('A`)ロックンロール殺人事件のようです その1

バンドは仕事。ロックも仕事だ。
「僕はロックンロールが大好きで、ロックをやるためにロックをやっているんです」
言ってみたいねぇ、そんなこと。

でもな、世の中はせちがない。
カネ! カネ! カネ!
金がなくちゃ始まらない。

金がないから俺はすさんでいる。
金がないから俺達の打ち上げはつまらない。
金がないから俺は誰か死ねばいいと思っている。

んがが。

('A`)「でよ、今日のライブなんだが――」

( -∀-)「ぐごご……」

( ^ω^)「ショボ、七味」

(´・ω・`)「あいよ」

('A`)「俺としてはもっともう少し客の間で話題になるようなライブがしてぇんだ」

( -∀-)「ぐがー」

( ^ω^)「やべ、七味かけすぎた」

(´・ω・`)「あぁ、それなら僕のを食べなよ。僕、七味もイケるクチだから」

('A`)「俺達は何とかメジャーデビューが出来て、雑誌の取材も何度か受けている。
   だけどもう一つ何か足りないんだ」

Σ(;-∀-)「ずびっ!」

(;^ω^)「ショボの牛めし、フレンチドレッシングがかかってるお……」

(´・ω・`)「意外とイケルって、喰ってみなよ」

('A`)「演奏は下手くそ、曲も大していいものが作れない。だったら何か1つだけ突出したものをやればいい。
   ロックとはそういうものだと俺は思う」

( つ∀-)「ふわぁーあ……」

(*^ω^)「あれ……サッパリして意外とイケる!」

(´・ω・`)「松屋はこれっきゃないね」

('A`)「俺の尊敬するラモーンズはやっているのは簡単な曲のくせに、見に来たやつの心を揺さぶる。
   何故か。ロックは技術じゃない。どれだけマジになって一直線に進めるかなんだ」

( ゚∀゚)「っけね。寝てたわ。牛めしもーらい」

(;^ω^)「あ、ナガっち」

(;´・ω・`)「その牛めしは……」

('A`)「だからこれからは心機一転して、頑張っていこう」

(#゚∀゚)「んだよこれ、俺に何喰わせんだよ? あ?」

(;´・ω・`)「その七味牛めしはブーンがつくったもので……」

(;^ω^)「いや、でもショボが喰うはずだったヤツだお!」

('A`)「……」

('A`)「売れないバンドは熟れないバンド」ボソリ

(#゚∀゚)「あぁん? てめぇ最近調子乗ってねぇか? 俺とお前、どっちが上よ?」

(;゚ω゚)「ごめんだお! それはナガっちだお!」

('A`)「ナンチャッテ……」

(#゚∀゚)「ったく、かれー、マジ辛いわー。あーあ、つれーなー。ボーカルが喉痛めちゃったよー」

(;´・ω・`)「……」

(;^ω^)(ナガっちこえー)

('A`)「……」

(゚A゚)「いい加減にしろや、このクソボケ共がぁ!!」

Σ(;゚ω゚)ビックゥゥ!!

( ゚∀゚)「うっせーのはてめぇだろ」ボソ

(;´・ω・`)「ドクさん。お店の中っす」

(#゚A゚)「あ?」

店員(チ、うっせーな)ギロリ

(;'A`)「あ、すいませーん」

(#'A`)「あのな、俺はバンドのためを思って言っているんだ。なのにお前らときたら――」

( ゚∀゚)「すいませーん。ドクさん」

(#'A`)「んだよ」

( ゚∀゚)「帰っていいすか? 反省会終わったら女の子と会う約束してるんで」

(#'A`)「……」

(#゚A゚)「ざっけんなバッキャロー!!」

店員(……)ギロ

(;'A`)「ごめんなさいね、マジで」

(#'A`)「誰だよ……」

( ゚∀゚)「はい?」

(#'A`)「女の子、誰だよ」

( ゚∀゚)「ライブ見に来てくれた子っすけど」

(#'A`)「お前はナンパするためにハコに行くのか?」

( ゚∀゚)「割となくはないっすね」

(# A )(あぁ、もう、マジで――ざけんな)

(#'A`)「この反省会の趣旨はだな。お前らもわかっていると思うが俺達だけで集まって、バンドをよくしていこう。
    どうやったらもっと面白いライブが出来るのかを考えるためにやってるんだ。
    なのに、お前ら――どうだ? 話は聞かない。喧嘩はする。最低だ。最低だよ」クドクド

( ゚∀゚)(このオッサン。話クドイんだよなー)

( ^ω^)(抜けよっかな)

(´・ω・`)(ブーンが抜けたら僕も抜けよう)

( ゚∀゚)(帰りてー)

( ^ω^)(辞めてぇ)

(´・ω・`)(辞めてぇ)

(#'A`)(わかってるよ。お前らの考えてることは……。どうせ「辞めたい」だの「反省会終われ」だろ。
     俺だってこんな糞メンバーの糞バンドはもう解散させてもいいくらいだ。
     でもやっとメジャーデビュー出来たんだ。20代後半になって、やっと……)

(#'A`)(解散は、させんぞ)

(#'A`)(でもどうする? 完全に活気を失ったロックバンドが観客を魅了することができるのか?
      どうしたら俺たちは「売れる」ことができる?)

( A )「……」

('A`)(あ、そうか)

('A`)「いいこと思いついた。俺達が一世風靡する方法だ」

( ゚∀゚)(んなこたぁいいから早く帰らせろよ)


( '∀`)「お前ら、誰か死ねばいいんだ」

んがが。
そうなのだ。
ちょっと前まで某レンタルショップで働いていた俺は知ってる。

ゲージツ家ってなぁ死んで一人前だと。

某M・J氏が死んだ日にはいつもクソつまらねぇ巨大資本によるファストフードミュージックなるものをたいらげている凡愚どもがこぞってM・J氏のCDを借りにおあそびもうしたでござるの候。
んがが。

つーわけで、俺のバンドも誰かが死ねばいい。
死ねば話題になる。
話題になればきっと売れるきっかけになる。

どっかのファッション雑誌みてぇなスナップの載る音楽雑誌が取り上げるだろう。
「THE VIP Starsの某死去」ってな感じで。

んが。死ね。んがんが。死ね死ね。
本気でやってないヤツは邪魔なのだ。
死んで俺の礎になりゃあがれ。んがが。

('∀`)「ははは……ははは……」

(;^ω^)(ドクさん壊れちゃったお)

(;´・ω・`)「じゃ、お開きってことで」

( ゚∀゚)「そーだな」

('∀`)(ふはは、見えたぞ。スターへの道、スターロード。ふはははは)

拙者、宿酔でござる。

あの糞メンバーどもが帰った後も、拙者現実があまりに面白くないもので笑っていたのでござる。

しからばあの悪鬼。松屋の店員。
拙者の心理状態など全く省みず追い出しにかかり申した。ござる。

やってらんねー。の、心理が極限にまで達し、達し、牛丼屋の外でまた大笑いしたでござる。
アスファルトに寝っ転がって、じたばた、じたばた。
やーほほほほほほ。やーおほほほほほ。

したら、店員に殴られた。で、ござる。
やかましい、店の外で騒ぐな狂人。彼奴はそう言って拙者をボコった。
水月辺りにキックがバーンバンバン。

やーほほほほ、こいつはたまらん。
ってことで拙者は退散して、それでもまだ面白くないからコンビニで酒などこうてみた。

店員さん。お酒をくださいな。おーほほほほほほほ。
店員さん。拙者が安酒なんかを購入するのは拙者がバンドマンであるが故に金がないでござるからでござる。おーほほほほ。

店員さん、実に優しかった。
さっきの牛丼屋と違って拙者をぶたなかった。
割り箸つけてっつったらくれた。

巣に帰った拙者は酒盛りを始めた。
がぶ。がぶ。

目が飛んで、頭がうつら、気が付いたら昼で、頭が痛い。
宿酔なのでござる。

('∀`)(フヒヒ……)

ピロロr

('A`)(んあ?)

('A`)(ケータイ鳴ってら)

('A`)(誰だ? スタジオ練習かライブ以外の日にゃ、大抵鳴らないのに)

sub:無題
from:ブーン

本文

突然な話ですが、長岡が死にました
電話でお話しようと思ったのですがドクさんが電話に出ないのでメールです
至急連絡ください

('A`)「へー長岡、死んだ……」

('A`)「そりゃヤバいな」

('A`)】trrrrrrr

( ^ω^)『はいもしもし』

('A`)『長岡、死んだってマジ?』

( ^ω^)『マジっすお』

('A`)『何で?』

( ^ω^)『強盗に入られたとか、ナントカ』

('A`)『へー、そう』

案外他人の死というものはあっけないものであった。

牛丼屋での「お前ら死ね」発言。
言った直後、もしやマジで死んだら俺は罪の意識に押し潰されるかもしれん。
などと心の片隅、ほんのチョッピリ思っていたけど全然そんなことなかった。

長岡、死んだ。へーそー。
俺の心はこれでカタがつく。ついてしまう。

話題になりゃいいが、死んだのが長岡ってのはいかんかもしれん。
言いたかないけど長岡ってヤツは美男子で、女の子ウケがいいやつだ。

長岡がバンドから消えたらルックスのレベルがガタ落ちなのである。
っま、いいか。
知り合いから誰か手頃な奴をひっぱってこよう。

そう思って、俺はまた呑んで、翌日。

('A`)(またメールだ)

sub:無題
from:ブーン

本文

ショボが死にました
連絡ください

('A`)『もしもし?』

( ;ω;)『ドクさぁん』

('A`)『ショボが死んだって?』

( ;ω;)『……』

( ;ω;)『はい』

('A`)『そうか、残念だったな』

( ;ω;)『う……ひぐっ……』

('A`)『ところで、死因は?』

( ;ω;)『強盗が入ったとかナントカで』

('A`)『そうか、強盗が入ったとかナントカか』

('A`)「フフフフフーン。フフフフーン。フフフフ、フフフフン」

一昔前の邦ロックの名曲を鼻歌しながら、当面の生活物資をリュックに詰める。
何のために? 逃げるために。

凶悪な殺人鬼がバンドメンバーを狙って殺し回っている。
そんな可能性は無きにしも非ず。
だから逃げるのだ。

それに、何だか放浪したくなった。
人生があまりにも面白くないから。で、ござる。それはもういい。

エロ本、タバコ、ライター、サラダオイル、ポケットティッシュ、マヨネーズ、タオル。
こんなものでいいか。服は着たきりスズメでいい。

さぁ、さすらおうか。つって、玄関の扉をバーンて開けて旅路の一歩を踏み出そうってしたら、居た。
居た。何が? でっかいの。

身の丈2mは超えるであろう巨漢が俺ん家の玄関先につっ立ってた。
んがが。

( ゚∋゚)「……」

大男は何も言わず、ただ黙って俺を威圧する。
みればその男、筋骨隆々、顔は幾度も修羅場を抜けたよう、肌は浅黒く、全身が凶であった。

こいつぁ、まじいや。
って俺は携帯音楽プレイヤーのコードを持ってヌンチャクみたいに振りまわした。

ぱひゅーん。すんすん。
すぽっ。

コードがすっぽ抜けて本体が男の顔に向かって飛んだ。

( ゚∋゚)「……」

ぺしっ。って男の鼻の下あたりに当たる。

まじいなぁ、怒らせたかな。ってビビってたらずずーんて男は膝から崩れた。

(  ∋ )「……」

('A`)(ほえ?)

('A`)(あー、何だ?)

('A`)「おーい。おーい」

男の身体を足先でつっついてみる。反応なし。
肩をたたく。反応なし。
鼻に指をつっこむ。反応なし。

人体には急所がいくつかあって、それは身体の正中腺に集中している。
その中でも人中と呼ばれる、鼻の下あたりのツボは強い力で突かれたら死に至るともいわれる。
――というのを漫画で読んだことがある。

('A`)「あ、あのー、大丈夫ですか?」

(  ∋ )(……)

心音を確認する。やっぱり反応なし。
どうやら秘孔を突いたらしい。
死んでる。

殺されるのを避けようと思った男が、逆に殺してしまうなんて、一体これは何の冗談でショ。

(;'A`)(いやぁ、待て待て、正当防衛)

おまわりに事情を話そう、と、思ったけどやめた。
俺はおまわりが嫌いである。

俺の人生において、おまわりがマトモに話を聞いてくれた例がないのである。
俺は、バンドマンだし、貧乏だし、フリーターだし、人相が悪い。から、おまわりのおぼえが良くない。

大体、このでっかいの、まだ俺に何もしてない。
こんな状態で交番にでも駆けこんだら、「テメーがやったんだろ。あぁ」
つって話も聞いてもらえずに、拘留、裁判、懲役、は自明なのである。ウーラララ。

となると。

('A`)(逃げちゃえ)

となる。

ぼかぼか、ぼかすん、と、俺の愛車は不機嫌な排気音を吐きだす。

中古で買った原チャリ。
替え時かもしれない。

('A`)(殺人事件の時効って何年だっけ)

('A`)(コレを捨てたら、どうしよう)

('A`)(実家に戻ってもおまわりが来るだろうしなぁ)

どうも頭がこんがらがっている。

白痴、阿呆、田割け、脳足りん。
そんな精神状態。思考がまとまらない。

こんな時はどうするのか、決まってる。
問題をひとつずつ解決するのだ。

山積みされた問題の数々を見て、気力を無くすのは阿呆である。
少しだけでいいから、1歩ずつ歩む、山をちょっとずつ崩していく。
これが賢いやりかたというものだ。

よって、俺の逃走劇は、携帯音楽プレイヤーを捨てることから始まるのである。

2時間ほど国道を走ると、目的地である県境に着いた。
山だらけである。

俺は原チャリから降りて、適当な山へ凶器を捨てるために入る。

('A`)(やっぱ、わかりにくい場所に埋めたほうがいいよな)

('A`)(もっと奥へ行こう)

ずんずん。ずんずん。
進んでいく、進んでいくと、手頃な開けた場所に出た。

('A`)(すぐそばには崖か。ここならあまり人も通らないだろうな)

と、思って、俺はポケットに手を突っ込んで、凶器を取り出そうとした。

したら、俺が来た方向とは別方面から自動車の排気音が聞こえる。
――まさか、おまわりか。

そう思ったが、違った。
黒いバンが登って来た。

俺はそのバンの搭乗者に見つからないよう、木の蔭に身を隠す。

隠そうとした、ら、ふいに俺の横から老人がやってきた。

/ ,' 3 「困るんじゃのぉ。ああいうの」

(;'A`)「へ、何がですか?」

/ ,' 3 「いや、あいつらじゃ」

(;'A`)(俺のことじゃないのか)

/ ,' 3 「あの黒いバンの連中。何をしに山に入るか知っとるか?」

('A`)「いや、わかんないっす」

/ ,' 3 「自殺じゃ」

(;'A`)「え?」

/ ,' 3 「といっても、結局死なんがな。車内で練炭だかを焚いとるらしいが、最後には窓を開けてしまう。
    気味が悪くてかなわん」

(;'A`)「はぁ、そうですか」

/ ,' 3 「よく見とれよ」

('A`)(あ、車内が白くなってく。練炭を焚いてるのか)

/ ,' 3 「いつも通りじゃて」

('A`)(窓が開いた。うわ、すっげー情けねぇ)

('A`)(ボロボロ降りてきた。おいおい。車内に何人いるんだよ。5人、7人。9人――。雑技団か?)

/ ,' 3 「な、言った通りじゃ」

('A`)「そっすね」

/ ,' 3 「ところでお兄ちゃん。アンタこんな山奥に、一体何しにきたんじゃ?」

(;'A`)「俺っすか。ええと、たまには自然と触れ合うのも悪くないかなー、なんて」

人を殺めた道具を捨てに参りました。なんて口が割けても言えるわけがない。
俺はごまかす、なんとか隠し通そうと試みる。

/ ,' 3 「ほーそうかそうか」

/ ,' 3 「ワシは山菜をとりにきたんじゃ」

('A`)「はぁ、そうですか」

/ ,' 3 「ここら辺はわりかしたくさんの野草があってのう」

('A`)「はぁ」

/ ,' 3「ホラ、あそこに生えてる黄色いのなんか、天ぷらにすれば美味いぞい」

爺の会話は延々と続く。
何だってこう、老人の話にはキリがないのだ。

まず、目に見える範囲に生えている野草をすべて生態から調理法まで説明された。
次に、この山は他にどんな野草が生えているか、さっきの話と同じように何から何まで教えられた。
したら今度は爺は急に馴れなれしくなって、家族のことを話始めやがった。

/ ,' 3 「ウチのデカイ方の息子はのぉ、正月にも帰ってきやせんのだ」

('A`)「へぇ、それは大変ですねぇ」

/ ,' 3 「いやぁ、めんぼくない。それでワシは言ってやったんじゃ――」

まだまだ縁者の話を続ける爺、と、うんざりする俺、と、俺にうんざりする俺。

思えば俺はものわかりの良い子供であった。
「アンタ、小さい頃は本当に手がかからない子だったのにねぇ」と、母から勘当される際に言われた。

やめてくれ、爺。アンタが話をやめてくれないと、俺は自己嫌悪に潰される。
基本的にいい人であろうとする俺を、俺は嫌になるのだ。

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最終更新:2011年02月23日 18:06
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