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***SS9 ピンポーン 律「こーんにーちはー」 唯「いらっしゃいりっちゃん!上がって上がって~」 こんにちは、平沢唯です! りっちゃんの家でハンバーグをごちそうになって以来、私はりっちゃんのお料理の虜になってしまいました。 今回、明後日に控えた家庭科の調理実習に備えて特訓をしたいと言って来てもらったんだけど・・・。 それはほとんど建前で、本音はただりっちゃんと遊びたかったからと、単にりっちゃんのお料理が食べたいから、だったり。 だって、憂のご飯より美味しいなんて思ったのは初めてなんだもん! 律「さて、それじゃ早速始めるか」 唯「合点です!」 ちなみに課題はご飯とおみそ汁と好きなおかず一品。 ご飯とおみそ汁はさておき・・・おかずは当然あれですよ! 唯「ハンバーグ♪ハンバーグ♪」 律「唯は本当にハンバーグ好きだなぁ」 唯「大好物ですから!」 鼻息荒く主張する私がおかしかったのか、りっちゃんが笑い出した。 りっちゃんが笑ってると、私もなんだか楽しくなってくるから不思議。 二人でひとしきり笑って、それからようやくの調理開始です。 律「まずは米だ!」 唯「実はこちらに既に研いだものがございます」 律「なんと!?」 ふふ~ん、私だってやればできるってとこ見せたいもんね。 驚いてるりっちゃんの顔を見れて私は大満足です。 律「なら次は味噌汁だな」 唯「はいっ!りっちゃん隊員!」 律「どうした唯隊員?」 唯「具はどうしましょうか!」 そう、ハンバーグにばかり頭がいって、おみそ汁の具については何も考えていなかったのです。 憂がいれば忘れ物がないかって感じで確認してくれたんだろうけど。 生憎というか丁度というか、今日はあずにゃんのおうちにお泊りに行ってるんだよね。 でも実はそれもりっちゃんを特訓という名のお泊り会に呼ぶきっかけになってたり。 事情はなかなかフクザツなのです。 律「案ずるな、味噌さえあればあとはどうにでもなる!」 唯「おお!頼もしい~!」 律「ふっふ~ん♪お、なんだわかめと豆腐があるじゃないか」 唯「決定ですか」 律「決定です」 律「とりあえずにぼしで出汁を取ろう」 唯「カルシウムだねりっちゃん!」 律「おう!見てろ澪の奴め・・・私達だってビッグになってやるんだ!」 唯「なってやるんだー!」 また二人で笑い合う。 何でだろう、りっちゃんと一緒なら、苦手なお料理だってとっても楽しいです。 律「さて、過程を省略して味噌汁が完成したところで」 唯「ところで?」 律「ねんがんの ハンバーグを つくるぞ!」 唯「きた!メインおかずきた!これでかつる!」 遂にこの時が!練習という目的も忘れて浮かれまくりです。 まさに「ふわふわ時間」。りっちゃんのハンバーグを思うと、私の心は何処へか飛んで行ってしまいます。 ・・・あれ、「ぴゅあぴゅあはーと」?まあいっか。 唯「ねえねえりっちゃん」 律「どうしたー唯?」 唯「提案があります!」 律「お、言ってみろ!」 実はさっきからずっと考えていたことがあります。 最初はりっちゃんにほとんどお任せでいっかー、なんて考えていた私ですが、今はちょっとお料理が楽しくなってきていて。 ある気持ちがむくむくと湧きあがってきていたんです。 唯(りっちゃんに私のお料理を食べてほしい・・・) こんな私でも一応女の子の端くれなわけで。 好きな人に自分の作ったものを食べてもらって、「美味しい」って言ってもらう。なんて願望もあるわけでして。 ・・・って好きって!確かにりっちゃんはいつも一緒にいて、二人でふざけあって、毎日とっても楽しいけど、決してそういう意味では! だってさっきまで二人っきりでお料理してても何ともなかったし・・・ってちょっと待って! 唯(ふ、二人っきりいいいいいいいいいいいいいい!?) あわわわわわわ・・・た、大変なことに気づいてしまったかも知れません。 律「唯?おーい唯?」 唯「ははははははい!」 律「一体どーしたのさ?さっきから様子が変だぞ」 唯「なななんでもないですよ!」 今日は、ずっと、りっちゃんと、二人っきり。 一度意識しだすともう止まりません。 きっと私の顔は真っ赤なゆでダコみたいになってることでしょう。 律「ほんとに平気か~?顔真っ赤じゃないか」 唯「(ほらやっぱり!)大丈夫!断じて大丈夫ですから!」 律「熱でもあるんじゃないのか?」ぴと 唯「ひゃあああああああああああ!」 律「うおっ!?どれだけびっくりしてるんだよ!こっちもびびったわ!」 りっちゃんの不意打ちに私の心臓は爆発寸前です。 落ち着け、落ち着け私・・・なんて必死に考えてみても、ますます頬が熱くなるばかりで。 こんなことが続いたら、私はどうにかなってしまいそうです。 律「熱はないなぁ・・・あ、さては慣れない作業で疲れたか?」 唯「そんなことはないと思うんだけど・・・」 律「大丈夫そうに見えないのが問題なんだってば。唯はちょっと休んでな、あとは私がやるから」 唯「あ・・・」 ちょっと強引だけど、とっても優しいりっちゃん。 ・・・無理矢理休憩させられちゃいました。 唯(ありがとう、りっちゃん・・・) いつの間にか治まっていた動悸は、入れ替わりになんだかあったかい気持ちを私の胸に残していったのでした。 唯(ハンバーグ、食べてもらいたかったけど・・・) 唯(お泊りだからご飯は一回だけじゃないし、まだチャンスはあるよね) 決意を新たにしてふんすと気合を入れると、りっちゃんがこっちを見て笑っていました。 目が合うとやっぱり恥ずかしくて、でも何故か嬉しくて。 りっちゃんがお料理に戻っても、しばらく目を離すことができませんでした。 こんにち・・・いえ、こんばんは、平沢唯です。 りっちゃんが平沢家に来てから、はや三時間が経過しようとしています。 その間のあれこれは前回お伝えした通りなんですが・・・ 今、ようやくりっちゃん特製のハンバーグを食べる時がやってきたのです! え、時間かかりすぎじゃないかって? いや~、実は・・・ 以下回想― 律「よっし、これで完成!ゆいー、ご飯できたぞー!」 唯「ホント!?それじゃ早速食べようよ!」 律「よしきた、それじゃ唯はご飯の盛り付けを頼む。おかずと味噌汁は私がやる」 唯「あいあいさー!」 ゆっくり休んで落ち着けた私は、だんだんいつものペースを取り戻しつつありました。 目が合ったりするとまだドキドキするけど、普通に言葉を交わすことはできるくらいに。しかし、直後に落とし穴が待っていようとは・・・ 唯「ふんふ~ん♪」 律「ずいぶんご機嫌じゃないか唯。そんなにお腹空いてたのか~?」 唯「違うよぉ。りっちゃんの作るハンバーグが美味しいから、とっても楽しみにしてたんだよ!」 律「そ、そっか・・・ありがとな」 照れるりっちゃんは可愛いなぁ・・・なんて思いながらしゃもじを持って、いざ炊飯器!と思ったのですけれども。 唯「それじゃご飯分けるよ・・・あれ?」 律「どしたー?」 唯「ご飯・・・炊けてない」 律「・・・なんですと?」 唯「スイッチ入れるの忘れてたみたい・・・」 なんという迂闊さ。お米をといだことに満足してしまって、肝心の炊飯スイッチを入れるのをすっかり忘れてしまっていたみたいです。 この時の私は、二年生の時の文化祭ライブでギー太を忘れた時よりもっとずっと申し訳ない気持ちで一杯でした。 唯「ごべんなざい・・・」 唯「ぜっがぐ来でもらっだのに・・・私、お手伝いもでぎないじ、迷惑ばっがり・・・」 律「・・・なーに泣いてんだよ」 唯「あ・・・」 りっちゃんが私の頭をくしゃっと撫でてくれました。 頭のてっぺんから全身に暖かさが広がっていきます。 律「別にお米ぶちまけたわけじゃないし、今から炊けばいいだけだろ?」 唯「でも、私りっちゃんに迷惑を・・・」 律「だから、こんなのミスでも迷惑でもないって言ってんの!」 唯「・・・りっちゃんはやっぱり優しいよね」 律「器が大きいと言って欲しいかな」 唯「ぷっ!何それ・・・あ」 律「やーっと笑ったな?」 いつの間にか、私の涙は魔法みたいにピタッと止まっていました。 もう大丈夫だな、と頭から手が離れていくのは少し寂しいけど。 律「やっぱり私はそうやって何も考えないで笑ってる唯の方が好きだな」 唯「ぶー、それは私が普段から何も考えてないってこと!?」 律「違う違う!ほらこう、無邪気な笑顔っていうかさ」 唯「それならいいけどぉ・・・」 でも、私の笑顔が好き・・・か。 テンパってたさっきの私なら勘違いして更に取り乱してたかも知れないその言葉。 落ち着いた今なら、素直に褒められて嬉しいと思うことができました。 唯「えへへ・・・」 律「なーに笑ってんだよっ?」 唯「んーん、何でもない!」 私もね、りっちゃんが大好きなんだよ――その言葉を飲み込んで。 私はただりっちゃんに笑いかけるのでした。 今はまだ、この気持ちを伝える勇気はないから・・・ ―回想終わり。 律「それでは唯さん、音頭をお願いします」 唯「う~ん・・・それじゃ、私とりっちゃんが、このハンバーグのお肉と玉ねぎみたいに、いつまでも一緒にいられることを願って」 律「何だそりゃ・・・っていうかよくそんな恥ずかしいこと平気で言えるな」 唯「駄目かなぁ・・・?」 律「う・・・こ、こんな私でよけりゃいつまでも・・・って何言わせるんだー!」 唯「ホント!?やったぁ!」 律「・・・そもそも今更願うようなことでもなかった気もするんだけどな」 唯「そうかもね、でも」 律「でも?」 唯「・・・なんでもない。かんぱ~い♪」 律「か、乾杯・・・」 こん、と互いのカップを打ち合わせて、微妙な空気の中二人だけの小さな晩餐が始まりました。 憂以外の人と二人で食べる晩御飯はなんだか変な感じです。 ましてや相手はりっちゃんなのだから、落ち着かなくてモジモジしてしまいます。 ねえりっちゃん、さっきの言葉・・・本当に平気で言ったと思う? 唯(あれが今の私の精一杯) 唯(こう見えても恥ずかしくて死にそうだったんだから) 唯「ん~、やっぱりりっちゃんのハンバーグは美味しいよね」 律「それだけ喜んでくれれば作り甲斐もあるよ」 唯「ほんと?」 律「ほんとほんと。うちの聡なんか生意気に批判しやがるんだ」 唯「批判するところなんてないくらいおいしいと思うんだけど・・・」 律「お世辞でも照れるからその辺にしといて・・・」 唯「お世辞じゃないよりっちゃん!」 律「・・・マジで?」 唯「勿論マジだよ!だって私・・・」 律「私・・・?」 そう、だって私・・・こんなにりっちゃんが好きなんだから。 りっちゃんが作ったお料理なら、どんなものだって私の大好物になっちゃう。 なんて言えるはずもなく。 唯「あ、このおみそ汁もおいし~♪」 律「・・・どこまで本気なんだか・・・」 ごめんね、私ごまかすのあんまり上手くないよね・・・なんて。 そんなこと言えたら最初から苦労はしませんよね。 漏れそうになる本音を抑えつつ、りっちゃんと二人だけの食事は続きます。 ちょっとだけ気まずくて、それでもやっぱり楽しくて。 唯「ねえりっちゃん」 律「どしたー?」 唯「りっちゃんのご飯には、人を幸せにする力があると思うんですよ!」 律「はぁっ!?お前、澪じゃないんだからポエムはやめろー!」 唯「だって私、りっちゃんのご飯が食べられてすっごく嬉しいんだもん!」 律「やめろー!恥ずかしいからやめろー!」 ふと。例の私の中の願望が頭をもたげます。 私の・・・私の作る、ごはん。 唯「・・・ねえ、もしさ」 唯「私がお料理うまくなって・・・とってもうまくなって」 唯「りっちゃんのためにお昼のお弁当とか作ったら、りっちゃんは・・・」 恐い。いらない、なんて言われてしまったらと思うと― りっちゃんに否定される、それはなんと恐ろしいことなんでしょう。 律「・・・作ってくれるのか?」 唯「へ?」 律「とびっきり美味いやつをさ。購買のパンなんか目じゃないやつ」 唯「りっちゃん・・・」 律「そもそもうまくできなくても唯が作ってくれるなら嬉しいと思うけどな」 唯「りっちゃん!」 律「・・・まあ、うまいにこした事はないし、そのためにも明日はビシバシいくからな!」 唯「うん!ありがとう、りっちゃん!」 心配は杞憂だったようで、りっちゃんは呆気なく受け入れてくれました。 りっちゃんが肯定してくれる、これほど嬉しいこともありません。 天にも昇る気持ちとはこういうことを言うんでしょうか? 唯「よーし、やるぞー!」 律「明日からな」 唯「はーい・・・」 こうして、夕食の場を借りた新たな決意表明は幕を閉じたのでした。

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