ポツンとひとり ◆1yqnHVqBO6
不意に意識に浮かび上がった過去があった。
過去というより、
それはセピア色の思い出だったけれど。
絹のヴェールに覆われて
質素な額縁に収められた大切な写真のような。
それはセピア色の思い出だったけれど。
絹のヴェールに覆われて
質素な額縁に収められた大切な写真のような。
幼い頃、愛はいつも下を向いていて、
どこに行くにもマルコの後ろをついていた。
そんな愛をマルコは心配してはいたが、
その時は幼かったから異性として意識せず。
兄貴分としてそれとなく気にかけながら気の向くまま
街を探検しまわっていた。そんな頃。
どこに行くにもマルコの後ろをついていた。
そんな愛をマルコは心配してはいたが、
その時は幼かったから異性として意識せず。
兄貴分としてそれとなく気にかけながら気の向くまま
街を探検しまわっていた。そんな頃。
「大丈夫か? ったく無理してついてくる必要もねえだろ?」
日が暮れ始め、
そろそろ帰ろうと遊んでいた山から降りようとした際。
疲れてもう歩けないと言う愛をおぶって、
マルコはてくてくと歩いていた。
そろそろ帰ろうと遊んでいた山から降りようとした際。
疲れてもう歩けないと言う愛をおぶって、
マルコはてくてくと歩いていた。
叱られていると勘違いしているのか、
愛はマルコの背で震え、消え入りそうな声で
愛はマルコの背で震え、消え入りそうな声で
「ごめんなさい」
と、何度も謝っていた。
「いや、そこまで謝るほどのことでもねえけどさ。
疲れて歩けなくなる前に今度は言ってくれよ?」
疲れて歩けなくなる前に今度は言ってくれよ?」
「……はい」
「本当にわかってんのかぁ?
ま、いっか。今日の夕飯は何かな?」
ま、いっか。今日の夕飯は何かな?」
笑いながら黄昏の下、歩くマルコ。
背中の上で泣きじゃくる愛に苦笑して問いかける。
背中の上で泣きじゃくる愛に苦笑して問いかける。
「今日は楽しかったか?」
「……うん」
「ならよし!」
うんうんと頷き、少年は足を進めた。
背中にかかる少女の重みを確かに感じながらも。
背中にかかる少女の重みを確かに感じながらも。
その時は今のままで全てが出来ると思っていた。
この短い手足でも愛を守れると信じていた。
あまり良くない頭でも愛を喜ばせることができると知っていた。
この短い手足でも愛を守れると信じていた。
あまり良くない頭でも愛を喜ばせることができると知っていた。
けれど、
ほんの少し伸びた腕では届かない物があると知り。
これだけの繋がりでは守れない時があると知り。
ほんの少し伸びた腕では届かない物があると知り。
これだけの繋がりでは守れない時があると知り。
その手を血に染めた時。
少年だったマルコは何もかもが
間に合わなかったことに絶望した。
少年だったマルコは何もかもが
間に合わなかったことに絶望した。
放送を聴いて何かが変わったということはない。
平の死は予想していたし、
金糸雀が生き残ったことも予測通り。
平の死は予想していたし、
金糸雀が生き残ったことも予測通り。
ひとつだけ誤算だったのは。
「姫様……姫様……」
うわごとのように呟きながら幽鬼の面相と
糸の切れた人形の頼り無さで足を進める小四郎の有様。
糸の切れた人形の頼り無さで足を進める小四郎の有様。
「しっかりしやがれ! 置いてくぞ!」
もはやマルコを付いていくだけの
腑抜けになった小四郎に
マルコは振り返って怒鳴る。
腑抜けになった小四郎に
マルコは振り返って怒鳴る。
こうなってしまえばもうどうしようもない。
同盟を破棄し、殺すのが当然。
同盟を破棄し、殺すのが当然。
下を向き、ぶつぶつと姫様と天膳なる男への謝罪をし、
たまにマルコに殺すことを要求するばかりの小四郎。
たまにマルコに殺すことを要求するばかりの小四郎。
「つうか、その天膳様とやらに会わなくていいのかよ」
「会わせる顔がない。あのお方は既に憎き弦之介だけでなく、
陽炎や霞刑部までも屠っておられる。
なのに、姫様を守れなかったおれが……どの面下げて会えというのか」
陽炎や霞刑部までも屠っておられる。
なのに、姫様を守れなかったおれが……どの面下げて会えというのか」
「……てめえが優勝したらその姫様に会えんじゃねえか?」
小四郎の言葉に身につまされる思いを抱いたが
それをサ悟られまいよう掠れた声でマルコは返す。
それをサ悟られまいよう掠れた声でマルコは返す。
「何を言う。死者を蘇らせる忍術があったら
今頃天下は織田のものになっとる」
今頃天下は織田のものになっとる」
「いや、それはお前の個人的考察だろうけどよ」
投げ槍な冷笑を浮かべ否定する小四郎に
マルコはうんざりして首を振った。
マルコはうんざりして首を振った。
しんしんと降る雪は未だ止む気配もなく。
本来ならばとうに抜けているはずだったが、
小四郎の歩く速さに合わせていると
移動スピードがかなり落ちてしまう。
本来ならばとうに抜けているはずだったが、
小四郎の歩く速さに合わせていると
移動スピードがかなり落ちてしまう。
ならばやはり見捨てるのがベストだろうということは
マルコも知っている。なのに未だ同盟を続けているのは。
マルコも知っている。なのに未だ同盟を続けているのは。
――ヘタレにいちいちかまってる余裕なんてないのにな。
小四郎に絶望に駆られ、
手に持つ刃で喉を貫こうとしたかつての自分をみてしまうからか。
手に持つ刃で喉を貫こうとしたかつての自分をみてしまうからか。
――治らねえもんだよこの性格。なあ、愛。
自嘲ですら胸に鈍い痛みを覚えた。
それは十分に自覚したが治す術はない、
死んだ彼女を蘇らせるまでは。
痛みは常に付き纏う、“最悪”なことに。
それは十分に自覚したが治す術はない、
死んだ彼女を蘇らせるまでは。
痛みは常に付き纏う、“最悪”なことに。
ふと遠くに目を凝らすと雪に埋もれんとしている
黄色い塊が見えた。
黄色い塊が見えた。
まさか、と思ったがマルコはたまらず駆け寄った。
雪を払って沈みかけていたそれの姿を明らかにした。
雪を払って沈みかけていたそれの姿を明らかにした。
「金糸雀」
マルコが再会したのは金糸雀。
可愛らしい衣装の袖を血で濡らし。
力尽きて倒れている小さな小さな人形。
親に捨てられた、少女。
可愛らしい衣装の袖を血で濡らし。
力尽きて倒れている小さな小さな人形。
親に捨てられた、少女。
「マ……ルコ?」
目を瞬かせながら金糸雀は
力を振り絞って弱々しい動きで顔を上げた。
力を振り絞って弱々しい動きで顔を上げた。
「また会っちまったな」
金糸雀の頭を撫でながら
マルコはおどけ半分に肩を竦める。
マルコはおどけ半分に肩を竦める。
振る舞いとは裏腹にマルコの心は冷え切っている。
腑抜けの小四郎はともかく、
金糸雀を生かしておくのは危険だ。
今なら苦しませることなく殺すことができる。
腑抜けの小四郎はともかく、
金糸雀を生かしておくのは危険だ。
今なら苦しませることなく殺すことができる。
気配を悟られないよう静かに拳を振り上げ
一直線に、金糸雀の頭を――
一直線に、金糸雀の頭を――
「もう、わかっちゃった」
瞼を閉じて、何もかもを諦めた金糸雀が見えた。
疲れきった、涙で滲んだ声がマルコの耳に届いた。
疲れきった、涙で滲んだ声がマルコの耳に届いた。
「私たちはいつだってひとりなんだわ」
マルコは腕を振り下ろす。
金糸雀の。金糸雀の――
金糸雀の。金糸雀の――
マルコは歩く。
きゅっきゅっと靴の底で雪を潰す感触とともに。
後ろからついてくるのは小四郎。
背にいるのは――
きゅっきゅっと靴の底で雪を潰す感触とともに。
後ろからついてくるのは小四郎。
背にいるのは――
「平が、死んじゃったかしら」
「知ってるよ」
「カナも、頑張って守ろうとしたのに」
「そうかい」
「水銀燈が言ってたの。
みんな、絶望するために生まれたんだって」
みんな、絶望するために生まれたんだって」
「へえ」
背に負うのは金糸雀。
拳を振り下ろし、頭を砕くその刹那。
拳を振り下ろし、頭を砕くその刹那。
マルコの心に石が投げられたように波紋が生まれ
ずっと忘れていた思い出が脳裏に浮かび上がった。
ずっと忘れていた思い出が脳裏に浮かび上がった。
拳が止まったのはそのせいか。
いいや、きっと金糸雀に利用価値を見出したからだと
マルコは自身に言い聞かせる。
いいや、きっと金糸雀に利用価値を見出したからだと
マルコは自身に言い聞かせる。
「初めて聞いたときは
ああ、またなんか変な本読んで影響受けたんだって
笑っちゃって……悪いことしちゃったかしら」
ああ、またなんか変な本読んで影響受けたんだって
笑っちゃって……悪いことしちゃったかしら」
「じゃあ、次に会ったら謝んねえとな」
「……無理、かしら。もう、死んじゃったから」
会話が途切れる。
倒れたのは負傷よりも精神的負担が大きいようだ。
何があったのかわからないが
平の首輪をとったのにも
とてつもない精神的負担を負ったのだろう。
倒れたのは負傷よりも精神的負担が大きいようだ。
何があったのかわからないが
平の首輪をとったのにも
とてつもない精神的負担を負ったのだろう。
意識を失うのにそう長い時間はかからないだろう。
「……最悪」
「……良かったじゃねえか。
あとはもう上がるだけなんだぜ。
ワクワクするだろ」
あとはもう上がるだけなんだぜ。
ワクワクするだろ」
マルコの言葉に、金糸雀は何を感じたのか
強ばっていた体を安心に緩ませ。
体の重みすべてをマルコに預け始めていく。
強ばっていた体を安心に緩ませ。
体の重みすべてをマルコに預け始めていく。
「起きたら言いたいことがいっぱいあるかしらマルコ」
「……俺もあるぜ。
けど今は休んでろよ」
けど今は休んでろよ」
そうして眠りに落ちた金糸雀を背に負って
マルコは歩く。ただ歩く。
なかで渦巻く葛藤を力任せにねじ伏せて。
マルコは歩く。ただ歩く。
なかで渦巻く葛藤を力任せにねじ伏せて。
「その人形を陥れたのはお前だろう?」
金糸雀と再会してから
ずっと黙っていた小四郎が口を開く。
ずっと黙っていた小四郎が口を開く。
「油断させるのに役立つだろ」
それで小四郎を納得させられないのは
マルコもわかっている。
マルコもわかっている。
「お前は愚かだ。
そうでなければどうしようもなく甘い」
そうでなければどうしようもなく甘い」
「黙れ」
振り返ることもなく言い放ち。
あとに残るのは雪が音を吸い込んだ後の静寂だけ。
あとに残るのは雪が音を吸い込んだ後の静寂だけ。
「理由のなんて考えんのもめんどくせえ」
馴染みのない雪を一身に浴びて。
マルコは歩く。歩く。
マルコは歩く。歩く。
かつてと比べて腕はずっと長くなった。
相手がナイフを持っていても
動じず負けないくらいになった。
相手がナイフを持っていても
動じず負けないくらいになった。
かつてと比べて足はずっと長くなった。
速く動かし永遠に走り続けられるくらいになった。
速く動かし永遠に走り続けられるくらいになった。
何もかもがあの頃とは違う。
隣にいた彼女は死に。
東南の空にはあの時、
垂らされなかった神からの糸がある。
隣にいた彼女は死に。
東南の空にはあの時、
垂らされなかった神からの糸がある。
なのに、なのに。
背負う重みをたしかに感じ。
それは喪った者の重さを埋めはしないくせに。
思い出だけは掘り起こし。
背負う重みをたしかに感じ。
それは喪った者の重さを埋めはしないくせに。
思い出だけは掘り起こし。
危うく、
目から雫が零れそうになるのを
マルコは懸命にこらえた。
目から雫が零れそうになるのを
マルコは懸命にこらえた。
【B‐2/一日目/日中】
【金糸雀@ローゼンメイデン】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(中)、気絶
[装備]:金糸雀のバイオリン@ローゼンメイデン、レーダーのレプリカ@BTOOOM!
川田章吾のバードコール@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品、 レーダーのレプリカ@BTOOOM! 首輪(霞刑部)、首輪(平清)
不明支給品2~3
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの破壊 ?
1:???
[備考]
※支給品であるファウードの回復液@金色のガッシュは既に飲み干されました。
※基本支給品×3、が放置されています。
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(中)、気絶
[装備]:金糸雀のバイオリン@ローゼンメイデン、レーダーのレプリカ@BTOOOM!
川田章吾のバードコール@バトルロワイアル
[道具]:基本支給品、 レーダーのレプリカ@BTOOOM! 首輪(霞刑部)、首輪(平清)
不明支給品2~3
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの破壊 ?
1:???
[備考]
※支給品であるファウードの回復液@金色のガッシュは既に飲み干されました。
※基本支給品×3、が放置されています。
【筑摩小四郎@バジリスク~甲賀忍法帖~】
[状態]:首筋に痣。疲労(中)、無気力
[装備]:鎌@バトルロワイアル 、人別帖@バジリスク~甲賀忍法帳~
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:どうしよう
1:天膳様に会わせる顔がない
※香川英行の名前を知りません
[状態]:首筋に痣。疲労(中)、無気力
[装備]:鎌@バトルロワイアル 、人別帖@バジリスク~甲賀忍法帳~
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:どうしよう
1:天膳様に会わせる顔がない
※香川英行の名前を知りません
【戦場マルコ@未来日記】
[状態]:疲労(中)、頭部に傷
[装備]:交換日記のレプリカ・戦場マルコ用@未来日記、
常勝無敗のケンカ日記のレプリカ@未来日記、 アムルタート@waqwaq
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:愛をとりもどす
1: 皆殺し。(まずは桜見タワーに行く?)
2:小四郎と手を組む?(見捨てるか殺すか……?)
[状態]:疲労(中)、頭部に傷
[装備]:交換日記のレプリカ・戦場マルコ用@未来日記、
常勝無敗のケンカ日記のレプリカ@未来日記、 アムルタート@waqwaq
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:愛をとりもどす
1: 皆殺し。(まずは桜見タワーに行く?)
2:小四郎と手を組む?(見捨てるか殺すか……?)
銀の鍵と青の剣を手に握り | 投下順 | そして誰かいなくなった |
銀の鍵と青の剣を手に握り | 時系列順 | そして誰かいなくなった |
トラーギッシュ | 金糸雀 | 時打ち、とまらないミニッツリピーター |
All You Need | 筑摩小四郎 | |
戦場マルコ |