( ^ω^)美味しいカレーのようです その1

とてもカレーが好きな国がありました。
その国は、朝にカレー。昼にもカレー。夜だってカレー。
あげくのはてには三時のおやつでさえもカレーを食べるような国柄でした。

( ^ω^)「カレーうめぇwwwwwwww」

そんなカレー好きな国の中でも、ことさらにカレー好きの男の人がいました。

( ^ω^)「うめえぇwwwwwwwww」

もともとはこの国の中でも平均的な(といっても、一般で考えれば非常識なほどに)カレー好きの彼でしたが、
ふとしたひらめきから、いくらカレーを作ってもこびりつかない鍋を作り出し、巨額の富を得たので、
自分に幸せをもたらしてくれたカレーをさらに輪をかけて好きになるのでした。

( ^ω^)「マジカレーぱねぇwwwwwwwwwww」

今ではこのカレー好きの国有数の権力者となった彼ですが、そんな彼の住まいはもちろん大邸宅。
家から離れた場所にまで、カレーの食欲を誘う香りがぷんと届き、
ふと目を見遣ると、カレー粉で作られたレンガによって組まれた、茶色くスパイシーな壁。

その壁にいくつかある出窓から中を覗けば、壁と同じ色をした、天まで届くかというほどの家屋。

そして象さえ飼えそうなほどの広大な庭では、噴水からやはり茶色いカレーが吹き出ています。
その噴水を取り囲むかのように芽吹くのは、にんじんやじゃがいもなどの葉に、水田の中で風に揺れる黄金色の稲。
茶色と緑色に彩られた庭で、嬉しそうに駆け回るのは健康な鶏や豚。

そうです。彼はカレーを全て自宅で作れるほどに、カレーを愛しているのです。

そして、つい最近のことです。彼は最高級の米を生み出しました。
一粒一粒が、どれほど炊いても形を崩すことなくピンと立っていて、適度な甘みと柔らかさを保つ米です。
今まではどちらかといえばナン食派であった彼も、この米を前にしてはカレーライス派に移るしかないほどのお米でした。

( ^ω^)「米うめぇwwwwwwwwwwwwww」

ところが、この米によって彼は深い悩みを抱くことになってしまうのです。
確かに、彼の家はカレーハウスです。
ですが、その極上の家から作られるカレーでさえも、この米には吊り合わなかったのです。

カレーライスは、カレーのスパイスを米のふくよかな甘みで受け止め、うまみをふくらませることによって味の深みを作り出します。
ですが、米があまりにも強いとカレーがただの付属品になってしまうのです。

彼はひたすらに悩みました。
朝に食べるカレーの最中でも、昼に食べるカレーの最中にも、夜に食べるカレーの最中でさえも。
充分においしいカレーを食べながらも、彼は極上の米に吊り合う極上のカレーへと思いをはせていました。
そこで彼はひらめくのです。自宅で極上のカレーを作れないのならば、国中に募集をかければいいと。

( ^ω^)「うはwwwww僕天才wwwwwww」

彼は大々的に募集をかけました。
当然、報酬は望むだけ与えるとのことも。
すると、彼のもとへ何百もの応募者が訪れました。

彼はその一人一人のカレーを、極上の米と合わせてしっかりと味わいました。
朝も昼も夜も、間食の時間さえも惜しんで何百種類ものカレーを味わったのです。
様々なカレーが彼の食卓に並ぶ日々が続きます。

( ^ω^)「カレーうめえええええええ」

スタンダードなカレーから、牛、豚、鳥、羊、鹿、兎、蛙、ワニなどの様々な肉を使ったカレー。
七色に変化する不思議なカレー。
マグマのような煮えたぎったカレーから、氷河のように凍えるカレー。

金粉を撒き散らした豪華絢爛カレーが食卓に並んだかと思えば、
次の食卓にはスパイスも具材も何も入っていない、水のようにしか見えないカレーが出された日もありました。

(;^ω^)「でも米のがうまいお……」

それでも、彼の望むカレーはありませんでした。
全てが全て、米の魅力に負けてしまうのです。
やがて、どんなカレーをも否定する彼の姿にあきれ果てたのか、応募者の数も日々を追うごとに減っていきました。

それでも彼は、極上の米に合うカレーを探し続けることをやめはしませんでした。

ある日のことです。
そんな彼のカレーで出来た大邸宅に、一人の白衣を着た男がやってきました。

( ^ω^)「君はどんなカレーを持ってきてくれたんだお?」

権力者は今まで何度も抱いた期待を胸に、尋ねます。

(-@∀@)「わたしはカレーを持ってきてはいません」

男はそう答えます。

確かに、彼の両手には荷物らしきものは持たれていませんでしたし、何よりも彼は白衣です。
そんな姿でカレーを持ち運んでしまえば、はねたカレーがたちまち染みになってしまうでしょう。
その恐怖は、このカレー好きの国に住む人にとって、赤子でも知っているような常識でもありました。

キョトンとする権力者を目に、男は言葉を続けます。

(-@∀@)「わたしは料理人ですらありません。確かに、カレーは好きですが、カレーの作り方もわかりません。
      ですが、極上の材料を用意することは出来ます。おたくで雇っているコックにその食材を使ってカレーを作ってもらえば、
      たちまちあなたの望む極上のカレーができるでしょう」

( ^ω^)「うはwwwww長文乙wwwww」

男の言葉に、権力者は目を輝かせます。
それほどまでに、彼の言葉には自信が満ち溢れていたのです。
きっとこの男は自分の望むカレーを作ってくれるだろう。

そう確信した権力者は、ふと気がつきます。

( ^ω^)「ところで、その材料はどこなんだお?」

(-@∀@)「ふふふ」

やはり白衣の男の両腕には何もなく、どこにも極上の材料らしきものは見当たりません。
不思議に思う権力者に対し、白衣の男は小さく微笑むと

(-@∀@)「一週間ほどお待ちくださいませ。今日はあなたの期待を膨らませるためにうかがったのです」

と言葉を残して、彼の邸宅を過ぎ去ったのです。

場面は唐突に変わります。
ここはカレー好きの国の端にある、大きな研究所。
たくさんのモニターに囲まれた部屋の中には、先程の白衣の男がいます。

(-@∀@)「……」

彼はただ、黙ってモニターを眺めるばかりでした。

(-@∀@)「……お」

すると、そのたくさんのモニターのひとつ、研究所の外の映像が映し出されたモニターに動きがうまれます。
黒塗りの護送車が到着し、中から制服に身を包んだ警官が数人。囚人服に身を包み、拘束された人間が五人。
老人や女性さえもその中に確認できまる囚人たちが、ぞろぞろと順番に出てきました。

/ ,' 3

(*゚ー゚)

( ゚∋゚)

('A`)

(´・ω・`)

彼らはそのまま研究所内へと入っていきます。

やがてまた別のモニターに彼らの姿は映し出されます。
そこは体育館ほどの大きさの丸い部屋でした。

壁も床も天井も白で塗りつぶされた空間の真ん中に、腰ほどの高さの白い机がひとつだけぽつんと存在していて、
壁際には五つの寝袋が置いてあります。
机の上には五錠の錠剤が置いてありました。

/; ,' 3

(;*゚ー゚)

(;゚∋゚)

(;'A`)

(;´・ω・`)

ひとつしかない扉から、囚人と警官が入りました。
囚人達は、この窓も何も無いのっぺらぼうな空間に、誰一人違わず驚きの顔を見せます。
警官は特に気にすることもなく、囚人達を机の前に並ばせました。

五人が横一列に並び終えたころに、白衣の男がモニターの部屋から移動して、この真っ白な空間に入ってきました。

(-@∀@)「君らはこの国における恥部であり、死刑囚です」

白衣の男は、この五人を軽蔑の眼差しで見ながら話し始めます。

(-@∀@)「君らは、僕の実験の協力をしてもらいます。
      命に関わる、というかほとんど死んでしまうであろう危険な実験のため、なかなか被験者がいなくて困っていたのですが、
      あの権力者のための研究だと警察上部に言ったら、君らを簡単に差し出してくれました」

(-@∀@)「つまり、これから行われる実験が実質的には君らの死刑となるわけです」

囚人達は顔を真っ青にして、彼の言葉に耳を傾けていました。
唐突に刑務所から連れ出された時点で、ある程度の予測はついていたのですが、
それでもこの言葉は、彼らの心を脅かすには充分すぎるほどの恐怖を与えたのです。

(-@∀@)「しかし、老年の囚人、不細工な囚人、筋肉質な囚人、太った囚人、唯一の女囚人。君らに僕はチャンスを与えるのです」

白衣の男は言葉を続けます。

(-@∀@)「君らはこのまま刑に服していたらまず間違いなく死刑によって命を落とすでしょう。
      ですが、君らの前にある机に目をやってください」

五人の囚人は、目の前の机に視線を向けます。
白い机に、白い錠剤が五錠。
それを見る囚人は、五人。

(-@∀@)「大体察しがついているでしょうが、君らにはそこの錠剤を呑んでもらいます。
      きっと、この錠剤を呑むことによって君らはほとんど死んでしまうでしょう。
      しかし、生き残る可能性もゼロではありませんし、一週間生き残れたなら釈放してあげましょう」

(-@∀@)「もちろん、拒否権はありません。拒んだ時点で君らは処せられます」

ほぼ一息で言い切った後、ですが、と白衣の男は続けます。

(-@∀@)「ですが、考えてみてもください。このまま確実に訪れる死を待つのか、薬を飲んで生き残るという賭けに出てみるか。
      どちらの方が君らにとって良いのかを」

どこからともなく、息を呑む音が聞こえてきます。
五人の囚人達は、ひたすらに得体の知れないこの錠剤を食い入るように眺めるのみでした。

(-@∀@)「錠剤を呑んで一週間は水も食料もとらなくても大丈夫なようにできてあります。
      寝るときはそこの寝袋を利用してください。では僕はこれにて」

白衣の男はそう言い残して部屋から出て行きます。
続くように、警官たちも出て行ってしまいます。
ただ一つしかない扉が、彼らが出て行った後に締められ、がちゃりという音を立てて施錠されました。

閉ざされた空間に囚人が五人。
彼らはただただ黙して、食い入るように錠剤を眺めているばかりでした。

/ ,' 3「わしは飲む」

白衣の男が去ってから数分後、重い沈黙を破ったのは老年の囚人でした。
白髪を乗せた顔に、深く刻み込まれた一本一本のしわが、彼の今までの人生で積んだ経験の多さを物語っています。
彼は、カレーをトイレで食べるという蛮行のせいで死罪にされたのでした。

/ ,' 3「今まで様々な経験をしたが、こんなことは初めてだ。だが、それでもわしは薬を飲んで生き延びたい」

かさついた口から、自分に言い聞かすように呟かれた言葉が、白い空間に響きます。
老年の囚人が一歩踏み出して、机に近づきました。

( ゚∋゚)「なら、俺も飲もう」

筋肉質な囚人がそれに続きます。
鶏冠のように逆立つ髪を持つ彼は、五人の中で一番背も高く、がっしりとした体つきを囚人服に包んでいました。

彼は、カレーと偽って客にビーフシチューを売りつけていたために、
この場所へと来るはめになってしまったのです。

二人が前に踏み出したことで、残る三人の醜い囚人、太った囚人、女の囚人も机へと歩み寄りました。机に乗る五つの錠剤を、五つの手が掴み取ります。
こんなにも軽く小さい薬が自らの命を左右するだなんてと、囚人達は誰一人違わず身震いする気持ちでした。

誰が合図することもなく、五人はほぼ同じ瞬間に薬を飲み込みました。
その様子はしっかりと白衣の男もモニター越しに確認していました。

(-@∀@)「実験開始だ」

静かに白衣の男は呟きます。モニターには五人の姿が変わらずに映し出されていました。

(´・ω・`)「特に何も起きてないよね」

太っている囚人が辺りを見回しながら、怯えた目で問います。
背中の中ほどにまである、手入れのされていないぼさぼさの髪が、彼の頭の動きに合わせて、
ふけをまき散らかしながら揺れ動いていました。

(;*゚ー゚)「いや!」

そんな中、唯一の女性である囚人が、切れ長の細い目を驚きに広げながら老年の囚人に向けていました。
対象である老人も、恐怖に目を身広げて、口を魚のようにパクパクとさせるばかりでした。
ですが、自分の身に起きた異変への恐れと理解のしがたさに、言葉を紡げないようでした。

老人を除いたすべての目が、彼に向けられます。

/ ,' 3「……!」

どういうことか、老人の耳からさらさらと茶色い粉が落ちていくのです。
とどまることを知らずに、ひたすらに、さらさらと。
流砂のように両方の耳から粉を落とす老人は、異変にただ怯えるのみです。

そして、やがて一向は気がつきます。
老人の耳たぶが消えていることに。
そう、老人は耳から粉を出しているのではなく、耳が粉末状に崩れているのです。

/ ,' ,';,「あ……あ……」

粉は順調に落ち続けていきます。
だんだんと老人の耳がなくなっていきます。
耳たぶから軟骨へと侵食していき、やがては全てを粉に変えます。

一向は、老人も含めて恐怖のあまり、言葉を発することができないままでした。
白く、静かな部屋に、さらさらと茶色の粉の落ちていく音だけが聞こえます。
それはとても異様な空間でした。

/ ,',';,「あ……」

耳が全て粉に変わると、今度は耳のついていたこめかみ付近から粉が落ち始めます。
元来耳があった場所には、小さく黒い穴が開いているだけでした。

こめかみが粉になっていくにつれ、変化の面積は段々と広がりを見せます。
布にたらした色水のように、じわじわと。頬へと、顎へと、喉へと。

/ ,';,「い、いやだ」

ここにきて老人がやっと言葉を発しました。
ついに状況の整理がついたのでしょう。
自らの命の危機に拒絶を示した老人でしたが、ここで残念なことが起きてしまいます。

戻る  次へ

名前:
コメント:
最終更新:2011年02月13日 20:39
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。