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サクッとお手軽に死ね

これは誰の言葉だったか。
いや、今それはどうでもいい。
ともかく、俺はいま心の底からそんな気分だ。
目の前で満足気にビールを飲む、小学校からの「落書き顔」の友人に対して。


事のおこりは2時間ほど前に遡る。
夕方のふたば来訪に備え、色々見られたらまずいものをかだしている時に、携帯がなった。
発信者は「千葉雄大」。普段はメールなのに珍しいと思いつつ出ると、
夜、友人と約束をしていたが、相手側の都合で待ち合わせ時間が延びてしまったらしく、
それまで俺の家で時間を潰させて欲しいとの事だった。
断る理由もなかったので二つ返事で了承したが…今思えば、不自然だ。
俺は、もともと大学進学を機に東京で一人暮らしを始めたが、
就職後は住まいを神奈川県海老名市に移している。
大学では工学系の修士課程に進み、就職はメーカーの研究職として採用されたが、
工場併設の研究所が海老名にあった為だ。
企業の研究所や工場というのは、土地や環境の問題から郊外や地方にあることが多い。
海老名は上尾からは決して近くはないが、首都圏内だし、まぁ悪くはないと思う。
千葉は東京の大学を卒業後は、埼玉に戻り、なぜか郵便局に勤めている。
「地域の皆様に夢と愛を運ぶのが我々の指名なのです」とか
「楚々とした人妻が、そっとゆうパックを差し出す。
宛名は縁もゆかりもなさそうな男の名前。
その包みの中に何が詰まっているのでしょうか。
ただの愛でしょうか。背徳にまみれた欲望でしょうか。
郵便局はエロスのターミナルなのです。」とか。
諸々意味不明な事を言っていたが、まぁあいつもひとりっこだし、
なるべく親の近くにいてやりたいというのが真相なんじゃないかと思う。
というわけで、俺は神奈川、あいつは埼玉に生活拠点があるわけで、
ふらりと俺のアパートに来れるわけがないし、今までのあいつの交流関係からして、
海老名に友人がいるとはきいた事がない。
あいつの偶然を装った訪問は、あからさまに仕組まれていたのだ。
しかし、その時の俺は二週間ぶりにふたばに会うんで浮かれていたし、
なんだかんだで千葉に会えるのも嬉しかったから、
そこら辺の不自然さに頓着しなかった。
思えば、ここから既に千葉の計算の範疇だったのかもしれない。

電話から程なくして、千葉から最寄駅についたと連絡があった。
駅からアパートまではわかりやすい道なので電話で道を教えてやると、
迷う事もなかったようで、すぐに玄関のチャイムが鳴った。

「久しぶりだな、千葉。」
「おぅ。相変わらずイケメンだな。」
「お前も相変わらず帽子被ってんだな。」
「イケメンは否定しないところも変わらずだな。」

軽口を叩きながら招き入れる。
子供の頃からの友達は、久しぶりの再開でもあっという間に昔の空気になってしまい、自然と盛り上がる。
千葉は手土産としてビールと乾き物を買ってきていたので、
即席の飲み会が始まった。

「どーよ、仕事は。イケメンだけじゃ社会を渡っていけない事がわかったか」
「イケメンイケメンうるせーよ。
まぁ、しかし、ほんと働くって大変だな。上司はムカつくし、残業あるし。
いや、マジで俺が院にいる間も社会人してたお前らを尊敬するよ。」
「そうだろう、そうだろう。働くのは大変なんだぞ。
秘技を繰り出したらあっという間にクビにされるぞ。」
「お前まさか職場で」
「俺がそんなヘマをするはずなかろう。
毎日笑顔と優しさをお届けしているさ!特に人妻にな!」
「クビも時間の問題だな…」

久しぶり…俺の引越し以来だから、半年ぶりの再会というのもあり、
話はずいぶんと盛り上がった。

「佐藤はふたばとは順調か?」
「まぁな」
「あいつ、今東京都の教員だっけ」
「中学の体育」
「まさかあいつが教員採用試験受かるとは…」
「俺が自分の勉強そっちのけで教えたんだよ。
試験当日も会場つくまでの間にヤマかけたとこ叩きこんでやったよ。」
「相変わらず過保護だな。」
「長女三女、おじさん、はてはうちの両親や姉ちゃんからも毎日のように電話きてさ…
何とかして受からせてやってくれって。
魔法使いじゃねーっての。」
「一族郎党、ふたばに過保護だな。
でも、本人もそうとう頑張ったんだろ?」
「そりゃそうだよ。
なんつーか、天才肌の奴の集中力っつーか火事場の馬鹿力は侮れねぇと思ったわ。
俺には真似出来ないわ。」

話しながら、当時のふたばを思いだす。
スポーツ特待生で、都内の某大学教育学部に進んだふたばは、
卒業後の進路に迷う事なく教員の道を選んだ。
在学中もスプリンターとして数々の功績を残したあいつにはアスリートとしての道もあったが、
「子供の頃、ひとや龍ちゃんに運動を教えたのが、本当に楽しかったから」と、
実にあっさり教職の道をとった。
その選択に間違いはなかったようで、
教員生活三年目だが、新任当初と変わらず楽しそうに仕事している。
ふたばの飾らないキャラが難しい年頃の子供らにも受け入れられやすいのか、
話をきくかぎりなかなか人気のある教師なんじゃないだろうか。

「おい、今日はまだふたばは来ないのか?」

千葉の声に、ふと我にかえる。

「あ、あぁ…新宿で長女と昼ご飯食べて買い物してから来るっつってたから、5時頃…
あぁ、そろそろ来るんじゃね?
…って、なんで今日ふたばが俺んち来る事知ってるんだよ。」
「いや、まぁ細かい事は気にするな。あぁ、ところで。」
「なんだよ。」
「この間、飲み会で貰った景品を今偶然持ち合わせているんだが。」
「ほぅ。」
「よければ貰ってくれないか。」
「はぁ?」

ガサガサと鞄を漁り、千葉がしれっと机の上に置いた『景品』…。それは。

「ぶはぁっ!」
「…佐藤よ、童貞でもないのに驚きすぎだろ。
何もビール吹かなくても。」
「がはっげほっ…お前、これ」
「うむ」

千葉の細い目の奥が光った。

「ピンクローターだ。
今日、こちら方面で用事があるというのは嘘だ。
佐藤、今日はお前にこれを託しにきた。」

「な、何考えてるんだ!」
「ふ。その狼狽っぷり、やはり佐藤だな。
ガキの頃にパンツを見て鼻血吹いてたのを思いだすぜ。
あの頃とちっとも変わらないようで俺は嬉しいぞ。」
「話きけよ!
お前、わざわざこのために埼玉から海老名まで来たのか!?馬鹿なのか!?」
「人ぎきの悪い。新宿にもともと用事があったんだ。
ちょいと足をのばしただけだ。」
「ちょっとってレベルじゃねぇよ!」

俺は心底呆れていた。
こいつのエロスにかける並々ならぬ熱情は知っていたが、ここまでとは。
こんなオモチャを渡す為だけに、埼玉から片道2時間近くかけてくるとは…


「まぁ落ち着いてきけよ、佐藤」

千葉がニヤリと笑う。

「お前、ふたばと付き合って何年だ」
「…大学の三年からだから、今五年目だ」

周囲には驚かれるが、俺とふたばが正式に恋人になったのは、決して早くない。
高校までは同じ学校だったが、お互い部活なんかに忙しくて一緒にいる時間がなかったし、大学は別だった。
まぁ、色々諸々紆余曲折を経て、晴れて恋人同士になったのが大学三年の春だ。

「五年か…。ということは、週一でヤッたとして、月4回×12か月×5年=240回はヤッているわけか。
付き合いたての熱い時期と、記念日、疲れマラも加わえると、お前は既に300回近くふたばとの性交に成功しているわけだな。ふっ、さすがは佐藤というべきか。」
「なんなんだその計算は!雑すぎるだろ!」
「…佐藤よ。それだけこなしていたらマンネリするだろう。
最近、Sexの時に彼女をちゃんと見ているか?お前の目を盗んで、退屈げにため息ついたりしてやいまいか?ツイッターに最近マンネリなうとか書かれてないか?」
「ア・ホ・かー!!」


・・・
それから数時間後…俺は今、ふたばと向かいあっている。
あのあと、千葉と押し問答してる最中に、ふたばがやってきた。
チャイムも押さずにいきなり合鍵で入ってきた為、場合が場合だけにワタワタする俺を尻目に、千葉はしれっと「邪魔してるぜ」などと挨拶していた。
…そういえば、気付いたらローターが見当たらないんだが、千葉のやつが持って帰ったんだろうか?
なんだか、嫌な予感がしないでもない。

「しんちゃん、千葉氏をもっと引き止めてよー」
「あいつにだって予定あるだろ」
「久しぶりだったのに…」

千葉は、ふたばが来て二言三言話すやいなや、そそくさと帰っていった。
ドアを閉め際に、俺に向かって親指をたてていたのが、実に腹立たしく…怪しい。
きっと、すべてあいつの計算どおりなのだろう。俺が断ること前提で、あえてふたばが来る直前にきて、どさくさにまぎれてブツを押し付けて帰るという…
…サクッとお手軽お気軽お気楽に死ねばいいのに…

「千葉氏と久しぶりにおっぱい談義がしたい!小生、今なら自分のおっぱいを例にあげてより真にせまった話ができるのに!」
「お前…彼氏の前でそんな話しようと思わないでくれよ…」
「しんちゃんは…やっぱりパンツの話の方が嬉しいの?」
「そうじゃなくて!」
「男心は複雑っす」
「あのなぁ…」

俺の話をまったく気にせず、ふたばは気難しい顔で夕飯をツマミに千葉の買ってきたビールを飲んでいる。
俺の家に来ると、たいていふたばは飯を作ってくれる。今日も、千葉が帰ったあとすぐ作ってくれた。見てくれはいまだに若干微妙な事もあるが、味はほぼ狙いどおりのものができるようになっているので、以前のように張り付きで監視する必要がなくなった。
千葉の持ってきたビールはまだ余ってたから、夕飯ついでに二人で飲んでいたのだ。

「しんちゃん、ご飯足りてる?」
「うん、大丈夫。うまいな、この…卵で餃子の具をとじたみたいなやつ」
「ニラタマだよ」
「…なるほど。うん、コレうまいよ。」
「へへ、よかった。ありがとう!」

料理をほめただけなのに、ふたばはでかい花を咲かせたみたいに笑う。俺は気恥ずかしくなって、ニラタマ(らしきもの)を黙ってかきこんだ。
ふたばに関して、周囲から「なぜあの子を選んだの?」ときかれる事がたまに…いや、かなりある。
皆の言い分はこうだ。
「丸井ふたばは、確かに顔はかわいい。身体つきもエロい。性格も良い。
でも…超がつく変わり種だ。まともな会話が成立しない。他の女相手で通じた事が通じない。マイペースすぎて、他人があわせることができない。
なぜ、あえてそこへいく??」

人によって言い方は色々だが、大まかにまとめるとこんな感じだ。
まぁ、言いたい事もよくわかる。なんだかんだで三女とくっついた矢部っちについて、俺も似たような感想を抱いている事は否定しない。

しかし、ふたばに関して、みんなわかってないなと思う。

確かに、こいつはかなりの変わり種で、正直扱いにくい。今まで付き合った彼女の方が何倍も楽に付き合えていたと思う。
でも…こいつの素直で、まっすぐで、嘘のない性格は、他の女じゃ真似できないと思う。
幸か不幸か、母親に良く似たこの見た目のおかげで、SSSしかり、女は自分から過剰なアピールとともに寄ってきた。そのせいで、女のドロドロした部分や、怖いところは、それなりに目にしてきた。


でも、ふたばだけは、いつも裏表なく、俺に接してくれた。こいつは信頼できるし、何より一緒にいて安心する。

実際のところ、恥ずかしくて到底口には出せないが、俺にとってふたばは、可愛いの一言につきるのだ。
ほんの些細な一言に心から喜んだり、傷ついたり。こんなにまっすぐ、何も求めず俺を慕ってくれる。
そりゃあ、ふたばにムカつく事も、呆れる事もたくさんある。でも、最終的にはその居心地の良さと、反則技の可愛さで許してしまうのだ。

そう、可愛いといえば…。

まだビール片手に「おっぱいの話をあんなに熱く語れるのは小生以外は千葉氏だけ」とか「そもそもおっぱいを愛せない人間に何が出来るのか」とか、ブツクサ呟いてるふたばを見ながら、俺は「あの日」の事を思い出した。

あの日、俺とふたばが初めてセックスした日。

俺は、そういう事は初めてではなかったし、非常に…非常に残念な事に、ふたばも初めてではなかった。
ハタチも越えていたし、俺と付き合う前にも彼氏はいたらしいから、その事自体に不思議はない。
しかし、ふたばは過剰なまでに恥ずかしがった。

===

「しんちゃん、やっぱり嫌だ!やめよ!」
「ちょっ、お、お前、ベッドまできておいて…」
「お願いっ!あとで小生愛用のおっぱい枕かしてさしあげるから!」
「いらねぇよ!ってか何年前のだよ!」
「汚れたら買い替えてるから汚くないよ?」
「そういう問題じゃねぇよ!」
「…しんちゃーん…」
「…あのさ、ふたば、俺と…するの、嫌か?俺はすごく、その、したいんだけど。」
「うぅ…小生だってしたいよ」
「っておい。」
「でも、でも恥ずかしいっス!しんちゃんに見られたり触られるの恥ずかしいっス……」
「ふたば」
「なんか、もうこんな感じ初めてで、小生どうしたらいいか。
すごく、し、したいんスけど、恥ずかしいし、なんか、しんちゃんとの事を色々想像しただけで、すごい事になってて。
それをしんちゃんに見られたり触られたりなんて……
もう、恥ずかしすぎるっす……」

===

そのあとは、劣情が爆発して襲い掛かりそうになる自分を騙してごまかして………
まぁ、通常の倍以上の時間をかけて、なんとかかんとか事を成し遂げた。
あの忍耐を思えば、たいていの事は耐えられると思った。

あの時の真っ赤な頬、涙目で訴える様子や、その後の、恥ずかしがりながら俺の拙い指の動きに激しく反応する様子には、正直、今でもたまに一人でスる時にお世話になっている。
普段おっぱいおっぱい言っているのに自分の事となるとひたすら恥ずかしがって、でも反応だけは激しくて。
そのギャップがたまらなく可愛くていやらしかった。

…あ、やべ。
思い出したら、下半身が………。

「しんちゃんっ」

ふたばの声が、妄想を断ちきった。

「どしたの?ボーっとして。」
「い、いや、別に。」

気付くと、ふたばは既に自分の洗い物をまとめて台所に運んでいた。こういう手早さは三女仕込みだろう。

「仕事で疲れてる?」
「いや、まーそれもあるけど…」
…言えない。お前のやらしい姿想像してたなんて。
俺の無言をどう解釈したのか、ふたばは優しく笑った。
「しんちゃんは座ってて。今日は小生が片付けもお風呂もぜーんぶやるから、のんびりしてて。」

先に社会人になったふたばは、新社会人の俺をいつも気遣かってくれる。
それが非常に自然な振る舞いで、嫌味も押し付けがましさもないから、なんとなく素直に甘えたくなる。
そして…早くふたばの為に一人前になろうと思うのだ。

「…ふたば、サンキューな」
「ふふ、いいっすよ。だって、一年目って疲れるもんね。小生がして差し上げられるのはこのくらいだから気にしないで。
あ、ところでしんちゃん。」
「ん?」
「冷蔵庫に入ってたこれなに?」

!!!!!!

「ねぇ、なぁに?」

ふたばがニコニコと手にしていたものをみて、頭が真っ白になった。

そして思い出される、落書き顔の意味深な微笑み…………

「なんかの調理器具??…あ、ここ押すと震えるんだね。泡立器の仲間?」

やめろ、やめてくれ、無邪気に弄ぶのは…!

ふたばが不思議そうにいじってるのは…………、そう、消えたはずのピンクローターだった。