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梓「どうかしましたか?」

澪「いや……」ペラペラ

澪(おかしい。このノート……)ペラペラ

梓「……?」

澪(どこのページを見ても男の人の…………………ことについて載ってない)ペラペラ

澪「……梓」

梓「なんですか?」

澪「授業でその……身体のこととかで男の人のことについてもやったよな?」

梓「……?」



梓「『おとこ』ってなんですか?」



澪「いや……男は男だろ?」

梓「……? その『おとこ』というのは保健の授業で習うんですか?」

澪「……」

澪(まさか……いや、嘘だ……そんなわけ……)


梓「もう一度聞きます。『おとこ』ってなんですか?」



澪(この世界に『男』はいない。
  いるのは『女』だけ。
  歴史の教科書を流し読みしてみたが、男性などどこにも載ってない。
  歴史上の人物はみんな女になっている。
  その関係で発達しなかった技術や、逆に発達しすぎたものもあるみたいだ。

  さらに性別がないのに、どうして人は繁殖できるのかというと……ああ、恥ずかしい!
  なんだかよくわからないが、『受け』や『攻め』など先天的に遺伝子に刻まれた染色体?
  なんだかよくわからないが、とにかくなんだかイロイロとあるらしい。
  ひとつ確かなのは、女性どうしであるためなのか、わたしが知ってる世界よりも人口はかなり少ない。
  妊娠する確率が極めて少ないらしい。
  ほかにもイロイロあるけど、とにかくわたしの世界とはかなり異なっている)

澪(そう……世界がちがう……)

梓「……なんだか澪先輩、様子がヘンですけど……」

澪「いや、大丈夫だ……なんにも。
  それよりジュース、おかわりするか?」

梓「それじゃあもう一杯、いただいてもいいですか?」

澪「わかった」

澪(もしかしたら、わたしは『パラレルワールド』に来てしまったのかもしれない……)



澪(聡の代わりの律の『妹』の件も、それなら納得できるし……)

梓「それで澪先輩、わたしに話ってなんですか?」

澪「……」

澪(どうやって話したら信じてもらえるのかな……)

梓「澪先輩?」

澪(というか、はたして梓はわたしのことが好きなのか……もし好きだったら危険だし……)

澪「あ、あのさ、梓……」

梓「なんですか?」

澪「あ、あ、梓は……わたしのこと…………スキ?」

梓「……声が小さくて聞こえないです」



澪「だ、だから……梓はそのー……わたしのこと、みんなみたいに……好きなのかなあ、って」

梓「…………」

澪「梓?」

澪(ま、まさか……!)

梓「わたしは澪先輩のこと、好きですよ?」

澪(終わったー!!)



梓「あ、でも勘違いしないでくださいよ?
  べつに女として好きってわけじゃないですからね?」

澪「え? そうなの?」

梓「はい」

澪「本当に本当に本当にか?」

梓「だったら澪先輩のことおそってるかもしれませんよ」

澪「…………」

澪(信用していいのか?
  しかし、どっちにしようどうすることもできないしな……)

澪「あの、さ。
  梓、今からわたしはヘンなことを言う。でもそれは冗談でもなんでもない。
  わたしは真剣に話す」

梓「はあ……なんですか?」



澪「簡単に言うと、わたしはべつの世界の人間かもしれないんだ」

梓「……」

澪「いや、まだ完璧に確信があるわけじゃないんだけど、わりとこの考えはあってるんじゃないなって思うんだ」

梓「……」

澪「さっき、わたし『男』って言うのについて話しただろ?」

梓「しましたね」

澪「わたしの世界には『男』っていう異性……ああ、なんていうか、わたしたちとよく似た、けれどちょっとちがう生き物がいるんだ」

梓「はあ……」

澪「ほかにもイロイロある。たとえば……」


澪(わたしは時間をかけて、丁寧に梓にパラレルワールド説を話してみた。
  その結果は……)

梓「うーん、なるほど」



澪「信じて、とは言わない。
  ただ、頭の片隅にでも留めておいてくれるだけでもいいんだ」

梓「いえ、信じますよ」

澪「そうだな。なにを馬鹿なことをしゃべってんだと思うかもしれない……って、信じてくれるの?」

梓「はい。澪先輩はそんな冗談を言う人ではありませんし」

澪「でも、かなり突拍子もない話しだと思うんだけど……」

梓「逆に突拍子なさすぎて信頼できます」

澪「梓……」

梓「まあ、単純に面白そうだなあとも思いますしね」

澪「そ、そうか……」



梓「でも、仮にここが澪先輩にとってパラレルワールドだったとして、どうするんですか?」

澪「どうするって?」

梓「いや、帰ろうとはしないのかなあと思って……」

澪「帰りたい! 絶対に帰りたい!」

梓「そんなに必死にならなくても……」

澪「だって……」

梓「やっぱり澪先輩の知ってる皆さんとは、なにかちがうんですか?」

澪「全然ちがうよ。まず、わたしは同性に襲われた経験なんてないし……」



梓「へー。澪先輩ならどこへ行っても、もてもてかと思ってましたけど……」

澪「みんな、わたしに対してあんな恐ろしい好意を剥き出しになんかしてない」

梓「へえ」

澪「本当に別人みたいだ」

梓「でも……」

澪「え?」

梓「人を好きになるってことには、なんらかの変化がツキモノだと思いますけどね」



澪「……たしかに、それはそうかもしれない」

梓「いえ、そんなに深く考えないでください。
  わりと軽いノリで言ったんで……」

澪「そうか……」

梓「そういえば、わたしはどうなんですか?」

澪「どういう意味?」

梓「だから、みなさんの性格が澪先輩の知っているものとちがうんでしょ?
  わたしはどうなのかなあ、と思って出てきた質問なんですけど……」

澪「梓は……特に。
  いや、若干ちがう気がしないでもないけど……まあそれほどは」

梓「そうですか」



澪(なんだか安心してるように見えるけど、気のせいかな……)

梓「それより、これからどうします?」

澪「……どうしような」

澪(なにか手がかりみたいなものがあればいいけど。
  起きたらもうワケのわからない状況になってたし……)

梓「なにか手がかりはないんですか?」

澪「正直、浮かばない」

梓「澪先輩はいつ頃から、自分の身の回りがおかしいって気づいたんですか?」

澪「いや、目を覚まして初めて気づいたから……」



梓「寝て、起きたらちがう世界にいたって……本当に漫画みたいですね」

澪「はたから見たらそうかもしれないけど、わたしは真剣だ」

梓「うーん、じゃあ……どこで目を覚ましたんですか?」

澪「え? えーと、律の家……かなあ?」

梓「律先輩の家のどこなんですか?」

澪「……えっと、律の部屋だったかなあ……」

澪(なんだか律とのこと思い出して恥ずかしくなってきた……)

梓「わかりました。律先輩の部屋に行きましょう」

澪「どうして!?」



梓「それはだって、一番最初に目が覚めた場所なんですから、手がかりがありそうじゃないですか」

澪「……そう、か?
  いや、たしかにそうかもしれないけど……」

梓「……?
  どうしたんですか? 顔が赤いですよ?」

澪「べ、べつになんでもないから!」

梓「とにかく、一旦、律先輩の家に行きますよ!」

澪(ううぅ……さっき、あんまりよくない感じでわかれたからなあ……)





ピンポーン


梓「すみませーん。ごめんくださーい」

澪(頼む。今だけ留守にしててくれ!)

梓「誰かいませんかー」

澪「梓、誰も家にいないみたいだし帰らな……」


ガチャ


 「はーい、なんですかー?」

澪「……あ」

澪(律の……『妹』)



 「あ、澪ネエ……と、たしか姉ちゃんの後輩の人だっけ?」

梓「はい。突然ですみませんけど、律先輩はいますか?
  少し律先輩の部屋をのぞかせてほしいんですけど」

 「ああ、ごめんなさい。姉ちゃん、さっき出かけちゃったんだよね。
  なんだかすごいウキウキしながらさ」

澪「そうなのか、じゃあ、帰らなくちゃ。
  なあ梓?」

 「あ、でも澪ネエなら姉ちゃんの部屋に入っても大丈夫だと思うよ」

梓「じゃあせっかくなんで上がらせてもらいましょう」

 「どうぞ、どうぞ」





梓「なにか手がかりみたいなのはありそうですか?」

澪「いや……特にこれと言って……」

澪(ていうか、勝手に許可かなく人の部屋に入るのはどうも……。
  律の部屋とは言え、少し良心が痛むな……)

梓「なにか律先輩とあったんですか?」

澪「え?」

梓「妙にこの部屋に来てからソワソワしてるから言ってみただけです」

澪「ああ、ちょっとな。
  目が覚めて……その、いきなり裸で目が覚めて、それで気が動転して……。
  なんだかイロイロ話してたら律を泣かせちゃったみたいで……」

梓「そうだったんですか」

澪「そうなんだ」

梓「でも、いいじゃないですか。
  今は律先輩も気分がいいらしいみたいですし」

澪「うん……」

澪(なにかあったのかな、律のヤツ……)



梓「それで。本当に手がかりはないんですか?」

澪「ない、みたいだ。
  うん、特にこの部屋にはないみたいだ、手がかりは」

梓「長居するのも気が引けますし早めに出ましょっか?」

澪「うん、そうだな」





梓「どこかに手がかりはないんですかね?」

澪「梓、無理してわたしに付き合わなくてもいいんだぞ?」

梓「いいですよ。今日は比較的時間がありますし」

澪「そうか……そうだ」

梓「なんですか?
  なにか手がかりに思い当たりでもあるんですか?」

澪「いや、梓に聞きたいな、と思って。
  こっちのわたしはどういう人間なんだ?」

梓「澪先輩のことについてですか。そうですね……」



梓「まあイロイロとウワサの多い人ですね。
  軽音部の人、全員と関係をもっているとか。
  あとファンクラブの人たち全員と乱交パーティーをした、とか」

澪「…………」

梓「一部のウワサではセックス依存症なのでは、とも囁かれています」

澪「…………」フラーリ

梓「……ととっ、大丈夫ですか?」

澪「ごめん、梓。少し目まいが……」

梓「そうですか。まあ悪評が多い人ですからね
  運動もできるし勉強もできるし、ファンも多いんですけどね」

澪「そうか……」



梓「澪先輩はそういうことをしてるんですか?」

澪「すくなくともわたしはしてないからな!」

梓「そんなに強く否定しなくても……」

澪「いや、べつの世界とは言え、自分がそんなふうになってると思うと……ん?」

澪(あれ? じゃあ……どうなるんだ?)

梓「とりあえず、澪先輩」グイッ

澪「な、なんで腕を組むんだよ?」

梓「いいじゃないですか。わたしの知ってる澪先輩はかなり冷たい人ですから
  たまにはこういうのも、ね?」

澪「……わたしの知ってる梓はこんなふうに腕を組んだりしてくるヤツじゃないな……」

梓「……じゃあやっぱり別人なんでしょうね」



梓「せっかくですし、喫茶店にでも入りませーか、澪先輩?」

澪「喫茶店? まあ、目的地もないしべつにいいけど……お金がない」

梓「あ、サイフはもってなかったんでしたっけ?」

澪「うん……こっちのわたしの部屋にもなかったし」

梓「いいですよ。せっかくだからおごらせてください」

澪「いいのか?」

梓「いいんですよ。澪先輩と出かけるなんてそんな機会はそう、ないでしょうし」


4/6