無題:9スレ目673


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673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/04/26(火) 23:01:00.32 ID:Nt0bIvZB0

「ごめんなさい、ごめんなさい…」

イベント終了後、ブリジットはスタッフの人たち一人一人にとても申し訳なさそうに謝っている。

今日のコスプレイベントにはちょっとした寸劇があったんだが、その中で、芝居が一瞬止まるというちょっとしたアクシデントが起こった。
原因は………そう、他ならぬブリジットが台詞をド忘れしてフリーズしちまったからだ。
ブリジットがミスるなんて珍しい。観客もいつもより多かったし緊張していたのかもしれない。
まあ、加奈子が見事なアドリブを発動したおかげで、イベント進行には全く影響はなかったんだけどな。
認めるのはやや悔しいが、アイツには一種の才能のようなものを感じざるを得ない。
チンチクリンだけど容姿だって悪くないし、これでアレさえなければ……………

「ったくよぉ…台本くらいちゃんと覚えとけっつーの。これだからガキと一緒はヤなんだよな!」
「か、加奈子!?」
「なんだよクソマネ?なんか文句あっか?おいブリジット!オメーのピンチを救ってやった加奈子様に超感謝しとけよ?
んじゃ、加奈子はおっ先~♪」
「お、お前なぁ…」
「ごめんね、かなかなちゃん…。本当にごめんね………」

…ほらな?言ってる側からこれだよ。俺が目で『やめろ』って合図送ってもお構いなし。
このクソガキ、ブリジットを責めるだけ責めて帰りやがった。なんて性格の悪いヤツなんだろう。
相手は小学生なんだぞ?こういう時くらい年上として優しい言葉かけてやれねえのかよ?俺だったらこいつにだけは絶対に助けられたくねえな…。


…と、そういうわけで加奈子が帰ってしまった今、部屋には俺とブリジットだけが残った。
ブリジットはしょんぼりして俯きながらベンチに座ったままだ。
何となく声をかけにくい雰囲気だけど、このままこいつをほったらかして帰るなんて俺には出来ねえ。
とりあえず俺は、ブリジットの隣にゆっくり腰掛けた。

「な、なあブリジットちゃん?そんなに落ち込まなくてもいいんじゃないかな?ほら、イベントだってちゃんと成功しただろ?」
「………。」
「か、加奈子だって、あれはアイツなりの激励っていうかなんていうか…。きっとさっきのも………」
「………。」

自分では精一杯の明るくて優しい声を出したつもりだったが、ブリジットから反応はない。
この子は小さいながらに真面目で純真な子だ。
前述の通り、犯したのは大したミスじゃないんだが、きっと必要以上に気にかけてしまっているに違いない。
…でもそう言えば、誰かが言っていたな。『落ち込んでる人に余計な慰めは逆効果だ』って。
だが、ここまで来たらもう後には引けない。俺は必死にブリジットを慰める言葉を模索していた。
こんな時ってどうすりゃいいんだろう?昔、桐乃が泣いていた時俺はどうしてたんだっけ?いや、でもそもそも桐乃とブリジットじゃタイプが違うし……………

なんてことを考えながらふとブリジットの方を見ると、俺は段々こいつの顔が崩れていくのに気がついた。そしてついに、その目にはジワッと涙が浮かんできて――

「ふえぇぇぇん……マネージャーさぁ~ん!!!」
「うおっ!?ブ、ブリジット!?」

俺は思わず焦って声を出しちまったよ。部屋に他のヤツがいなくて本当によかった。きっとすごく間抜けな様子だっただろうからな。
…え?何で声出したかって?そりゃお前………きゅ、急にブリジットから抱きつかれたからだよ………。

「…ひぐっ…うっ……マネージャーさぁん」

俺の胸の中で、しばらくの間わんわん泣き続けるブリジット。
こうなると益々どうしていいかわからない。俺に出来たのは、ぎこちない手つきで頭を撫でてやることくらいだった。

「わ、わたしのせいでみんなに迷惑かけちゃって…も、もし嫌われたりしちゃってたら………ふぇっ……ひぐっ………」
「ブリジットちゃんがいつもちゃんと頑張ってるのはみんな知ってるよ。だから誰も怒ったりしてないだろ?
 こんなんで嫌われたりするわけないじゃないか。」
「そ、それに、わたし…おうちでも頑張って練習したのに………」
「しょ、しょうがねえよ!ド忘れしちゃうことなんて誰だってあるし、運が悪かっただけだって!
 …そうだ!確かさ、明日も同じイベントあるんだろ?だったらその時にリベンジしてやればいいんじゃねえか?」
「で、でもっ、明日も失敗しちゃうような気がして……うう………」

…ダメだ。こんなに弱気で元気のないブリジットはもう見たくねえ。
今までこの子は小さいながらに俺のことを気にかけてくれてたってのに、こういう時に何もしてやれないなんて…。

この子を、何とかして元気付けてやりたい。

そう思うと、咄嗟に俺は………俺は、思わずブリジットを抱き締めていた。


「…マネージャー………さん?」
「大丈夫だよ!ブリジットちゃんなら明日は絶対イケる!俺が保証する!!だからもう泣くな!!!」

突然の抱擁に驚いたのか、その瞬間、ピタッと泣き止むブリジット。
それは自分でもまったく予想外な行動で、どうして急にブリジットを抱き締めたのかはよくわからない。
でも、こうなってくると自分でも勢いは止められなくなってきていて…。
気がつくと俺は、また変なことを口走ってしまっていた。

「で、でも私…あんまり自信が………」
「じゃ、じゃあこうしようぜ!もし明日ブリジットちゃんがリベンジ出来たら………俺、1個だけブリジットちゃんの頼み何でもきいてやるよ! だから………」
「…ほ、本当ですかマネージャーさん?本当に、何でも………?」
「お、おう!何でもだ!何でも、ブリジットちゃんの好きなこと言ってみてくれ!!」

…と、勢いで言っちまったはいいが、もちろん俺はその後をまったく考えていなかったわけで。
なんかとてつもないことお願いされたらどうしよう?まあ、加奈子と違ってブリジットだからそんなに酷いことは言わないと思うけど…。
しかし、そんな心配を他所にブリジットが出してきた要求は、俺の予想の斜め上で……………

「そ、それじゃあ、そのぅ……マ、マネージャーさんに、ギュッてしてほしいです………」
「え……?」
「も、もう一回、こんな風に、私をギュッてしてください!」
「ギュッて…お、俺が!?」
「…ダメですか?」

…いや、ダメじゃないよ?ダメじゃないけどさ…。
それって結構恥ずかし「や、やっぱり、ダメなんですか………?」……うっ!?

こっちを見上げながら、潤んだ瞳で訴えかけてくるブリジット。その様子を見たら、さすがのヘタレの俺も、こりゃもう断れねえって思った。
それにさ、誰かが言ってただろ?『男に二言はない』ってさ。俺も自分で言ったことにはちゃんと責任は持たなくちゃな。

「わ、わかった。もしブリジットちゃんが明日リベンジ出来たらその………ギュッてすればいいんだな?や…約束する。
 その代わり、ブリジットちゃんもいつまでも泣いてないで元気出してくれよ?」
「は、はい!もう泣きません!マネージャーさん、約束ですよ?私、明日は絶対失敗しないように頑張りますから!!」

俺がOKするとブリジットは顔をパッと輝かせ、ようやくニコッと笑ってくれた。
これこれ!ブリジットはやっぱ、この笑った顔が一番いいんだよ!!
こ、これがまた見られるんなら……な、何回ギュッてしてもいい………かもな?

…さて。そういうわけで、俺は明日のステージを色んな意味でドキドキしながら見守ることになりそうだ。



(終わり)


ツカツカツカツカ…

って、なんだ?足音?

バタン!!!

それはあまりに突然で、俺は最初まったく反応出来なかった。
なんと控え室に、さっき帰ったはずの加奈子が飛び込んできたのである。

「や、やいブリジット!オ、オメーにはどうせハナッから期待してねーし、オメーがちょっとぐれーミスったって加奈子様が何とかすっからいいんだよ!!
だ、だから……そんな風に、いつまでもウジウジしてんじゃ……………って、テメーら何やってんだよ!?!?!?」

勢いよくドアを開けて戻ってきた加奈子は、デレセリフの途中で硬直した。
まあ、そりゃ当然の反応だろうな。目の前で俺とブリジットが抱き合ってるんだから………。

「な、何だよコレ…?何でクソマネとブリジットがハグしてんだよ!?」
「かなかなちゃん…。もしかして……私のために、わざわざ戻ってきてくれたの………?」
「あはは…。か、加奈子!お、お前、結構いいとこあるじゃねえか!ハハ、ハハハハ…」
「う、うるせーブリジット!ク、クソマネも笑ってんじゃねえ!!」

笑ってんじゃねえよって言われてもな…。
この状況は、もう笑うしかないだろ……アハハハハ……………。

「つ、つかテメーら、そういう関係だったのかよ!?加奈子だってなぁ…加奈子だって……ホ、ホントはクソマネのこと………チクショー!!!!!」
「!?泣かないでかなかなちゃん!?わ、私…何か悪いこと言っちゃった?」
「おい加奈子!?お前、今なんて……?」
「な、泣いてねーし!何も…言ってねえし……ヒグッ………」

…この後、何故か半泣きになった加奈子の誤解を解くのはすげえ大変だったんだぜ?
しかも俺が全力で恋人関係を否定したら、何でかわからんがブリジットまで不機嫌になっちゃったりしてさ。

加奈子がブリジットに対抗して自分にも“ごほうび”を要求してくるっていう話は、また機会があったらな?

(ホントに終わり)
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