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“気品ただよう高貴な身分のことよ!! 私みたいにね!!”

ん……もう朝だ。
まだ覚醒できずに目を寝巻きの袖で擦る。

今のは……みつば先輩の夢――
痴女の意味を中学上がるまであの台詞通りの意味だと思ってた私はきっと馬鹿なのだろう。

みつば先輩にあの時厳しく突き放された意味を理解してから、私は自分の馬鹿さ加減に呆れも通り越してしまっている。

一度ベットから体を起こした私だったのだが、そのまま<バタン>とベットに倒れる。

あの言葉は、私達を思っての言葉だった。私達が嫌いになったわけではなかった。
私達を避けるためではなかった。……みつば先輩の優しさ…だった。

今は大学生、もしくは社会人だろうか?
行動力のない私は何も知らない。
小学校の時から一緒だった杉崎君には確か姉が居て、みつば先輩と仲が良かったのを覚えているが、
杉崎君の連絡先は愚か、小学高学年あたりからまともに会話することもなくなった。
今更、話掛けることなんて出来るわけがなかった。

そんな自分が嫌いだ。自己嫌悪して、そして自己嫌悪してる自分にも嫌悪感があって……憂鬱なのだ。
今は梅雨時であり空気はジメジメしていて……元気に振舞うって言うのが無理な話なのかもしれない。
違う……それはただの言い訳でしかない。
……。

……。

綺麗な金髪……元気が良くて…大胆で……とってもお洒落で……。

……。

「ん……あれ?」

いつの間にか二度寝してしまっていた様だ。
蘇ってきたみつば先輩の姿。
私の憧れだった。私は彼女のようになりたかった。

時計を見る。短い針は10を指している。
今日は日曜日――なのだが、友達と近所のデパートで待ち合わせしていたのを思い出した。

約束の時間は10時半……そう思い出した時にはベットから跳ね起きて着替え始めていた。



「ごめん! 待った?」

「遅いよメグ! 3分遅刻!」

30分で着替えから用意まですべて終わらせてここまで来るのに3分しか遅れなかったことを褒めてくれてもいいのに……。
そんなこと相手は理解してくれない。当たり前だ。私から言わなきゃそんな事伝わらないに決まってる。

でも、説明しようにも、ただの寝坊と言うべきか、本当のことを言うべきか。
当然、夢の内容とか考えてたこととか言えるわけが無い。
結果、ただの寝坊として「ごめん、ごめん」とだけ言って置く。

「そんじゃ、服買いにに行こうよ」

「うん」

彼女は中学で出来た友達。今のところ一番の仲良しなのだが、彼女には沢山友達が居て、私より仲の良い人だって居るだろう。
それでも一応、ちょっとした憂鬱な人生を歩んでる私が今一番楽しんで過ごせる友達だ。



デパートの洋服売り場に移動している時だった。
……。

今、綺麗な金髪の、お洒落な人とすれ違った。
そして、聞き覚えのある声……今日も夢で聞いたことのある声だった。

振り向くとそこには昔と変わらない私の憧れの人の後姿があった。

「み、みつば先輩!」

振り向いた金髪の女性は驚いていた。でも、驚いたのは彼女だけでなく、私の友達も、そして私も驚いた。
行動力なんてない私が……考えるよりも早く行動していた。

そして私の声で振り向いたことで金髪の女性が本当にみつば先輩であることがわかった。

でも、先輩は私のことを憶えていない……そんな顔をしていた。

「え、ちょっとメグ? 知り合い?」

友達が話しかけてくる。でもその言葉は右耳を通り左耳から抜けていく。私は初めて彼女の言葉を無視した。
今の私の居場所よりも、大切なものに出会ってしまったから。

「メグ? ……もしかして、杉崎弟と同じクラスだった……」


憶えていないと思っていた。私のことなんてもう、記憶の彼方にすら残っていないと思っていた。
でも、名前を聞いて、たったそれだけで、数日間しかまともに言葉を交わさなかった私を覚えていてくれた。

「……わ、私は今でも、貴方に憧れて居ます! あんな突き放され方されたけど……アレが優しさだったって知ってから、もっと…もっと憧れました」

もう、こんなチャンスはないかも知れない。そう思ったら口が勝手に動いてた。

「こ、これからも憧れ続けます! 先輩! 貴方を目標にしてもいいですか?」

しばらく呆気に取られていたのだろうけど――

「いいわよ! 気品ただよう高貴な身分に惹かれるのは当然よ!」

そういって、まぶしい笑顔を見せてくれた。
すぐに隣に居た黒髪を後頭部あたりで束ねている子に脛を蹴られて引っ張っていかれたけど……。

今まで憂鬱な感情が光が差した。
ただ、一言、言葉を交わしただけなのに……蟠りと言うのだろうか? それが消えて行くのが感じられた。

私の心は梅雨時だというのに雲ひとつ無い快晴になれた。
違う……これからは嵐が来ても雲なんて作らない。そうなれる、信じる目標に再開できたから。

おわり。