赤ん坊の声が建物中に響き渡った。
助産師の女性:無事、生まれましたよ!元気な男の子です!
その日、俺はこの世に生を受けた。
当時はまだ祝福されて生まれてきたと思う。
このときは、まだ。
母親:あら?あなたー、何かここにぶつけた?(赤ん坊が眠るベッドの手すりを指差して問う
父親:え?いや、何かぶつけた覚えはないよ。どうかしたのかい?
母親:ええ、このベッドまだ買ったばかりなのにこんなところにもうヒビが入っているの。
父親:本当だ。おかしいなあ?(確かにヒビの入っているベッドを見て首をかしげる
母親:なんだか、最近よく物が壊れるのよ・・・不吉ね・・・。
父親:大丈夫さ。きっと気のせいだ。なによりこの子がいるんだ、僕達は幸せの真っ只中じゃないか。
母親:ふふ、それもそうね。
ねぇ、顔も知らない父さん、母さん。
俺が生まれた日の気持ちはどうだったのかな?
きっと嬉しかったよね。
俺が、普通の子じゃないってわかるまでは。
母親:やだ!○○○!またおもちゃ壊したの!?
父親:またか○○○!いったい何度壊せば気が済むんだ!?
まだ自分の名前も両親の顔も覚えられていない頃から、
俺はよく物を壊していた記憶がある。
その頃からだろう、両親は俺を毛嫌いするようになった。
母親:もう嫌だわ・・・あの子怖いわ・・・。
父親:あぁ、僕も○○○が恐ろしい。いつか僕らも壊されてしまうんじゃないかって・・・。
母親:そんなのもっと嫌よ!私たちにはまだ次に生まれてくる子がいるのよ・・・!
父親:あぁ・・・。
母親:それに周りの人たち、○○○だけじゃなくて私たちのことも悪く言ってる・・・。
父親:あぁ、わかってる。・・・せめて次の子は守ってやらないと・・・!あいつの右腕を切り落とせば・・・。
母親:そんなことしても、私きっとあの子のこと好きにはなれないわ・・・!
父親:・・・誰か、他の人に頼むほかない、か・・・。
最終更新:2012年06月30日 12:35