朝方はぽつぽつと降っていた雨が今現在、ざあざあという音に変わり本降りになっている。
この調子だと今日は一日中、雨が降り続けそうな感じかな……ま、それはいったん置いておこう。
「じゃ、いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
お昼休みを迎え、私は今日部室で梓と二人で昼食を共にしていた。
本当なら昼は屋上で一緒に食べようとしていたのだが今日はあいにくの雨で、それが朝から今に至るまで降り続いていて。
それで今日は部室の方で一緒に食べることにしたのだった。
それで今日は部室の方で一緒に食べることにしたのだった。
「雨が降ってなければ、屋上で食べれたんですけど……」
「んー、けどしょうがないよ、今は梅雨だしさ。 それに部室で食べるっていうのも悪くないよ」
「んー、けどしょうがないよ、今は梅雨だしさ。 それに部室で食べるっていうのも悪くないよ」
普段、放課後にみんなと騒いで楽しむ空気も好きだけど、こうして梓と昼に部室で二人きりというのはとても貴重な感じ。
これはこれで、なんだか良いなって思う。
これはこれで、なんだか良いなって思う。
「梓、よかったらこれ食べないか?」
「えっ、いいんですか?」
「うん。梓、好きだろ? 魚のフライ」
「えっ、いいんですか?」
「うん。梓、好きだろ? 魚のフライ」
弁当箱をつつく中で、梓が魚系のおかずが好きなことを思い出し、今日の弁当のおかずの一つである白身魚のフライをつまみ梓の口元に差し出す。
「はい、あーん」
「あーんっ……はむっ、もぐもぐ」
「美味しい?」
「美味しいです!」
「あーんっ……はむっ、もぐもぐ」
「美味しい?」
「美味しいです!」
にこにこと笑みを浮かべながら、梓は美味しそうに食べてくれた。
やっぱり笑っている梓はこの上なく可愛いし、私としても嬉しく感じる。
やっぱり笑っている梓はこの上なく可愛いし、私としても嬉しく感じる。
「じゃあ私からはだし巻きたまごを」
「え、いいのか?」
「はいっ」
「え、いいのか?」
「はいっ」
魚のフライのお返しにと、梓の方からはだし巻きたまごを私に差し出してくれた。
「先輩、あーん」
「ん、あーんっ……もぐもぐ」
「美味しいですか?」
「うん、美味しい!」
「ん、あーんっ……もぐもぐ」
「美味しいですか?」
「うん、美味しい!」
ありがたく頂くと、だし巻きたまごの甘味が口いっぱいに広がり、私は満面の笑みを返した。
「くしゅっ」
「梓?」
「梓?」
他愛ない話をしながら昼ご飯を食べ終え、互いに弁当箱を片付けていると、梓がくしゃみをして両手で自分の腕を軽くさすった。
「大丈夫? もしかして寒い?」
「あ、はい……今日はちょっと寒いですね」
「あ、はい……今日はちょっと寒いですね」
そういえば昨日辺りまでは30度近い夏日が続いていたのに、今日の朝見た天気予報では昨日までと比べて10度近く下がるって言ってたな……肌寒く感じるのも無理はないかもしれない。
よし、昼休みもまだまだ時間残ってるしここは……。
「梓、ちょっとごめんね」
「えっ、澪せんぱっ……!?」
「えっ、澪せんぱっ……!?」
椅子から立ち上がり歩み寄ると、梓の背中とそして両足の下に腕を通し、ひょいと持ち上げる。
やっぱり梓の体は軽くて、少しうらやましいとも少し心配にも思う。
やっぱり梓の体は軽くて、少しうらやましいとも少し心配にも思う。
「せ、先輩、なにを!?」
「こら、暴れない。ソファに連れていくだけだから」
「こら、暴れない。ソファに連れていくだけだから」
慌てふためく梓を腕に抱き上げたままソファに移動して座りながら、梓を自分の膝の上に横向きに下ろす。
「こうしていれば、寒くないだろ?」
「あっ……」
「あっ……」
そのまま優しく包みこむように、梓を抱きしめる。
梓の髪からシャンプーのほのかな香りがする。
梓の髪からシャンプーのほのかな香りがする。
「澪先輩……あったかいです」
「私もだよ、梓」
「私もだよ、梓」
最初はあたふたとしていた梓だが、しばらく抱きしめていると甘えるように私の体に抱きついてきてくれた。
梓の顔が目と鼻の先にあり、上目遣いで私を見上げる。
梓の顔が目と鼻の先にあり、上目遣いで私を見上げる。
「梓」
「澪先輩」
「澪先輩」
真紅の瞳を見つめながら「キスしていい?」と視線を送ると、梓はそれを肯定するかのように静かに目を閉じた。体ごしに、梓の鼓動が早くなっているのを感じる。
梓も同じように、私の鼓動が早くなっているのを感じていると思う。
梓も同じように、私の鼓動が早くなっているのを感じていると思う。
そうして私も静かに目を閉じて、
「ん……」
ゆっくりと、壊れものに触れるかのように、そっと梓の薄い唇に唇を重ねた。
「んっ……ん……」
「はん……ぁ……」
「はん……ぁ……」
しばらく唇を離さず、梓の肩が震えはじめる所でいったん顔を引いて少しだけ離れ、ほんの数秒の後に再び口付ける。
そうしたキスを何度も繰り返している内に、梓の頬はすっかり赤く染まっていた。
「梓、顔赤いぞ」
「み、澪先輩だって赤くなってますよ」
「そっか、ごめん」
「み、澪先輩だって赤くなってますよ」
「そっか、ごめん」
どうやら、私自身も梓とキスしている内にすっかり顔に熱が集中していたみたいだ。
「けどこれでもう寒くないだろ?」
「は、はい、むしろ暑いぐらいです」
「うん、それはそうだ」
「え?」
「は、はい、むしろ暑いぐらいです」
「うん、それはそうだ」
「え?」
きょとんとする梓に対し、
「だって、私と梓の仲はいつだってアツアツだろ?」
「?!!」
「?!!」
そう言うと、梓の顔が一気に真っ赤になった。
「そっ、それはあの、そのっ」
「違うのか?」
「いえ、決してそんなことっ!」
「違うのか?」
「いえ、決してそんなことっ!」
真っ赤な顔のまま、再び慌てふためく梓。その様子が微笑ましくて、つい頬が緩んでしまう。
「な、仲が冷えてたら、キスなんてしないです……よ」
「そっか、よかった」
「もう、澪先輩ったら……」
「そっか、よかった」
「もう、澪先輩ったら……」
よしよし、と髪を撫でると梓は嬉しそうに微笑む。
そしてお互いに再び温もりを感じ合うかのように優しく、柔らかく抱きしめ合う。
そしてお互いに再び温もりを感じ合うかのように優しく、柔らかく抱きしめ合う。
「好きだよ、梓」
「私もです、澪先輩」
「私もです、澪先輩」
――校舎の外は雨が降り、じめじめとした空気だけど。
今、私達二人だけの部室は温かく、穏やかな空気を醸し出していた――
(FIN)