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キルミーベイベー



柿崎めぐは四角い檻の中にいた。
数m四方で出来た狭い檻、死の匂いが立ち込める場所。
天井には不思議なシミがいくつか付いて。
そして彼女の領土はもっぱら更に小さなベッドの上。

柿崎めぐが足を伸ばしても端には届かないけれども、
思いっきり腕を広げれば、
崖から飛び出すみたいに簡単にはみ出てしまう。

いつもここにいた。
長くは生きられないと宣告され、
父親は母親に見捨てられても甲斐甲斐しく世話をして。
そうして少女は生きながらえてきた。

けれど、違う。
ただ閉じ込められているだけ、
狭い世界で出来損ないの心臓に苦しめられて。
死ぬような苦しみを毎日のように与えられて。
柿崎めぐはいつしか生きることそのものへの不快感を抱いて。

ずっとここにいるしかない。
ここにいて、周りからは運命に
見放された悲劇の少女として憐れまれる仕事をこなし。
死ねば、きっとこの子は生まれて幸せだった、ありがとうと感謝される。

柿崎めぐの意志なんて関係なく。
少女は死ぬために生かされていた。
笑っても、死ぬのだから、
泣いても、死ぬのだから。
この心は、どこにあるのか。

死は何よりも甘美な誘惑。
一度だけ味わえる最高のショー。
天使がある日、めぐの前に現れて、
彼女は天使に殺される日を待ち望んだ。

いつの日か。いつの日か。
あの子はオニキスのように真っ黒な羽根と
宝石のように美しい手で私を殺してくれる。連れて行ってくれる。
死体も残さず、腐りもせずに、眠るように安らかに。

そんな、夢は叶わなかった。
そもそも、それは夢だったのか、
彼女は何を求めていたのか。





沈むのではなく、上がるのでもなく。
落ちるのでもなく、ただそうなるだけ。
柿崎めぐはいつも怒り、いつも楽しんでいる。
発作的な感情の吐露もすれば、
深窓の令嬢、サナトリウムで弱々しく
木漏れ日に辛うじて触れられる少女にもなれる。

今は怒りの表情ではない。
無限にからみ合った一本の感情の紐は怒りと楽を地続きにした。
けれどもめぐの心は病室のベッドに縛り付けられて、
退屈な映画を観るのを強いられた観客のようにスクリーン越しに現実を捉える。

柿崎めぐが剣を振るう、
横薙ぎの斬撃は桐山の髪を一房切り落とすだけで。
桐山はすぐさま打撃を浴びせてきた。

「おまえと水銀燈の関係は知っている。
 ローザミスティカが俺の記憶へリンクしてくれた」

逆かまぼこ頭のプラが手裏剣を投げるように桐山の手から放たれた。
柿崎めぐの目の前で、プラが爆発し、爆風がめぐを守る結界を撫でた。

「だから? 私のことを知ったから
 私のことも理解できるとか思っちゃった?
 あなた、誰かのことを思いやれば救えるとか勘違いしちゃうタイプ?
 嫌になるわよね。
 王子様王子様王子様、お姫様のことなんて少しも考えない」

かぶる猫なんていくらでも飼っている。
心はずっと小さな病室、
今にも沈みそうな病院ベッドが変わらぬ少女の領土。

「俺は水銀燈のことを知って、おまえのことも知って。
 不思議に思った。俺は、なぜおまえたちの為に闘っているんだろう」

独り言のように語りかけてくる桐山に柿崎めぐは穏やかな表情を見せる。

「期待させられたんでしょ?
 ねえ、桐山くん、あなた、私の水銀燈を死なせて。
 償いができるとでも思った?
 私が涙をためた瞳でにっこり微笑んであなたの手を取ると思った?」

胸の中で渦巻く気分の悪いもの。
嵐でもなく、津波でもなく、淀んだ沼地のような。
沼が感情の沸騰でごぼごぼと泡を立てても
頭の何処かで枯れ果てた冷静な思考野がある。

突然に誰かを攻撃したい。
突然に誰かを抱きしめたい。
どちらもできない。
父はろくに病室に来もしない。
仕事が大変だから。
おまえを生かすために働いているから。
おまえがお荷物だから、
だからおまえはパパに攻撃しないでおくれ。

「あいつさえ、いなければ――――」

柿崎めぐは桐山ではなく、
ここにいない父を想った。
父もまた水晶世界で魂となって眠りについていたけれど。

「俺は、きっと今の俺なら水銀燈と会っても従うことはない。
 あいつは、あまりにも苛烈で、破滅的すぎる」

柿崎めぐは侮蔑とともに鼻で笑った。
少女の痩せ細った掌から消失光が撃たれたが
桐山の手に収まったプラが結界を作動する。

「でもあいつに従うと決めた、何も知らなかった
 俺は、ジャンクのようだった俺はあいつの死を見て――」

「いいわ。あなたもそうなのよね。
 わたしとあの子の間に入ることなんて烏滸がましい男。
 演じることに慣れきっていて、なのに演じる自分を自覚も出来ない。
 死んでしまえば? 知ってる? 自殺は神様が最も嫌うことなのよ?
 あなたたちにはぴったりじゃない…………死ね」

「話を聞け、柿崎めぐ。
 おまえが……“柿崎めぐ”が何処にいるのか。
 俺にはまったくわからないが」

柿崎めぐは争いを知らない。
ただ与えられた力を暴れるために使っているだけ。
本能なんてわからない。あっても意識なんてしてやるか穢らわしいとすら想う。

「あいつは、笑って死んでいった。
 俺はあいつの死に顔を見て、
 きっと何処かに帰っていったんだと思った」

桐山の顔に一抹の寂しさがよぎった。
だが、柿崎めぐには関係ない。
興味もない。ただ他人事のように見つめているだけ。

桐山の命を奪おうと幾多の攻撃を仕掛けて。
雨のように消失光を落として。
彼女は自分の中にある攻撃意識が昂っていく。

「俺は、あいつが何処かへ帰っていくのを看て
 羨ましいと想ったんだ。俺も、そこに行ってみたいと想った。
 おまえが水銀燈に此処ではない、どこかへ連れて行って欲しかったように。
 俺も、遠くへ行ったあいつを追って行きたいと想った。
 だから、闘ったんだ。あいつの“願い”を叶えるために。
 あいつは俺の犬狼星だった」

柿崎めぐは勢いよく病室の壁を叩いた。
彼女が、ずっと留まっている檻の中、その壁へ拳を叩きつけた。
此処からは出られないとわかっている。
何処へ行っても彼女は病室の中で苦しみ続けるお荷物。

愛されることはない。
美しくなんてない。
壊れて、砕けて、葬儀の参列者から
おざなりのお悔やみの言葉を並べられるだけ。
忘れ去られるだけのエンターテイメント。
悲劇を求められればピエロは病室でもおどけなければいけない。


「気のせいなんじゃない?
 あの子……私の体を治そうとしていたみたいだけど。
 不思議よね。私はそんなこと頼んでいない。
 あの子の心に宿って、空高く飛ばしてくれれば満足なのにね」

「……なぜ水銀燈なんだ?」

「あの子は天使だから」

「あいつらが何をしてきたか忘れたのか?」

「姉妹の心臓を奪い合う闘いでしょう?
 不思議よね。まるで人間みたい」

くすり、と笑みを零して、
柿崎めぐは十字型の炎を掻い潜ると
桐山の胸を斬り裂く。
だが噴き出た血は地面に落ちることなく、空中で止まった。

「私の心臓は壊れているの。
 知ってるでしょ? 私の一部のくせに
 醜い赤ん坊みたいにいつも私の胸で泣き叫んでいる。
 殺してしまいたいわ……それとも、
 こんなのに生かされてもらっているのが私なのかしら?」

柿崎めぐの表情は変わらず、
しかし唐突に一撃一撃の威力が上がっていく。
前触れのない、本来ならばあり得ない変調に桐山の防御が乱された。

「健康な人の心臓を貰わなければいけない。
 でも、私はそんなの嫌。
 奪い取ったモノでのうのうと生きていくなんておぞましいわ」

「…………わかった」

肩の肉を大きく抉り取られた桐山は
柿崎めぐから距離をとって傷口を抑えた。

「おまえは……誰かの心に残りたいんだな。
 だから、水銀燈に絶望を与えようとした。
 それも、叶うことがなく、おまえは、悲しんでいるのか」

柿崎めぐの瞼が引き攣った。
口元が大きく戦慄いて、刹那だけれども柿崎めぐの瞳が揺らめいた。

「…………違う、違う、違う」

「だから、現実からは
 最も遠く見えるローゼンメイデンに希望を見たのか。
 あいつらなら、おまえを幻想の世界へと連れて行ってくれると夢見て、期待して」

錯乱したのか、激高したのか。
めぐは無茶苦茶な軌道で攻撃を繰り出していく。

「だが、俺が見たローゼンメイデンは違った。
 あいつらは、誰よりも人に深く関わっていた。
 幻想なんかじゃないんだ、めぐ。
 あいつらは、一番お伽話に遠い人形なんだ」

「あなたに、わからない!
 私が、あの子が、何なのかなんて!!
 ねえ、知ってる!? 私は水銀燈と結婚なんてする気はなかったのよ!?
 健やかなる時なんてないもの! 私はずっと病んでいるもの!!
 そうよ!! そうよ! 私は、私は――――!!」

柿崎めぐが大きく剣を掲げて振り下ろした。
膂力は魔物で例えればアースにも匹敵している。
速さなら上回っているかもしれない。

「想波の闘法は全てと一体化する己を意識することで。
 相手の攻撃も先読みできる。杉村には出来たが
 俺にはあの時、出来なかった」

影のようにするりと剣の下を抜けて
踊るように桐山は柿崎めぐの背後に立った。

「俺は、水銀燈を追いかけるまで何処にも存在しなかった。
 俺の心なんてものは認識と知覚の演算から浮き出ることはなく。
 “桐山和雄”という奴は何処にもいなかった」

柿崎めぐの背中に桐山は掌をあてた。
膜で覆われた柿崎めぐに接することは出来ない。
杉村弘樹やチャンがやるような攻撃はめぐの防御膜を貫くことはない。

「おまえの攻撃はいくら強くたって、誰のことも知らないモノだ。
 弱々しく、独善的で、どうしようもなくわかりやすい」

振り向きざまの右ストレート。
近すぎるから、無様な一撃で離すことしかできない。
桐山の頬をけたたましい音を立てて打つと、
二人の距離が数十m離れた。

めぐからは激昂の嵐は過ぎ去り
黒く長い髪と細い肩が上下するのみ。

「…………もう、いいわ。
 飽きちゃった。殺しなさいよ」

投げやりに桐山を横目で見やって、首を振る柿崎めぐ。

「そうだな。それもいいかもしれない」

柿崎めぐの背中に張り付いたプラの頭部が変形する。

「爆縮式BIM」

数㎜にも満たない近さにブラックホールが生まれた。
空間を呑み込み引き寄せる真空に柿崎めぐ、
ひいてはクリアの力に穴が開いた。

つむじ風が吹く。
吐瀉物と血と泥に汚れながらも、
辛うじて白地を残したワイシャツが目の端で駆けた。
白、病院の色。汚物に一番弱いのに
死者に合うからというくだらない理由で使われる色。

桐山和雄の手が赤い水で包まれて。
真紅の小刀になり、クリアの膜を突き破り、
柿崎めぐの心臓を貫いた。

天野雪輝に体験させられた無数の死。
あんなものはどうということはない。
子供の頃からずっと、死に近く生きていて
針の筵のように苛まれ続けていたから。

死に近づくときの痛みには慣れている。
ただ違うのは、赤い血が流れていくだけ。
めぐが身に着けていたセーラー服を赤い血が塗らしていく。

赤、血の色。
いつの間にか桐山の手は抜き取られていて。
仰向けに倒れた柿崎めぐは手足の末端から感覚が無くなっていく。

「…………あ」


そして、魂魄がひとつ飛んだ。


  【柿崎めぐ 死亡確認】

暗い、とても暗い。
瞼は開いていてか細い呼吸が断続的に残っているのに。
眼だけが何も視えずに柿崎めぐをひとりにする。
スポットライトは当たることがない。
桐山和雄がどうしているのかもわからない。

気がつくと柿崎めぐは病室の中にいた。
ベッドの上で力なく、横たわって、無気力に天井を眺めている。
水銀燈と出会うまではよくこうして時間が進むのを待っていた。

時間が進めばそれだけ死が近づくのに、
それ以外に何かをする理由が見つからず。
ため息をついて、髪をかきあげると柿崎めぐは起き上がった。

薄暗い照明、つまらなさそうに頬杖をかいて。
柿崎めぐは隣に置かれた花瓶に活けられた花を見やる。
開いた手で花びらに触れると、
切り取られて生気を失いゆく生け花の乾きがわかった。

「つまらない」

誰ともなしに呟いて、
柿崎めぐは決して出られない、この檻で暇を持て余す。

「迎えに来たわよ、めぐ」

声が聞こえた。
ぱっと柿崎めぐが振り向くと窓の向こうには
彼女の花嫁が待っていた。窓の外で、檻の外で
閉じ込められたラプンツェルを迎えに来た天使が、
不機嫌そうに口を曲げて浮かんでいた。

天使は、窓の外からめぐへ手を伸ばした。
待つ必要なんてない。伸ばされて、触れてくれるのを待たずに、
めぐは羽根が生えたように小さなベッドから飛び出して、水銀燈の手をとった。

「約束したものね」

「うん、私を、連れて行ってくれるんでしょう?」

「永遠へ。此処ではない何処かへ」

柿崎めぐと水銀燈の指が絡みあって、
二人は寄り添い合って空へと飛び立つ。
暗雲立ち込めていた雲を突き進んで。

天使の羽根はめぐを守って道を切り開く。

そうすれば水銀燈は少女を楽園へと導いて。

寄り添う二人が分けられる時も、
今はこうして右がわには水銀燈がいて。
天使の左がわには柿崎めぐがいて。

率先する天使が、先頭を進み。
花嫁達は、近くの小部屋に召され、 至福の楽園にはいる。

そこにはお伽話でしか見ない沢山の幻想達が踊り舞って、
終末の世界に生きた者はどこにもいない。
錦織の寝台の上に、 ふたりはむかいあって寄りかかる。

穢れ無き少年たちが、その周りを、
酒杯と、水差しと、泉から汲んだ満杯の杯などを献上して回り。
病むことはなく、永遠の酩酊で少女を楽しませ。
好みどおりの果物を選び、
食事も望みどおりのものを手に入れた。
秘められた真珠のように美しい色白の乙女がいて。

楽園の中、二人は、一切のくだらない話や罪な言葉を忘れ去り。
広々とした日陰と、湧きでる泉のそばにて、
果物は多く、 絶えることもなく、食べるのを禁じられることもない。

高くしつらえた寝台が、彼女らのために設えて。
楽園は、この乙女たちを、待っていた。


楽しい、幸せ、そんな言葉しか浮かばない。
柿崎めぐは愛する水銀燈とともに、
死して永遠の楽園へと辿り着いたのだ。

「…………パパ」

思いかげず口から零れ落ちた言葉。
はっと、慌てて口を抑えても、
聞き咎めた水銀燈は眠っているように
穏やかな顔でこちらへと微笑んだ。

「ごめんなさい、水銀燈。
 ただね、少しだけ、おもったの。
 私は今、とても幸せなのよ。でもね」

両手を膝の上に乗せて、目を伏せ気まずそうにめぐは言う。
彼女の楽園が、彼女の言葉によって時を止めたのには気づかず。

「――――パパも。
 ここにいてくれたらいいかもしれないのになって」

――――それが、おまえの“願い”か

水銀燈が煙のように消え失せた。
果実も川のせせらぎも、天人たちも宴の終わりのようにいなくなり。
柿崎めぐは、病室のベッドの上にいた。
初めから。ここにいた。

暗い右手が病院を壊していく。
軋み、崩れ。割れていって。
巨大な、太陽よりも巨大な右手が病室の床を砕き、
ベッドの上に座る柿崎めぐを掴んだ。

――――俺を赦すな、めぐ。

そして、彼女の居場所は壊された。





血の匂いがした。
鉄の匂いに似ていて、鼻孔を刺激し、
生ぬるい風が猥雑に柿崎めぐの体を触っていく。
空は底冷えする暗闇、夜じゃない、暴食の暗がり。

そして、何よりも耐え難いのが。

「クリアの魂魄を追い出し、
 ハルワタートを半分に割って、おまえの心臓を造った。
 これで俺とお前はリンクすることにはなるが、生きられる」

めぐの顔のすぐ横に跪き、瞳を覗きこんでいる桐山和雄。
血の匂いとドロの匂いとゲロの匂いが混ざり合って、
汗の刺激臭が悪臭をこれ以上ないものにしていた。

桐山和雄は立ち上がって柿崎めぐに背を向けた。

「俺の心臓はすでに喪われ、ハルワタートが俺を生かしていた。
 護神像が喰らう“願い”は人の魂を構成する上で最も重要なもの。
 先代所有者七原秋也の
 “願い”を高純度で喰らったそれは、七原秋也本人でもある」

桐山は心臓がある場所に手を当てた。

「今の俺は、果たして本当に“桐山和雄”なのかわからない。
 ハルワタートの”願い”インストールに俺は勝ったけれど、
 あいつの意志は果たして本当に無くなっていたのか。
 いや、そもそも本当の俺は十年前に死んでいたのかもしれない。
 おまえも、ひょっとしたら別人になってしまったのかもしれない」

柿崎めぐは茫然自失の体で空を見つめ、やがて絶叫した。
少女の絹を裂くような悲鳴。
桐山は振り向かずに立ち止まって耳を傾けている。

「どうして……どうして私を死なせなかった!?
 私が、何を求めているか知っているでしょう!!」

「だから、言っただろ」

桐山は蜘蛛の糸の残骸の山へと歩きはじめた。

「俺は、おまえを、傷つけると」

拳を強く握りしめ、めぐの瞳に憎悪と怨嗟の炎が煌々と燃え上がった。

「許さない!!」

人口の心臓がまだ馴染みきっておらず、柿崎めぐは立ち上がれない。
彼女のお腹の上でプラ周囲を警戒しているが、気にもせず。

「私の、最高の終わりを奪ったあなたを!
 あの娘との楽園を奪ったあなたを!
 絶対! 絶対!! 絶対!!!」

「なら何度でも殺しに来い。
おまえが死ぬには俺を殺すしかないからな。
自傷行為をしても、ハルワタートが欠損を埋めるようプログラミングした」

ありったけの憎しみをこめて柿崎めぐは桐山を睨みつける。

「なら、私が、あなたを、必ず――――!!」

恨みと殺意の罵倒を浴びせ、
めぐは自由にならない身で奪った者への復讐を誓う。
病んだ少女は生の道を歩みだし、
代わりに憎悪に心を狂わせていく。

未来永劫、彼の命を狙い続け、
奪われた者からの最悪の復讐を贈ると心に誓う。

こうして、ふたりの少年少女は憎しみと血で結ばれた。
永遠の憎しみの中で桐山は柿崎めぐを生かす。
救いはせずに、生かすだけで、けれども彼は無責任に言った。

「おまえにかける言葉はひとつだ」

《三銃士》にはなれず、
《鉄仮面》には戻らないと決めた世界の敵は言った。

「――――待て、然して希望せよ」


少年は永遠の憎しみに狙われ。
そして、未亡人は救われなかった。
少なくとも、今は。





だってその手は比類なき悪だから 投下順 ワイルドセブン
だってその手は比類なき悪だから 時系列順 ワイルドセブン









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