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校庭には乾いた風が吹いている。

裸になった桜の木はびゅうびゅうと寒そうに揺れ、土埃が舞っていた。

季節は冬だ。当然寒い。早朝、宮下が観た天気予報では今日の温度は一桁しかなかった。

にも関わらず、だ。クラスメートが全裸なのは……かれは一体何の冗談なのだろう。

机で腕を枕にして寝ていた宮下は思わずもう一度顔をうずめた。

「宮ちゃん、次体育だよ」

眉毛を可愛らしく曲げた同級生、吉岡ゆきが話しかける。

「吉お……」

顔を上げた宮下の言葉は途中で止まる。例に漏れず吉岡も裸だったからだ。

幼く膨らんだ乳房。柔らかな腹部から、線を書いたような陰部。程よく肉付いた太腿。

当然──そこは教室だったので──男子はいた。だが、女子が裸である事を気にしてる者はいない。女子の方も平然としていた。

「宮鍋さん、まだ寝てるの?」

丸井家の三女に当たるひとはが呆れ顔で話しかけてきた。もちろん裸だ。ほっそりとした綺麗な手足は長女や次女とは似ても似つかない。

「さ、三女、おま」

その時教室のドアが開く。

「チーッス」

入ってきたのは千葉だった。見慣れたクラスメートの姿に嘆息するが、驚いたのはその後だ。

「きゃー!千葉様よー!!」

「千葉くーん!抱いてー!!」

「千葉氏ー!遊ぶっス!」
「千葉くんっ……」

「今日も千葉くん……カッコいいなぁ……」

目が点になったままの宮下は、口の閉じ方を忘れたかのように締まりのない顔で目の前の光景を見ていた。

(な、なんだこれ……)

信じる事が出来ず、椅子から立ち上がり後ずさる。

(なんだこれ、なんだこれ……)

一歩ずつ、後ろに下がる。

ガクンッ!

急に足下の感覚が無くなったかと思うと宮下はそのまま闇の中へ墜ちていくような感覚を覚えた。







「…………」

跳ねた髪が揺れていた。

飛び起きたせいで腰が痛い。

頬に髪が張り付いて、なんとなくこそばゆかった。

だが、そんな事気にする余裕は無く、宮下は顔を覆い、盛大に溜め息を吐いた。

「夢かよ……」

無音の部屋の中で目覚まし時計だけが、宮下を嘲笑うかの如く時を刻んでいた。

教室に着くと、朝の挨拶を遮り、宮下は先ず吉岡に今朝の夢の事を話した。例によって宮下は瞳を輝かせてなんで夢の中の千葉が美化されているのか、という所に食いついてくる。

そう。宮下自身もそこは気になっていた。

千葉とは接点がないとは言えないが、特に親しい訳でもない。

セクハラをするのは許されないけれど、コソコソするよりはずっと良いとは思う。だが、生憎好意らしき物は持ち合わせていなかった。

他の奴らの意見も聞きたいが、よく考えたらまともな意見は聞けそうにない。

「秘技!ブラホック外し!」

と、その時。ちょうど千葉の声が聞こえてきた。

宮下は思わずそっちの方をみる。

「な……っ!」

「おっ!めずらしくせいこうしたぞっ!」

様子を眺めていた田渕が拳を握る。

今回のターゲットは杉崎だった。

「このバカ……ッ!!」

例によって小さな握り拳を盛大に頬に食らっている。

「ぐっ……」

けれど、それでも満足気な顔で立ち上がり、仲間数人に親指を立てている姿を見ると、宮下は嘆息せざるを得なかった。

(なにやってんだ、あいつらは……)

呆れて見つめている宮下は横で瞳を輝かせて涎を垂らす吉岡の存在に気づかず、次の瞬間には盛大に誤解される羽目になったのであった。

昼休みになると、校庭には続々人が増えていく。
宮下も仲間数人と共に校庭に下りてバスケットをしていた。勿論、発案者は宮下だ。

「ちょっと、誰よ……バスケットで、決定したの……あいつの、一人、勝ちじゃない……」

息を切らしながら杉崎は言う。対して、ひとはは全く息を切らしている様子は無く、平然と言った。

「さすが、宮古島さんだね。空気の読めなさはピカイチだよ」

「どうした、みんなー!早く私からボール奪ってみろよー!情けないぞ☆」

「宮ちゃん……」

困り顔の吉岡と松岡がその相手をしていた。

「もー宮ちゃん、手加減してよー」

「えーしょうがないなー」

満更嫌そうでもなく宮下は返した。

その時「隙あり」という声と共に宮下の手から持っていたボールが消えた。

「へっへーん!ざまーみろ、このダイダラボッチがー!ぐはっ!?」

丸井家長女にあたるみつばが、嬉しそうにドリブルをしていたが、ボールが足に絡まり、盛大に転んでいた。

「あ、転んだ」

「運動神経無いのに、あんな事するから……」

ひとはがため息をついて、みつばに駆け寄る。

「あーぁ、血出てる。保健室行こう」

「い、いいわよっ!一人で行けるから」

「はいはい。杉ちゃん、ちょっと行ってくるね」

嫌がるみつばに肩を貸して、無理矢理保健室へ連れて行った。

さすがに妹としては心配だったのだろうか。と宮下が考えていると、チャイムが鳴った。

「じゃあ、……とりあえず教室戻りましょうか?」

杉崎が言うと、他のみんなもそれに同意した。

昼休みになると、校庭には続々人が増えていく。
宮下も仲間数人と共に校庭に下りてバスケットをしていた。勿論、発案者は宮下だ。

「ちょっと、誰よ……バスケットで、決定したの……あいつの、一人、勝ちじゃない……」

息を切らしながら杉崎は言う。対して、ひとはは全く息を切らしている様子は無く、平然と言った。

「さすが、宮古島さんだね。空気の読めなさはピカイチだよ」

「どうした、みんなー!早く私からボール奪ってみろよー!情けないぞ☆」

「宮ちゃん……」

困り顔の吉岡と松岡がその相手をしていた。

「もー宮ちゃん、手加減してよー」

「えーしょうがないなー」

満更嫌そうでもなく宮下は返した。

その時「隙あり」という声と共に宮下の手から持っていたボールが消えた。

「へっへーん!ざまーみろ、このダイダラボッチがー!ぐはっ!?」

丸井家長女にあたるみつばが、嬉しそうにドリブルをしていたが、ボールが足に絡まり、盛大に転んでいた。

「あ、転んだ」

「運動神経無いのに、あんな事するから……」

ひとはがため息をついて、みつばに駆け寄る。

「あーぁ、血出てる。保健室行こう」

「い、いいわよっ!一人で行けるから」

「はいはい。杉ちゃん、ちょっと行ってくるね」

嫌がるみつばに肩を貸して、無理矢理保健室へ連れて行った。

さすがに妹としては心配だったのだろうか。と宮下が考えていると、チャイムが鳴った。

「じゃあ、……とりあえず教室戻りましょうか?」

杉崎が言うと、他のみんなもそれに同意した。

「エ……エロ技だよ!エロ技!」

宮下は羞恥に顔を染め、叫ぶ。

唐突に大きな声を出したので、周りの子ども達がざわめいた。慌てて口を抑える。

「よし、よく言ったな」

「お前なぁ……」

いらぬ恥までかいた宮下は千葉を見た。

「で、エロ技をかけて欲しいのか?」

「は?!誰がそんなこと言ったんだよ!」

「違うのか?」

「私はなんで、エロ技をかけてこないのか聞いてるだけだよ!」

「あぁ」

それは……と言いかけて言葉に詰まる。気のせいか、千葉の顔が少しだけ赤くなったように宮下には見えた。

「体型が大人だしなぁ……」

「え?な、何だって?」

「いや、何でもない」

「?」

宮下は首を傾げる。

そして、言い合いを繰り返しながら教室に入った二人は、吉岡の相関図の餌食になるのであった。

おしまい。