ張りながら文句を言う。

……文句を言うのは餌付けであり、雌豚の方じゃないらしい。

それにしても、雌豚に餌付けって……

杉崎「ピッタリじゃないの。それに結局貰うんでしょ?」

面白そうなので声に出して言ってみる。

みつば「あ、当たり前じゃない! 食べ物は粗末にしない主義なのよ!」

はい、はい。訳せば食い意地にプライドを持ってるってことね。

言葉にはせずみつばに聞こえる様に呆れた顔で嘆息だけしておく。

するとみつばは悔しそうに睨んでくる。

ああ、楽しくて仕方がない。

そんなやり取りをしている間に昇降口に付いた。

私は無意識に携帯取り出し、手が勝手にシャッターを切る。

(ピロリロリン♪)

みつばが上履きに履き替える時に起こるシャッターチャンスを、自然な動きで捕らえる。

今日の下着はどんな柄だろう? 教室に着いたら写真を確認しておこう♪

宮下「杉崎……」吉岡「杉ちゃん……」

何だろう? 残念なものを見る目で宮下と吉岡がこちらを見ている。

みつば「? どうしたのよ? 教室行かないの?」

杉崎「え、ああ、行くわよ。なに二人してこっち見てるのよ? 行きましょ」

そう言うと、呆れた表情をしてから私のあとに続いた。

~ 昼休み(ひとは視点) ~

みつば「ちょっと、コレ私のパンツの写真じゃない! 消しなさいよ、この変体!」

杉崎「ちょ、離しなさい! 私の携帯よ! 何しようと私の勝手じゃない!」

どうしてこんな状況になったかって言うと……

まぁ、色々あってみっちゃんが杉ちゃんの携帯を横から覗いた時ちょうどその画像だったから始まったんだけど。

杉崎「別にいいでしょ! これまでだってたくさん取ってきてるし、一枚増えても変わらないわよ!」

……まったく、ひどい話だ。

みつば「だ、駄目に決まってるでしょうが! さっさと消しなさ――」ガタン

あ、みっちゃんが杉ちゃんに押し倒された。っと言うより机に足引っ掛けて転んだだけだけど。

ひとは「……みっちゃん生きてる?」

呆れ9割、心配1割で声をかけておく。

松岡「え! 何! 誰か死んだの! 成仏する前に結婚して!」

宮下「お前は黙ってろよ……」

宮下さんも黙ってるといいんだけどね。

みつば「……」

杉崎「……」

あれ? なんで二人とも倒れた姿勢――――杉ちゃんがみっちゃんを押し倒してるような体勢――――の状態で固まってるの?

みっちゃんは唖然とした表情。

杉ちゃんは……この角度からじゃ表情までうまく見れないけど、口元あたりを手で押さえ、耳まで真っ赤に染めてる?

……正直何があったか想像が付いてしまった。

みつば「す、す、杉崎! あ、あんたさっさと退きなさいよ!」

みっちゃんも状況が理解できたのか顔を真っ赤に染めて杉ちゃんの顔を見ずに言い放つ。

杉崎「へ? あ……うん、ごめん……」

対して杉ちゃんは状況は早くに理解していたが、まだ完全にパニック状態って感じだろうか?

立ち上がってみっちゃんの上から退いた後もその場から動かないでいる。

吉岡「? どうしたの杉ちゃん?」

当然、状況がよく理解できてない人から見れば、よくわからないだろうから声をかけるだろう。

杉崎「え? あ――」みつば「な、なんでもないわよ!」

混乱してまともな反応が出来ないでいた杉ちゃんに、みっちゃんがすぐにフォローに入る。無駄に優しい。

みつば「杉崎! じ、事故なんだから! 気にしすぎよ!」

そういうと、みっちゃんは自分の席に戻った。

……

ラブコメ的な展開でよくあるパターンだ。

恐らく倒れた拍子に……キ、キスしちゃったんだ……

~ 混乱(杉崎視点) ~

みつばが席に付いてから私も一拍おいて席に着いた。

……み、みつばは事故なんだし気にしすぎないでって言ってたけど……

キ、キス……しちゃったんだよね私……

しかもほっぺとかじゃなくて……一瞬だったけど思いっきり口に……

吉岡「杉ちゃん大丈夫? 顔赤いよ?」

っ!

何で赤くなってるのよ私!

杉崎「だ、大丈夫よ! あれは事故! 事故だからノーカンなのよ!」

吉岡「へ? ノーカン?」

杉崎「な、なんでもない……」

これ以上、何か喋ると墓穴掘りそうな気がしてきた。

なんとなくみつばの席の方に視線を向けるとみつばと目が合った。

みつば「あ……」

みつばは慌てて視線を逸らして前を向く。

気不味い……放課後になったらこんな空気じゃなくなるだろうか?

そういえばいつの間にか私の席の近くにいた三女はみつばのところにいる。

宮下「そういや、この前、下校中のことなんだけど――」

会話がなかったから気を聞かしたのか、宮下がなにやら話し出した。今はちょっとだけ感謝しておく。

適当に相槌だけ打って今のうちに平常心を取り戻そう。

昼休み、掃除も終わり、午後の授業の教材を取りに職員室まで戻っていた矢部っちが、教室に戻ってくる。

私の席の周りにいた吉岡、宮下も席に戻った。

矢部っち「授業はじめるよ。みんな席についてる?」

矢部っちがゆっくり教室を見渡す。

矢部っち「あれ? ひとはちゃんは?」

あれ? 本当だ。掃除終わった時はみつばのところに居た筈なんだけど……

矢部っちはとりあえず自分の机の下を覗く。そして嘆息したのがわかった。

ひとは「……お構いなく」

かろうじて私にも三女の声が聞こえた。

矢部っち「構うよ! 早く席に付いてよ! そこじゃノート取れないでしょ!」

矢部っちの台詞に一拍おいて三女が出てくる。そしてそのまま自分の席に着く。

何してるんだか……

……今更だけどなんだか少し落ち着いてきた気がする。

宮下の無駄な話や、掃除、三女の意味不明な行動で、気が紛れたのかも知れない。

ただ、落ち着いてきただけであり、みつばのことが頭から離れることはなかった。

授業の内容なんてよく覚えてないし。ノートもほとんど取っていない。

五限目、六限目は携帯に撮ってある今日一日分のみつばの写真を何となく眺めるだけで過ぎていった。

吉岡「杉ちゃん、帰ろう?」

杉崎「え、ああ、そうね」

いつの間にか放課後、吉岡と宮下が下校のために私を誘いにくる。

そして私は視線をみつばの方に向けた。

最近では一緒に帰ることが多くなったのだから当然と言えば当然だが。

みつばもこちらの視線に気が付き、一瞬目を泳がせてから声を出した。

みつば「に、日直の仕事がまだ残ってるから……先に帰れば? い、行くわよ、ひとは!」

……日直の仕事……か。

そんなのすぐ終わるし待たせることだって出来るのに……

杉崎「そ、それじゃ、先に帰りましょ!」

宮下「おい、おい別に待っててやっても――」

宮下の言葉を聞こえない振りして教室を出る。

みつばの奴、あんな台詞言われれば私が意地になって先に帰るって知ってて言ったんだろうか……

……私はいつものように帰りたかったのに。

何よ! 自分でも事故って言ってたのに。キ、キスしちゃったくらいで!

別に、避けなくても……いいじゃない……

……最初はキスしたことで動揺してたけど、今は今後のことが気に掛かる。

明日からもみつばは私のことを避けるだろうか?

次の日も、また次の日も……

吉岡「杉ちゃん? なんか今日元気ないよ?」

学校を出てから、考え事ばかりしていた私は会話に参加していなかったので、急に吉岡に声をかけられ少しだけ驚く。

すぐに取り繕うためのありきたりな台詞を考え声に出す。

杉崎「だ、大丈夫よ。昨日夜更かししたからそう見えるんじゃない?」

宮下「ぷ! 何だよ、眠くて元気ないってお子様だな」

杉崎「う、うるさいわね!」

どうやら取り繕うことには成功したようだ。

それにしても、そんなに元気なさそうに見えていたのだろうか?

今後、みつばと喧嘩したり、えっと……喧嘩しかしてないのか。

それが出来ないでいる未来を想像して悲しんでいたのだろうか?

そんなことを考えていると自然にポケットに手が伸びた。

その時、教室に忘れ物をしたのに気が付いた。

~ 相談(ひとは視点) ~

みつば「に、日直の仕事がまだ残ってるから……先に帰れば? い、行くわよ、ひとは!」

まったく、杉ちゃんも気にしすぎだけど、こっちも気にしすぎ。

日直の日誌を持ちながらみっちゃんの後を付いて教室を出る。

教室を出てからしばらくして声をかける。

ひとは「気にしすぎだよ」

みつば「うっさいわね!」

ひとは「……そんな口聞いてると吉岡さんにバラすよ?」

そう言うとみっちゃんは悔しそうな顔をして黙る。

私はキスの件――――何度も言うのが恥ずかしいので以下“例の件”――――のことを昼休み中にみっちゃんに確かめた。

問い詰めるとすぐに動揺してボロを出した。

……って言うか二人とも動揺しすぎ。見ててイライラする。

たしかに例の件は強烈な出来事かもしれないけど、みっちゃんが言ったように事故なんだし……

そうこう思っているうちに職員室に着いたので先生に日誌を渡す。

時間にして2、3分、先生で遊んで、先生が泣き崩れたところで引き上げる。

荷物は持ってきているのでそのまま昇降口まで行く。

みつば「……どうしたらいいと思う……」

下駄箱に着いて靴を履き替えているとみっちゃんが言う。

ひとは「……なにが?」

急に言うので何の話かわからず聞き返した。

その問いにみっちゃんは、私とは目を合わせず、下駄箱の方を向いたまま口を開く。

みつば「杉崎のことよ……」

杉ちゃんのこと。例の件で微妙な空気になったから今後どう付き合って行けばいいかってことだろうか?

正直なところ自分で考えて欲しいが、私を頼って、しかもこんなに素直に聞いてくるなんて滅多にない。

私が思っている以上に切羽詰まっているのだろう。

……しかたがない。頼ってくれた事自体は嬉しい事だし相談に乗ってやろう。

ひとは「……いつも通りに戻りたいって事でいいんだよね?」

みつば「? そ、そうだけど……それ以外に何か心当たりあったわけ?」

……何聞いてるんだろ私。

私は首を横に振って解決策を考えて口に出す。

ひとは「いつものように喧嘩吹っ掛けてみたら?」

みつば「はぁ?」

みっちゃんは私が適当なことを言ったのだと疑って、怒りと疑問を合わせた声で更なる返答を促した。

ひとは「いつものように戻りたいならいつも通りにするのが一番だよ」

みつば「そ、そういうものなの?」

今度は半信半疑って具合。私は嘆息しながらさらに続けた。

ひとは「だから、気にしすぎって言ったよ。そういうものだよ」

いつものみっちゃんと杉ちゃん見てれば簡単にわかる。数日中、いや明日の放課後には元通りだと私は思うね。

みつば「そ、そう……なるほどね……」

どうやら納得してくれたようだ。

ひとは「早く帰るよ。今日は夕方のタイムセールに行く予定があるんだから」

下駄箱の前で考え込んでるみっちゃんを置いて昇降口を出る。

みつば「あ、待ちなさいよ!」

隣まで走って追い付いてくる。

みつば「ひとは……その――」

ひとは「礼ならいらないよ」

礼でもするつもりみたいだが先に釘を打っておく。

そんならしくない事されれば、私たちまで微妙な空気になる可能性がある。

ひとは「――ただ今日のタイムセールは一人当たりの販売制限あるから付いてきて」

今思いついたことだが本当のことでもある。でもみっちゃんは――

みつば「なっ! あんたそれ狙ってたわね!」

――最初からそれが狙いだったと思ったようだ。

そんなわけない。みっちゃんから相談を持ちかけなければ助言なんてしなかっただろう。

みっちゃんと杉ちゃんの拗れた仲を私から如何にかしようだなんて考えない。

そんなこと無意味だし不必要だよ。それに――

ひとは「付いて来なければ吉岡さんにバラすよ」

みつば「っ! いつまでこのネタで脅すつもりよ……」

――この呪文で思い通りに動いてくれるしね。

今日はみっちゃんと買い物か……付いてきてくれそうだしプリンくらいは買ってあげよう。

ふと、朝の会話を思い出し、なんだか本当に餌付けしてるみたいと思った。

私は飼い主だから良いやっと、心の中で納得しておいた。

~ 安心(杉崎視点) ~

みつば「……どうしたらいいと思う……」

……絶賛立ち聞き中。

別に立ち聞きするつもりはなかったんだけど、忘れ物取りに戻ってきたとき、みつばと顔を合わせたくなくて。

もし、顔を合わせたら視線を逸らして避けられる気がして……それが嫌で……

そんなこんなで、自分のクラスの下駄箱の反対側に隠れちゃったわけ。

ひとは「……なにが?」

みつば「杉崎のことよ……」

えっと、何の話だろうか? 私の話の様だけど……

ひとは「……いつも通りに戻りたいって事でいいんだよね?」

みつば「? そ、そうだけど……それ以外に何か心当たりあったわけ?」

もしかして三女ってあの事知ってる?

……っていうか、みつば、いつも通りに戻りたいの!?

避けられてるのかと思ってたんだけど……

しばらく三女が何か考えてるのか短い沈黙があった後、また声が聞こえてくる。

ひとは「いつものように喧嘩吹っ掛けてみたら?」

みつば「はぁ?」

冗談でしょ? って感じの反応。

声には出さなかったが出していたとしたら、私もみつばとまったく同じ反応だっただろう。

さらに呆れた口調で三女は続けた。

ひとは「いつものように戻りたいならいつも通りにするのが一番だよ」

みつば「そ、そういうものなの?」

いつも通り……か。私は出来るのだろうか?

みつばは……出来るよね?

私と違って結構落ち着いてたし、避けてるわけじゃないとしたら気不味いから距離とってただけだろうし……

ひとは「だから、気にしすぎって言ったよ。そういうものだよ」

みつば「そ、そう……なるほどね……」

ひとは「早く帰るよ。今日は夕方のタイムセールに行く予定があるんだから」

三女は下駄箱から外へ移動して行ったようだ。

みつば「あ、待ちなさいよ!」

すぐにみつばもその後を追いかけていった。

その後の会話は遠すぎて聞き取る事は出来なかったが、もうどうでもよかった。

杉崎「はぁ~」

安堵からの嘆息とともにその場に腰を下ろす。

よかった……避けられてたわけじゃなければ、嫌われたわけでもない。

私と同じように元の関係に戻りたいって思ってくれていた。

三女が言った通りにみつばが行動するなら、私もいつも通りの対応を心がければ良いだけ。

それくらいなら私でも出来る。ましてや今日じゃなく明日の話だ。幾分今より落ち着いているはずだ。

……っと、忘れ物取りに来たんだった。あの携帯にはたくさん大事な写真が入ってるし無くす訳にはいかない。

携帯を取りに行くために立ち上がり、教室に向かった。

翌朝。

吉岡「あ、杉ちゃんおはよー」

宮下「おう、携帯は教室にあったのか?」

杉崎「おはよう。携帯なら引き出しの中には置いてあったわ」

吉岡と宮下と校門前で会い挨拶をする。

実はちょっと緊張している。いつも通りに対応出来るかどうか……

みつば「ちょ、ちょっと杉崎!」

唐突に背後から声を掛けられ驚く私。みつばの奴脅かしてどうするのよ!

ただでさえちょっと緊張してるのに……

それでも何とか気を落ち着かせ、みつばのほうへ振り向く。

杉崎「な、何よ……」

みつば「何って、昨日の写真携帯から消したんでしょうね!」

昨日の写真……

杉崎「……イタチマークの子供パンツのこと?」

みつば「イタチじゃないわよ! オコジョよ! って人のパンツの柄、大声で言ってんじゃないわよ!」

……オコジョだったんだ。どっちでもいいけど。

みつば「それで、消したの!?」

杉崎「ええ、携帯『からは』消したわ」

みつば「え? 消したの? ……『からは』?」

杉崎「もちろん、家のパソコンに入れ替えておいたわ」

自然な対応を心がけようと思っていたが、なんだかその必要もなくなってきた。

自然に次の台詞が口からあふれ出す。

杉崎「携帯の容量って意外に少なくて毎日入れ替えてるのよ」

みつば「ど、どんだけ写真取ってるのよ!」

やっぱりみつばとは、こういう関係じゃないと面白くない。

そんな会話をしてると、また、周りの視線が残念なものを見る目に変わっていることに気が付いた。

おわり