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深海からの天体観測


Question、昔むかしのお話でもあり、つい最近のお話でもある男の子の物語。
      その少年はいつもひとりで周りを眺めていました。
      可能性を自ら遠ざけて、同じくひとりだった神さまと語り合っていました。
      けれども、そんなある日、世界は滅びることになりました。
      どうすることもできません、世界に寿命が訪れたのです。
      沢山の人が自分の為に世界を救う殺し合いに赴きました。
      少年も殺し合いに巻き込まれました。
      弱かった少年は、すべてを失います。
      すべてを失った少年はようやく勇気を持ちました。
      少年は世界への復讐を考えて、最後にただひとりの女の子との未来を求めました。
      少年はどうなりましたか? 世界にも、運命にも攻撃された少年は、
      涙も怒りも失って悠久の時を過ごすしか無いのでしょうか?
      ――私は、赦します。あなた達の選ぶ解答のすべてを。

Answer、識れたことだよ”お母様”、世界の敵が救うまでさ


―――――――――――。


ここまで沢山のことを忘れてきた。
三千年、現出先は宇宙の彼方も飛び越えた外宇宙。
旧き神である肉体という鎧は肉片であっても意識と生命を失わなかったけれども。

多くのことが零れ落ちていった。
三千年、
たとえばそれは観客のいない舞台でひとり喝采を叫ぶ「孤独」であったり。
たとえばそれは届かない光に向かって歩み続けられる「勇気」であったり。
たとえばそれは無意識の海で誰よりも恵まれているはずの「安らぎ」であったり。
たとえばそれは――――誇りであったり、光であったり。
ああ、最後の二つは決して持ったことがなかった気がすると神は独白する。

学生服を羽織った青年、七原秋也の姿をした護神像、NO.XX・ワイルドセブンが
内部の無限動力を動かして、圧倒的エネルギーでガッシュと雪輝の周囲を駆ける。
疾走は、今や衝撃波を伴って、雷電をも寄せ付けない嵐となっていた。
天野雪輝の目に映る世界は…………無。

理想の世界を観測者に投映する二十四面体のダイス。
トラペゾヘドロンは条件を満たせば幻想、文明問わず止まった闇を呼び寄せてくれる。
けれども、天野雪輝には何も観えない。それは、彼が観測者であるデウスだからなのか。

「ザケル!」

雪輝が呪文を唱えると隣で虚ろに立ちすくむガッシュの口から電撃が出る。
こちらの意思は無条件で従う、万能の雷電兵器。
王であるガッシュの放つ雷電は勇者ミツルの受け継いだ雷に軽々と匹敵する。

「だから何度も言ってるだろ? 遅いよ!」

光がワイルドセブンから産まれて噴き出す。
雷の閃光は標的の後ろへとすり抜けて、
ワイルドセブンは無数の弾丸を吐き出す。

ぐるりと雪輝の周りを旋回すると、
ガッシュと雪輝の周囲にはエネルギー弾が放射状に取り囲んで、撃ちだされた。
雪輝の体が力強く引っ張り上げられる感触とともに上へと飛ぶ。
首根っこを掴まれてガッシュが天高く跳躍した。

どれほど高く跳んでも雪輝の瞳には何も映らない。
無音、無明の世界で毒々しいほどに輝くワイルドセブンと、
チャンと城戸真司を引き受け。
奇妙複雑な動きをする弦で翻弄する桐山の姿だけが
夜の影法師のように浮かび上がる。

「ユッキー、訊きたいんだけどさ。
 我妻を蘇らせたところで彼女は人間だろ。
 おまえのように長くは生きられないぜ?」

「魂は循環していく。
 人柱にならない限りは」

「なら、我妻由乃を人柱に据えるということか?」

「いいや、人柱には気高さの果てに至った魂が必要だ。
 由乃の魂にはきっとその資格がきっとないと思う」

少年の顔に、かすれ、萎びた老醜が浮かべられる諦念と怨讐。

「彼女の命が絶えるときまででいい。
 三千年と山ほどの命を捨てて、
 無力な少年《天野雪輝》も捨てて!
 僕はようやく彼女との星を観られんだ!!」


術で強化されたガッシュの身体能力は雷のように速く。
音をも受け止める強靭な手足がワイルドセブンと並走する。
雷と光の鱗粉が道筋を照らし、けれども広大な闇に儚く呑まれて。

「止まって、ガッシュ。ザケルガ!」

並走から急ブレーキで止まれば自然とこちらに合わせていた相手の動きが予測できる。
左三十度。外れないはず。ここまで引きつけてからの電撃は人の反応を超えている。

「OK、川田!」

ワイルドセブンは動じない。
掌に現われたショットガンから走る弾丸が電撃と直撃すると
周囲の空間が捻じれ、乱れて消失した。

「《四宝の剣》で因果律を歪めた……
 厄介な力だよ。おまけにローザミスティカを内蔵しているんだから無限だ」

「動力無限はお互い様。それに因果律や確率の操作は、お前の得意分野、お前の力だろ?
 なあ、ユッキー。ラプラスの魔は、お前の眷属として随分と働いてくれたんじゃないか?」

「ローゼンクロイツに廃棄されたのを拾い上げただけさ。
 僕の力の数千分の一を与えただけの三月兎だ」

「え…………あれホントにお前が絡んでたの?
 おまえ、本当にまんま歴史の道標だな。あれもこれも全部掌の上ってか」

「違うよ。だったらどんなによかっただろうと思うけど」

「変なところで謙虚だねえ」

軽口を叩き合いながらの力の打ち合い。
城戸真司の炎が桐山の弦を焼き尽くして肉薄したのが見えたが、
水を産みだしたハルワタートが新たなる弦を産み出し、難を逃れた。

「…………どれが本命?」

ワイルドセブンは素知らぬ顔で銃を撃ち続ける。

「中川典子が本命かな。
 これ秘密だからね」

「そういうことを聞いているんじゃない。
 君の狙いは僕か、それとも木偶か」

ワイルドセブンは小出しに撃たれるザケルを鋼の脚で跳ね飛ばすと、
隙きのない構えを取りつつも器用に肩を竦めた。

「木偶……そうしているのはお前だろユッキー。
 なあ、天野。おまえはガッシュくんの隣に立てて満足か?」

「五月蝿い。僕が聞きたいのはそっちはこの期に及んで
 僕を救うとかいうふざけた狙いをまだ持っているのか?」

ワイルドセブンの眼がすっと細まり、
左手にはショットガン、右手には大剣を現した。
沈黙を意味する所が理解できた雪輝は奥歯を噛み締め屈辱に体を震わせた。

「救うってなんだよ。救うってなんだよ!!
 君たちは僕が、そんなにも憐れか!
 ”願い”に狂った君たちのような奴等の喰い滓でようやく神になった僕は!
 そんなにも可哀想か! お前たちが、やったくせに!!
 僕は――哀れまれるほど弱くはない! 見くびるな!!」

「俺もお前と同じく無力だったよ、天野」

「うるさい、うるさい! 」

「見くびってなんかない。お前はよくやったよ。
 俺が川田を助けた回数とお前が我妻を助けた回数なら、
 きっとお前のほうが勝ってるんじゃないかな」

そうだ、とワイルドセブンは重心を低くして、踏み込みを深くする。

「お前は、もしもの俺だ。無力のままで、誰も助けてくれなかったら。
 俺も、お前のようになっていた。
 だから。俺は、お前の目を覚ます」


そう言ってワイルドセブンは速度を解放した。
光の速さ。物理法則に従えば膨大なエネルギーが放出される速度でも
この空間内では審判に関する化学と物理は極めて歪んだ形で適用された。

速い。亜光速どころではない。ガッシュの目にも追いきれるかどうか。
けれども、大丈夫だ。この速さでもなお、すぐには攻撃してこないならば
それは即ちガッシュの反応速度と戦闘力を追い越せるものには至っていないということ。

天野雪輝の狙うは捨て身の必殺。
この身を敢えてさらけ出し、的にすれば敵はこちらを狙うだろう。
甘ちゃんであるこいつらにはできるはずもない、操られた者を殺すなどと。

ラウザルクは使えない。
身体能力の上昇は魅力的だが術の併用はできないのだから。
雪輝の生命を断つには近距離から渾身の一撃をまともに浴びせる必要がある。
ならば走り、すり抜けざまの斬撃では足りない。

故に相手が力む、その瞬間を狙う。
引きつけ、こちらの生命を差し出してからのバオウ・ザケルガ。
キャンチョメが行使したものとどちらが上かは問題ない。
王の雷電は、容赦しない。

無意識の海にもアクセスできる
時空王デウスならば魂の縛られた人形相手に
以心伝心の連携をとることができる。
捕捉から攻撃へのタイムラグは最小限。

勝てる。

桐山がチャンと城戸真司を相手に立ち回りを演じている。
チャンの練り上げられた必殺の一撃が突きとなって桐山の頬を掠める。
だが桐山はその突き出された腕を取ると相手の力を利用して手品のようにチャンを回す。
受け流した瞬間をも隙となるのが乱闘。
城戸真司が炎を篭手に装着した発射口より吐き出す。
だが炎はハルワタートの水に掻き消された。

「ガッシュには兄がいたんだ」

風を切る轟音とともにワイルドセブンの声が微かに聞こえる。

「ずっと憎みあっていたけれど、ようやく分かり合えた兄がいたんだ」

「……僕の父さんだって、そうだ。僕と分かり合えた次には殺されたんだ」

「それで、お前は何もかもを恨んで救おうと思ったんだよな」

じゃあさ、とワイルドセブンが現われたのは桐山の隣。
ワイルドセブンの手が強く握りしめられると、
応えるように指の隙間から雷光が溢れだした。

「ローザミスティカは無意識の海やnのフィールドに通じている。
 お前が、魂魄を《因果律の大聖堂》を模した空間に安置していたのは掴めた。
 俺達は、殺し合いの間、ずっとデウスがやるような無意識の海への通路を探していたからな」

桐山の人差し指と中指の間に一枚の羽が挟まっている。
黒い、烏よりも艷やかで深みのあるオニキスの色。
誰かの羽根。それはきっと、天使の羽だった。

「第二作目。《天使の剣、あるいは黒の長剣》」

黒の羽根に複製された瓜二つの羽根が何枚も集まって、
それはやがて一振りの柄から刀身まで黒色の剣へとなった。

「おまえに奪われた奴が復讐したいってよ」

銀光にワイルドセブンの体躯が呑まれていく。
雷がジグザグに彼の周囲一メートル内に落ちていき。
頭上を雷の天蓋が覆っていく。

「借りるぜ――――《雷帝》ゼオン!!」

ラウザルクが使われた。
革命家の刃、銃身、全てが電撃を帯びていく。

「桐山、あいつの視界を奪え!」

「オーケイ」

桐山が腰だめに長剣を構え、剣が闇に溶けていく。
実際は天野の目にそう映るだけなのだけれども。
それでも、一瞬だけ雪輝は相手の攻撃を予測するのに手間取った。

横斬り、めぐの花嫁の羽根が威力と風を切る力に負けたように。
剣が解けて、無数の羽根の嵐になっていく。
雪輝の視界がまぶしい黒に覆われた。

「は、ははっ! やっぱりそうなるんだ!
 七原さんだって僕を復讐で討つつもりなんじゃないか!
 それでいい! それでいいんだ!」

「違うって…………のっ!」

後頭部に衝撃が走る。つんのめって前に転びそうになりかけ。
天野雪輝は後頭部に手をやると大きく膨らんだ、たん瘤があった。

「……なんのつもりだ!」

「いや、俺じゃないけど?」

「そんなわけないだろっ! 小学生みたいなごまかしをするな!」

雷土を纏い機動力を急激に押し上げたワイルドセブン。
墨色に染まった世界で小出しに雪輝を殴り、また離れていく。
狙いがつかめない。
デウスをヒットアンドウェイなどという小賢しい戦法で弑せると思っているのか。

雪輝の頬が強く殴られた。
しかし、姿はつかめない。
桐山は静観しているのか、微動だにしていない。

「君は何のつもりで僕の行く手を阻む! 七原秋也!」

「それはだな」

すぐ側に、七原が全てを照らす光とともに走ってきた。
時空王天野雪輝の目にもようやく捉えることができた。
近づき過ぎている。対応できない。
ガッシュに命じればこちらもろとも雷に焼きつくされる。
ならば、どうするか。どう――――

「おまえを、ぶん殴る!!」

ワイルドセブンが目の前に現われた。速い。
予想外の出現地点。天野雪輝の目の前。
攻撃を繰り出そうと拳を振りかぶっている。そこまではわかっても、
込められたエネルギーが雪輝を殺すには至らないと直視のみで理解できる。

けたたましい音が雪輝の頬を打った。
衝撃で雪輝の鼻から血が噴き出し、歯が何本も飛んだ。
それでも、雪輝は死なない。

そしてガッシュは虚ろな瞳のまま、
ワイルドセブンの命を刈り取る一撃の隙のみを
狙うよう指示していたため動かない。

胸元の襟をワイルドセブンに掴まれて再度、殴られた。
また殺すほどの攻撃ではない。何のつもりなのか、
雪輝の脳を無数の疑問符が飛び交い、頬を突き抜ける衝撃が思考を揺さぶる。

衝撃を逃がすことはない。
吹き飛ぶ雪輝をワイルドセブンの腕が引き止めて逃さない。

「さあ、どうするユッキー。
 ガッシュの助けを呼ぶかい?」

ワイルドセブンが暗闇を一息に晴らした。

「七……原……!」

「誰かを呼ぶかい?
 援軍気取りで、人形を召喚するかい?」

チャンと城戸真司がワイルドセブンを阻もうと駆けてくるが
桐山が足止めをして阻んだ。

「なあ、天野ユッキー。
 今のおまえの手にはすべての魂へのアクセスがある」

「ガ……ガッシュ!! 僕もろとも雷電を打て!
 僕の暗がりに賭けて! その勇猛な雷鎚で希望を滅ぼせ!」

ワイルドセブンと天野雪輝に雷が降り注ぐ。
ローザミスティカ7つがエネルギー源といえども決して絶対のボディではない。
襟を掴み上げられ、釣り上げられた姿勢のままに雪輝は雷剣に打たれ続ける。

痛み、体を傷つけられる感覚。生があるからこその衝撃。
神になれば恐らく著しく失われるのだろう、
それはワイルドセブンによって鮮明に呼び起こされていた。

「どうしてだ。ユッキー?
 今すぐにでも会いに行けばよかったじゃないか。
 何を恐れているんだ? 彼女の声を聞くのが怖いのかい?」

「違う…………」

「なら喚んでみろよ。さあ、さあ! さあ!!」

「城戸真司! チャン! 桐山は放ってこいつを壊せええええ!!」

「させないぜ? もういっちょ! ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

金色の雷の嵐の中で、蒼い雷がワイルドセブンの指先から疾走する。
行き場はワイルドセブンの背後、桐山の持つ剣へ。

「使うぞ、芦川。
 ――1ジゴボルトの雷斬撃!!」

逆手に持ち替え、背後へ剣を構え。
重心を低くした桐山の黒い剣に蒼い雷が纏い付く。
亡者に貶められた魂も、人形も、マエストロの翼がくるんで、
肉体という檻から魂を剥がしていった。

「な……そんな……ちくしょうっ!
 君たちはいつもそうだ! 
 わけのわからないやり方で平然と僕の予想を超える!」

「君たち君たちっていつまでも他人のふりしてんじゃねーぞ、天野。
 ズルだの何だのなんて。今のおまえにはブーメランにも程があるだろ!!
 これが、おまえが踏みにじった奴らの拳だ。
 北岡さんは面倒臭がって来なかったけどなあ!」

ワイルドセブンの拳に炎が宿った。
灼熱に燃焼する真っ赤な炎、ウマゴンの炎。
燃え盛る革命家の握り拳に集まる火炎は太陽に見えた。

「意識の底で、あの子に会ってきな!」

顔面へと真正面から太陽が落ちてきた。
雪輝の視界が光に燃えて、暗がりよりも眩しく。
時空王の意識を燃やし尽くして。


………………………………………………………………………………。


落下している感覚。
どこまでも落ちていく浮遊感に通じる心もとなさ。
気絶。意識の喪失。死がなくとも意識の喪失というのはありえたのかと
雪輝の冷静な部分が自己認識した。

落ちていく。深く、深く。
体も冷えていき、光にも遠く。

雪輝に触れたのは、灯り。
三千年を超えて、久しく忘れていた誰かの自分へと向けられる感情の熱。

「……やめろ」

悪夢にうなされるように、雪輝はその光を遠ざけたいと思う。

「来ないでよ。まだだ、まだ君には」

けれども、雪輝の訴えに関わらず光は想いを運んでくる。

――ユッキー

魂の言葉は短い。
色と僅かな感情の結集の発露にしかならない。

「やめて、そんなのはズルすぎるよ!!」

耳元に彼女の声が聞こえた。

――もう私を追いかけないで

「やめてくれええええ!!」

声の限りの絶叫。
落ちていく彼の悲鳴を聴く者はいない。
ただ、彼女の魂魄だけしか。

三千年の“願い”。彼女と観る星。
彼女、愛する我妻由乃がそれを望まなければ、
呆気なく破綻してしまう。

「どうしてさ……
 ずっと、何を言っても。君は、僕を追いかけてたのに……!
 僕が追ったら、追うなっていうのかよ、君は……!!」

右手を胸元に当てれば、そこには暖かな温もりがあった。
視線の焦点を胸元よりも、もっと遥かに遠い足元に。
いいや、頭から逆さになって落ちているのだから、
正確には頭上を、天井を、空を、宇宙を見下ろした。

そこにあったのは天野雪輝が殺し合いにて集めていた魂魄の安置所。
デラ・ルベシの崩壊にて無意識の海に散らばった無数の魂魄が織りなす空間。

「これは――」

雪輝は思わず目を奪われた。
無数の、熱く燃えて、光り輝き。
彼女の魂魄が寄り添う中で見上げる天の海。

色とりどりに瞬く、美しさは、天野雪輝がはるか昔に失った輝き。

「そうか」

天野雪輝の瞳から、三千年ぶりに涙が零れ落ちた。
失い、忘れたはずの感情がこみ上げてくる。

涙が空へと還り、雪輝は悟った。

「“願い”が……叶ってしまった」

呆然と呟く彼に。
我妻由乃の魂魄がそっと瞬き、雪輝の心を少年に還していった。

「僕は――――なにひとつ忘れていなかったんだ」

因果を司る神に忘却はありえない。
けっして、すべてが心から去ることはない。
ただ、自ら手放していただけ。

「ずっと、もう無理だと、みんなを遠ざけて。
 あの頃から時間が止まっていたのに。
 過ぎ去ったものだと思い込んでいて」

天野雪輝は、我妻由乃の魂魄を空に手ずから還す。
卵のように誕生を待つ円球が星の海、星の五月雨、星の花畑に行く。

「――――僕が、間違っていた」

顔を手で覆い隠し。天野雪輝は敗北を認める。

「僕は――――いつでも自力で救われることができたんだ」

そうして、雪輝の意識は再覚醒した。


………………………………………………………………………………。


理想の世界は消えていた。
いるのはワイルドセブン、桐山、天野雪輝のみ。
魂を縛られていたゾンビも解放されて。



「君たちの勝ちだ」

涙を拭って雪輝は言う。

「トラペゾヘドロンに僕の核を共鳴させれば、
 僕が隠していた女神の玉座への道が開ける」

雪輝の掌の上で《函型二十四面体(トラペゾヘドロン)》は惑星のごとく自転して。
《時空王》の核と共鳴し、篝火に燃やされる祭壇の印象を与えた。
そして、核の共鳴が雪輝の存在を砂時計の歩みと同じ緩慢さで削いでいく。

「ユッキー……」

「何さ、その顔は。
 …………僕は、もうダメだ」

そう言って天野雪輝はワイルドセブンの手を握った。
束の間の握手。穏やかな笑みを浮かべて、
天野雪輝は《四宝の剣》に因果を司る力を分け与えた。

「行きなよ。僕は、闘う気力が無くなった」

天野雪輝の背後の空間に裂け目が現れて、
縦に開くと向こうには一つの巨大な建築物を取り囲んで聳え立つ螺旋階段が。
天野雪輝の体が少しずつ罅割れて、岩石が風化しように、少しずつ表面が剥がれていった。

「天野……?」

桐山が天野雪輝の変化に声を上げたが雪輝は首を振るだけ。

「君たちは“願い”を叶えに行きなよ。
 僕は、君たちが、人が何をしようとすべて構わない。
 救いたいなら救えばいい。
 滅ぼしたいなら、そうすればいい。」

天野雪輝は瞳を閉じて、消え失せた両足には意識せず。

「僕は、ずっと世界の奥深くで。
 すべてを見守ろう。もう、満足してしまったから」

でも、と天野雪輝は胸元まで消えていったが
震える口元で、最後の言葉を告げようとした。

「都合の良すぎる望みだけれども。
 何千年の後の世界でも、彼女の魂が。
 いつか……あの子が、僕を見つけることを――」

「おまえが、迎えに行けよ。
 向こうが忘れてるなら、思い出させてやれ」

ワイルドセブンの、言葉に天野雪輝は大きく目を見開き。
そして、満面の笑顔を浮かべ。

「由乃は、いつも強引だったんだ。
 だから、そうかもしれない。僕も、彼女に――――」

世界の復興まで眠りにつく神が最後に思い返したのは。
初めて少年、天野雪輝が《時空王》デウスに巡り会った時。




――そうか、デウスも






    「君は誰?」

    何も知らない、些細な事で傷ついていた。少年だった頃。
    いつの間にかそこに至って、大きな神に初めて会った。
    崩れ落ちそうな鳥の髑髏の仮面をかぶり、
    ハンプティ・ダンプティの玉座に腰掛けた因果律の神。

     「私の名は――」





――きっと、誰かに見つけられて、嬉しかったんだ




         【天野雪輝 ゲーム退場】




―――――――――――――。



「行ったな」

「ああ」

雪輝が去った世界で、最後の場所、女神のおわす玉座を前に。
少年と彼のドールは螺旋階段へと赴かんとする。
ゼオンとシュナイダーの魂魄はもうない。
あとはもう、進むのみ。

けれど、

「……おい、どういうことだ?」

桐山とワイルドセブンの背後でゆらりと立ち上がったのは柿崎めぐ。
繰り返される死の痛みに顔中が引き攣り。
血色の悪い細い手足が薬物中毒者のようにぶるぶると震えていた。

『AAAAAAAA――――!!』

柿崎めぐの放つ鬼気は、
雪輝の手に封じられたはずの《消失》のもの。
魂の花嫁、そんなフレーズが桐山の脳裏をよぎった。

「おまえが行け」

有無をいわさずワイルドセブンを空間の裂け目内へと押しやって。
桐山は柿崎めぐと相対する。

「おまえ――本気なのか?」

返答は霧山から放られたコイン。500円玉。

「“あの時”に言えなかった言葉だ。
 カウンターパンチだ。決めてくれよ、七原」

口元に不敵に思える笑みを浮かべて
桐山はワイルドセブンへ完全に背を向けた。

「アンコールだ。応えてくれるんだろ、ロックスター」

ワイルドセブンは投げられたコインを確かに握りしめて。
少しの逡巡のあと、顔を上げて言った。

「ありがとう、桐山」

「ああ、さよならだ」

そうして、彼らは別れ、
午前零時のままの時計は秒針が少しずつ動き出した。




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