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≪6年3組 昼休み≫


「あれ?三女は?」


「三女さんは今日放送部の当番だから松岡さんと放送室だよ。宮ちゃん。」
「あ、そっか。当番だったな、三女。」

「それにしても三女が放送部ね…。しかも松岡と…。」
「? 宮ちゃん?何しみじみしてるの?」

「あいつもさ…ほんとクラスに馴染んできたなって。
そう思うとさ、しみじみせざるを得ないって言うか…。」シミジミ…

「だってさ!ついこの前までクラスに馴染もうって気なんかさらさらない、っていう風だったんだぞ!
いっつもひとり、本ばっか読んでて暗くてさ、何考えてんだかわかんなかったしな!」

「み、宮ちゃん…それ絶対三女さんの前で言っちゃだめだよ?」
「わ、わかってるって!まだ十分馴染んでるわけでもないからな!」
「だからそうじゃないって!もうー宮ちゃんったらー。」

「でも、ま、ここまで三女がみんなに馴染んできたのも…私の努力の賜物っていうもんだ。」
「宮ちゃんの…努力の賜物?」
「ひとりぼっちのあいつを私がこんだけ親切に接してあげたから、
だから今の三女があるんじゃないか!な?」

「そ、そうかな? でも宮ちゃんって三女さんのこと…好きなんだよね?」
「好き?ま、嫌いじゃないけどな!」
「またまたー。素直じゃないなー宮ちゃんは!好きって言っちゃえばいいのにー!」
「ち、ちょっと!お前はすぐそういう方向へもっていく!私のは友愛だぞ!これは!」
「でも宮ちゃんって…たぶん片思いだけど…ファイトだよ!><」

片思いだって?
ほんと吉岡の妄想にはついていけないぞ…全く。

三女が私から逃げるのは友情というものに照れてるからなんであって、
吉岡にはそれがわからんのだろうな。
緒方が佐藤のこと好きだっていうのも気付かないわけのわからん恋愛脳だし…。

私達のは友愛、友としての熱い絆で尊いものなんだからな!
恋愛なんかとごっちゃにするな!

ん?なんだこれ?



「ちょっとみつば。あれ見なさいよ。あれあれ!」
「ん?なによ?」
「あ・そ・こ!宮下が例のあれ見てるわよ!」
「うげ!あ、あれ、ひとはが書いた学芸会用のボツ原稿じゃないの!まだ捨てずに机の上にほったらかしにして!」
「いひひ。宮下があれ読んでどういう反応するか楽しみー!」

「でもひとはの奴…あんなひどいのよく書けるわね…。
同居してる家族として一緒の部屋で寝起きするのが恐ろしいぐらいよ…。」

「加藤が伊藤を殺して加藤も死んで緒方も死んでふたばも佐藤も死ぬってどんだけ殺すのよ…そんであんたも…ひひひ」
「わたしは死・ん・で・ま・せ・ん! 妹の死に接して心に深く傷を負った姉なのよ!悲劇の美しい姉なんだから!」
「なんか誇張してない?」
「してないわよ!」
「…あんたって幸せよね…」シミジミ…
「し、幸せ…?ま、まあね。おやつに不自由してないし、ひとはのご飯もおいしいし…。」
「ほんと幸せもんだね。」


これは三女が書いた脚本…?
あ、これか!矢部っちにボツを食らったっていう脚本は。
一体どんな内容なんだ?どれどれ…?

…………
…………
…………

げ!なんじゃこりゃ!
ひ、ひでぇ…。
むちゃくちゃだなこりゃ…。

第一こんなんでふたばが死ぬとは思えんよ。設定自体がおかしい。
両足に1トンづつおもりをぶら下げるとかそういうのじゃないと
死ぬように思えん。ふたばの場合は。

でもこの話…そもそも佐藤が、ふたばとの関係を断ち切らなきゃ
ていう勝手な思い込みが原因だよな…。
佐藤…お前のために何人死んだと思ってるんだ!悪い奴だ!



「な、なんだよ宮下の奴!なんで俺を睨んでるんだ!?」
「ん?ほんとだ。…まさか!宮ちゃんもしんちゃんのこと好き…!?」
「だったらあんなに睨むかよ!あれは絶対悪意をもった眼差しだぞ!」
「嫉妬っス!あれは嫉妬に燃えた眼差しっスよ!小生の身に危険が…!」
「って、あれ?もうあっち向いてやがる。」
「勝ったっス!小生の勝利っスよ!しんちゃん!!」むふー!
「なんだったんだよ…一体…。」



っといっても三女の作り話か。佐藤睨んでもしょうがないな。

でもこんな話を作るなんて…やっぱりまだまだ三女も心が病んでるんだな。
かわいそうだ…。
なんとかしてやらなければならないな…友として。
でも…でも…!



「宮下の奴、さっきから驚いたりあっちむいて睨んだりしょんぼりしたり…
なんか変な反応ね…。見てて面白いけど。」

「まあ宮下だから変なのはあたりまえなんじゃないの?」


『でも…私が出てないってどういうことだよ!三女!』


”ええー?そこー!?やっぱり宮下の反応は変ー???”


「ね!私の言うとおりでしょ?宮下は変!」

「あれ読んで怖がって暗くどんよりするのを期待していたのにー!
何よ『私が出てない』って…どういう反応なのよ?」


ほんとしょうがないな三女の奴は。
なんでこの私を出してないんだ…。全くもう。

いや?まてよ?
ここに出てるやつらってみんな…死んでるか不幸な目に遭ってるよな?
ということは…。そっか。
私をこんな目に遭わせたくないから…そうだ、そうなんだよな!



『三女って、やっぱり言い奴だよな☆』


「いい奴って…。あの本読んであの感想…。私、宮下と友達付き合いするのやめようかしら…?」ガクブル…
「そ、そうね…それがいいわよ…わ、私も係わりあうのやめる」ガクブル…



「み、宮ちゃん。それ、読んだの…?」
「ん?ああ、まあな。」
「ひどい話だよね!三女さんってこんな怖い話も書いちゃうんだよね。」
「ああ。かわいそうなやつだ。」

「でも、今回の学芸会は、三女さんと私と私のパパの3人で書いた物語が一応候補になってるんだよ。」
「あれ読ましてもらったけど結構ほのぼのしてたな。三女成分がいささか足らない感じだし。
あれホントに三女が関わってたのか?」
「っていうか物語の原案は三女さんなんだよ?ナマコちゃんの2次創作だ、って書いてきたんだ。」

あれも三女が考えたのか…。
ほのぼの系を書いたりホラー系を書いたり…心が不安定な証拠だ。
やっぱり病んでるよ…三女は。
何とかしてあげないと取り返しのつかないことになるかもしれない。
でも私に何ができる…?


「おい、痴女。」

「だ、誰に向っていってんのよ!この童貞!」
「龍太。どうしたの?何か用?」

「え、えっと…三女は?」
「三女なら今日、ほら、放送で音楽流れてるでしょ?あれ三女が放送してるのよ?」
「え?三女が…!?」
「三女は放送部で今、放送室にいるの。」
「へえ…かっこいいな…///。って、ちぇっ!一緒にガチレンごっこしようと思って来たのに!」



ガチレンだって?!

そうか…!ガチレンだ!
唯一三女が興味の持てるもの…ガチレン…これを材料に何か…。

そういえば、三女ってガチレンごっこの時、いつも悪役ばかり進んでやっているよな。
ということは…そうか…なるほど…わかったぞ!

三女はいつも主役になれないものばかりが好きなんだ!
だから陰に隠れる暗い性格になってひねくれてしまったんだな!
それを直すにはだ、それを覆すような何かを…学芸会…。学芸会!これだ!

「宮ちゃん?何ひとりでニヤニヤしてるの??」
「ナマコ?だったっけ、それもう学芸会やることに決まったのか?」
「ううん。だからまだ候補のひとつだって…」
「私も学芸会用に物語書くからな!まだ決めるなよ!な?」
「私が決めるわけじゃないんだけど…。宮ちゃん、どんな物語書くの?」
「ガチレンだよガチレン!三女が主役の!」
「えっ!三女さんが? わあ!それいいね!でも宮ちゃんってガチレン観たことあったっけ?」
「ちょっとだけな!でもあんな子供だましちょっと観ただけで大体把握できるし大丈夫だって!」

「子供だましって……三女さんが居なくてよかったよ…。」


≪3日後≫

できた!
これで三女は救われるぞ!
私を見る目も変わってくるに違いない!
早速三女に見せよう!


「三女!」
「何?」
「これ学芸会用に私が書いたんだ。三女もこういうの得意だろ?
だからちょっと感想お願いしたいんだけど。」

「へえー。珍しいね。どれどれ…?」
「一応…その、三女が主役のつもりなんだ…。」
「え?私が主役?」
「ははは。まあ読んでみてくれ!」

「………」
「………」

「どうだ?面白いか?な、な?」
「うるさいな。まだ読み始めたばかりなんだけど。」
「ご、ごめん」

「………」
「………」

「ど、どうだ?」
「だから静かにして!」
「はい…。」

「………」
「………」

「面白いだろう?なんせ三女が主役なんだからな!」

「………」
「………」
「………」

「なんとか言えよ…。面白いだろう?な、な、な?」
「もう!うるさくて気が散る!もう読まない!」
「ご、ごめん!ごめんなさい!」
「…読み終わった。」

「読み終わったか!そうか!よかった!で、どうだ?感想は?感想!」

「これ、ガチレン風だけどまさかガチレンではないでしょうね?」

えっ!?ガ、ガチレンのつもりで書いたんだけどな…。おかしいな。どう読んでもガチレンだろこれ…?
でも…機嫌損ねてもあれだし…。ここはとりあえず誤魔化しておくか。

「ま、まあな…ははは。」
「ならいいけど。」

「でも、なんでこれ、私が主役なの?嫌がらせなの?」
「い、嫌がらせ??なんでだ?主役だぞ?あ、そっか!やっぱり三女、主役は嫌なんだよな…?」
「しゅやくはいやじゃないけど…ボソボソ。っていうかこの内容で私が主役をやる意味がわからない!」

「え?だ、だってさ、三女、ガチレンよりもあの、なんていうか悪い奴ら…」
「ゲドール帝国」
「そ、そう!そのゲドールとかいうあいつらのほうが好きなんだろ?
いつもガチレンごっこしてる時悪い奴らの役ばっかするし…。」

「…わかってないね。この人は。」

「だ、だからさ、悪い奴らが実は良い奴らでガチレンが本当の悪だったってのを書いたんだけど…
そしたら三女も主役になれると思ったんだ…」

「やっぱりガチレンなんだ!その設定自体がもう根本的にだめだね。これ先生に見せたら速攻ボツ食らうよ。
最悪、通常の成績にも響くかもしれないよ!」

「ええ!そんな…。」

「三女は…ガチレンの方が好きなのか…?あの悪者より?」
「もちろんだよ!あたりまえだよそんなこと!私がガチベルトとかいつも着けてるの知ってるでしょ?」
「そうだったな…。うっかりしていたよ…とほほ。でも、なんでいつも悪役をするんだ?」

「そ、それは…。せんせいやりゅうたにゆずってあげて…… ち、違うよ!」
「違う?な、何?」
「悪役はその物語に一番精通している人がするんだよ!縁の下の力持ちなんだよ!」

物語に精通…!縁の下の力持ち…!
そっか…。三女は主役をやるというよりも演出や物語を作る…裏方の方がよかったのか…。
たしかに同時に2本も物語書いてくるとか、よく考えればそうだったんだよな…。
うっかりしてたよ…

「でも…私が主役っていう物語を書いてくれた気持ちは…うれしいよ。ありがと。」ボソ…

「さ、三女…!」


ぎゅううう!


「な、何!?///」

「三女!これからも親友でいような!私達!」
「し、親友??///そ、それより…痛いから離して!」
「はは…。わるいわるい。」

「ところで宮下さん。親友としてちょっとクイズに答えてくれるかな?」
「おう!いいとも!なんでもこい…って、い、い、今、宮下って…!?」
「言ったよ。宮下さん。」


な、なんだこの感動は…!
自分の名前を呼ばれただけなのに…。
三女に呼ばれるとなんという幸福感…!
いつも宮なんとかとかまともに名前を呼んでくれたことがなかったのに!

やっぱりこの物語書いてよかったんだ…。
三女は改心してくれたんだ…この物語をきっかけに前向きな心に…
そして私の心の友になったんだ…!!ううう。

ちゃんと名前を呼ばれるのってこんなに幸せなことだったんだな…

「どうしたの?宮下さん?なんだか泣きそうだよ?」
「…ははっ!そ、そんなことないぞ!泣いてなんかいないぞ☆」

「そう。だったらいいけど。じゃあ、クイズ出すね。」
「どんとこい!」

「それじゃ…。私の名前はなんでしょう? フルネームでどうぞ。親友の宮下さん。」
「ははは!なーんだ!どんな問題が来るかと思ったらそんなのか!簡単じゃないか!えっと、丸井…丸井…丸井…」


な、なんていうことだ!
こんな時に三女の名前をど忘れするなんて…!!

いつも『三女』ってしか言わないしな…つい忘れてしまう…。
………思い出せない。えっと、えっと…。

い、いや、こんなときは冷静にならなければ…!
そうだ、三つ子の名前に何かヒントは…

長女は『みつば』だろ?
次女は『ふたば』で…。
三女は…三女は…。

「ひと!何やってるんスか?」
「今ちょっと親友の宮下さんにクイズ出してるところ」
「クイズ!小生にも!小生にも出してー!」
「またあとで」
「えー!」

ひと…!そうだ!ひとだ、ひと!
みつばにふたばにひと…!
「わかった!わかったぞ!」
「親友の割には随分時間がかかったね。」
「ど忘れだよ。ど忘れ!」
「なるほど。では答えをどうぞ。」

「あなたの名前は、『丸井ひとば』です☆」ドヤ!

「ひとば…!?ち、違うっスよ!宮ちゃん!ひとはっスよ。丸井ひとは!」
「えっ!?あ…!」

「宮下さん、さすが親友。大正解だよ。私の名前は丸井ひとばだよ。
これからずっと未来永劫、私のこと『ひとば』って呼んでね、宮下さん。」

「そ、そんなぁ…」


ちなみに例の宮下さんの物語は
ひとはの言う通り矢部先生に速攻ボツを食らいました。
でも通常の成績に支障は出なかった様です。


≪おしまい≫