あの不愉快な結末を迎えたプレゼンの帰り道・・二人っきりの下校。
少し慣れはじめた状況で、
先輩は急に妙なことを口走り始めた。
「・・あー、あのな、ひとつだけ言わせてもらうと・・。
・・年頃の女子が人前でオナ●ーオ●ニー連呼するのはどうかと思うぜ」
「・・?あなたは何を言っているのかしら?何か問題でも?」
「・・な、なぁ黒猫。おまえ、・・●ナニーの意味わかってるか?」
「???オナニ●・・?・・自己満足の行為、
独善的で他人の評価なぞ知るか・・そんな意味でしょう?」
「・・あぁあのぅ、黒猫・・さん?ま、マジで・・?言ってます?」
「・・あなた、何か厭らしい連想でもしているのかしら・・まったく。」
やはりこの年代の雄はどいつもこいつも、SEXのことしか頭にないのかしら・・
「な、なぁ黒猫?け、携帯持ってるよな、な?
わ、悪いこと言わない、今すぐ調べてみろ、な?」
「・・・・。」
調べものをするとき、画像検索をするほうが
手っ取り早いことが多いと私は普段考えている。
[オ●ニー][画像検索]
携帯で検索した次の瞬間、
私の見ている画面は・・
凄い・・ことに・・。
「・・わ、わかったかな、意味が・・ハハハハハハ」
「・・こ、の」
「・・なんてもの、を、見せ付けてくれた、のか、し、ら・・」
あぁ、目の前が真っ赤になる。
ソウ、世界ハ血で染まルべきなのヨ。
「ま、待て待てっ!見せ付けてやるって言ったのはおまえだろ、じゃなくて、落ち着け!」
見せ付けてやる・・?
私のプレゼンの最後の口上をもう一回思い出す。
~回想~
『超凄いオナニ●を見せ付けてやるわ!』
~回想おわり~
次の瞬間、私の脳裏に浮かんだのは
ゲー研の皆の前であられもない姿を晒し
たくさんの器具を用いて、さっき見た画像のように、
【超凄いオナ●ーを披露している自分】
・・・・へ、・・・・変態・・。
「いーーーやーーーーあーーーーッ!!」
三千世界に響き渡る悲鳴を奏でる私。
「く、黒猫、お、落ち着け!な!まだ大丈夫だぞ!」
「いや、いや、いやぁーーーーーーーッ!!!」
「待て、落ち着け、傷は浅いぞ!」
「ク、・・ククク・・クッハハクク・・。瓦解のときはきたようね・・。」
そうだこんな世界は嘘なのだ。
「おーい、戻ってこーい!」
「大地は割れ、海は沸き立ち・・
学校は地獄の底まで崩れ落ちるのよ・・クックク・・クククク。」
「えらいローカルな世界滅亡だな!」
「・・そう、だからぜんぶ嘘なのよ、嘘・・嘘って言ってよ・・。」グスッ
私は泣いてない、なぜならこんな世界はぜんぶ嘘なのだから。
私は嘘の世界でしゃがみ込む。
「・・分かった。俺が明日までになんとかしてやる。
・・絶対に、だ。」
先輩になだめられながら、結局帰宅するまでに1時間近くを要してしまった。
~~~~~~
ほとんど幽鬼のようになって家に帰り着く。
「ただ・・いま・・」
最後の気力を振り絞りようやく自室までたどり着くと、
私は制服を脱ぐのも煩わしく、畳の上に身を放り出した。
どうしても意識から今日やらかしたアレを拭い去れない
「・・・・。」
震える手で携帯を取り出し、
[超凄いオ●ニー][画像検索]
・・・・。
「~~~~~~ッ!!」
画面の中でさらに物凄い行為を繰り広げる女の子達。
「・・・・馬鹿、私の、馬鹿・・・・。」
うつぶせに寝転び、手近な何か・・とりあえず座布団を抱きかかえ、顔をうずめる。
「・・・・な、何なのよ超凄い●ナニーって・・・・」ぽふっぽふっ
「・・・・馬鹿じゃないの・・?超凄いオナニ●・・?」ぼふぼふっ
「おかえりルリ姉!ごは・・ん・・・・は・・。」
「・・・・す、凄いオ●ニー・・お、オナ●ー・・・、超凄いオナニ●・・・。」ぽふっぽふっ
はッ!
顔を上げると、そこにはふすまを開けたまま凍りついた我が妹が。
「ル、る、ルリ姉・・。」
「・・!・・違うのよ・・・・。」
「・・・・あの、ルリ姉?」
「・・・・違うと言ってるじゃない。」
「・・・・発情期なの?」
スパァーンッ!!
座布団が日向の顔面にスマッシュヒット。
実の姉をつかまえて猫じゃあるまいし。
・・・・確かに黒猫だけれども。
・・わたし、上手いこと言ったわよね・・・・。
・・お願い。せめて、笑って頂戴・・。
翌日・・とても部室に行く気にはなれず、
人目につかないように早々に帰宅するつもりだった。
・・先輩と出会うまでの、それまでの毎日と同じように。
先輩のあのメールを見るまでは。
【もう大丈夫だ。例の件はゲー研で話題に上がることはないだろう。
安心して顔出してみな。】
さんざん葛藤のすえ重い、重い足を運び、
あくまで気配を殺してゲー研の扉を開けたとき、
・・果たして部室は阿鼻叫喚の騒ぎになっていた。
「め、め、メルルたんが!俺のメルルたんが魔法ょぅじょからガチモホにジョブチェンジでござる!嘘だ!嘘だっ!」
「ぐわぁああ!嫌!嫌アッーーー!!」
「へ・・変態!変態!ひぃいいいいッ!」
「うふふ・・僕が、皆に・・犯されて・・ふふっ・・気持ちよさそう・・」
「よぉ、来たな?」
先輩はしてやったりとでもいいたげ顔で私を出迎える。
この部室で、冷静さを維持しているのは彼一人のようだった。
「・・何の騒ぎかしら、これは」
「まぁここじゃ何だ、うるさすぎて話もできやしないし・・ちと出ようか。」
「あ・・ちょっと」
少しだけ強引に手を引かれて部室を出る。
だけど、暖かな手の感触が心地好いともひそかに思う。
そして、人気のない裏庭まで連れてこられたので、私から核心に触れることにした。
「貴方・・何かしでかしたでしょう?」
「まぁな。」
いたずらを見つけられ、なお自慢げな悪餓鬼のような顔で微笑む。
「昨日の赤城のプレゼンデータからありったけのCGを回収して、
皆のパソコンの壁紙、起動画面、スクリーンセーバー・・
全部あの超凄いガチモホ画像に差し替えたのさ。」
・・馬鹿かと。この男もあの変態眼鏡に侵食されてしまったのかしら。
「・・何のためにそんな馬鹿なことを?」
「こんだけのダメージを与えりゃ、昨日の些細な所なんか吹っ飛んじまうだろう?
ましてプレゼンの時の細部なんかトラウマの至近距離だ。
恐らくまず全員が意識から封印しちまいたいだろうよ。」
・・いくらなんでもこれは酷い。
「・・無茶苦茶よ・・。焚火を消すために戦略核兵器を投下したようなものだわ」
「・・言ったろ。"絶対に"何とかしてみせる、って。」
「・・いくらなんでも、他にやりようが無かったのかしら・・」
「思いつかなかった!」
胸を張って答えるところかしら?
私は大きなため息と共に、
「・・貴方、やはりとんでもない馬鹿ね。」
今さらながらに率直な感想を伝えた。
「おぅ、褒めてもらえると嬉しいぜ!」
にっこりと笑うその顔色は屍のごとく土気色で、
一晩中あのデータに直面し続けた有様が容易に想像できた。
・・先輩は、いつもそう。
泣いている誰かを見るたびに、
死に物狂いになり、傷だらけになってのたうち回り、
・・いつも、最後にはさらりと笑ってみせる。
・・きっとこの馬鹿さ加減は
一生どころか死んでも尚、治らないのでしょう。
「ま、お蔭さまでかなり耐性は付いたぜ。■■■の■■に■■■■■を■っ■■てようが、
■■■■な■■■が■■の■■■に■■っ■り■■してようが全く平気になってきたよ。」
私の中で上昇した先輩の評価がいささか損なわれた。
「・・さわやかな顔で酷い単語を並べないで頂戴。
・・とりあえず貴方も変態だという事が良く分かったわ・・。」
「・・な!ひでぇ!止めて、汚いモノを見る目は止めて!」
「・・冗談よ。」・・クス
「・・でも、・・」
私はくるりと、出来るだけさりげない風に努めて回れ右をする。
「・・多少なりとも、感謝の気持ちがないでは、ないわ・・」
「はいはい、どういたしまして。」
「・・さぁ、行きましょう・・先輩。
貴方のおかげで、彼岸の崩落は妨げられたわ・・」
「ああ、そうみたいだ。」
私は先輩のほうに出来るだけ、赤らんだ顔が向かないように努めながら、
ふたたび、部室へ歩みを進めはじめた。
・・後の心配事は、日向への誤解を解くことと、・・そうね、やはりあのヒトの心配かしら?
~~~で~~~
あの(狂った)ヒト「部員の先輩がたが皆様目覚めちゃったのっ!?すごい、すごいわッ!
これで名実ともにゲイ研の誕生ねッ!?
や、やっぱ真壁先輩総受けの流れかしらッ!?
いやいや高坂先輩肉便●ルートッ!?
ウオオオオみwwなwwぎwwっwwてwwきたwwwwwwwwwwwwww」
~~~~で、~~~~
「姉さま、姉さま。しつもんがあります。」
珠希は最近こんな具合に質問をぶつけてくる機会が増えてきた。
「なにかしら?珠希」
知的好奇心が旺盛な年頃なのだろう、私は年長の姉としてできる限り、
わかりやすくかみくだいて教えるように心掛けている。
「えっと、おなにい、ってなんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「???」ワクワク
・・・・私は冷や汗を吹き出しながら、あっさり答えに窮してしまった。
【おわり】
最終更新:2012年12月05日 18:14