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「強制型エンターテイメント判明」(2012/08/20 (月) 01:43:21) の最新版変更点
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*強制型エンターテイメント判明
四方を配線コードに囲まれての明滅する
PCが明かりのない視界の中、
複眼の昆虫めいた様相を見せる。
四角の隅には用途不明の棒が突き立ち。
配線が巻きつけられている。
「粗末なリングだよ」
「キーシャー!」
甲高い叫び声が聞こえた時には既にベルデは
北岡の目の前へと飛びかかっていた。
だがそれは北岡にとっては何度も体験したこと。
遠距離からの攻撃が専門なゾルダを相手にするならば
距離をいかに潰すかというのは誰もが考えること。
今はもういない城戸真司、龍騎も愚直に試した戦法だ。
失望とともに鼻を鳴らすと。
北岡の手に握られた銃が火を噴く。
狙いは既にベルデへと定められている。
弾丸はベルデの眉間を真っ向から貫くだろう。
しかし、宙に飛んでいたベルデは不規則な動きで
空からゾルダの側面へと周り、ゾルダの肩に手を置く。
「うわっ!?」
ゾルダの肩に置かれた手を支点に、
ベルデは体を密着すると。
ゾルダの体を支点に高速で這いまわる。
北岡も幼少の頃、何度もTVでこの動きを見た。
幼い北岡の眼にもプロレスラーと呼ばれた彼らの姿は
ヒーローの体現者であり、心を沸き立たせるものだった。
だがブラウン管越しではパフォーマンスとして楽しんでいた
そんな動きもこうして体験してしまうと。
「気持ち悪っ!」
とにかく目が回る。
攻撃を仕掛けるまでもなく、
夜中に睡眠を乱す羽音のように。
外見のとおりカメレオンのように密着したベルデは
ひたすらにゾルダの銃の射線から外れて逃げまわる。
「腹立つっ!」
どう体を動かしても巧みに重心を移動して
ベルデは北岡から離れない。
おちょくられる動きを味わい、
苛立ちを抑えきれなくなった北岡。
思わず空いた方の手でベルデの腕を掴むと
慌てて藻掻くベルデを体から引き剥がす。
「おらぁ!!」
そして闘いの間つねに握りしめていた銃を手放すと
渾身の力でベルデを殴り飛ばした!
「ケ~!」
情けない悲鳴を上げて地面を
数度バウンドしたベルデ。
ロープ代わりの配線コードにぶつかると
跳ね返り、地面に倒れ伏した。
渾身の力で相手を殴る。
ほぼ未知の体験。
スマートとクールを信条にする北岡の最も嫌う攻撃手段。
まともに頭に直撃し、ああも吹っ飛んだのだ。
意識が残っているはずがない。
びりびりと痺れる手を見つめ。
こみ上げる不快感に舌打ちした。
「キシャーッ!」
だが俯いた北岡をよそにベルデは元気いっぱいに跳ね起きて。
コーナーポストに飛び乗ると拳を天につきだした。
「んん?」
不可解なベルデの言動。
予想外のベルデのタフネスに驚くより先に
ゾルダ、北岡は首を傾げた。
楽しそうにポストの上で何度も飛ぶと
悪ガキが教師を囃し立てるような素振りで北岡を指さした。
「なんだ?」
北岡を指さしていた手が拳に代わり、
ベルデの顔をスローモーションにコツリと当てる。
「俺の・パンチ?」
拳が当たった箇所を大げさに押さえて
ベルデはポストから床へと身を投げてのたうち回る。
「吹っ飛んで――」
そしてむくりと起き上がると、
口元に両の手を当てて肩を震わせた。
「全然効かないと」
ご名答とでも言いたいのか
ベルデは親指を立てて北岡に見せびらかす。
「ふーん……」
平静を装う北岡にある感情が芽生える。
それは腹の奥底から、最初はとても冷たく。
だが喉元に行くに連れて徐々に熱さを持ち始め。
頭にその感触が来ると、体中の筋肉が力む。
ああ、これが頭に来るということなのだろう。
冷静な北岡がそう認識して感心するのと同時に
北岡、ゾルダは銃を拾い上げて乱射しながらベルデへと駆け出す。
「キシャーッ!」
だがベルデは挑発にまんまと乗った
ゾルダを迎え撃つ準備は完了していた。
身を屈めて、脚に力を送り、解き放つ。
するとベルデの姿が消えて
またしても弾丸を掻い潜り北岡の前に。
「わかってたよ!」
迷わず銃を捨てると、
ゾルダはベルデの顔を鷲掴みにして
地面へと叩きつける!
陥没し、破片が舞い上がるのをものともせずに
北岡はベルデに馬乗りになると頭に吹き荒れる激情のまま
マウントポジションからベルデを殴打する。
本来ならば接近戦も可能な万能型がゾルダの性能。
身を蝕む病のため、頑なに銃に固執した北岡が初めて
ゾルダの力を存分に振るう。
一発一発が高威力。
ベルデの頭が床にめりこむと。
床に罅が走り、亀裂がどんどん深くなる。
「もいっぱぁつ!!」
拳を限界まで振り上げ、
背中を捻りきれるほどに絞り、
最後の一発を食らわせる。
空気の摩擦で熱を放つほどの一撃に耐え切れず、
ついに粗末な簡易リングは崩壊し。
ゾルダとベルデはともに下の階へと落ちる。
「いたたた……ゴホッ」
体の慣れない酷使に悲鳴をあげた肉体。
血の味がする口内を忌々しく思いながらも
ベルデの死体を確認しようと粉塵の中、目を凝らす。
「ケーッケッケッケ!」
「うわぁ……マジで……?」
どんよりと気が滅入った
北岡は目眩に体がよろけるも懸命に堪える。
埃に覆われた視界が晴れると
そこにいるのは明らかにノーダメージのベルデ。
「もうプロレスラーにミラーモンスター倒させようよ。
なんだよこれおかしいだろちょっと
神崎士郎馬鹿じゃないの」
決別した男への恨み言を止めない北岡。
はしゃいでいたベルデはそんな北岡を気遣ってか、そっと近づき。
ポンと肩に手を置いて晴れやかな声でこう言った。
「うっわだっせ」
……北岡は激怒した。
必ずやこの鼻持ちならぬ仮面ライダーベルデを
懲らしめてやらねばならぬと心に誓った。
北岡にプロレスはわからぬ。
まともに知っているのはキン肉マンとタイガーマスクくらいであり
お気に入りのキン肉マンはアメリカ巡業編という変わり者である。
だがそんな北岡にも許せぬ者が一つある。
己の信念に従わねばならぬ時がある。
それが今で――
「死ね!」
――SHOOT VENT――
榴弾砲が手元にやってくると我武者羅に振り回して
ベルデを横殴りにする。確かな手応え。
だがいい加減プロレスラーとは
おかしい人種なのだと北岡も嫌というほど身にしみている。
相手が小人症の老人であることなどすでに北岡の頭からは消えている。
あるのはただ、
スーパー弁護士を馬鹿にするこの男を許すまじという一念のみ!
「微塵に砕けろぉ!」
榴弾砲から放たれる一撃。
だがそれすらも
――HOLD VENT――
ベルデが駆る超音速のヨーヨーに絡め取られ
銃口を上にずらされてしまう。
「ケーッケッケッケ!」
「くそっ。俺をおちょくる時だけキャラ崩すんじゃないよ?!」
悪態をついて榴弾砲を戻そうとするも
ヨーヨーの糸は砲身だけではなく
トリガーにかかった指までもがっちり固定して動けない。
「なら!」
武器が使えないのはこの状況では相手も同じこと。
ならスペックでは優っているゾルダの膂力で
今度こそ完膚なきまでに叩くのみ!
知らぬ内に殺しへの忌避感が薄れていくのを北岡は気づいていない。
それは無自覚に芽生えた相手への信頼。
言うなれば「これで死ななかったならまあ大抵はイケるよね」という根拠なき確信。
非論理的な、今までの北岡ならば最も嫌う思考に
彼は今、脳の髄まで蝕まれていた。
病に弱った脚が重い。
だがかまうことかと北岡は走る。走る。
ベルデは反応できない? いいや、待ち構えているのだ。
仮面ライダーゾルダの一撃を。
緑の体躯で真っ向から受け止めようと!
ベルデとゾルダの距離は今や半歩ほど。
腕を伸ばせば振れられる距離。
両手を広げて待ち構えるベルデにゾルダは迷いなき一撃を繰り出す。
拳が直撃し、独楽のように回転して天井、大穴の空いた上階へと
ベルデは錐揉みしつつ吹き飛んだ。
――ADVENT――
だが追撃しようと踏み込んだ北岡の足が動かない。
蛇のように締め付けられている感触が痛みを持って
ゾルダの動きを止めていた。
振り返った北岡の眼に映るのは誰もいない空間に
静かに浮き上がる巨大なカメレオンの姿。
そして後頭部を襲った衝撃で北岡は床を転がる。
――FINAL VENT――
床にあった銃を拾い、反撃に移ろうと体勢を立て直す前に
ベルデはトドメを刺す準備を始める。
カメレオンの舌がベルデの脚に巻き付き、
ヨーヨーの如くベルデを振り回す。
ベルデのFINAL VENTの内容がつかめない。
イチかバチかでカードを挿しこんだのと同時に
ヨーヨーとなったベルデは北岡をがっちり掴みあげて、
空中を何度も旋回すると同時に間接を極めていく。
「こ……これは……」
己の状態を目の当たりにして北岡は狼狽する。
馬鹿な。これを現実に使用するとは。
このレスラーの頭がオカシイのか。
それとも神崎士郎の頭がオカシイのか。
ハッキリしているのはこの技を考えた者は
間違いなく悪魔将軍が好きということ!
悪魔将軍を屠るために編み出された技に
仮面ライダーゾルダが耐えられるはずがない!
これから待ち受ける衝撃、
蹂躙とすら言える技に北岡の心すら恐怖に凍ってしまう。
「乾ドライバー!」
即興だと断言できる微妙なセンスの技名が叫ばれるのと同時に
ベルデとゾルダは空中へと降り注いだ。
これは悪魔の技だと北岡の胸にはっきり刻まれる。
落ちる、落ちる、
空気が泣き叫び。
コンクリートの大地が北岡の墓標にならんと――
「マグナギガ!」
しかし技は完全には決まらない!
ADVENTで召喚していた契約モンスターマグナギガが
北岡をその体全体でがっちり受け止める。
その献身の体現、息を呑んで
試合を囲む観客達には
悪魔将軍戦のバッファローマンが重なったに違いない!
軋む音、別れの言葉すら遺す暇もなく。
マグナギガは粉砕してしまった。
さらば木偶の坊よと北岡は心の内で別れを告げる。
しかしマグナギガの不在のもたらす意味は大きく。
無色のブランク体になってしまった
北岡はふらつきながらもギラついた闘志に瞳を燃やす。
北岡の耳には聞こえているのだ。
観客の歓声と地鳴りのような足踏みが。
無人であるはずのこの会場で!
「なあ。君」
「なんだよ!?」
「楽しいだろ?」
今までとは打って変わって
深い知性とユーモアを讃えた声でベルデ、乾は尋ねた。
「……悪くはないね。プロレスも。
いつか吾郎ちゃんと観に行くよ」
「楽しい。それこそが全てさ」
試合に臨むボクサーを思わせる数度の小さなジャンプ。
今まであった愉しげな空気から捕食者の気迫に変わり、
ベルデの姿がまたも消えた。今度は突飛な動きではなく。
純粋な身体能力と格闘技者の練りこまれた技術が
北岡の反射速度を上回った。
鞭が空気を弾く音がしたと思うと。
緑色の脚が北岡の視界を埋め尽くした。
特に策があったわけではない。
ただ万事休すの中、せめてもの足掻きと
突き出した手にたまたまあっただけ。
黒の盾がベルデの脚を受け止める。
北岡自身、今まで思考から外していたアタッシュケースが
ベルデの一撃を受けて、ひび割れていく。
卵から未知の生き物が産まれ出す童話の
一ページのような神秘性を帯びた光景だった。
そして、アタッシュケースの中に秘められた財宝がついに姿を――
/`:-、、、、、、-:'`:.、 チ
,-|:::::::::::::::::::::::::::::: ヘ、 /
/ l::::::::::::::::::::::::::::: ..:::l ヽ /
/ /:::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::::lrヾ!
l l:::::::lヽ::::::::::::::::::::::::::::/l:::::l l
チ i !:::::::l ヽ::::::::::::::::::::::::/ l:::::! !
l ヽ、ー' ヽ::::::::::::::::/ ー'ノ
| ` ァ-、、、_ヽ__∠、、-''´
/ , ヽΦ_'' ̄、゙、
| .j 「 ̄。↓ l i
l ,l. ↑フ ラ l.j
゛゙、 └‐、‐┘ /
ヽ、 / \ /
'''´ ´
……沈黙が辺りを包んだ。
それは栗頭のロボットだった。
膝丈ほどの小さな小さなロボットだった。
チーチーと鳴くロボットであった。
だがそれはまさに機械であった。
「…………」
「…………」
「「……………………………………………………」」
人はあまりの出来事に遭うと言葉を失う。
ウルトラ弁護士の北岡も今まで何度も
そういう症状に陥った人間と接してきた。
だがまさか自分がそうなるとは。
仕切りなおす切っ掛けを必死に探す乾と北岡。
二人の間にはある一つの共通認識があった。
先に攻撃を仕掛ける気力をとり戻した方がこの闘いに勝つのだと。
「でぃっ!」
ブランク体であろうと構わず北岡はベルデを殴る。
この状態でも銃は使えるが威力が心もとない。
「ケ、ケーッ」
放心状態から立て直すのに数秒遅れたベルデは
受け身を取ることも叶わずゾルダのパンチをまともに喰らった。
「ケー!」
「チー?」
自分を無視して闘いを再開した二人に
首を傾げるロボット。機械。
しかし格闘技術ではやはりベルデ、乾には勝てない。
スペックでも大きく劣ってしまったゾルダ。
突きや蹴りを絶え間なく繰り出すがどれもいなされ、空を切る。
「ぜぇっ……このっ!」
当たっていたさっきまでとは違う
殴った拳が空振りするという徒労感、空虚。
それらが北岡の動きを鈍くし、
腰の入ってないパンチをベルデに受け止められた。
くるりとベルデが回った。
だが実際に回ったのは足払いをかけられた北岡。
仰向けに倒れたゾルダを踏みつけにかかるベルデ。
だが足の裏がゾルダの腹部を殴打する前に。
首を支点に跳ね起きたゾルダの両足がベルデの顔を直撃した。
直撃し、材質不明の床に叩きつけられる。
「キシャーッ!」
「チー……」
殺伐とした闘い。
二人の空気を察したロボットが悲しげな顔をし、
北岡の足元へ控え目にもトコトコと歩いてきた。
その小さな両手には一枚のカードを掴んでおり。
眉をあげてそれを受け取ると記された文字に目を通す。
――CONTRACT――
「……え? ……うっそホントに?」
「痛たた……おお、凄いなあゾルダくん。
運に愛されてるんじゃない?」
横でさっきまで殴り合いをしていたベルデが感心して拍手した。
いやぁ、と照れ笑いを浮かべた
北岡は人差し指と中指に挟んだカードを機械に掲げた。
ブランク体が光りに包まれると色の無くした手足が彩りを取り戻していく。
光が収束すると機械を肩車して仁王立ちする
仮面ライダーゾルダの姿があった。
「さあ、今度は俺の番だね」
――FINAL VENT――
北岡から飛び降りた機械、プラの頭に銃口の差込口を見つけた
北岡は迷わずそこに銃を挿す。
「ごめんなさい、北岡さんはスーパー弁護士でしたって
カナディアンマンなみに無様に詫びを入れたらって耳を塞ぐな!」
「キシャー!」
「ったく……どうなっても俺のせいにしないでちょーだいね」
プラの頭部がぱかりと押し開き。
内部からは圧倒的質量の重火器が触手のように生える。
感嘆の息を漏らし。
トリガーにかかった指に力を込める。
呆気無くプラの頭部から放たれる
超質量のレーザーが塔を紅く照らし。
ベルデの体躯を紅く照らし、燃やした。
攻撃の余韻が冷めやらぬ室内。
大きく穿たれた穴からは高所の新鮮な空気と
近くに感じる太陽光の熱が流れてくる。
「びっくりだねこれは……」
真向から受け止め、さすがに倒れ伏した
ベルデに歩み寄り、頭部に銃口を押し付けた。
「当然生きてるよね」
「ギリで」
「直撃で生きてるってあんたどんだけだよ」
「ケーッケッケッケ」
「降参する気は?」
「無いよ。
観客も君が生き残ったほうが喜びそうだしねー」
「観客……? 勝ったら俺の言うこと聞くんじゃなかった?」
「負けを認めてないからノーカン」
「あっそ」
短い言葉を言うのにも舌が重く。
引き金を引く指が動こうとしない。
「あんたの名前は?」
「…………」
「無視ときたよ」
長い間、無音のままでそうしていた。
動かない北岡を不審に思った乾は北岡を見上げ、
葛藤を見抜いたのか苦笑いの声を零した。
「最期にこんなに楽しめるなんて思わなかった。
ありがとう、ゾルダくん」
別れ際に付け足すような気安さで
ベルデは自分の首輪に手を当てると忠告した。
ベルデの首から上を爆発が覆い隠し。
意表を突かれた北岡は咄嗟に乾から離れた。
夜をさらに溶かして鋳型に流し込んだ。
そんな形容も似つかわしく思えるくらいの。
北岡が意識を失う直前に、
足元を支えていた床が消え。
宙に投げ出されたとき、
塔は黒の茨に雁字搦めにされ、崩れ落ちた。
太陽が燦々と照りつけ、
頬をじりじりと焼く感触に顔をしかめ。
瞼を開いた北岡の眼に映ったのは
蜘蛛の糸に届かんとする巨大な闇。
背中には砂の感触。
変身が解かれたために服の襟か砂が入り、
汗まみれの体に貼りついた。
「大分離れたところに落ちたなあ。
っていうかまさか生きてるなんて」
現在地点を確認した北岡は蜘蛛の糸を見上げる。
「チー」
服の袖を引っ張られ、見下ろすと
契約し、今はミラーワールドにいるはずのプラがそこにいた。
「ひょっとしてお前が助けてくれたってわけ?」
「チ!」
「おかしなこともあるもんだね」
プラの頭を撫で。これからについて考えを巡らせる北岡。
遠く離れた所から足音が聞こえ。
いち早く察知したプラが昂ぶる威嚇のポーズをとった。
「えっと、こんにちは」
「メールー」
塔の反対、北西の向こうからやってきたのは
あどけなさが強く表れる顔立ちの少年。
そして原理不明の二足歩行の隻眼の子馬。
「またなんかおかしなのが来たよ」
「チー!」
「ごめん、反応しないで。頭が痛くなる」
さらなる事態の複雑化を予想して北岡は思わず頭を抱えた。
クールに闘いたいというスーパー弁護士の希望はまだ果たされず。
&color(red){【乾志摩夫 死亡確認】}
&color(red){【残り 13名】}
【G-7 古代遺跡/一日目/午後】
【天野雪輝@未来日記】
[状態]:健康、心の力の消費(大)、両手の平に大火傷
[装備]:無差別日記@未来日記、、ガッシュのマント@金色のガッシュ・ベル、投げナイフ(14/15)@未来日記、IMIウージー(25/32)
[道具]:基本支給品 ×2、IMIウージーマガジン(2)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して全てを元通りにする?
1:北岡と話をする(この人、なんだか父さんに似てる)
2:他の参加者に取り入る(ウマゴンが危ういラインに立っていることを理解)
3:情報を集める。そしてゲームの破壊に繋がるようなものは隠す。
[備考]
※参戦時期はDiary46.5終了以降からの参戦です。
※雪輝は自分の中の矛盾に気づいていません。
※雪輝は女神像の外見を由乃であると認識しました。
他の参加者もそうであるかは不明です。
※バトルロワイアル、ブレイブストーリー、仮面ライダー龍騎、
Waqwaqの世界に関する情報を“ある程度”得ました。
※南東エリアの上空に蜘蛛の糸が現れました
【シュナイダー@金色のガッシュ!!】
[状態]:心の力の消費(中)、右目失明、
[装備]:なし
[道具]:魔本@金色のガッシュ!!、基本支給品、マキビシ@バジリスク~甲賀忍法帖~、煙草@現実
[思考・状況]
基本行動方針:ガッシュの思いを継ぐ。仲間と共に主催を撃破して清磨たちのいる所へ帰る
1:雪輝と同行する。
[備考]
※第一放送をしっかりと聞いていません。ガッシュが死んだことだけは理解しましたが、他はどの程度聞いていたかはわかりません。
※右目の後遺症については不明。洗浄し、消毒液をかけた程度の処置しかしていません。
※殺し合いに乗っている者への強烈な憎しみを自覚しました。
雪輝への憎しみを他者に向けている可能性があり。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
[状態]:ゾルダに変身中、神崎士郎への怒り。 疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:カードデッキ(ゾルダ)(プラ@waqwaqと契約)
[道具]:基本支給品一式、マスターキー@オリジナル、
香川英行のレポート?(神崎士郎の願いについて書かれている?)
[思考・状況]
基本行動方針:安寧とした立場でせせら笑っている神陣営に踊らされるのは気に入らない。
0:生命をベットしようよ、神崎士郎。それと、お前の指図は受けない。
1:雪輝と話をする(ははぁん、この少年。初っ端から超失礼なこと考えてるね?)。
2:上空に昇った光の正体も気になる。
[備考]
※参戦時期は劇場版開始前のどこかからです。詳しくは後の書き手にお任せします。
※未来日記の世界観、雪輝、由乃、来須、マルコ、愛のみねね視点で知っている大体の情報を把握しました。
※逃亡日記は所有者の逃走経路を予知するものだと勘違いしています。
※香川英行のレポートに仮面ライダーの弱点が書かれていると
北岡は言っていますが真っ赤な嘘です。
※アタッシュケースには契約カードとプラが入っていました。
なぜ契約できるのかは不明です。
|[[PARADIGUM]]|投下順|[[僕達は強がって笑う弱虫なのさ]]|
|[[賢人は無限の幕、羽織り]]|時系列順|[[見つけに行く]]|
|[[鏡を見ながら人を殺そう]]|天野雪輝|[[]]|
|~|シュナイダー|~|
|[[束の間のコミックショウ]]|北岡秀一|[[]]|
|~|乾志摩夫|&color(red){GAME OVER}|
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*強制型エンターテイメント判明
四方を配線コードに囲まれての明滅する
PCが明かりのない視界の中、
複眼の昆虫めいた様相を見せる。
四角の隅には用途不明の棒が突き立ち。
配線が巻きつけられている。
「粗末なリングだよ」
「キーシャー!」
甲高い叫び声が聞こえた時には既にベルデは
北岡の目の前へと飛びかかっていた。
だがそれは北岡にとっては何度も体験したこと。
遠距離からの攻撃が専門なゾルダを相手にするならば
距離をいかに潰すかというのは誰もが考えること。
今はもういない城戸真司、龍騎も愚直に試した戦法だ。
失望とともに鼻を鳴らすと。
北岡の手に握られた銃が火を噴く。
狙いは既にベルデへと定められている。
弾丸はベルデの眉間を真っ向から貫くだろう。
しかし、宙に飛んでいたベルデは不規則な動きで
空からゾルダの側面へと周り、ゾルダの肩に手を置く。
「うわっ!?」
ゾルダの肩に置かれた手を支点に、
ベルデは体を密着すると。
ゾルダの体を支点に高速で這いまわる。
北岡も幼少の頃、何度もTVでこの動きを見た。
幼い北岡の眼にもプロレスラーと呼ばれた彼らの姿は
ヒーローの体現者であり、心を沸き立たせるものだった。
だがブラウン管越しではパフォーマンスとして楽しんでいた
そんな動きもこうして体験してしまうと。
「気持ち悪っ!」
とにかく目が回る。
攻撃を仕掛けるまでもなく、
夜中に睡眠を乱す羽音のように。
外見のとおりカメレオンのように密着したベルデは
ひたすらにゾルダの銃の射線から外れて逃げまわる。
「腹立つっ!」
どう体を動かしても巧みに重心を移動して
ベルデは北岡から離れない。
おちょくられる動きを味わい、
苛立ちを抑えきれなくなった北岡。
思わず空いた方の手でベルデの腕を掴むと
慌てて藻掻くベルデを体から引き剥がす。
「おらぁ!!」
そして闘いの間つねに握りしめていた銃を手放すと
渾身の力でベルデを殴り飛ばした!
「ケ~!」
情けない悲鳴を上げて地面を
数度バウンドしたベルデ。
ロープ代わりの配線コードにぶつかると
跳ね返り、地面に倒れ伏した。
渾身の力で相手を殴る。
ほぼ未知の体験。
スマートとクールを信条にする北岡の最も嫌う攻撃手段。
まともに頭に直撃し、ああも吹っ飛んだのだ。
意識が残っているはずがない。
びりびりと痺れる手を見つめ。
こみ上げる不快感に舌打ちした。
「キシャーッ!」
だが俯いた北岡をよそにベルデは元気いっぱいに跳ね起きて。
コーナーポストに飛び乗ると拳を天につきだした。
「んん?」
不可解なベルデの言動。
予想外のベルデのタフネスに驚くより先に
ゾルダ、北岡は首を傾げた。
楽しそうにポストの上で何度も飛ぶと
悪ガキが教師を囃し立てるような素振りで北岡を指さした。
「なんだ?」
北岡を指さしていた手が拳に代わり、
ベルデの顔をスローモーションにコツリと当てる。
「俺の・パンチ?」
拳が当たった箇所を大げさに押さえて
ベルデはポストから床へと身を投げてのたうち回る。
「吹っ飛んで――」
そしてむくりと起き上がると、
口元に両の手を当てて肩を震わせた。
「全然効かないと」
ご名答とでも言いたいのか
ベルデは親指を立てて北岡に見せびらかす。
「ふーん……」
平静を装う北岡にある感情が芽生える。
それは腹の奥底から、最初はとても冷たく。
だが喉元に行くに連れて徐々に熱さを持ち始め。
頭にその感触が来ると、体中の筋肉が力む。
ああ、これが頭に来るということなのだろう。
冷静な北岡がそう認識して感心するのと同時に
北岡、ゾルダは銃を拾い上げて乱射しながらベルデへと駆け出す。
「キシャーッ!」
だがベルデは挑発にまんまと乗った
ゾルダを迎え撃つ準備は完了していた。
身を屈めて、脚に力を送り、解き放つ。
するとベルデの姿が消えて
またしても弾丸を掻い潜り北岡の前に。
「わかってたよ!」
迷わず銃を捨てると、
ゾルダはベルデの顔を鷲掴みにして
地面へと叩きつける!
陥没し、破片が舞い上がるのをものともせずに
北岡はベルデに馬乗りになると頭に吹き荒れる激情のまま
マウントポジションからベルデを殴打する。
本来ならば接近戦も可能な万能型がゾルダの性能。
身を蝕む病のため、頑なに銃に固執した北岡が初めて
ゾルダの力を存分に振るう。
一発一発が高威力。
ベルデの頭が床にめりこむと。
床に罅が走り、亀裂がどんどん深くなる。
「もいっぱぁつ!!」
拳を限界まで振り上げ、
背中を捻りきれるほどに絞り、
最後の一発を食らわせる。
空気の摩擦で熱を放つほどの一撃に耐え切れず、
ついに粗末な簡易リングは崩壊し。
ゾルダとベルデはともに下の階へと落ちる。
「いたたた……ゴホッ」
体の慣れない酷使に悲鳴をあげた肉体。
血の味がする口内を忌々しく思いながらも
ベルデの死体を確認しようと粉塵の中、目を凝らす。
「ケーッケッケッケ!」
「うわぁ……マジで……?」
どんよりと気が滅入った
北岡は目眩に体がよろけるも懸命に堪える。
埃に覆われた視界が晴れると
そこにいるのは明らかにノーダメージのベルデ。
「もうプロレスラーにミラーモンスター倒させようよ。
なんだよこれおかしいだろちょっと
神崎士郎馬鹿じゃないの」
決別した男への恨み言を止めない北岡。
はしゃいでいたベルデはそんな北岡を気遣ってか、そっと近づき。
ポンと肩に手を置いて晴れやかな声でこう言った。
「うっわだっせ」
……北岡は激怒した。
必ずやこの鼻持ちならぬ仮面ライダーベルデを
懲らしめてやらねばならぬと心に誓った。
北岡にプロレスはわからぬ。
まともに知っているのはキン肉マンとタイガーマスクくらいであり
お気に入りのキン肉マンはアメリカ巡業編という変わり者である。
だがそんな北岡にも許せぬ者が一つある。
己の信念に従わねばならぬ時がある。
それが今で――
「死ね!」
――SHOOT VENT――
榴弾砲が手元にやってくると我武者羅に振り回して
ベルデを横殴りにする。確かな手応え。
だがいい加減プロレスラーとは
おかしい人種なのだと北岡も嫌というほど身にしみている。
相手が小人症の老人であることなどすでに北岡の頭からは消えている。
あるのはただ、
スーパー弁護士を馬鹿にするこの男を許すまじという一念のみ!
「微塵に砕けろぉ!」
榴弾砲から放たれる一撃。
だがそれすらも
――HOLD VENT――
ベルデが駆る超音速のヨーヨーに絡め取られ
銃口を上にずらされてしまう。
「ケーッケッケッケ!」
「くそっ。俺をおちょくる時だけキャラ崩すんじゃないよ?!」
悪態をついて榴弾砲を戻そうとするも
ヨーヨーの糸は砲身だけではなく
トリガーにかかった指までもがっちり固定して動けない。
「なら!」
武器が使えないのはこの状況では相手も同じこと。
ならスペックでは優っているゾルダの膂力で
今度こそ完膚なきまでに叩くのみ!
知らぬ内に殺しへの忌避感が薄れていくのを北岡は気づいていない。
それは無自覚に芽生えた相手への信頼。
言うなれば「これで死ななかったならまあ大抵はイケるよね」という根拠なき確信。
非論理的な、今までの北岡ならば最も嫌う思考に
彼は今、脳の髄まで蝕まれていた。
病に弱った脚が重い。
だがかまうことかと北岡は走る。走る。
ベルデは反応できない? いいや、待ち構えているのだ。
仮面ライダーゾルダの一撃を。
緑の体躯で真っ向から受け止めようと!
ベルデとゾルダの距離は今や半歩ほど。
腕を伸ばせば振れられる距離。
両手を広げて待ち構えるベルデにゾルダは迷いなき一撃を繰り出す。
拳が直撃し、独楽のように回転して天井、大穴の空いた上階へと
ベルデは錐揉みしつつ吹き飛んだ。
――ADVENT――
だが追撃しようと踏み込んだ北岡の足が動かない。
蛇のように締め付けられている感触が痛みを持って
ゾルダの動きを止めていた。
振り返った北岡の眼に映るのは誰もいない空間に
静かに浮き上がる巨大なカメレオンの姿。
そして後頭部を襲った衝撃で北岡は床を転がる。
――FINAL VENT――
床にあった銃を拾い、反撃に移ろうと体勢を立て直す前に
ベルデはトドメを刺す準備を始める。
カメレオンの舌がベルデの脚に巻き付き、
ヨーヨーの如くベルデを振り回す。
ベルデのFINAL VENTの内容がつかめない。
イチかバチかでカードを挿しこんだのと同時に
ヨーヨーとなったベルデは北岡をがっちり掴みあげて、
空中を何度も旋回すると同時に間接を極めていく。
「こ……これは……」
己の状態を目の当たりにして北岡は狼狽する。
馬鹿な。これを現実に使用するとは。
このレスラーの頭がオカシイのか。
それとも神崎士郎の頭がオカシイのか。
ハッキリしているのはこの技を考えた者は
間違いなく悪魔将軍が好きということ!
悪魔将軍を屠るために編み出された技に
仮面ライダーゾルダが耐えられるはずがない!
これから待ち受ける衝撃、
蹂躙とすら言える技に北岡の心すら恐怖に凍ってしまう。
「乾ドライバー!」
即興だと断言できる微妙なセンスの技名が叫ばれるのと同時に
ベルデとゾルダは空中へと降り注いだ。
これは悪魔の技だと北岡の胸にはっきり刻まれる。
落ちる、落ちる、
空気が泣き叫び。
コンクリートの大地が北岡の墓標にならんと――
「マグナギガ!」
しかし技は完全には決まらない!
ADVENTで召喚していた契約モンスターマグナギガが
北岡をその体全体でがっちり受け止める。
その献身の体現、息を呑んで
試合を囲む観客達には
悪魔将軍戦のバッファローマンが重なったに違いない!
軋む音、別れの言葉すら遺す暇もなく。
マグナギガは粉砕してしまった。
さらば木偶の坊よと北岡は心の内で別れを告げる。
しかしマグナギガの不在のもたらす意味は大きく。
無色のブランク体になってしまった
北岡はふらつきながらもギラついた闘志に瞳を燃やす。
北岡の耳には聞こえているのだ。
観客の歓声と地鳴りのような足踏みが。
無人であるはずのこの会場で!
「なあ。君」
「なんだよ!?」
「楽しいだろ?」
今までとは打って変わって
深い知性とユーモアを讃えた声でベルデ、乾は尋ねた。
「……悪くはないね。プロレスも。
いつか吾郎ちゃんと観に行くよ」
「楽しい。それこそが全てさ」
試合に臨むボクサーを思わせる数度の小さなジャンプ。
今まであった愉しげな空気から捕食者の気迫に変わり、
ベルデの姿がまたも消えた。今度は突飛な動きではなく。
純粋な身体能力と格闘技者の練りこまれた技術が
北岡の反射速度を上回った。
鞭が空気を弾く音がしたと思うと。
緑色の脚が北岡の視界を埋め尽くした。
特に策があったわけではない。
ただ万事休すの中、せめてもの足掻きと
突き出した手にたまたまあっただけ。
黒の盾がベルデの脚を受け止める。
北岡自身、今まで思考から外していたアタッシュケースが
ベルデの一撃を受けて、ひび割れていく。
卵から未知の生き物が産まれ出す童話の
一ページのような神秘性を帯びた光景だった。
そして、アタッシュケースの中に秘められた財宝がついに姿を――
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'''´ ´
……沈黙が辺りを包んだ。
それは栗頭のロボットだった。
膝丈ほどの小さな小さなロボットだった。
チーチーと鳴くロボットであった。
だがそれはまさに機械であった。
「…………」
「…………」
「「……………………………………………………」」
人はあまりの出来事に遭うと言葉を失う。
ウルトラ弁護士の北岡も今まで何度も
そういう症状に陥った人間と接してきた。
だがまさか自分がそうなるとは。
仕切りなおす切っ掛けを必死に探す乾と北岡。
二人の間にはある一つの共通認識があった。
先に攻撃を仕掛ける気力をとり戻した方がこの闘いに勝つのだと。
「でぃっ!」
ブランク体であろうと構わず北岡はベルデを殴る。
この状態でも銃は使えるが威力が心もとない。
「ケ、ケーッ」
放心状態から立て直すのに数秒遅れたベルデは
受け身を取ることも叶わずゾルダのパンチをまともに喰らった。
「ケー!」
「チー?」
自分を無視して闘いを再開した二人に
首を傾げるロボット。機械。
しかし格闘技術ではやはりベルデ、乾には勝てない。
スペックでも大きく劣ってしまったゾルダ。
突きや蹴りを絶え間なく繰り出すがどれもいなされ、空を切る。
「ぜぇっ……このっ!」
当たっていたさっきまでとは違う
殴った拳が空振りするという徒労感、空虚。
それらが北岡の動きを鈍くし、
腰の入ってないパンチをベルデに受け止められた。
くるりとベルデが回った。
だが実際に回ったのは足払いをかけられた北岡。
仰向けに倒れたゾルダを踏みつけにかかるベルデ。
だが足の裏がゾルダの腹部を殴打する前に。
首を支点に跳ね起きたゾルダの両足がベルデの顔を直撃した。
直撃し、材質不明の床に叩きつけられる。
「キシャーッ!」
「チー……」
殺伐とした闘い。
二人の空気を察したロボットが悲しげな顔をし、
北岡の足元へ控え目にもトコトコと歩いてきた。
その小さな両手には一枚のカードを掴んでおり。
眉をあげてそれを受け取ると記された文字に目を通す。
――CONTRACT――
「……え? ……うっそホントに?」
「痛たた……おお、凄いなあゾルダくん。
運に愛されてるんじゃない?」
横でさっきまで殴り合いをしていたベルデが感心して拍手した。
いやぁ、と照れ笑いを浮かべた
北岡は人差し指と中指に挟んだカードを機械に掲げた。
ブランク体が光りに包まれると色の無くした手足が彩りを取り戻していく。
光が収束すると機械を肩車して仁王立ちする
仮面ライダーゾルダの姿があった。
「さあ、今度は俺の番だね」
――FINAL VENT――
北岡から飛び降りた機械、プラの頭に銃口の差込口を見つけた
北岡は迷わずそこに銃を挿す。
「ごめんなさい、北岡さんはスーパー弁護士でしたって
カナディアンマンなみに無様に詫びを入れたらって耳を塞ぐな!」
「キシャー!」
「ったく……どうなっても俺のせいにしないでちょーだいね」
プラの頭部がぱかりと押し開き。
内部からは圧倒的質量の重火器が触手のように生える。
感嘆の息を漏らし。
トリガーにかかった指に力を込める。
呆気無くプラの頭部から放たれる
超質量のレーザーが塔を紅く照らし。
ベルデの体躯を紅く照らし、燃やした。
攻撃の余韻が冷めやらぬ室内。
大きく穿たれた穴からは高所の新鮮な空気と
近くに感じる太陽光の熱が流れてくる。
「びっくりだねこれは……」
真向から受け止め、さすがに倒れ伏した
ベルデに歩み寄り、頭部に銃口を押し付けた。
「当然生きてるよね」
「ギリで」
「直撃で生きてるってあんたどんだけだよ」
「ケーッケッケッケ」
「降参する気は?」
「無いよ。
観客も君が生き残ったほうが喜びそうだしねー」
「観客……? 勝ったら俺の言うこと聞くんじゃなかった?」
「負けを認めてないからノーカン」
「あっそ」
短い言葉を言うのにも舌が重く。
引き金を引く指が動こうとしない。
「あんたの名前は?」
「…………」
「無視ときたよ」
長い間、無音のままでそうしていた。
動かない北岡を不審に思った乾は北岡を見上げ、
葛藤を見抜いたのか苦笑いの声を零した。
「最期にこんなに楽しめるなんて思わなかった。
ありがとう、ゾルダくん」
別れ際に付け足すような気安さで
ベルデは自分の首輪に手を当てると忠告した。
ベルデの首から上を爆発が覆い隠し。
意表を突かれた北岡は咄嗟に乾から離れた。
夜をさらに溶かして鋳型に流し込んだ。
そんな形容も似つかわしく思えるくらいの。
北岡が意識を失う直前に、
足元を支えていた床が消え。
宙に投げ出されたとき、
塔は黒の茨に雁字搦めにされ、崩れ落ちた。
太陽が燦々と照りつけ、
頬をじりじりと焼く感触に顔をしかめ。
瞼を開いた北岡の眼に映ったのは
蜘蛛の糸に届かんとする巨大な闇。
背中には砂の感触。
変身が解かれたために服の襟か砂が入り、
汗まみれの体に貼りついた。
「大分離れたところに落ちたなあ。
っていうかまさか生きてるなんて」
現在地点を確認した北岡は蜘蛛の糸を見上げる。
「チー」
服の袖を引っ張られ、見下ろすと
契約し、今はミラーワールドにいるはずのプラがそこにいた。
「ひょっとしてお前が助けてくれたってわけ?」
「チ!」
「おかしなこともあるもんだね」
プラの頭を撫で。これからについて考えを巡らせる北岡。
遠く離れた所から足音が聞こえ。
いち早く察知したプラが昂ぶる威嚇のポーズをとった。
「えっと、こんにちは」
「メールー」
塔の反対、北西の向こうからやってきたのは
あどけなさが強く表れる顔立ちの少年。
そして原理不明の二足歩行の隻眼の子馬。
「またなんかおかしなのが来たよ」
「チー!」
「ごめん、反応しないで。頭が痛くなる」
さらなる事態の複雑化を予想して北岡は思わず頭を抱えた。
クールに闘いたいというスーパー弁護士の希望はまだ果たされず。
&color(red){【乾志摩夫 死亡確認】}
&color(red){【残り 13名】}
【G-7 古代遺跡/一日目/午後】
【天野雪輝@未来日記】
[状態]:健康、心の力の消費(大)、両手の平に大火傷
[装備]:無差別日記@未来日記、、ガッシュのマント@金色のガッシュ・ベル、投げナイフ(14/15)@未来日記、IMIウージー(25/32)
[道具]:基本支給品 ×2、IMIウージーマガジン(2)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して全てを元通りにする?
1:北岡と話をする(この人、なんだか父さんに似てる)
2:他の参加者に取り入る(ウマゴンが危ういラインに立っていることを理解)
3:情報を集める。そしてゲームの破壊に繋がるようなものは隠す。
[備考]
※参戦時期はDiary46.5終了以降からの参戦です。
※雪輝は自分の中の矛盾に気づいていません。
※雪輝は女神像の外見を由乃であると認識しました。
他の参加者もそうであるかは不明です。
※バトルロワイアル、ブレイブストーリー、仮面ライダー龍騎、
Waqwaqの世界に関する情報を“ある程度”得ました。
※南東エリアの上空に蜘蛛の糸が現れました
【シュナイダー@金色のガッシュ!!】
[状態]:心の力の消費(中)、右目失明、
[装備]:なし
[道具]:魔本@金色のガッシュ!!、基本支給品、マキビシ@バジリスク~甲賀忍法帖~、煙草@現実
[思考・状況]
基本行動方針:ガッシュの思いを継ぐ。仲間と共に主催を撃破して清磨たちのいる所へ帰る
1:雪輝と同行する。
[備考]
※第一放送をしっかりと聞いていません。ガッシュが死んだことだけは理解しましたが、他はどの程度聞いていたかはわかりません。
※右目の後遺症については不明。洗浄し、消毒液をかけた程度の処置しかしていません。
※殺し合いに乗っている者への強烈な憎しみを自覚しました。
雪輝への憎しみを他者に向けている可能性があり。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
[状態]:ゾルダに変身中、神崎士郎への怒り。 疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:カードデッキ(ゾルダ)(プラ@waqwaqと契約)
[道具]:基本支給品一式、マスターキー@オリジナル、
香川英行のレポート?(神崎士郎の願いについて書かれている?)
[思考・状況]
基本行動方針:安寧とした立場でせせら笑っている神陣営に踊らされるのは気に入らない。
0:生命をベットしようよ、神崎士郎。それと、お前の指図は受けない。
1:雪輝と話をする(ははぁん、この少年。初っ端から超失礼なこと考えてるね?)。
2:上空に昇った光の正体も気になる。
[備考]
※参戦時期は劇場版開始前のどこかからです。詳しくは後の書き手にお任せします。
※未来日記の世界観、雪輝、由乃、来須、マルコ、愛のみねね視点で知っている大体の情報を把握しました。
※逃亡日記は所有者の逃走経路を予知するものだと勘違いしています。
※香川英行のレポートに仮面ライダーの弱点が書かれていると
北岡は言っていますが真っ赤な嘘です。
※アタッシュケースには契約カードとプラが入っていました。
なぜ契約できるのかは不明です。
|[[PARADIGUM]]|投下順|[[僕達は強がって笑う弱虫なのさ]]|
|[[賢人は無限の幕、羽織り]]|時系列順|[[僕達は強がって笑う弱虫なのさ]]|
|[[鏡を見ながら人を殺そう]]|天野雪輝|[[HAPPY END’s FRAGMENTS]]|
|~|シュナイダー|~|
|[[束の間のコミックショウ]]|北岡秀一|~|
|~|乾志摩夫|&color(red){GAME OVER}|
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