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 ダムが決壊して水が押し寄せるように、いろいろなことを喋った。
 他の人たちにとって些細なことも、梓と私にとっては一つ一つ大切なコト。
 まだまだ話したかったけど――時計をみたら日が変わろうとしていた。
 徹夜は良くない。健康にも、美容にも、ね。
「もう十二時回るし、寝よっか」
「あ、そうですね。寝ましょう」
 二人で一階に下りて、洗面所に。

「はい、歯ブラシ」
「あ、ありがとうございます」
 梓にお客様用の歯ブラシとコップを渡して、自分の歯ブラシを手に取る。

 二人で歯を磨いている姿は本当に姉妹みたいで。中学入ったばっかりの私にそっくり。
 妙な恥ずかしさを感じながら歯磨きを続けた。

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 部屋に戻って。
「じゃあ寝ようか。先に布団入ってて。電気消すから」
「はい!」
 満面の笑みと返事を返してくれた。
 梓が布団に入ったのを見届けて、電気を消した。
 明かりがなくても、窓から入ってくる月明かりと記憶を頼りに布団までの道は分かる。

 もそもそと布団に入り込んだけど――なんか恥ずかしくて梓の方を向けず。
 梓も背中を向けているので、私と梓で背中合わせ。
「………」「………」
 梓も私も声を出せず、二人の呼吸だけがはっきりと聞こえる。
 あと、私自身の鼓動の音。

 梓の方を向きたいけど、向けない。

 …………………よし!


「あのさ、梓」「あの、澪先輩」
 あっ。また。
「「……あはは」」
 二人して、小さく笑った。
 なんでだろう? 今みたいに梓とすごく息が合う。不思議なぐらい。
「お昼は私からだったから……じゃあ、梓から」
「じゃあ……あの、向き合って……寝ませんか……」
「そう、しよっか」
 布団の中でもそもそと、体勢を変えて梓の方を向いた。梓も向きを変えた。

 カーテンの隙間から月明かりが木漏れ日のように差し込んで、お互いの顔を照らした。
 梓のほっぺが、熟れた苺のように真っ赤。
 私も、ほっぺのあたりがすごく熱い。




「!」
 梓が手を絡めてきた。
「澪先輩の手のひら……。大きくて、暖かいです」
「ありがと。でも、梓の手もかわいいよ」
 梓のほっぺがさらに熟れて赤くなった。
 体が小さいことにコンプレックスを感じているみたいだけど、全部含めて梓。
 梓のぜんぶが好き。

 こうやって、梓の寝顔を眺めながら寝るのもいいけど――。やっぱり、梓と一緒にいることをもっと感じたい。

「ねぇ、梓」
「はい?」
「ちょっとだけ頭を上げて」
「……?」
 不思議そうな表情を見せたけど、素直に頭をほんのちょっと上げた。
 そこに腕を通して、梓の体をそっと抱き寄せた。ちょうど、私の胸のあたりに梓の頭がある状態に。
「み、みおせんぱい…!?」
「そ、その……寝てるときも、梓と一緒だといいなって……」
「……」
 梓の体がカチコチに固まってしまって、完全に黙ってしまった。
 ……あれ、悪いことしたかな……。

 と、突然、梓がもそもそと足を動かして――!?
「あ、ああああああずさ!?」
「……いや、ですか?」
 私の足に、梓が足を絡めてきて。
「ちょっと、驚いただけ」
 私も、もそもそと動いて寝やすい体勢を作った。
「これでどう?」
「あ、大丈夫です」

 腕の中にある小さな体。
 小さな体に秘めた大きな想い。

 ――私の、大切な人。


 これから1年間は離れ離れになってしまう。
 でも、一緒に頑張ろう。例え距離が離れていたとしても、梓の想いはいつでも、そばにあるから。
 私の想いも、梓のすぐそばにあるから。

「おやすみ、梓」
「おやすみなさい、澪先輩」

「……大好きだよ、梓」
 耳元で小さくつぶやいた。
「……私も澪先輩のことが大好きです」
「……ありがと」
 最初は、こんなにも近くにいることにドキドキしていたけど、一緒にいることに安心してきたら突然眠気が襲ってきて―――。

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 次の日の朝8時頃。
「澪ちゃん、梓ちゃん、おはよう。二人とも、朝ご飯たべ……る?」

 澪のママが二人を起こしに澪の部屋に入ると――。
 とても幸せそうに寝ている二人を見て。

 まるで本当の姉妹のようで、でも姉妹以上に親しくて。

「今日は……起こさないであげましょ」

 ぱたん。
 ママが部屋を出て、扉が閉まった。

 ……数分後、まだ扉があいて澪のママが戻ってきた。

 抜き足差し足と言った風で二人を起こさないよう、二人のそばまで移動する。

 エプロンのポケットからなにやら電子機器を取り出した。
 その電子機器を二人の愛らしい寝顔に向け――。

 カシャっ。
 携帯のシャッター音が鳴った。