「はあ……」
昼休みを迎え、ひとり学校の屋上にて私の口から漏れたのは重いため息。
今から随分と前、
――私……澪先輩のことが好きです! 大好きです!
そう梓から告白された時はそれはもうドキドキと心臓が跳ね上がって。
私も梓のことが好きだから、自分から先に言えなかったのは我ながら情けないとこだったけど……それでも晴れて恋人同士になった時のことを思い出すと今もうっとりしてしまうぐらい。
私も梓のことが好きだから、自分から先に言えなかったのは我ながら情けないとこだったけど……それでも晴れて恋人同士になった時のことを思い出すと今もうっとりしてしまうぐらい。
だが最近になってその恋人に対して悩みがあり、
「……一日にそう何度も言うような言葉じゃあ、ないと思うんだよな」
ぼそりと呟いて、私はまたため息をつく。
それは、言われて嬉しくない言葉ではない。
だがだからといってそうさらっと、まるで挨拶のように聞く言葉ではないと……それでは価値や重みが余り感じられないって、そう思う。
だがだからといってそうさらっと、まるで挨拶のように聞く言葉ではないと……それでは価値や重みが余り感じられないって、そう思う。
――おはようございます、澪先輩。愛してます。
――んっ、澪先輩の作ってきてくれたお弁当、美味しいです。愛してます、澪先輩。
――今日の澪先輩のベース、すごくいい感じでした! 澪先輩、大好きです。
――じゃあさようなら、澪先輩。明日も愛する澪先輩の笑顔が見れるのを楽しみにしてますっ。
……まあ、嬉しそうに心からの笑顔で言われるのは私にとっても嬉しいことだし、愛されてるということは何より幸せだし。
一応、私と二人きりの時にしか――人前でもそんなこと言われてたら恥ずかしくて死にかねない――梓は言わないし。
一応、私と二人きりの時にしか――人前でもそんなこと言われてたら恥ずかしくて死にかねない――梓は言わないし。
けどやっぱり何かが違う……そう思っていると、
「澪せんぱーいっ!」
「……梓」
「……梓」
ガチャ、ともう最近は聞き慣れた屋上のドアが開く音がして顔を向けると、当の本人がにこにことしながらそこにいて。
元気いっぱいにぴょこぴょことツインテールを揺らしながら近寄ってくると、そのままぎゅっと私に抱き着いてきて、
「好きです、澪先輩」
私に抱き着いたまま、いつもの言葉がささやかれた。
「なあ、梓」
「どうしました?」
「……本当に、梓は私のこと好きなのか?」
「……えっ?」
「どうしました?」
「……本当に、梓は私のこと好きなのか?」
「……えっ?」
抱きつく梓を少しだけ引き離し、じっと目を見ながら尋ねる。
私の言ったことがよく分からないのか、きょとんとした様子で瞬きをする梓の顔はいつも以上に幼く見えてまた一段と可愛い……が、それは一旦置いておく。
私の言ったことがよく分からないのか、きょとんとした様子で瞬きをする梓の顔はいつも以上に幼く見えてまた一段と可愛い……が、それは一旦置いておく。
「そんなの、いつも言ってるじゃないですか? ……まさか疑ってるんですか?」
「だってあっさり、軽々しく言うじゃないか」
「だってあっさり、軽々しく言うじゃないか」
私が怪訝な顔をしながらそう言うと、梓はさっきまでのきょとんとした表情とは打って変わって真剣な顔になり、
「好きです、愛してます。澪先輩だけです」
「……」
「……」
私の目をじっと見ながらそう言う梓の言葉には、確かに嘘も偽りも感じられなかった。
これでも恋人同士となって付き合っているからか、梓が話している時に目を見れば梓が本当のことを言っているのか嘘を言っているのか、最近になって何となくだが分かるようになっていた。
これでも恋人同士となって付き合っているからか、梓が話している時に目を見れば梓が本当のことを言っているのか嘘を言っているのか、最近になって何となくだが分かるようになっていた。
「信じてください、本当に澪先輩が好きなんです。一生に一度の本気の恋なんです」
「……」
「みお、せんぱいっ……」
「……」
「みお、せんぱいっ……」
私が黙っていると、梓はだんだん泣きそうな顔になってきた。
このまま本当に泣かれてしまってはさすがにバチが当たりそうなので、
このまま本当に泣かれてしまってはさすがにバチが当たりそうなので、
「ごめん、梓」
「ふえっ……?」
「ふえっ……?」
謝りながら梓を引き寄せ、小さくもあたたかい体を腕の中に収める。
「最近、梓が一日に何度も言ってくるから、何だか逆に疑ってた。本当にごめんな」
「澪先輩……」
「それにさ」
「あっ」
「澪先輩……」
「それにさ」
「あっ」
私は顔を寄せ、梓のすべすべした頬にそっと唇をつける。
唇を離してから腕の中にいる梓を改めて見下ろすと、梓はかあっと頬を赤く染めていた。
唇を離してから腕の中にいる梓を改めて見下ろすと、梓はかあっと頬を赤く染めていた。
「梓、口ではよく言うけど、自分から唇を寄せてきたりはしないからさ」
「そ、それはいくらなんでも失礼というか、恥ずかしくて無理です……」
「そ、それはいくらなんでも失礼というか、恥ずかしくて無理です……」
視線を外してごにょごにょと呟く梓を見て、梓は私とは違い大胆不敵なわりに妙なところで遠慮しがちだな、なんて思ってクスリと笑ってしまった。
「も、もうっ! 笑わないで下さいよう」
「ああ、ごめんごめん」
「ああ、ごめんごめん」
頬を膨らませる梓に平謝りしながら、
「なら、もう一回キスしてもいいかな?」
「ええっ!?」
「ええっ!?」
もう一度キスしていいか尋ねると、梓は虚を衝かれた顔になって更に頬を赤くした。
「ダメかな?」
「い、いえっ! えっと、その……お、お願いします」
「ん、なら目を閉じて。今度は唇にしたいから」
「は、はいっ」
「い、いえっ! えっと、その……お、お願いします」
「ん、なら目を閉じて。今度は唇にしたいから」
「は、はいっ」
顔を上げ、目を閉じて緊張からか梓が体を固くして私からのキスに備える。
そんな梓の緊張がほぐれるように、私は梓の髪をそっと撫でてあげた。
そんな梓の緊張がほぐれるように、私は梓の髪をそっと撫でてあげた。
「んっ……澪先輩……」
「梓……」
「梓……」
優しく、何度も頭を撫でていると梓は幸せそうに微笑む。そんな梓の表情を見ていると、私もなんだか嬉しい。
「ん……」
そうして緊張がなくなったところで背中を抱き寄せ、ゆっくりと唇を重ねた。
――梓が想いを言葉にしてきちんと伝えてくれる分、私は行動で伝えてあげよう。
多少恥ずかしくても恋人同士となった今、二人きりの時ぐらいなら私にだって出来る。
多少恥ずかしくても恋人同士となった今、二人きりの時ぐらいなら私にだって出来る。
伝え方は違っても、こうして梓と互いに想いを交わし、伝え合えることは何より嬉しいから――
(FIN)