('A`)ロックンロール殺人事件のようです その2

爺の一方的な会話が始まってから30分ぐらい経った。
その間に山の天気は変わり、暗雲が上空に広がる状況と相成った。

やべぇなぁ。爺うぜぇなぁ。死ねばいいのに。
って思ってたら、爺もとうとう話題に尽きたか、最近の政治はなっとらんトークの最中で言葉に詰まった。
んじゃ、そろそろ僕ぁお暇しまっす。って帰ろうと思ったら。

/ ,' 3 「兄ちゃん、アンタそういえばこんな山奥に何しに来たんじゃ?」

ときた。爺はぼけだった。
そんで、さっきと同じ会話をもう一周した。
最近の角界はなっとらんトークの最中で爺は言葉に詰まって、やっと帰れる。と、思ったら。

/ ,' 3 「兄ちゃん、アンタそういえばこんな山奥に何しに来たんじゃ?」

じじい、ぼけ。
もう一周。
最近の自動車のデザインは云々。帰れる。思ったら。

/ ,' 3 「兄ちゃん、アンタそういえばこんな山奥に何しに来たんじゃ?」

最近の小説は、最近の喫茶店は、最近の映画は、最近のゴミ捨ては、最近の日本語は、最近のテレビは、
最近の電気会社は、最近の演歌は、最近のポルノは、最近の小学生は、最近の新聞は、
最近の住宅事情は、最近の電化製品は、最近の街は、最近の公園は、最近の喫煙事情は、最近の紙幣は、
最近のホームセンターは、最近の服は、最近の文化は、最近の天気は、最近の雑誌は。

/ ,' 3 「兄ちゃん、アンタそういえばこんな山奥に何しに来たんじゃ?」

んがが。そういうわけであるのだ。
日がすっかり落ちるまで俺は爺の永久ループする会話に付き合わされたのである。

('A`)「あのぉ、すいません。もう夜ですし、俺帰りますね」

いくら他人にいい顔をとりたがる俺でも、流石に夜も遅くなるのであればこの場から去ることができる。
爺、さらば。つって、どっかに行こうとしたら。

/ ,' 3 「お兄ちゃん。さっきから気になっとったんじゃが、ポッケの中はどうしたんじゃ?」

爺はまだ俺を帰そうとしないのであった。

(;'A`)「はい?」

/ ,' 3 「話しとる最中にもポッケに手ぇ突っ込んで、何かごちゃごちゃ気にしとったから」

(;'A`)「何でもないですよ。クセ――そう、これは俺のクセなんすよ」

/ ,' 3 「いやぁ、そんなことないじゃろう。絶対なんかあるじゃろ」

(;'A`)「そんな、大したものなんかありませんよ」

/ ,' 3 「やっぱり何かあるんじゃないか。見せてくれたっていいじゃろ」

(;'A`)「ひっ、嫌ですよ……」

爺の追及はしつこい。
俺はなんとかして、それから逃れようとするのだが、爺も執念深く俺を詰問する。
しかし、爺の声の調子に怒りは見えない。俺を諭すように、「見せなさい」って言ってくる。

俺は爺と慣れ合いすぎたのである。
爺は、俺を年の離れた親友と認識しているようで、しきりに身体に触れてくる。
手を握りながら、肩に手を乗せながら、「ポッケにあるものを見せてくれないかなぁ」と、せがんでくるのだ。

そんな爺に、俺はもちろん。

(;'A`)(んだよ、糞爺。死ねっ)

と、思う。

/ ,' 3 「見してぇよ、兄ちゃん。何が入っとるん?」

そんな俺をよそに、爺はまだ俺のポッケに執着する。
爺の顔が近い。加齢臭がひどい。くさい。
そのせいで頭が痛くなる。

(;'A`)「勘弁してください。俺もう帰りますからっ」

/ ,' 3 「兄ちゃん待ってって。ポッケの中身は?」

(;'A`)(爺、まとわりつくな!)

逃げようと思った矢先、爺はすぐさま俺の首に手をかけて俺を拘束したのである。
立ったままおんぶをしている状態だ。

この姿勢、すごく辛い。
ろくに面識のない爺に背中越しに抱かれている俺ってのは、想像しただけに身ぶるいする。
あと臭い。後ろからパイナップルが腐ったような臭いがする。
それを俺は鼻腔から摂取してしまい、頭がキリリと押し潰される痛みに襲われる。

(;'A`)(離れろっ、爺っ。離れろっ)

/ ,' 3 「なぁー、いいじゃろー」

爺の猫撫で声。俺は耳までも犯された。
ますます頭痛が激しくなる。

(#゚A゚)(いい加減にしろ!)

もう我慢の限界である。
老人だからということで、"いたわり"なんて感情をもった俺が馬鹿だった。
渾身の力を込めて爺を振りほどこうと上体を左右へ激しく揺らし、腰をねじる。

爺もそれに抗おうとするが、若者の力におよぶものか。
俺の首回りに巻かれていた爺の両腕からも次第に力が抜けてゆき、遂に背中から爺特有の嫌な感じのするたるんだ肌の感触が消えた。

(#゚A゚)(ハァハァ……ざまぁみやがれ)

俺の背後で何かが地面に落ちた音がした。
爺が地面に激突した際に生じた音だろう。

その音は俺の右手方向へと、音源を移動してゆき、何かひっかかりのある音を立てた後、音は地面よりも下方向から聞こえるようになった。

(;'A`)(まさか……!)

やってしまった。
爺、勢いあまって崖から落ちやがった。

(;'A`)(死んでないよね?)

って願ったけど、現実はやっぱうまくいかんもんで、崖の下を覗いたらさっきまで爺だったモノは見事に死体に成り果てていた。

/ ,゚ 3「……」

(゚A゚)「また死んだ……俺が殺した……」

こうなっちゃ俺も現実に対処できない。
ってんで、我武者羅にその場から走って逃げた。

山道を駆け降り、転んで、這いつくばって、下山した。
山の入口に路中してある原チャリに飛び乗って、ただ焦りの感情に任せて道路を走る。

気が付いたら、俺は自宅近くの道を走っていた。
帰巣本能? つーの? そんなのが働いたらしい。

(;'A`)(とにかく、家に帰って、それから対策を……)

つって、自宅まで向かって行ったの。
したら、俺のアパートの周りを白黒パンダカラーの車がそこら中を取り囲んでてびっくり。
おまわりが俺の殺した大男の捜査に来たのであろう。

(゚A゚)(ひぃぃぃぃいいい!!)

俺に最早逃げる場所はないのである。
パトカーが視界に入って、すぐ。俺は原チャリをUターンさせて、今度こそ本当に何も考えずに、でたらめにそこら中を走り回る。

下校途中の小学生を轢きそうになる。
ヤバそうなセダンにぶつけそうになる。
蕎麦屋の兄ちゃんに「危ねぇな、バッキャロー」と言われる。

逃げる。逃げる。どこに? どっかに。

だけど、無計画な逃走劇が頓挫する時が来た。
川沿いの道を眼ぇひんむいて走っていた時のことだ。

ギラギラの電飾をつけたデコトラが正面から走って来るのを、俺は激突寸前になるまで気が付かなかった。

(゚A゚)(うわあああああああああああ!!!)

慌ててハンドルを右に切る。
慣性が俺の身体に圧し掛かり、はじき飛ばされそうになるのをなんとか耐える。
原チャリは河川のガードレールに突っ込み、俺は原チャリと空中分解する。

俺は今、空を飛んでいるのだ。
下には芝生が見える。ここの河は市民の遊べる公園にもなっているのだ。
もし通常の河川のように、砂利が敷いてあったり、堤防しかなかったりしたら大事に至っていただろう。

しばらくの空中遊泳の後に、俺は緑の芝生へ着地した。
とはいっても痛みはある。背中からの衝撃を受けて俺はすぐに跳ね起きた。

(゚A゚)(痛って!)

(゚A゚)(イタイ! イタイ! イタイ!)

Σ(゚A゚)「ん?」

('A`)「アイツは……」

( ´ω`)「はぁ……」

( ´ω`)(ショボが死んだなんて信じられないお……親友だったのに……)

(;'A`)ノ「おーいブーン! ブーンじゃないか!」

俺は河川敷で黄昏るブーンを見つけた。
とにかくその時の俺は、恐慌状態にあったので、誰か話せる奴が欲しかったのだ。

( ´ω`)「お……」

( ´ω`)「あ、ドクさ――」

('∀`)「ブーン!」

('A`)(あ……)

( ゚ω゚)ガフッ!

原チャリがブーンの頭の上に落ちた。
たぶん死んだんじゃない? さっきまでのパターンから。
俺と同じく空中を舞っていた原チャリは、しばらく上でのんびりした後に、ブーンの身体の上に落ちたようだ。
物理法則? 知るか。目の前で起きてることを信じんと駄目だがな。

南無。こうなると、焦る気すら起きない。
なんかもう虚しい気分しかない。
ギャグだ。こんなもん。
俺は俺の人生を戯曲化して考える。
これから先、俺の人生はずっと喜劇で進んでいくに違いない。
悲しいことも、神様のいたずらで無理矢理面白おかしくなるのである。

そうして、しばらくした後。
自らのコメディ性を確認するために俺は警察へ自首した。
俺が笑いの神に好かれたのなら、きっと何か起こるに違いない。そう思ったからである。

('A`)「あのう、すいません。人を殺したんです」

(;゚∋゚)「なにぃ、誰をだ!?」

お前。

<;ヽ`∀´>「大変ニダ! 大変ニダ! 今すぐ逃げるニダ!」

(;゚∋゚)「うるさいぞ! 今殺人犯が自主してきた所でだな――」

<;ヽ`∀´>「それどころじゃないニダ! 大怪獣が攻めてきたニダ!」

(;゚∋゚)「はぁ?」

<;ヽ`∀´>「外を見るニダ!」

( ^ω^)「おーん、おーん」

はは、すげぇや。ブーンの顔したゴジラだ。

(;`・ω・´)「大変です! TVが何者かに電波ジャックされました!」

(;゚∋゚)「な! 次から次に!」


『――そういうわけで、我々新日本相撲協会は日本相撲協会に宣戦布告する』


(;`・ω・´)「テレビです! 見てください!」

(;゚∋゚)「……」

('A`)(どれどれ)


( ゚∀゚)『諸君、新しい相撲の時代が来たのだ……』


へぇ、お前力士になったのか。
ま、いいんじゃない。グラドルとか、女子アナと結婚できるから。


『待ってください! 危険です!』

『うるせぇ!』

(#´・ω・`)『長岡ぁ! テメェ!』


あ、ショボンだ。

(;`・ω・´)「電波ジャックの会場に誰かが乗り込んだようですね」

(;゚∋゚)「うむ」

――

(#´・ω・`)『会長さんにお世話になっときながら、その態度はねぇんじゃねぇか? あーん?』

( ゚∀゚)『は、知ったこっちゃねぇ。かかってきな"日協"。"新日"がぶっ潰してやる』

( ゚∀゚)『そうだな。二ヶ月後のこの日。国技館で白黒はっきりつけようぜ』

(;´・ω・`)『馬鹿を言え。俺の一存でそんなことは……』

( ゚∀゚)『俺は言ったぜ。別に来なくてもいいがな。そんときは俺達"新日本相撲協会"の不戦勝、てことだな』

( ゚∀゚)『ははははは。アバヨ』

(;´・ω・`)『な、待て!』

――

(;`・ω・´)「放送が終わりました」

(;゚∋゚)「なんてやつらだ。新日本相撲協会……」

あぁ、はいはい。そういうパロディね。

( ^ω^)「おーん。おーん」

<;ヽ`∀´>「自衛隊はまだニカ!?」


(;`・ω・´)「課長! 是非"日協"を応援しましょう!」

(;゚∋゚)「う、うむ」

('A`)「……」

(;゚∋゚)「だが、ひとまず彼の取り調べをやろうか」


落ちついてるねぇ、課長さん。


(;゚∋゚)「こっちだ……」

('A`)「……」


「ちょっと待ったァ!!」

/ ,゚ 3「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ!」

/ ,゚ 3「我こそは古き良き日本を再生せんと試みる、大日本再生党が党首、荒巻である!」

荒巻さん。古いのが好きっつっても、その甲冑いつの時代の?
教科書の挿絵では確か室町時代ぐらいのだと思う。

(;゚∋゚)「はぁ?」

/ ,゚ 3「でやああああああああああ!!」

('A`)(すげ……マジの日本刀だ)

/ ,゚ 3「ちょいさ!!」

(  ∋ )「ゴフ……」

あ、死んだ。

('A`)「……」

/ ,' 3 「さぁ同士。いざゆかん」

('A`)「はぁ」

/ ,' 3 「ワシがこうして助けにきたのだ。ゆくぞ」

('A`)「わかりました」

( ^ω^)「おーんおーん」

('A`)「外に出たのはいいですけど、怪獣がいますね」

/ ,' 3 「問題ない」

/ ,゚ 3「同士よ!!」

黒いバンが走ってきて、中からわらわらと人間が降りてきた。
全員室町時代風の甲冑を纏ってる。


/ ,゚ 3「っけぇぇぇぇえい!」

レーザーとか、ミサイルとか、日本刀とかその他諸々の兵器がいっぱい。
どーんどんどん。怪獣は苦しそうだ。

( ^ω^)「おーんおーん」

(  ω )「おーん……」

('A`)「はぁ、凄い」

('A`)「じゃ、行きますか。どこに行くかは知りませんけど」

/ ,' 3 「その前に同士、ひとつ聞いてもよいか?」

('A`)「何でしょう?」

/ ,' 3 「ポッケには何が入ってるんじゃ?」

そういうオチね。

―了―

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最終更新:2011年02月23日 18:05
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