ずいぶんと日が落ちる時間が遅くなった。部活を終えて帰ってくるこの時間。
冬場ならもう真っ暗になっているはずの家の周りも、まだ茜色に染め上げられている。
少し前まで身を切るような冷たい風だったけど、それさえも爽やかさを運んできてくれるようになった。
もう暖を求めて玄関に駆けこむ必要もない。
冬場ならもう真っ暗になっているはずの家の周りも、まだ茜色に染め上げられている。
少し前まで身を切るような冷たい風だったけど、それさえも爽やかさを運んできてくれるようになった。
もう暖を求めて玄関に駆けこむ必要もない。
「……あ」
ふと庭の片隅に目をやると、一輪の小さなスミレが花を咲かせていたのに気づいた。
桜吹雪に目を奪われがちだけど、この時期はこの子たちの季節でもあるんだよね。
桜吹雪に目を奪われがちだけど、この時期はこの子たちの季節でもあるんだよね。
「でも、そういえば──」
だけど確か、夜には雨が降るかもしれない、という予報だったことを思い出す。
あわててケータイを取り出してスミレの姿を写真を撮り、それをすぐに澪先輩にメールで送る。
あわててケータイを取り出してスミレの姿を写真を撮り、それをすぐに澪先輩にメールで送る。
『もしよかったら、明日にでも見に来ませんか?』
すると、ものの20秒もしないうちに返事が返ってきた。
『いいよ。梓さえよかったら』
それを読むなり私は玄関に荷物を置き、かわりに安物のビニール傘を持ち出して、スミレを覆うように地面に広げる。
これで万一、夜に雨が降ったとしても、色あせずに咲き続けてくれるだろう。
これで万一、夜に雨が降ったとしても、色あせずに咲き続けてくれるだろう。
とてもケータイのカメラなんかじゃ、この微妙な色合いは伝えられない。
だから明日こそ見るんだ、この可憐なスミレの姿を、澪先輩といっしょに。
(おしまい)