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Soul Binder



「……んっ…、はあっ!……ああっ…いやあっ……」

 ―うっわー。卑猥過ぎるわ、これは…。

特に目的もなく、クロモンの商店街をただ歩いていると。
もう散々に聞き覚えのある(というか私も上げた事もある)、
いやらしい声が聞こえたので近くの民家を覗いてみると。

そこでは、ランスと見知らぬ綺麗な女性が。
想像通りのアレでナニな行為に浸っていた。

なんの前触れもなく、いきなり訳も解らないうちに集団で拉致されて。
変な所に連れてかれ、どこかとぼけたハニーキングに首輪嵌められて。
でもって人質まで取られて「殺し合いをしてください」って言われて。
そんな異常極まりない状況に、怯えたり慌てる事もなく。

「今日もランスは平常運転」ってのも、らしいっちゃらしいけど…。
まったく豪胆極まりないというか、所構わぬスケベ野郎というか…。

はああああああぁぁぁぁぁぁぁ…。
私、こんなどスケベに散々良いようにされて、
それが原因で結局早雲と別れちゃったんだよね…。
あいつ、だったら男の責任ぐらいきっちり取りなさいっての。
すぐ傍に!あんたがお嫁に行けない身体にした女が!いるってのよ!
――いい加減気づけっての、馬鹿!!

って、あいつに何言っても無駄なのはわかってんだけどね。
全く、なんで私もあんな奴なんかの事…。

私は、それは深い深い溜息を肺の奥から吐き出しながら。
一際高い嬌声を上げ出した女性の様子を、なんとなく眺めてみる。

なによ、私よりちょおっとばかりグラマーで大人だからって…。
って、えええええぇぇ!!うわ!ちょっと、なんなのよそれ!!

あのお姉さん物凄くノリノリじゃないの?
でも声とか顔が微かに嫌がっている感じが、
かえってこう、女の私でもサドッ気が刺激されしまうっていうか。
モジモジしてしまうっていうか、ドキドキしてしまうっていうか。

私でもあんな事やったことないし!言われても絶対出来ないし!絶対嫌だし!!
それにおかしいでしょ!あんた、初めてっぽい癖にどんだけ手馴れているのよ!
って、普通そんなになったら痛いでしょ?それ以前にばっちいでしょ?
なんで、出会ったばかりで喜んでそんな事自分から進んで出来るのよ?
おかしいわよ?!エロすぎるわよ、絶対!!

ねえ!ねえ!ちょっと、ランスも調子に乗ってアヘアヘ言ってんじゃないわよ!
私に強引に滅茶苦茶しまくった時より、よっぽど気持ち良さそうじゃないのよ!
なんか私が色々と凄く惨めな気分になるじゃない!
っていうか、反則すぎるでしょ?!

私は二人の到底人には言えない行為を、覗き見るのに夢中になりながらも。
思わず自分の変な所に伸びそうになる右手を、残る左手で必死に抑え込む。

「んっ……くっ、はぁ…ああっ…」

近くから聞こえる甘く切ない声が、やけに耳障りだ。
昔はこんな、はしたない女じゃなかったはずなのに…。
不可抗力とはいえ何度もランスに犯され続けた結果、心まで曲げられて。
嫌過ぎる行為だった筈が、今では見るだけで身体が勝手に疼いてしまう。
身体の芯に微熱が入り、ぬるっとした感覚がそこに残り続けるような…。
そんなどうしようもない私自身が、つくづく嫌になる。
どこかで、水が跳ねたような気がした。

「んんっ…。ふっ…く……あっ、はあ…」

くぐもったような、何かに遠慮するような堪えた声が、苛立ちを増させる。
う、うん!べ、別に私は騙されているかもしれないランスを心配して見てやっているだけだし!
これはあくまで監視なんだから、別にここ最近ご無沙汰で他人の見てムラムラ来ただとか、
あの私よりちょっと綺麗なだけのお姉さんに寝取られて嫉妬とか、そういうのでもないし!

そもそも、あいつの事なんて私はどうだっていいし!
これでこんな所で二人の行為見て私まで参加したりナニに耽ってたら、
お預け食った負け犬みたいっていうか、むしろ私まで痴女じゃないの?
っていうか、気付いたら私までなんか息荒げているし!

「ふうっ…あっ、あっ…いやあっ…、ランスぅ……」

…ダメだ、これ以上あんなの見てたらこっちまで変な気分になる。
でも、ああいうのは色々と後学にもなるし?
もうちょっと見学しておけばあいつを手懐ける勉強にもなるかなー、なんて思って。
しばらくその様子を熱心に覗いてはいたものの。
やがて心身を冒す甘い微熱も急激に醒め、その行為に虚しさを感じ。

「はあ…。うん、私すっごく馬鹿だわ」

私は、もう一度深い溜息を付く。

 ――うん、私一体ナニやってんだろ?

醒めた思考が、私を正常な世界へと戻す。
忘我の状態から、ようやく取り戻す五感と違和感。

そして――。
背後から感じられる、酷く凍り付いた一つの気配。

どうやらアレに熱心に見入っていたせいで、
すぐ傍にいる存在にすら私は気が付かなかったらしい。
息苦しくなるほどの重圧と緊張感に、急いで振り向いて見れば。

そこには、かつての私にとって最も大切“だった”人が。
歓喜、憤怒、悲哀、安堵、困惑、嫉妬、軽蔑――。

様々な思いを秘めつつも、それが滲み出るかのような。
角度と見方次第で、どのようにも見えてしまうような。
正に能面としか言いようのない、整い過ぎたその顔で。

――ただ黙って、この私を見据えていた。


          ◇          ◇          ◇


「久しぶりだね、蘭」

俺は出来る限り感情を殺しながら、最愛の女性に話し掛けた。

支給された聖刀日光の発する助言を頼りに。
『近くに魔剣カオスの気配がする』という事で、商店街を捜索していると。
自暴自棄となっていた俺を救う為に、己を省みず無理な使徒召喚を行い。
その結果、目の前で爆ぜて死んだはずの彼女が。
掛け替えのない、最愛の婚約者であった彼女が。

生前の面影のままで、見事に甦っていた。…蘇っていたのだ。
確かに、期待とも予感ともつかぬものは、胸に抱いてはいた。

彼女を内から引き裂いて現れた、あの忌まわしい使徒が今一度蘇り。
このゲームが始まる前に、さも親しげにランスに語りかけていたのだ。

それは確かに、この俺がもう一度倒さねばならぬ存在の復活を意味してはいたが。
同時に「人は蘇る」という事実を、目の前に突き付けられたという意味でもあり。
そして、状況把握の為あのハニーキングが用意した怪しげな名簿を読んでみると。
そこには、確かに“南条蘭”。死んだはずの、彼女の名があった。

知らず視界がぼやけ、頬から流れた何かで印字が滲んだものの。
何度読み直した所で、“南条蘭”の名前を見間違える事はなく。

 ――蘭もまた、蘇っているのかもしれない。

俺は内から膨れ上がる感情を、必死の思いで抑え込んでいた。
それが裏切られたときの悲しさ程、辛いものはないのだから。
ならば、最初から死んでいたと思い込んでいたほうがまだ良い。

だが、気を抜けば顔から笑みがこぼれてしまう。
それは、本来は有り得ざる“奇跡”そのものなのだから。

この悪趣味な殺し合いに乗る気も、奴らの言うことを聞くもさらさらにないが。
ただこの時だけは、この出会いを齎した件の主催者に心から感謝すらしていた。

期待に胸が高鳴り、歓喜が心を満たす。
失われた筈の未来を夢想するだけで、感動に心身が打ち震える。
――この思い、もはや抑え切れそうにない。

そして、しばらく疾走した先に。
彼女は、いた――。

…だが、俺は失念していた。
このゲーム自体が俺達の運命を弄ぶ者達の、悪趣味な采配によるものであり。
有り得ざる出会いもまたその延長である以上、奇跡に在らず玩弄でしかないという事を。

そして、全ての感動を微塵に吹き飛ばす――。
再会の時は、今訪れた。

路地裏で見つけた時、彼女は俺に気付くことはなく。
寂れた民家の窓から、何かを食い入るように覗いていた。
何かに憧れるように、その頬を薔薇のように初めながら。
どこかしら情欲的な、爛れたものをその貌に浮かべながら。

そんな俺に一度も見せたことがない、だが何故か嫌悪感を抱かせる表情で。
だが今はただその貌を作らせた原因が気になり、同じものを覗いていると。
――そこには、男女の情交があった。

男はよく知っている。俺も一度は仕えた異人だ。忘れられる筈がない。
女は見たことがない。おそらくあの男がまた現地調達してきたらしい。

――乱れきっている。もう何も言うことはあるまい。
とりあえず、何時も通りの彼の事は置いておいて。 

蘭に向き直る。彼女はそれを見るのに夢中になっているのか、
傍に近寄ろうと俺の事にすら気付く事はなく、そして――。
口に出す事もはばかる、破廉恥な行為に耽っていた。

それも、飢えた雌犬が心底羨望するような視線まで、
その奥にいる男女の行為に向けて。

 ――下劣にも、程がある…。

俺は内から込み上げる、熱く暗い何かを押さえ込み。
努めて平静を装い、その顔を穏やかなものに整える。

やがて蘭が達したのか、急速にその熱も冷め。
瞳の焦点が戻り、ようやく俺の存在に気付き。

「あ、あうっ…。そ、早雲なの、よね?」

酷くばつが悪そうな顔で、この俺と向き合った。
戸惑いと後悔、羞恥と言ったものをその貌に浮かべて。
ただし、そこには「死によって引き裂かれたはずの恋人と出会えた奇跡」
を心より歓喜するような、暖かな感情の類は一切感じられず。

まるで自らの過去の罪業に怯えるような。
それでいてこの場から逃れられぬような。
これから己の罪を糾弾する検事にでも出会ったかのように、
「決して望まぬ再会をしてしまった」ような、
それは暗く沈んだものに満ち溢れていた。

 ――何故だ?何故そんな顔をする?

君はただ、俺との再会を喜びさえすればいい。
俺は嬉しいというのに、何故君は素直に喜べない?
そうすれば、何も見なかった事にしよう。間違いというものは誰にでもある。
…だが、何故だ?何故俺との再会に、そんな暗い顔しか君は出来ないんだ?

「こんな所で何をしている?」

胸の内にこみ上げていた歓喜は消え失せ。
再会が現実となった安堵は困惑に代わり。
軽蔑したくなるような行為に耽っていた、
蘭の困惑が見られた事以上の根深い所にある事に気付き。
俺は今言い知れぬ焦燥と不安を、ただ胸に抱いていた。

 ――これ以上、口を開いてはいけない。

 ――これ以上、蘭に関わってはならない。

心の何処かが、俺に警告を発する。

 ――やめろ、やめろ。これ以上この場にいれば。

 ――俺が俺でなくなる。だから逃げろ、逃げるんだ。

だが、何も知らずただその場から逃げ出す事にも抵抗を覚え。
俺はその場に踏みとどまった。踏みとどまってしまったのだ。

「ナニって?…ううっ、うるさいわねっ?別に何を見てもいいじゃない…。」

小声で狼狽える彼女が、俺の詰問に思わず両腕を前に構え。
その動作で、俺は気付きたくもないものをはっきりと見てしまう。
彼女の右の掌が、今どうなっているかという事に。

「…って、え?え、え?えええええええええっ?!
 そんな…。私、私…。我慢してたはずなのにっ?…ありえないっ!
 その…。違う、違うのよ早雲っ…。ナニを想像しているか分からないけど…。
 多分、貴方の思っている事は全部誤解なんだからっ…。」

俺の視線に彼女も気付き、手を拭きながら必死に自己弁護を重ねるものの。
その説得力のなさに彼女自身が気付くことはなく。

「何をしていたかどうかは、君自身の胸に聞けばいい。…それは兎も角。
 ランスの覗き見に耽っていたとは、あまり褒められたものではないな」

「わ、私がランスを監視しているのが何が悪いっていうのよ?
 ランスは私に対して責任を取る義・務が、あるんだから!」

ただ、俺は――。
興奮と羞恥に頬を赤らめた彼女の嬉しそうな表情と、
動揺のあまり呂律が回っていない彼女の言い逃れに、
彼女がランスに抱いている思いが何であるかを察し。
――俺の胸の内で、形容しがたい黒いものが侵食を始めた。

「ほう。まるで婚約者がその相手の素行を監視するかのような言い方だな?。
 だが、君のほうが勝手に彼に熱を上げているだけのようにしか、
 この俺には見えないのだが?その上、全くもって効果がない」

俺は言葉に嫌味をたっぷりとまぶして、蘭に言い聞かせる。
無論、本来の婚約者はこの俺だが、蘭の彼への熱の入れように皮肉を言う。
だが、そう発する俺の声は自分でも驚く程に。
この上もなく冷えきっていた。

「…早雲、“元”婚約者の貴方にはもう関係のない話でしょ?
 大体、貴方の方から私を捨てて去っていったのだから。
 何を今更…。私たちはもう、終わっているのよ?」

「…待て、それはどういう意味だ?」

だが、彼女から帰ってきた俺への言葉は。
こちらの理解と想像をはるかに超えていたものだった。

それは俺に浮気心を糾弾される怯えた声ではなく。
むしろ全ての非は俺自身にあるとでも言いたげな。

その瞳にはうっすらと涙さえ浮かべ、その声を悲嘆に震わせ。
俺に対しての怒りと悲しさにすら、満ちていた。

 ――俺には、そんな覚えなどない。

だが、彼女の目は理不尽な激昂や虚言を弄しているつもりは一切なく。
その言葉が真実であるかのように、むしろ怒りの目線で俺を見据える。

 ――何かが、違う。

どこかが、致命的にズレている。
違和感は増す。目の前の、南条蘭という女性に対して。
俺やランスの事を知っている辺り、蘇った代償として記憶に障害でも受けたのだろうか?
だが、俺の知る蘭とは違う、別の何かに変貌したのではないかと、そう思えるほどに。

俺やランスに対する認識が、本来あるべきものと酷く違うもののように感じた。
そう、喩えるなら。ランスが蘭の婚約者であり、俺が過去の知り合いのような。
記憶はそのままに、ランスと実際の立場のみが逆転したような。
ならば、蘭はこの俺からランスに鞍替えしたということになる。

俺の吐く息にすら、どす黒いものがこもり出す。
果たして、蘭はこれほどまでに尻の軽い、浅ましい女だったのだろうか?
それとも、俺の預り知らなかったところで。
俺がまむし油田で遭難してから、彼らが救助に向かったあのほんの僅かな間に。
ランスと蘭の間で、実は重大な関係の変化でもあったとでも言うのだろうか?

 ――わからない。全てが理解できない。

「どういう事だ、蘭…。俺にはそんな覚えなどない。
 たしかに俺と居て、君に寂しい思いをさせ続けていたのは事実だ。
 だがな。今でも俺は、君を愛している。だから…。」

「…だから何?今更私とよりを戻そうっていうの?
 ふざけないで。あの時私から、現実からも全て逃げ出した癖に。
 なにが、『俺は出来た人間ではない』よ。
 だったら、どうして格好悪くても私を強引にでも捕まえなかったの?
 どこまでも、格好付け過ぎて。結局、皆に心配と迷惑ばかりかけて。
 貴方って最後までそうだった。あまりにも、自分を取り繕いすぎた。
 だからね、もうおしまい。もう、何もかも遅過ぎるのよ…。」

蘭の言っていることは、残念ながら半分も理解できない。
何がどうなったのか?どういった思い違いがあるのか?
だが、一つだけ今の俺にも分かることがある。

今の彼女は、決して俺を受け入れないであろうという事だ。
…おそらくは、永遠に。

 ――何故だ、何故こんな出会いを奴らは用意した?

視界が暗くなる。
心身に受けた衝撃に、眩暈すら覚える。

 ――目の前の蘭は何者だ?どういうことなんだ?

狭窄した視野に、沸騰した思考。その原因は――。

 ――こんな再会なら、決して欲しくなどなかった。こんな奇跡なら…。

変わり果てた蘭と、俺から彼女を奪ったランスに対する――

 ――最初から、あるいは再会する前に死んでいてくれたほうが。

即ち、激しい怒りに。

 ――俺の中では永遠に綺麗な蘭のままで、いたというのに…。

は、はははっ…。はははははははははっ…。
そういう事か。この出会いは、そういう事だったのか…。
なんという、なんという悪辣な趣向じゃないか。全く…。

「早雲?」
『早雲?』

もう、何も聞こえない。
――その時、俺の中で。
大切なものが纏めて、勢い良く引きちぎられた。
俺は、その原因へと憑かれたように歩き進む。

 蘭(それ)は、いらない。
 もうこんな者は知らない。
 そんな現実(もの)は最初から見なかった。なかったのだ。
 ましてや死者がなお生者を惑わせるなど、冒涜でしかない。
 ――ならば。

沸騰する脳漿、煮え滾る臓腑に、打ち震える全身。
引き絞られる視線に、力まぬよう弛緩させた筋肉。

「えっ?」
『…早雲、いけないっ!』

聖刀日光の鯉口に伸びる左手に、柄に置かれる右手。
無造作に蘭へと一歩、深く踏み込む右足。即ち――。
無構・無拍子からなる、首狩りの居合抜刀。

 ――もう一度、速やかに彼岸に送り返すのが供養ではないのか?

ぶおんっ

そして俺の居合の風圧は、彼女の前髪すら巻き上げ。
目の前の空気と、その先にあるものを見事切り裂いた。

「あっ……。か、は…」

彼女が驚愕と恐怖に目を見開き、両手で喉を抑える。
だが、抑えようがそれは裂ける。もはや手遅れだ。
そして、指の間から溢れ出す―――ことのない血潮。

聖刀日光による一閃は、蘭の喉の薄皮を一枚切り裂いただけに留めた。

「あれっ…。生きて、る?」
「今はどうあれ、過去俺は一度蘭とランスに助けられた。
 その恩に免じて、君達の不義理は見逃そう」

俺は蘭に背を向け、その顔を見られぬようにして口を開く。
元恋人だった女性へと贈る、最後の言葉として。
酷く無様に歪んだ俺の顔を、
彼女の知る俺の最後の顔にしたくはないから。

「君とランスの間に、一体何があったかは知らない。知ろうとも思わない。
 君の好きにすればいい。だが、俺からも一つ言わせてもらう」

俺は溜息と共に、心の瘴気を吐き出し。
努めて感情を殺し、声の震えを抑える。

「もう二度と俺の前に姿を見せるな。今度こそ、手元が狂う」

…殺せない。殺せるはずがない。
たとえそれが死者であろうとも。
たとえ蘭が他人に心を移そうとも。
一度は自分が心より愛した女性を、自ら手に掛けるなど出来る筈がない。
だったら――。

「だが、せめて君は幸せにな。では、本当にさようならだ」

彼女の第二の生と幸福を寿ぐ事しか、俺には出来ない。
それが、この俺の彼女への思いだ。

――だが、もう限界だ。
これ以上は、込み上げる何かを抑えられそうにない。
これ以上この場にいれば、俺は、俺は…。

かしんっ

もはやそんな資格も消え失せてはいるが、せめて蘭の未来の幸福を祈り。
俺は聖刀日光を鞘に収めると、未練を振り払うように商店街を駆け抜けた。


          ◇          ◇          ◇


「そう、うん?」

私はひりつく首の皮を撫でながら、物思いに耽っていた。
早雲の言っている事は、よく分からない事だらけだ。
ただ、先程早雲が抱いた思いだけならよく分かる。

私の言葉が、早雲を大きく傷付けてしまったという事だ。
それこそ、私に殺意すら抱く程に。
それについては、申し訳がない。

私と早雲との関係は、終わってしまっているのは確かだ。
だが、私も少々言い過ぎてしまったのかもしれない。

早雲にしてみれば、久しぶりに元婚約者に出会ったらナニな行為に耽ってた挙句、
それでもそのふしだらさを注意したら逆切れされて罵声を浴びせられるなど、
一番見たくもないものであり、堪え難い屈辱以外の何者でもないだろう。

私とて、早雲のあの言いようには納得できないのだが。
それでも、せめて、せめてあともう少しだけ。
既に終わった関係とは言っても、もう少し優しくは出来なかっただろうか?
婚約者では無くとも幼馴染の友人として、親しく振舞う位の事は出来たはずだ。

私とて、あの時の早雲との別れに納得行かなかった部分はある。
その上、見られたくもない光景を見られたという屈辱感もある。

だがだからと言って、先程の態度は余りにも人として
酷すぎるものではないだろうか?

「はあ、本当にナニやってんだろ私…。」

 ――ええい、うじうじ考えるのは止めっ!

今更許してもらおうとか、ましてや早雲とよりを戻そうだとか虫の良い事は思わない。
そりゃまあ、今でも早雲が惜しくないかって言えばまあ嘘にはなっちゃうけどさ…。

だが、自分自身へのけじめとして。そして、幼馴染である早雲の為にも。
せめて最後の出会いがよい思い出として、お互いが後々にに語れるように。
先程の無礼は心を込めて謝罪し、最後をやり直すのが筋ではないだろうか?

…うん、そうよね。
もう終わった関係とはいえ、せめて別れだけは納得のいくものにはしたいから。
そうでないと、いつまでもしこりが残ってしまう。

早雲が私に殺意を抱いていようが、それは関係ない。
むしろそこまで険悪だからこそ、詫びる意味がある。

 ――だったら、彼を追いかけるしかないわよね?

私はそう思い直すと、両手で頬を叩きて気合を入れ。
早雲の後を追い、早朝の商店街を駆け始めた。

その胸に不安と寂しさ、そして早雲と出会えた事への
かすかな喜びを胸に抱いて。


【クロモン/一日目・朝】
【北条早雲@Ranceシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:聖刀日光、式神の札(多数)
[道具]:支給品一式、未確認支給品×1
[思考]基本:ゲームの破壊。その為に力を集める。
    1.もう、どうでもいい…。
    2.こんな蘭など知りたくも、見たくもなかった…。
    3.…ランスに出会ったら?
[備考]:正史ルート終了後、キャラクリ状態からの参戦です。

【南条蘭@Ranceシリーズ】
[状態]:健康(開発済み)
[装備]:式神の札(多数)
[道具]:支給品一式、未確認支給品×2
[思考]基本:こんなゲームには乗らない。後はランスだ。
    1.早雲を追いかけて、誠心誠意謝罪する。
    2.せめて、お互いに納得のいく別れだけはしておきたい。
    3.取り敢えず、色々とムカついたからランスは後でシメる。
[備考]:蘭ルート終了後、キャラクリ状態からの参戦です。

【聖刀日光@Ranceシリーズ】
大昔、日光という女性が神の力で魔王と魔人を倒せる力を得た時、その姿が刀となったもの。
魔剣カオスと対を為す、魔王と魔人を倒す事の出来るこの世でただ二振りの刀剣のうち一つ。
会話する事が可能であり、魔王・魔人・使徒が近くにいれば、その気配を知る事も出来る。




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