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**さあ歌え。妹讃歌だ。 ◆1yqnHVqBO6
ミツル……芦川美鶴の妹である芦川美鳥はとても優しい女の子だった。
花を愛し、両親を愛し、兄を愛した。そして何より人の笑顔を愛した。
そんな優しい少女も悲劇と呼べる運命により死んでしまった。
最愛の妹を喪った悲しみから、兄である美鶴は旅人ミツルとして多くの屍を築き。
その果てにある勝者の褒美を願った。
彼の願いを叶えるためのバトルロワイヤルは荒野に囲まれた墓地から始まる。
大きな月が彼の金髪を照らし、不思議な色合いにする。
彼が身に纏う魔術師のようなローブは場所も相まって
着用者をさながら時の流れから離れた賢者のように見せていた。
だが月明かりに照らされた荒野の墓地に立つ魔術師である少年は
叙事詩にでも出てきそうなその外見に相応しい悟りを持っていない。
胸にあるのは善悪を超えた欲求。
運命を変えたいという身のほど知らずとすら呼べる激情。
多くの者はその胸の内にある思いを知ればこう言うだろう。
子供の戯れ言。悲劇を嫌い幸福のために他の生命を犠牲にするのか。
運命を受け入れ強く生きよ。
それに対して彼はこう答える。言葉に出さずともこう思う。
反吐の出る綺麗事だ。そう言う貴様達は何だというのだ。
願いのために戦うことを放棄し甘美な自己犠牲というイデオロギーに陶酔しているだけではないか。
それはごく僅かな一握りの勝者が大勢の敗者に与えた慰めという優越感を帯びた詭弁に過ぎないというのに。
良いだろう。ならば永遠に「諦観」や「妥協」を
「納得」というさぞかし耳触りの良い定義に変えて悦に入っているといい。
彼は悟りを開いた賢者の如き知性を持ちあわせることはできない。
幻界を生きる旅人のミツルは少年である己の精神性も肯定する。
いつの時代も世界を変えてきたのは若い力だ。
自分達のような少年がハングリーさを無くして誰が世界を変えるというのか。
少年は思う。仲良く並んでいる二つの墓を前に強く強く思う。
『芦川美鳥』
『ゾフィ』
わがままでいい。達観するにはまだ早すぎる。
北東から微かにだが爆発音が聞こえてくる。
もう戦いを始めた者がいるのだろう。
彼は何も信用しない。
神ですらその限りではない。
願いを叶えるという言葉が本当なのならば
彼は迷いを心の奥底で塵となるまでに押しつぶし、修羅の道を歩もう。
だが今はまだ判断するのは早計に過ぎるというもの。
かつてのルールでは玉と呼ばれるアイテムを五つ集めると願いを叶えてくれるというものだった。
多くの旅人が導師の言葉を信じ戦いに身を投じた。
ミツル自身もそうだ。だが現実は更に過酷だった。
ようやく手に入れたと思った五つ目の玉は目の前で砕け散り、
ゲームには裏のルールがあると知った。
そして、願いを叶えるためには幻界という一つの世界を丸ごと犠牲にしなければならないという。
ならばこの戦いはどうだ? 本当に最後の一人になれば願いは叶うというのか?
そもそも異世界同士の境界線を造り直すというあの儀式はどうなったのだ?
彼はもう二度と目前に餌があると盲信し走り続ける駄馬になる気はない。
あれほどの屈辱を味わう気は毛頭ない。
今求めるべきは情報だ。自分以外にもルールの裏側を知っているものはいた。
この戦いでも何らかの有益な情報を持っている者は多くいると見て良いだろう。
事実、あの“虚”のような影自身、彼の関係者が殺し合いに参加していることを仄めかしていた。
情報は鍵。例え頭を垂れ、尻尾を振ってでもその関係者とやらに取り入る必要がある。
そして得たモノをゆっくりと吟味した後、研いでいた牙で喉元を噛みちぎってやろう。
旅人ミツルの行動方針は決まった。
魔法の使い勝手はいくらか変更が加えられており、使用回数に制限はないが体力を代償とするらしい。
つまりどちらにしても何らかの形で同盟を結ぶ必要があるということだ。
一名を除く彼の知る者達はその点、安心といえよう。
十全の信頼が置けるという連中では――これも約一名、掛け値なしのお人好しを除く――断じてないが、
この段階で無用な殺し合いをするほど愚かではない。
ミツルは墓地を後にして移動を始める。
崩壊したザクルハイムには興味があるが戦闘が行われている場所に軽々しく近づく気はない。
馬鹿は馬鹿同士勝手に潰し合っていれば良い。
もはや旅人に残された道は二つ。
贖罪の為の死か。
願いを叶えての死か。
芦川美鶴に現世への執着や未練はない。
彼の母は色に溺れ家庭を裏切り、彼の父は憎悪に身を任せ家庭を壊した。
元より醜く汚れた体。だが彼の妹だけは違った。
少なくとも彼はそう信じて前に進み、歩いた道を血で汚す。
少し歩くと橋はすぐに見えた。
先ほど会った不快な男もこの橋を渡ったのだろうかと少し考えたが
どうでもいいことだと思い彼は進む。
橋。死と生を繋ぐ象徴。それのすぐ側に墓地を置くとは随分と気の利いたものだ。
いいだろうと彼は思う。この橋を渡り、その先で妹を取り返す。
芦川美鳥はとても優しい娘だった。
今わの際にあっても兄を気遣い、
父親に体中を刺され、死の淵に瀕していても兄の涙を止めようとする子であった。
その時、芦川美鶴は決めた。
女々しい涙などは捨て、願いのために邁進すると。
芦川美鳥は本当に優しい娘だった。
愛していた実の父親に全てを壊され、母とその愛人の死体が置かれた場所に捨て去られていても
兄への心遣いを忘れることはなかった。
芦川美鳥はまだ5歳だった。それなのに誰よりも勇敢な子だった。誰よりも愛らしい子だった。
………………少なくとも“ミツルだけはそう信じている”。
【E-2/一日目/深夜】
【ミツル@ブレイブ・ストーリー~新説~】
[状態]:健康
[装備]:ミツルの杖@ブレイブ・ストーリー~新説~
[道具]:基本支給品、 不明支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:妹を生き返らせる。手段は選ばない
1:情報を求める。あの影の関係者が望ましい
2:チャン以外の旅人と同盟を結ぶ(カントリーマンとも?)(できればワタルがいい)
3:チャンとは可能なかぎり戦いを避ける
[備考]
参戦時期:ゾフィが虚になった後。
魔法を使うと体力消耗。
|[[化物語 《バカシモノガタリ》]]|投下順|[[雷帝の調教]]|
|[[老後の楽しみ]]|時系列順|[[CONTRACT]]|
|[[迷い]]|ミツル|[[]]|
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**さあ歌え。妹讃歌だ。 ◆1yqnHVqBO6
ミツル……芦川美鶴の妹である芦川美鳥はとても優しい女の子だった。
花を愛し、両親を愛し、兄を愛した。そして何より人の笑顔を愛した。
そんな優しい少女も悲劇と呼べる運命により死んでしまった。
最愛の妹を喪った悲しみから、兄である美鶴は旅人ミツルとして多くの屍を築き。
その果てにある勝者の褒美を願った。
彼の願いを叶えるためのバトルロワイヤルは荒野に囲まれた墓地から始まる。
大きな月が彼の金髪を照らし、不思議な色合いにする。
彼が身に纏う魔術師のようなローブは場所も相まって
着用者をさながら時の流れから離れた賢者のように見せていた。
だが月明かりに照らされた荒野の墓地に立つ魔術師である少年は
叙事詩にでも出てきそうなその外見に相応しい悟りを持っていない。
胸にあるのは善悪を超えた欲求。
運命を変えたいという身のほど知らずとすら呼べる激情。
多くの者はその胸の内にある思いを知ればこう言うだろう。
子供の戯れ言。悲劇を嫌い幸福のために他の生命を犠牲にするのか。
運命を受け入れ強く生きよ。
それに対して彼はこう答える。言葉に出さずともこう思う。
反吐の出る綺麗事だ。そう言う貴様達は何だというのだ。
願いのために戦うことを放棄し甘美な自己犠牲というイデオロギーに陶酔しているだけではないか。
それはごく僅かな一握りの勝者が大勢の敗者に与えた慰めという優越感を帯びた詭弁に過ぎないというのに。
良いだろう。ならば永遠に「諦観」や「妥協」を
「納得」というさぞかし耳触りの良い定義に変えて悦に入っているといい。
彼は悟りを開いた賢者の如き知性を持ちあわせることはできない。
幻界を生きる旅人のミツルは少年である己の精神性も肯定する。
いつの時代も世界を変えてきたのは若い力だ。
自分達のような少年がハングリーさを無くして誰が世界を変えるというのか。
少年は思う。仲良く並んでいる二つの墓を前に強く強く思う。
『芦川美鳥』
『ゾフィ』
わがままでいい。達観するにはまだ早すぎる。
北東から微かにだが爆発音が聞こえてくる。
もう戦いを始めた者がいるのだろう。
彼は何も信用しない。
神ですらその限りではない。
願いを叶えるという言葉が本当なのならば
彼は迷いを心の奥底で塵となるまでに押しつぶし、修羅の道を歩もう。
だが今はまだ判断するのは早計に過ぎるというもの。
かつてのルールでは玉と呼ばれるアイテムを五つ集めると願いを叶えてくれるというものだった。
多くの旅人が導師の言葉を信じ戦いに身を投じた。
ミツル自身もそうだ。だが現実は更に過酷だった。
ようやく手に入れたと思った五つ目の玉は目の前で砕け散り、
ゲームには裏のルールがあると知った。
そして、願いを叶えるためには幻界という一つの世界を丸ごと犠牲にしなければならないという。
ならばこの戦いはどうだ? 本当に最後の一人になれば願いは叶うというのか?
そもそも異世界同士の境界線を造り直すというあの儀式はどうなったのだ?
彼はもう二度と目前に餌があると盲信し走り続ける駄馬になる気はない。
あれほどの屈辱を味わう気は毛頭ない。
今求めるべきは情報だ。自分以外にもルールの裏側を知っているものはいた。
この戦いでも何らかの有益な情報を持っている者は多くいると見て良いだろう。
事実、あの“虚”のような影自身、彼の関係者が殺し合いに参加していることを仄めかしていた。
情報は鍵。例え頭を垂れ、尻尾を振ってでもその関係者とやらに取り入る必要がある。
そして得たモノをゆっくりと吟味した後、研いでいた牙で喉元を噛みちぎってやろう。
旅人ミツルの行動方針は決まった。
魔法の使い勝手はいくらか変更が加えられており、使用回数に制限はないが体力を代償とするらしい。
つまりどちらにしても何らかの形で同盟を結ぶ必要があるということだ。
一名を除く彼の知る者達はその点、安心といえよう。
十全の信頼が置けるという連中では――これも約一名、掛け値なしのお人好しを除く――断じてないが、
この段階で無用な殺し合いをするほど愚かではない。
ミツルは墓地を後にして移動を始める。
崩壊したザクルハイムには興味があるが戦闘が行われている場所に軽々しく近づく気はない。
馬鹿は馬鹿同士勝手に潰し合っていれば良い。
もはや旅人に残された道は二つ。
贖罪の為の死か。
願いを叶えての死か。
芦川美鶴に現世への執着や未練はない。
彼の母は色に溺れ家庭を裏切り、彼の父は憎悪に身を任せ家庭を壊した。
元より醜く汚れた体。だが彼の妹だけは違った。
少なくとも彼はそう信じて前に進み、歩いた道を血で汚す。
少し歩くと橋はすぐに見えた。
先ほど会った不快な男もこの橋を渡ったのだろうかと少し考えたが
どうでもいいことだと思い彼は進む。
橋。死と生を繋ぐ象徴。それのすぐ側に墓地を置くとは随分と気の利いたものだ。
いいだろうと彼は思う。この橋を渡り、その先で妹を取り返す。
芦川美鳥はとても優しい娘だった。
今わの際にあっても兄を気遣い、
父親に体中を刺され、死の淵に瀕していても兄の涙を止めようとする子であった。
その時、芦川美鶴は決めた。
女々しい涙などは捨て、願いのために邁進すると。
芦川美鳥は本当に優しい娘だった。
愛していた実の父親に全てを壊され、母とその愛人の死体が置かれた場所に捨て去られていても
兄への心遣いを忘れることはなかった。
芦川美鳥はまだ5歳だった。それなのに誰よりも勇敢な子だった。誰よりも愛らしい子だった。
………………少なくとも“ミツルだけはそう信じている”。
【E-2/一日目/深夜】
【ミツル@ブレイブ・ストーリー~新説~】
[状態]:健康
[装備]:ミツルの杖@ブレイブ・ストーリー~新説~
[道具]:基本支給品、 不明支給品×1
[思考・状況]
基本行動方針:妹を生き返らせる。手段は選ばない
1:情報を求める。あの影の関係者が望ましい
2:チャン以外の旅人と同盟を結ぶ(カントリーマンとも?)(できればワタルがいい)
3:チャンとは可能なかぎり戦いを避ける
[備考]
参戦時期:ゾフィが虚になった後。
魔法を使うと体力消耗。
|[[化物語 《バカシモノガタリ》]]|投下順|[[雷帝の調教]]|
|[[老後の楽しみ]]|時系列順|[[CONTRACT]]|
|[[迷い]]|ミツル|[[水のように優しく、華のように激しく]]|
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